Infoseek 楽天

「コンビニのオーナー」として独立したところで…待ち受ける「従業員の確保・管理」問題

日刊SPA! 2024年9月3日 8時51分

公共料金の支払い、宅配便の手配、通販で買った商品の受け取り……かつて“食品や日用品を買う場所”だったコンビニは、顧客のニーズに応えるべく、年々進化を重ねた結果、多岐に渡るサービスに対応するようになった。しかも、24時間営業だ。それが全国で5.7万軒もあれば、毎日のように何かしらの事件が起こっても何ら不思議ではない。そこで、現役のコンビニ従業員兼ライターの筆者が体験した出来事を赤裸々に紹介していく。
今回のテーマは「コンビニオーナーの実情」だ。夢を持ったサラリーマンがオーナーという響きにあこがれ、独立するケースは珍しくない。ただ、うまくいっているオーナーもいる一方で、うまくいっていないオーナーももちろん存在する。

いかにコンビニのオーナーが難しい立場であるかが分かるはずだ。

◆骨が折れる「従業員の確保・管理」問題

コンビニオーナーは、「一国一城の主」として独立した経営者のように思えるが、実際には多くの苦労が伴う。特に難しいのは、人材の管理全般だ。さまざまな理由での欠勤に対応するためには、十分な余力と仕組みが必要。

例えば、当日欠勤の際でも従業員同士でカバーできれば理想的ではあるものの、現実的には難しい。他店に応援要請せざるを得ない場合も少なくない。さらに流行り病が原因で、長期休暇を余儀なくされてしまう場合もある。

理不尽な客とのトラブルも日常茶飯事で、精神的にも大きな負担がかかる。現場にベテラン従業員や、副店長という右腕的な人材がいる時間帯であればスムーズに解決できるが、毎回そううまくはいかないものだ。

本部と電話対応を「まっとう」にやり取りできるような従業員がいれば問題ないが、慣れていない従業員の時間だとホットラインすら役に立たない。オーナーに直電しても連絡がつかないともなれば、レジには長い行列ができてしまう。

◆応募者の本音を見抜くのは難しいからこそ…

「24時間365日」経営を続けるために重要なのは優秀なスタッフの存在。なのだが、応募者の多くはコンビニを「単なるバイト先」と見ており、「この店で頑張ろう」と思っての応募は少ない。夜勤で応募する人は昼間に本業を持ち、収入を補うため。学生であれば「適当に金を稼げばそれでいい」と思っていそうだ。

そして、短時間の面談や面接のみでは応募者の本音を見抜くのは難しい。今の若い世代は積極的にコミュニケーションを取ろうとしない。休憩中はスマホに夢中だ。そのため、オーナーもグループLINEでのやり取りがメインとなり、従業員が不満を抱えていることに気付いた時には手遅れになる。日々限られた時間でいかにコミュニケーションを取れるかが、定着に大きく影響するのだ。

◆客層が悪いと「従業員の定着も難しくなる」

求人が「でかでか」と告知してある店舗は要注意。特に、「全時間帯募集・短時間でもOK・週2日からでも」といった文言が踊っている場合はなおさらだ。

内部的な要因として考えられるのは、人間関係だ。留学生とベテラン従業員とのマインドの違い、ベテラン従業員が新人従業員と組まされ、ミスの連発を指摘された新人従業員が嫌気をさして辞めるなんてことは日常茶飯事。とはいえ綱渡りのようなシフトを組まざるを得ないので、経験則で予測できても不可避の事態なのだ。

万年人出不足になってしまうのは、オーナーの力量のせいだけではない。外部的要因として、立地が大きく絡んでくる。開店前には予想が付きにくい客層の問題だ。こればかりは、開店してみないと分からない。

客層が悪ければ店は疲弊し、従業員の定着も難しくなる。せっかく育てた従業員が、迷惑客が原因でフェードアウトしていってしまうのだ。

◆客を客と思っていないオーナーも

店に来ない、来ても現場に興味を示さない……なかには、現場仕事をしたくないオーナーも存在する。

日常業務を丸投げにし、オーナー業だけ淡々と行う。そういうオーナーの店舗は、必然として売り上げが下がっていくわけだが、本部という看板があるおかげで、「とりあえず」客は絶えることがない。が、離婚寸前の夫婦と同じようにいずれ不平不満が募っていく。そして、気付いた時には、現場が崩壊寸前なんていうことにもなりかねない。

また、客を客と思っていないオーナーも残念ながら存在する。過去の本部担当社員から聞いた話なのだが、「オレがオーナーだ!」と言わんばかりに、なんの害も及ぼさないお客様に対しても高圧的に接客。当然もめ事は多かった。もちろん、本部側も黙っていられるわけがなく、なんらかの条件をつけて改善を要求するわけだ。それでも最悪聞き入れてもらえない場合には、オーナー権利をはく奪したケースもあったそうだ。

コンビニオーナーは過酷ではあるものの、うまくいけば多店舗展開も可能だ。成功を収めているオーナーは人という大事な財産をいかにうまく使ったうえで、来店してくれるお客様にいかに満足してもらうか執心している。逆に言えば、そうでなければ先細りする未来しか見えない。

<TEXT/たける>

【たける】
サービス業一筋29年。大学1年生の時に大手ファーストフード店でアルバイトをスタート。その後中退し、中途入社。勤続21年ののち、コンビニ業界へ。

この記事の関連ニュース