誰にも邪魔されずに、二人きりの時間を楽しめるドライブデート。一対一の空間で思いがけず深い話ができたり、相手の意外な一面が垣間見られるのもその醍醐味だろう。
そんな「相手との距離を縮めるチャンス」に、できれば知りたくなかった……という場面に出くわしてしまった人もいる。今回は、楽しいはずのドライブデートで思わず気持ちが冷めてしまったエピソードを紹介する。
◆大人の男性!と期待していたはずなのに
森田きみこさん(仮名)は過去に、あまりにもスリリングなドライブデートをしたことがあるという。
「昔、ナンパされた男性とのドライブデートで衝撃的な体験をしました」
当時、森田さんは18歳。たまたま訪れていた飲食店でナンパされ、みんなでカラオケに行ったのがきっかけだそう。お相手は英樹さん(仮名・当時23歳)という、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉似の人だった。
トラックの運転手をしているという彼と森田さんは、出会ってすぐに意気投合。一週間ほど電話でやりとりをした後、英樹さんからデートに誘われ二人きりで会うことになった。
まだ未成年だった森田さんにとって、5歳年上の英樹さんはかなり大人な印象だったという。緊張と期待が入り混じった気持ちを胸に、ロマンチックなドライブへ……となるはずだった。
だが、残念ながら森田さんが抱いた“大人の男性”という英樹さんへの理想は、いとも簡単に破られることになる。
◆もしかしてヤンキーですか?
デート当日。森田さんはまだ車の免許を持っていなかったので、学生寮まで英樹さんが迎えに来てくれることになった。そして、颯爽と現れた彼の車を見て驚愕する。
英樹さんが乗ってきた車はなんと、フルスモークが施された地面すれすれのシャコタン(車高短)クラウンだった。クラウンといえば、いわゆるヤンキーに人気なイメージのある車だ。
「うわーイカついなー……と内心では思ってましたね」
予想外にイカつい車での登場に、一抹の不安を覚えながらも出発。驚くのはまだまだこれからだった。
◆運転方法にア然
ドライブをスタートしてしばらくした頃。交差点の手前で、英樹さんがおもむろにタバコに火を点けていた。だが、どうにもその姿には違和感がある。彼の手元に目を向けると、左手にはタバコ、右手にはライター。うん、普通に両手でタバコを点けている。
(ハンドルは? 運転はどうするの?)
目の前で起きていることが理解できずに混乱する森田さんをよそに、左折のウインカーを出しながら車は交差点に突入。この状況に出くわしたら、森田さんでなくとも「手が塞がっているのに、どうやって交差点を曲がるのか」と考えるだろう。ほとばしる嫌な予感を抑えて、ゆっくりとハンドルに視線を戻す。
両手でタバコ、片足はハンドル。片足は、ハンドル!?
(えー!! この人、足で運転してるやん!!)
驚くべきことに、英樹さんは器用に足でハンドルを回して左折し、涼しい顔で交差点を進んでいったのだ。
会って10分で起きたこの出来事に、まだ免許を持っていなかった森さんは「車って、足で運転できるんだ」と衝撃を通り越して思わず感心してしまったらしい。そして、“大人の男性”に舐められたくなかったので動揺は表に出さず、ポーカーフェイスのいい女モード120%で助手席に座っていたという。
「あのときは衝撃的すぎて分かりませんでしたが、今思えば彼はきっと、カッコつけてあんな無茶な運転をしていたんだと思います(笑)」
結局、命からがら辿り着いた場所はラーメン屋。スリリングドライブの割に合わないディナーと、英樹さんのナナメ上をゆくカッコつけアピールに、森田さんがガッカリしたのはいうまでもない。
◆安全運転がかえって危険に
一方、安全運転が裏目に出てしまうこともある。
シホさん(仮名・20代)は「彼氏と車で初めて遠出をした時、安全運転過ぎて逆に冷めてしまったんです」と話す。
その日は、車で2時間ほどの場所に彼の運転で向かっていた。普段から彼の車に乗せてもらうことはあったが、長距離ドライブは初めてだったので、シホさんも楽しみにしていたという。
ワクワクしながら出発し、意気揚々と車を走らせる。だが、このドライブでシホさんは彼の“独特の運転ルール”を知ることになる。
◆そんなに「一時停止」する場所ある?
楽しく車を走らせていたが、次第に異変を感じはじめたシホさん。
「そんなに入り組んだ道じゃないのに、やたらと停止する回数が多かったんです」
そんなに信号あるのかな?と思い顔を上げるが、それらしきものは見えないし、近くに人がいる気配もない。にもかかわらず、何もない場所で相変わらず車は一時停止を続ける。しかも、なかなかの急ブレーキを踏むときもあった。
彼は一体、何とぶつかりそうになっているのか。
◆本末転倒な彼氏のマイルール
さすがに疑問に思い「なんでさっきからブレーキを踏んでるの?」と聞いてみたところ、返ってきた答えは予想外のものだった。
「だって、横断歩道があるでしょ」
彼は人がいようがいまいが、絶対に横断歩道の手前で一時停止をしていたのだ。歩行者が明らかにいないけど止まるのは、「横断歩道の手前は必ず止まらなければいけない」という彼なりのマイルールだった。
万が一に備えるのは素晴らしいことだが、どちらかというと歩行者に気をつけているというより、横断歩道があるかないかを気にする様子だったらしい。だから、ギリギリで急ブレーキを踏んでしまったり、道路ばかりに気をとられて、本当に渡りたい人がいるときに止まれなかったりしていたという。
「安全第一なのはいいんですけど、誰もいないのにこまめにブレーキを踏まれると気になります……。それに、歩行者ではなく横断歩道ばかり見ているし、何のためのマイルールなの?って思ってしまいました」
交通ルールはあくまで、ドライバーや歩行者の安全のためにあるということを、彼が気づいてくれるのを願う。
◆スマートな運転で、楽しいドライブデートを
お互いの関係を深めるチャンスであるドライブデートで、誤った方向にアピールしてしまい、逆に冷められる……なんてことは避けたい。
いいところを見せようと意気込んだり、カッコつけてしまう気持ちも分かるが、気になるお相手とのドライブではスマートでスタンダードな運転を心掛けるのが得策だろう。
<取材・文/帆浦チリ>
【帆浦チリ】
切れ痔と戦うアラサー。料理とおしゃべりが好きで、初対面の人から高確率で「よくしゃべるからB型かと思った」と言われる機関銃A型。X(旧Twitter:@chi2608)で料理や暮らしのことをつぶやいたり、noteで日常であったことを面白可笑しく文章にしている。
そんな「相手との距離を縮めるチャンス」に、できれば知りたくなかった……という場面に出くわしてしまった人もいる。今回は、楽しいはずのドライブデートで思わず気持ちが冷めてしまったエピソードを紹介する。
◆大人の男性!と期待していたはずなのに
森田きみこさん(仮名)は過去に、あまりにもスリリングなドライブデートをしたことがあるという。
「昔、ナンパされた男性とのドライブデートで衝撃的な体験をしました」
当時、森田さんは18歳。たまたま訪れていた飲食店でナンパされ、みんなでカラオケに行ったのがきっかけだそう。お相手は英樹さん(仮名・当時23歳)という、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉似の人だった。
トラックの運転手をしているという彼と森田さんは、出会ってすぐに意気投合。一週間ほど電話でやりとりをした後、英樹さんからデートに誘われ二人きりで会うことになった。
まだ未成年だった森田さんにとって、5歳年上の英樹さんはかなり大人な印象だったという。緊張と期待が入り混じった気持ちを胸に、ロマンチックなドライブへ……となるはずだった。
だが、残念ながら森田さんが抱いた“大人の男性”という英樹さんへの理想は、いとも簡単に破られることになる。
◆もしかしてヤンキーですか?
デート当日。森田さんはまだ車の免許を持っていなかったので、学生寮まで英樹さんが迎えに来てくれることになった。そして、颯爽と現れた彼の車を見て驚愕する。
英樹さんが乗ってきた車はなんと、フルスモークが施された地面すれすれのシャコタン(車高短)クラウンだった。クラウンといえば、いわゆるヤンキーに人気なイメージのある車だ。
「うわーイカついなー……と内心では思ってましたね」
予想外にイカつい車での登場に、一抹の不安を覚えながらも出発。驚くのはまだまだこれからだった。
◆運転方法にア然
ドライブをスタートしてしばらくした頃。交差点の手前で、英樹さんがおもむろにタバコに火を点けていた。だが、どうにもその姿には違和感がある。彼の手元に目を向けると、左手にはタバコ、右手にはライター。うん、普通に両手でタバコを点けている。
(ハンドルは? 運転はどうするの?)
目の前で起きていることが理解できずに混乱する森田さんをよそに、左折のウインカーを出しながら車は交差点に突入。この状況に出くわしたら、森田さんでなくとも「手が塞がっているのに、どうやって交差点を曲がるのか」と考えるだろう。ほとばしる嫌な予感を抑えて、ゆっくりとハンドルに視線を戻す。
両手でタバコ、片足はハンドル。片足は、ハンドル!?
(えー!! この人、足で運転してるやん!!)
驚くべきことに、英樹さんは器用に足でハンドルを回して左折し、涼しい顔で交差点を進んでいったのだ。
会って10分で起きたこの出来事に、まだ免許を持っていなかった森さんは「車って、足で運転できるんだ」と衝撃を通り越して思わず感心してしまったらしい。そして、“大人の男性”に舐められたくなかったので動揺は表に出さず、ポーカーフェイスのいい女モード120%で助手席に座っていたという。
「あのときは衝撃的すぎて分かりませんでしたが、今思えば彼はきっと、カッコつけてあんな無茶な運転をしていたんだと思います(笑)」
結局、命からがら辿り着いた場所はラーメン屋。スリリングドライブの割に合わないディナーと、英樹さんのナナメ上をゆくカッコつけアピールに、森田さんがガッカリしたのはいうまでもない。
◆安全運転がかえって危険に
一方、安全運転が裏目に出てしまうこともある。
シホさん(仮名・20代)は「彼氏と車で初めて遠出をした時、安全運転過ぎて逆に冷めてしまったんです」と話す。
その日は、車で2時間ほどの場所に彼の運転で向かっていた。普段から彼の車に乗せてもらうことはあったが、長距離ドライブは初めてだったので、シホさんも楽しみにしていたという。
ワクワクしながら出発し、意気揚々と車を走らせる。だが、このドライブでシホさんは彼の“独特の運転ルール”を知ることになる。
◆そんなに「一時停止」する場所ある?
楽しく車を走らせていたが、次第に異変を感じはじめたシホさん。
「そんなに入り組んだ道じゃないのに、やたらと停止する回数が多かったんです」
そんなに信号あるのかな?と思い顔を上げるが、それらしきものは見えないし、近くに人がいる気配もない。にもかかわらず、何もない場所で相変わらず車は一時停止を続ける。しかも、なかなかの急ブレーキを踏むときもあった。
彼は一体、何とぶつかりそうになっているのか。
◆本末転倒な彼氏のマイルール
さすがに疑問に思い「なんでさっきからブレーキを踏んでるの?」と聞いてみたところ、返ってきた答えは予想外のものだった。
「だって、横断歩道があるでしょ」
彼は人がいようがいまいが、絶対に横断歩道の手前で一時停止をしていたのだ。歩行者が明らかにいないけど止まるのは、「横断歩道の手前は必ず止まらなければいけない」という彼なりのマイルールだった。
万が一に備えるのは素晴らしいことだが、どちらかというと歩行者に気をつけているというより、横断歩道があるかないかを気にする様子だったらしい。だから、ギリギリで急ブレーキを踏んでしまったり、道路ばかりに気をとられて、本当に渡りたい人がいるときに止まれなかったりしていたという。
「安全第一なのはいいんですけど、誰もいないのにこまめにブレーキを踏まれると気になります……。それに、歩行者ではなく横断歩道ばかり見ているし、何のためのマイルールなの?って思ってしまいました」
交通ルールはあくまで、ドライバーや歩行者の安全のためにあるということを、彼が気づいてくれるのを願う。
◆スマートな運転で、楽しいドライブデートを
お互いの関係を深めるチャンスであるドライブデートで、誤った方向にアピールしてしまい、逆に冷められる……なんてことは避けたい。
いいところを見せようと意気込んだり、カッコつけてしまう気持ちも分かるが、気になるお相手とのドライブではスマートでスタンダードな運転を心掛けるのが得策だろう。
<取材・文/帆浦チリ>
【帆浦チリ】
切れ痔と戦うアラサー。料理とおしゃべりが好きで、初対面の人から高確率で「よくしゃべるからB型かと思った」と言われる機関銃A型。X(旧Twitter:@chi2608)で料理や暮らしのことをつぶやいたり、noteで日常であったことを面白可笑しく文章にしている。