アウトドアのハイシーズンである8月。キャンプ場はどこも満員御礼となり、大勢のキャンパーで賑わっている。だが、人が増えると不届き者が増えるのも世の常。迷惑キャンパーによる“被害”を受けるケースが増加するのもこの時期ならでは。
◆夜に騒ぐ若者よりも迷惑なのは…
キャンプの迷惑客といえば、夜中まで騒ぐ若者のイメージもあるだろうが、この季節、同じ若者の騒音でも少々事情が異なる“騒音問題”に頭を悩ませる人が多いそうだ。山梨県のキャンプ場経営者の男性は困り顔で話をしてくれた。
「若者たちが夜中まで騒いで……なんてのは、実はそんなにないんです。夏休みや連休で問題になるのは子供たちの騒音。それも夜ではなく朝の騒音なんですよね。夏休みや連休は家族グループでいらっしゃる方が多いのですが、仲のいい友達と来たことで子供たちのテンションは上がりっぱなしです。
子供たちは5時くらいに起き出して、キャンプ場の中で遊び出します。だから、夏休み中は夜中の騒音よりも、明け方の騒音についてのクレームが増えるんですよ。ですから最近は22時以降はもちろんクワイエットタイム(できるだけ静かにする時間)、朝も6時までは静かにしましょうという注意喚起もしていますが……」
◆グループキャンプ禁止のキャンプ場も
いくら夏場で明るくなっているとはいえ、朝の5時から走り回って、大声を出してはしゃぐ子供。これは周りのキャンプ客としたらたまったものではない。アウトドアライターに話を聞いた。
「対処法として、チェックイン時に『夜は22時以降、朝は6時まではお静かに』と注意するくらいですが、静けさを売りにするキャンプ場はグループキャンプを禁止にして対処しているところもあります。騒音って、1家族だけだとほとんど起きないんですよ。複数人でワイワイしちゃうから起きるんですよね」
たしかに騒音トラブルの大半はグループで起きており、筆者もキャンプ歴は10年以上あるのだが、家族でどんちゃん騒ぎなど見たことはない。騒がしいのは大半が若者たちのグループや数家族で来たグループ客であった。
「プライベート感を大切にするキャンプ場のほうが騒音問題を多いのでは……」と、このアウトドアライターは話す。
「ここ数年人気を集めているのが、サイトとサイトの間を広めに離したり、生け垣などで囲いプライベート感を高めているキャンプ場です。しかし、サイト間が離れていればまだ騒音も気にならない可能性が高いですが、生け垣なんてただの木ですからね。防音効果なんてないんですよ。でも、囲われているので他のサイトと隔絶していると勘違いしてしまうんです。それで騒いでしまうというケースもあります」
実際、筆者はこうした生け垣で分けられたキャンプ場に行った際、隣のサイトに来ていた3家族からなるグループの子供たちが朝の5時から騒ぎ出したことがある。「せめて6時くらいまでは静かにしてもらえませんか」と伝えたところ、「囲っているので大丈夫だと思いました。声、聞こえてましたか……すいません」と言われ、その後自分のテントに戻ったところ「隣の人たち、神経質っぽいから気をつけよう」と話していた声まで丸聞こえだった。
◆流血事故が起きて救急車が駆けつける
朝早くから遊ぶ子供たちの大半は、子供たちだけで遊んでいて、親はまだ寝ているというケースが多い。こうした状況のなか、大きなトラブルに発展したケースもある。会社員のKさんは7月の連休にでかけたキャンプ場で起きたトラブルについて話してくれた。
「富士五湖のとある湖の湖畔にあるキャンプ場に行ったのですが、朝の5時前くらいから子供たちの走り回る足音と騒ぎ声で目が覚めました。私と同じように起こされた人たちが、不機嫌そうにテントから顔を出していましたね。その子供たちは湖畔のほうに走って行ったので、少し静かになり、二度寝しようとウトウトしていると今度は救急車のサイレンと赤色灯の光が差し込んできたのです」
◆流血した子どもが搬送される事態に
何事が起きたのかと、キャンプ場は騒然。救急車は湖畔にまで走って行ったため、まさか誰かが溺れたのではと人々が集まり始めたという。
「幸い子供は溺れていなかったのですが、頭から血を流した子供がいて救急車に乗せられていました。詳しいことはわからなかったのですが、頭にケガをして血を流していたのです。大事には至らなかったようですが、朝から迷惑ですよね。ウチも子供がいますしグループキャンプにも行きます。子供たちが先に起きることはよくあるけど、6時までは静かにしろって言っています。このくらいのマナー、ちゃんと教えておけって思いますよ」
◆ルールは厳しくしたくないが評判も気になる
先のキャンプ場経営者も困り顔だ。
「最近はGoogleのクチコミとかですぐにいろいろ書かれてしまいますから、しっかり対応もしなきゃいけない。でも、ルールが多くて口うるさい管理人がいるキャンプ場なんて、いい印象ないじゃないですか。おまけに注意すると逆ギレされる方もいらっしゃいますしね……」
子供たちには存分に遊ばせてあげたい。だが、他の客たちの迷惑にも配慮しなければならない。痛し痒しな状況なのだとか。「全体的にマナーに対する意識が低下してるんですかね……」と経営者は嘆く。
◆子供たちにマナーを教えることもキャンプでは必要
だが、いくらなんでも朝の5時は寝ている人が大半だ。いくら子供たちのことを考えたといっても、ここは配慮するべき時間ではなかろうか。夜、就寝を妨げないように静かにするならば、明け方もさらなり……であろう。
自然の中で思いきり遊ばせたという気持ちはわかるが、他人に迷惑をかけていいわけはない。子供たちにマナーを教えることもキャンパーにとっては大切なことなのではなかろうか。
取材・文/谷本ススム
