◆Hey! Say! JUMPのデビュー曲は事実上“消滅”していた
アイドルやアーティストにとってデビュー曲とは、かけがえのない大切な宝物であるはずだ。
人気アイドルグループHey! Say! JUMPは、昨年の10月16日をもって、2007年11月14日に発売されたデビュー曲『Ultra Music Power』を〝封印〟するという決断をメンバーの「強い意志」として決定、今後歌番組やコンサートでの歌唱は行わず、公式YouTube上の同曲公式動画等も削除、事実上〝消滅〟したデビュー曲となった。
封印の理由はただひとつ。同曲の歌い出し部分などに「Johnnys’」という言葉が含まれているということによるものだ。
細かい説明は省略するが、昨年からの一連のジャニー喜多川性加害問題を受け、東山紀之社長(当時)が会見上で、社名、グループ名など「すべてジャニーズとつくものはなくなります」と発言した内容にも沿うかたちだ。
その方針により、関ジャニ∞とジャニーズWESTは、それぞれ「SUPER EIGHT」と「WEST.」にグループ名を変更、ジャニーズJr.も「ジュニア」へと名称を変更している。
歌詞変更や該当部分のカットなどといった対応策はとらず、Hey! Say! JUMPの宝物は、メンバーたちによって静かに封印された。
◆「デビュー曲を思わせる」新曲のリリース発表
そして今年8月19日。Hey! Say! JUMPは9月24日発売の34thシングルのリリースを発表、そのタイトルにファンは度肝を抜かれた。
タイトルは『UMP』。これは、封印されたデビュー曲の略称と同じものである。これが意味するものは、ひとつだろう。自分たちの手で封印した「宝物」を、自分たちの手で新たな姿で再生させる。そういうことだ。
“匂わせ”は、タイトルだけではない。
発表された発売日にも、ファンは大きくわいた。発売日とされた9月24日は、Hey! Say! JUMPのグループ結成日なのである。
デビュー曲の略称と同じタイトルの曲を、グループ結成日にリリース、しかしそれが火曜日という、音楽チャートの週間売り上げ集計上不利なタイミングでのリリースとなることを考えると、彼らが売上枚数やチャート順位よりも日付を重視した可能性も高い(Hey! Say! JUMPはデビュー以来33作連続1位獲得記録があるにも関わらずである)。
さらにとどめのごとく、発売告知を掲示した場所のひとつとして選ばれたのが、グループの結成発表を行った横浜アリーナがある新横浜駅だったことも、ファンを感動させた。
◆結婚発表&露出低下でファンの心は離れていた
実はここ数ヶ月にわたり、不安な気持ちややるせない思いを抱えるHey! Say! JUMPファンも少なくなかった。今年に入ってから8月に至るまで新たなCDリリースやツアーは行われておらず、毎年夏に放送される民放各局の大型音楽特番にも、同事務所のグループが複数出演するなか、JUMPはいずれも出演しなかった。
メンバー全員が平成生まれという、当時としてはあまりにもフレッシュで鮮烈なデビューを飾ったJUMPも、結成から17年、すっかりベテラングループだ。
山田涼介主演ドラマと高木雄也出演ドラマが現在地上波で放送中だったり、個人活動が目立つなかで発表された、有岡大貴と八乙女光の立て続けの結婚発表も、プライベートの幸福を優先したのかと、素直に祝福できないファンも一部存在した。
後輩グループもどんどん活躍の場を広げていくなか、Hey! Say! JUMPというグループは本当に大丈夫なのか……そんな思いが募る中での、もう一度初めからといった意志が込められたような、不安をすべて蹴散らしてくれそうな、グループとしての意思を強く感じるエモさ爆発の〝デビュー曲再生〟というサプライズである。
◆ファンにとって「何よりも嬉しい宣言」とは
新曲『UMP』は、かつてのデビュー曲の再レコーディングなどではなく、sumika片岡健太の手による疾走感あふれる楽曲として生まれ変わった。
すでにミュージックビデオが先行公開されているが、封印デビュー曲のサビを彷彿させる旋律が挟み込まれた間奏には背筋がゾクっとした。さらに、一部の振り付けもデビュー曲と似たものがあったり、歌詞にも「東の空」といった、初代『UMP』の歌詞と重なるフレーズが盛り込まれたり、を感じる要素が複数あり、新しい形で生まれ変わったけれども、DNAの継承がうかがえるところもエモい演出だ。
初代「UMP」のAメロ歌い出しの歌詞は、「喜び悲しみ受け入れて生きる」というものだった。彼らの宝物に降りかかった、あまりにも大きすぎる選択。歌詞のごとくそれを「受け入れ」、そのDNAを受け継ぐかたちで新たに生を受けた、『UMP』。
CDのリリース文には、こう書かれていた。
<グループ結成、CDデビューから17年となる今年、その先に見える20周年へも向けて、グループとしての新たな代表曲となる作品を届けたいという想いのもと企画されました。>
そう、彼らの目線はその先の〝20周年〟を見ている。それは不安を抱えていたファンにとって、何よりも嬉しい宣言ではないだろうか。17年目に生まれた新たな「宝物」とともに、JUMPの逆襲がはじまるのか。
<文/太田サトル>
【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。
アイドルやアーティストにとってデビュー曲とは、かけがえのない大切な宝物であるはずだ。
人気アイドルグループHey! Say! JUMPは、昨年の10月16日をもって、2007年11月14日に発売されたデビュー曲『Ultra Music Power』を〝封印〟するという決断をメンバーの「強い意志」として決定、今後歌番組やコンサートでの歌唱は行わず、公式YouTube上の同曲公式動画等も削除、事実上〝消滅〟したデビュー曲となった。
封印の理由はただひとつ。同曲の歌い出し部分などに「Johnnys’」という言葉が含まれているということによるものだ。
細かい説明は省略するが、昨年からの一連のジャニー喜多川性加害問題を受け、東山紀之社長(当時)が会見上で、社名、グループ名など「すべてジャニーズとつくものはなくなります」と発言した内容にも沿うかたちだ。
その方針により、関ジャニ∞とジャニーズWESTは、それぞれ「SUPER EIGHT」と「WEST.」にグループ名を変更、ジャニーズJr.も「ジュニア」へと名称を変更している。
歌詞変更や該当部分のカットなどといった対応策はとらず、Hey! Say! JUMPの宝物は、メンバーたちによって静かに封印された。
◆「デビュー曲を思わせる」新曲のリリース発表
そして今年8月19日。Hey! Say! JUMPは9月24日発売の34thシングルのリリースを発表、そのタイトルにファンは度肝を抜かれた。
タイトルは『UMP』。これは、封印されたデビュー曲の略称と同じものである。これが意味するものは、ひとつだろう。自分たちの手で封印した「宝物」を、自分たちの手で新たな姿で再生させる。そういうことだ。
“匂わせ”は、タイトルだけではない。
発表された発売日にも、ファンは大きくわいた。発売日とされた9月24日は、Hey! Say! JUMPのグループ結成日なのである。
デビュー曲の略称と同じタイトルの曲を、グループ結成日にリリース、しかしそれが火曜日という、音楽チャートの週間売り上げ集計上不利なタイミングでのリリースとなることを考えると、彼らが売上枚数やチャート順位よりも日付を重視した可能性も高い(Hey! Say! JUMPはデビュー以来33作連続1位獲得記録があるにも関わらずである)。
さらにとどめのごとく、発売告知を掲示した場所のひとつとして選ばれたのが、グループの結成発表を行った横浜アリーナがある新横浜駅だったことも、ファンを感動させた。
◆結婚発表&露出低下でファンの心は離れていた
実はここ数ヶ月にわたり、不安な気持ちややるせない思いを抱えるHey! Say! JUMPファンも少なくなかった。今年に入ってから8月に至るまで新たなCDリリースやツアーは行われておらず、毎年夏に放送される民放各局の大型音楽特番にも、同事務所のグループが複数出演するなか、JUMPはいずれも出演しなかった。
メンバー全員が平成生まれという、当時としてはあまりにもフレッシュで鮮烈なデビューを飾ったJUMPも、結成から17年、すっかりベテラングループだ。
山田涼介主演ドラマと高木雄也出演ドラマが現在地上波で放送中だったり、個人活動が目立つなかで発表された、有岡大貴と八乙女光の立て続けの結婚発表も、プライベートの幸福を優先したのかと、素直に祝福できないファンも一部存在した。
後輩グループもどんどん活躍の場を広げていくなか、Hey! Say! JUMPというグループは本当に大丈夫なのか……そんな思いが募る中での、もう一度初めからといった意志が込められたような、不安をすべて蹴散らしてくれそうな、グループとしての意思を強く感じるエモさ爆発の〝デビュー曲再生〟というサプライズである。
◆ファンにとって「何よりも嬉しい宣言」とは
新曲『UMP』は、かつてのデビュー曲の再レコーディングなどではなく、sumika片岡健太の手による疾走感あふれる楽曲として生まれ変わった。
すでにミュージックビデオが先行公開されているが、封印デビュー曲のサビを彷彿させる旋律が挟み込まれた間奏には背筋がゾクっとした。さらに、一部の振り付けもデビュー曲と似たものがあったり、歌詞にも「東の空」といった、初代『UMP』の歌詞と重なるフレーズが盛り込まれたり、を感じる要素が複数あり、新しい形で生まれ変わったけれども、DNAの継承がうかがえるところもエモい演出だ。
初代「UMP」のAメロ歌い出しの歌詞は、「喜び悲しみ受け入れて生きる」というものだった。彼らの宝物に降りかかった、あまりにも大きすぎる選択。歌詞のごとくそれを「受け入れ」、そのDNAを受け継ぐかたちで新たに生を受けた、『UMP』。
CDのリリース文には、こう書かれていた。
<グループ結成、CDデビューから17年となる今年、その先に見える20周年へも向けて、グループとしての新たな代表曲となる作品を届けたいという想いのもと企画されました。>
そう、彼らの目線はその先の〝20周年〟を見ている。それは不安を抱えていたファンにとって、何よりも嬉しい宣言ではないだろうか。17年目に生まれた新たな「宝物」とともに、JUMPの逆襲がはじまるのか。
<文/太田サトル>
【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。