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ゴミだらけの最貧シェアハウスに住む20歳男性の事情「身分証がないのでバイトの応募も賃貸契約もできません」

日刊SPA! 2024年9月1日 15時53分

若者の「見えない貧困」が広がっている。旧来型のネカフェを根城にするケースだけでなく、「限界シェアハウス」が増えたことで路上生活をせずともその日暮らしを続けていけるからだ。
人手不足で就職市場は空前の売り手市場と言われているが、若い人材が引手数多な一方で、貧困から抜け出せない若者も多い。そして、彼らの多くは“親ガチャ”を理由に世代を超えた負の連鎖を断ち切れずにいる……。そんな過酷な環境で暮らす若者を徹底取材。「忘れ去られた若者たち」にスポットを当てる。

◆自分だけの空間はベッド1台分

川崎恵太さん(仮名・20歳)
【現在の状況】シェアハウス生活
【主な収入源】建設作業員
【現在の月収】0~25万円

「このベッドの1台分。それが自分だけの空間です」

川崎恵太さん(仮名・20歳)が住むのは、東京・豊島区にある限界シェアハウス。2階建ての3LDKに14人分の2段ベッドが敷き詰められている劣悪な環境だ。家賃は光熱費込みで3万4000円。玄関にゴミが山のように積まれ、洗濯機やキッチンは汚れたまま放置されており、しばらく使われた形跡はない。

「一応当番はありますけど、誰も守らないですね。入居者は訳アリばかりで、僕は半年いますが、普通の人は耐えられないと思います。仕事は、シェアハウスのオーナーが斡旋する日当1万5000円の現場仕事をやっていますが、不安定で今、3週間先まで仕事がないんですよ」

早くまとまったカネを稼いで引っ越したいというが、そうできない事情がある。

「ここに住む前は、新宿で路上生活をしていました。そのとき、荷物を丸ごと盗まれて、カネも身分証もなくなって。自分が何者かを証明できるものがないので、単発バイトすら応募できず困ってます。当然、賃貸契約もできません」

◆身分証を再発行したくてもできない理由

身分証の再発行には、茨城県の実家に関連資料を取りに帰らなくてはならないが、絶対に避けたいという。

「親には、18歳で家を出るときに『テメェの顔を見なくてせいせいするわ』と捨て台詞を吐いてから会ってません」

家に帰らないのかを尋ねると「帰ったら、冗談抜きで半殺しにされると思う」と表情を曇らせる。

「僕の額に傷があるのわかります? 昔、父親に食器を投げられて流血したときのです」

これまでの進路も、親元から離れたい一心で選んできた。4歳のときに両親が離婚。母が再婚した男は、酒を飲んでは子供相手に暴力を振るった。

「偏差値60の全日制高校への進学も考えたんですが、極力親の世話になりたくなくて、バイトと両立できる夜間の定時制高校を選びました。就職を意識して、ファミレスやコンビニとか、いろんなバイトをやりましたね。卒業後は、学校の先生の勧めもあって、求人倍率の高い寮付きの鉄鋼加工会社に入社できました」

◆退職届を出したのにもみ消されて…

だが、この就職がそもそもの失敗だったと語る。

「常態化していたパワハラのストレスと、工場に空調がないせいで夏に体調を崩し1日だけ休んだんです。そうしたら上司が社員寮に押しかけ出社を強制してきた」

満身創痍の川崎さんにさらに追い打ちをかける出来事が。

「心身ともに限界で退職届を出したのに、それすらもみ消されて、無断欠勤扱いです」

仕事を飛ばした悪者に仕立て上げられ、耐えきれなくなった川崎さんはすぐに寮を飛び出してホームレスになった。

カネも仕事も、身分証もない。そのうえ親も頼れないとなれば、這い上がる道は険しいと痛感しているという。

「でも、ここの住人はもっとひどい境遇の人もいるんで。弱音ばかり言ってられません」

親に仕事に……ガチャ失敗は一度とは限らない。

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[親ガチャ貧困]の実態]―

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