【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター
◆夜に騒ぐ若者よりも迷惑なのは…
キャンプの迷惑客といえば、夜中まで騒ぐ若者のイメージもあるだろうが、この季節、同じ若者の騒音でも少々事情が異なる“騒音問題”に頭を悩ませる人が多いそうだ。山梨県のキャンプ場経営者の男性は困り顔で話をしてくれた。
「若者たちが夜中まで騒いで……なんてのは、実はそんなにないんです。夏休みや連休で問題になるのは子供たちの騒音。それも夜ではなく朝の騒音なんですよね。夏休みや連休は家族グループでいらっしゃる方が多いのですが、仲のいい友達と来たことで子供たちのテンションは上がりっぱなしです。
子供たちは5時くらいに起き出して、キャンプ場の中で遊び出します。だから、夏休み中は夜中の騒音よりも、明け方の騒音についてのクレームが増えるんですよ。ですから最近は22時以降はもちろんクワイエットタイム(できるだけ静かにする時間)、朝も6時までは静かにしましょうという注意喚起もしていますが……」
◆グループキャンプ禁止のキャンプ場も
いくら夏場で明るくなっているとはいえ、朝の5時から走り回って、大声を出してはしゃぐ子供。これは周りのキャンプ客としたらたまったものではない。アウトドアライターに話を聞いた。
「対処法として、チェックイン時に『夜は22時以降、朝は6時まではお静かに』と注意するくらいですが、静けさを売りにするキャンプ場はグループキャンプを禁止にして対処しているところもあります。騒音って、1家族だけだとほとんど起きないんですよ。複数人でワイワイしちゃうから起きるんですよね」
たしかに騒音トラブルの大半はグループで起きており、筆者もキャンプ歴は10年以上あるのだが、家族でどんちゃん騒ぎなど見たことはない。騒がしいのは大半が若者たちのグループや数家族で来たグループ客であった。
「プライベート感を大切にするキャンプ場のほうが騒音問題を多いのでは……」と、このアウトドアライターは話す。
「ここ数年人気を集めているのが、サイトとサイトの間を広めに離したり、生け垣などで囲いプライベート感を高めているキャンプ場です。しかし、サイト間が離れていればまだ騒音も気にならない可能性が高いですが、生け垣なんてただの木ですからね。防音効果なんてないんですよ。でも、囲われているので他のサイトと隔絶していると勘違いしてしまうんです。それで騒いでしまうというケースもあります」
実際、筆者はこうした生け垣で分けられたキャンプ場に行った際、隣のサイトに来ていた3家族からなるグループの子供たちが朝の5時から騒ぎ出したことがある。「せめて6時くらいまでは静かにしてもらえませんか」と伝えたところ、「囲っているので大丈夫だと思いました。声、聞こえてましたか……すいません」と言われ、その後自分のテントに戻ったところ「隣の人たち、神経質っぽいから気をつけよう」と話していた声まで丸聞こえだった。
◆流血事故が起きて救急車が駆けつける
朝早くから遊ぶ子供たちの大半は、子供たちだけで遊んでいて、親はまだ寝ているというケースが多い。こうした状況のなか、大きなトラブルに発展したケースもある。会社員のKさんは7月の連休にでかけたキャンプ場で起きたトラブルについて話してくれた。
「富士五湖のとある湖の湖畔にあるキャンプ場に行ったのですが、朝の5時前くらいから子供たちの走り回る足音と騒ぎ声で目が覚めました。私と同じように起こされた人たちが、不機嫌そうにテントから顔を出していましたね。その子供たちは湖畔のほうに走って行ったので、少し静かになり、二度寝しようとウトウトしていると今度は救急車のサイレンと赤色灯の光が差し込んできたのです」
◆流血した子どもが搬送される事態に
何事が起きたのかと、キャンプ場は騒然。救急車は湖畔にまで走って行ったため、まさか誰かが溺れたのではと人々が集まり始めたという。
「幸い子供は溺れていなかったのですが、頭から血を流した子供がいて救急車に乗せられていました。詳しいことはわからなかったのですが、頭にケガをして血を流していたのです。大事には至らなかったようですが、朝から迷惑ですよね。ウチも子供がいますしグループキャンプにも行きます。子供たちが先に起きることはよくあるけど、6時までは静かにしろって言っています。このくらいのマナー、ちゃんと教えておけって思いますよ」
◆ルールは厳しくしたくないが評判も気になる
先のキャンプ場経営者も困り顔だ。
「最近はGoogleのクチコミとかですぐにいろいろ書かれてしまいますから、しっかり対応もしなきゃいけない。でも、ルールが多くて口うるさい管理人がいるキャンプ場なんて、いい印象ないじゃないですか。おまけに注意すると逆ギレされる方もいらっしゃいますしね……」
子供たちには存分に遊ばせてあげたい。だが、他の客たちの迷惑にも配慮しなければならない。痛し痒しな状況なのだとか。「全体的にマナーに対する意識が低下してるんですかね……」と経営者は嘆く。
◆子供たちにマナーを教えることもキャンプでは必要
だが、いくらなんでも朝の5時は寝ている人が大半だ。いくら子供たちのことを考えたといっても、ここは配慮するべき時間ではなかろうか。夜、就寝を妨げないように静かにするならば、明け方もさらなり……であろう。
自然の中で思いきり遊ばせたという気持ちはわかるが、他人に迷惑をかけていいわけはない。子供たちにマナーを教えることもキャンパーにとっては大切なことなのではなかろうか。
取材・文/谷本ススム
【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター