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大谷翔平「50-50」を視野に“思わぬ落とし穴”の可能性。“ヒリヒリしすぎ”の9月がもたらすもの

日刊SPA! 2024年8月27日 8時48分

 ドジャース大谷翔平の一挙手一投足に注目が集まっている。
 現地23日(日本時間24日)のレイズ戦で、「40本塁打&40盗塁」にダブルリーチをかけていた大谷は、快挙をまとめて達成。しかも今季40号はサヨナラ満塁ホームランと、シナリオライターでも思いつかないような劇的なストーリーを描いてファンを驚かせた。

 出場126試合目での「40-40」達成は断トツの史上最速で、「45-45」はもちろん、ファンからは「50-50」を期待する声も日々高まっている。

◆3年連続の地区制覇が当面の目標に

 日本ではどうしても大谷個人の記録に焦点が当たりがちだが、チームも好調を維持。接戦となった25日のレイズ戦を制したドジャースは、今季成績を78勝53敗(勝率.595)とした。

 ドジャースの勝率は両リーグを通じて単独トップで、2013年から続くチームのポストシーズン進出記録を12年連続に伸ばすことは、ほぼ間違いないだろう。

 問題は地区優勝を飾ったうえで、リーグ最高勝率を記録し、ポストシーズンでのホームアドバンテージを得られるかどうかだ。ナ・リーグ西地区はドジャースが一歩リードしているとはいえ、2位ダイヤモンドバックスとは3ゲーム差、3位パドレスとも4.5ゲーム差しかない。両チームとの直接対決も計7試合残っており、まずは3年連続となる地区制覇が当面の目標となる。

◆“ヒリヒリした9月”には疲労という試練が…

 昨季オフに大谷がドジャースを移籍先に選んだのは、ヒリヒリした9月を過ごしたいという思いがあったからに他ならない。昨年まで6シーズンを過ごしたエンゼルス時代もポストシーズン争いに加わることがあったが、おおむね夏場には終戦を迎えることが多かった。同じロサンゼルスを名乗るドジャースへ移ったのは大谷にとって必然だったといえるだろう。

 大谷の本心はわからないが、やはり個人の記録よりチームの勝利、最終的にはワールドシリーズ制覇を最大の目標に置いているはず。ただ、チームが勝利する確率を引き上げるためには、やはり大谷の活躍が近道となる。ドジャースとしても、優勝とともに大谷の「50-50」という大記録達成を後押しするため、チームの残り31試合すべてで大谷をスタメン起用する可能性は高いだろう。

 そうなると、“優勝”と“記録”の2つを追いかける大谷には“疲労”という試練が待ち受けることになる。

 今季の大谷はチーム131試合のうち128試合に出場。欠場したのは5月の3試合だけだ。そのうち2試合はダブルヘッダーの2試合目を休養に充てたというもの。つまり、チームの試合があった日にベンチに座り続けたのは1試合のみということになる。

 今季は投手として右肘のリハビリ中のため、指名打者としての起用が続く。マウンドに上がることも、守備に就くこともないため、体力的な負担は大きくないはず。ただ、大谷はメジャーで例年9月以降に調子を落とす傾向があり、油断はできない。秋口にドッと疲れが押し寄せるようなら、数試合のベンチスタートがあってもおかしくないだろう。

 しかし、地区優勝争いとともに「50-50」にも近づけば近づくほど、簡単に休養を取るわけにもいかなくなる。

◆イチローが経験した“意外な落とし穴”

 また、疲労の他にもう一つ、大谷にとって意外な落とし穴が待ち構えている可能性も……。後半戦に入ってから盗塁を量産中の大谷だが、50盗塁に固執しすぎるようなら反感を買う可能性も出てくる。
 かつてマリナーズ時代のイチロー氏が2008年に日米通算3000安打を達成した際、「チームメイトから『イチローは個人記録のためにプレーしている』と陰口を叩かれている」と報道されたこともあった。

 イチロー氏は決して個人記録に固執していたわけではなかったが、同年のマリナーズは61勝101敗と大きく低迷していた。淡々と安打を積み重ねるイチロー氏に対するチームメートからの嫉妬も一因になったという。

◆“根っからの野球少年”ゆえに勘違いされる可能性も

 今季のドジャースは優勝争いの渦中にいるため、大谷がチームメートの嫉妬やファンの反感を買うことは、ほぼないだろう。ただ、大谷は根っからの“野球少年”。当たり前の全力プレーが暗黙のルールを破ったと勘違いされるシーンが出てきてもおかしくない。それが落とし穴にならなければいいが……。

 数日後には自身が待ち望んだ“ヒリヒリする9月”を迎える大谷。チームの優勝争いと、自身の「50-50」への挑戦は重荷となってしまうのか、それとも意に介さず普段通りの野球を貫けるのか。我々にも“ヒリヒリする9月”、そして10月を大谷には届けてもらいたい。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

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