Infoseek 楽天

17軒の“事故物件”に住んだ芸人が語る、本当に恐かった話「家賃500円の物件で、なぜか一家全員が…」

日刊SPA! 2024年9月3日 15時54分

 住人の自殺、他殺、孤独死によって事故物件となった家ばかりに住み続ける、芸人の松原タニシさん(@tanishisuki)。その体験を綴った『事故物件怪談 恐い間取り』シリーズは3冊を数え、2024年6月には『恐い怪談』を上梓するなど、著作家としても活躍している。
“事故物件住みます芸人”として有名になったタニシさんだが、今も事故物件に住んでおり、なんと通算17軒目になるという。そんなタニシさんに、オンラインでインタビューを行った。前編では本当に恐かった物件を、続く後編では、タニシさんが訪れた心霊スポットで起きた怖い話などを伺う。

◆10年芸人やって全く仕事がなかった

――今、15軒目の事故物件から中継とのことですが、そうした物件に住み始めたそもそもの経緯はなんでしょうか?

松原タニシ(以下、松原):10年以上前ですが、『北野誠のおまえら行くな。』というテレビ番組があって、そこのトークイベントに若手芸人として登壇し、所属する松竹芸能の養成所の近くにあって、住んだ若手芸人が軒並みおかしくなっていくというマンションの話をしました。

 養成所に来なくなったと思って様子を見に行ったら、真っ暗な部屋で体育座りしていたとか、Tシャツをビリビリに破いていたりとか……。

 そのマンションは、1階の窓全部に鉄格子がはまっていて、廊下には赤や青のビニールテープで導線が貼られていて、元は病院だったのではと思われる雰囲気がありました。話し終えたあと、その部屋に自分が住むように言われ、躊躇しましたが、それまで10年芸人をやっても、全く仕事がなかったので、やってみるしかないと思いました。

◆“一反木綿”が出た翌日に車にはねられる

松原:結局、その部屋には住めず、別の事故物件に住むことになるのですが、すごく恐かったです。怪しいことも結構起きました。例えば、知り合いから電話がきて話していたら、電波がすごい途切れて、相手は女の人の歌声が聞こえるって言ってくるのですね。こちらは1人しかいないのにです。

 室内は、定点カメラでずっと撮影していたのですが、夜中にいわゆるオーブと呼ばれる白い物がいっぱい飛んでいました。肉眼では見えず、カメラだと撮れるのですが、そのオーブがだんだん何か意思を持つようになってきたのです。ある日、タオルというか一反木綿のような大きなものが、私の前を通り過ぎていくのが映っていました。

 次の日、マンションの前に停めてあった自転車にまたがったときに、すごいスピードのスポーツカーがどんとぶつかってきて、投げ飛ばされたのですね。大ケガは負わずに済んだのですが、引越しを手伝った後輩芸人の2人も別々の場所で、同じ頃にひき逃げされていたことを後になって知りました。これが1軒目の事故物件です。

◆殺人現場であやうく閉じ込められそうに…

――今まで住んだ物件の中で、一番印象に残っているのはどこでしたか?

松原:14軒目となる、弟が兄を撲殺して、弟も自殺したという一軒家です。機動隊が突入する騒ぎにもなりましたが、検死後1年ほど放置されていました。きちんと清掃やリフォームをする前の短期間住むことになりました。入居時は、玄関にいきなり乾いた血が残っていて、室内のほうぼうに血痕が飛び散っているようなところです。

 また、2階のトイレに大きな収納スペースらしき小部屋が併設されていました。最初の頃は電気も通ってなかったので、懐中電灯を持ってそこに入りました。見ると、壁じゅうに手形がついていました。

 そこに入って扉を閉めたら、内側からは開けられないことに気づいて、焦りました。扉の隙間のラッチに細いものを差し込んで、なんとか開けられたのですが、あのときは幽霊とは別の意味で恐怖心にとらわれました。3か月住んで結局、心霊現象自体はなかったのですが、惨劇の後とは、こういう状態なのかと心に迫るものがありました。

◆なぜか家賃が500円の物件にて…

――『事故物件怪談 恐い間取り』シリーズには、他の人たちが住んだ事故物件のエピソードもいろいろ書かれていますが、ひときわ恐かった話を1つ挙げていただけますか?

松原:3か月限定で月々の家賃が500円という3LDKのマンションです。母親と、長男、長女、次女、次男という家族構成で、長女から聞いた話です。長女は嫁いで別の家に住んでいたので、母親と3人の子が入居しました。

 もともと母親は、病気で入院していました。退院しても自宅介護が必要な状態で、資金難であるなか即入居したのですね。でも入居数日で母親は、容体が悪化して亡くなりました。残る3人で住み続けたのですが、男性の唸り声が聞こえるなど怪奇現象が頻発しました。

 さらに、お酒をまったく飲まない40代の長男が、飲酒するようになり、キャバクラにも通うなど豹変しました。なんかヘラヘラして、まともに会話もできなくなったそうです。ある日、その長男がトラックにはねられ頭を打ち、病院に運ばれました。事故の影響がないか脳を検査すると、80代の高齢者のように萎縮していると診断されました。

 とりあえず生活には支障はないとのことで退院しましたが、ほどなく転勤して家を去ります。

◆そして一家全員がおかしくなった

――家族は、あきらかにいわくつき物件と認識していたと思いますが、残った次女と次男は、どうなったのでしょうか?

松原:次女も酒を飲まないはずが、なぜか仕事帰りに缶チューハイを買って、一気飲みしたのです。それで具合が悪くなって、たまたま通りがかった50代の男性に介抱され、そのまま男性の家まで行ってしまうのですね。朝になって帰ってきたのですが、今度はその男性が、毎晩ストーカーをするのです。

 次男も警戒していたのですが、ある日、次女は連れ去られてしまいます。次男は警察に通報するのですが、次女から連絡が来て、「私たち結婚することにしました」って、そのストーカーと一緒に暮らし始めるのですね。

 その次男もおかしくなって、仕事に朝行って夜帰ってきたら、外を徘徊するようなるのです。さらに、もともと同居していなかった長女に、夜中に電話してきて「金貸してくれ」と言ってくるようになります。

 そんなおり、転勤で遠くにいた長男が帰ってきて、「今すぐ引っ越しするぞ」と。転勤で離れている間に、まともになって、あの家がおかしいと気づいたのです。でも次男が、「いや、引っ越ししたくない」と言い張って、長男も1か月ぐらい滞在すると、またお酒飲みだして、「ここがいいな」と言って、そのまま住み続けるようになりました。

 実は、この話をしてくれた長女から私に、家を引き払い次第、ここに住まないかと勧めてきたのですね。でも兄弟があんなふうになって、話が流れてしまいました。もし、そこが空いて私が住んでも、これまでの経験で耐性がついてしまってケロッとしているかもしれませんが、普段お酒は飲まないので、吞兵衛になってしまったら嫌だなあと。ここに限らず、事故物件に住んで、住人が豹変してしまう例はけっこう見聞きします。

◆なぜかくじ運が良くなる物件

――逆に、住み始めたらどんどん運勢が上がったとか、出世したとかといった、プラスの方向に豹変した例はあるのでしょうか?

松原:あります。私が取材した女性ですが、事故物件がどうか不明ですけど、マンションに住み始めて毎晩金縛りにあうと。妹さんから電話で、「事故物件じゃないの?」って言われたけれど、住み続けました。その妹さんが、マンションに来ることになったのですが、なぜか迷って、すぐそばまで来たとことで事故にあってしまいます。

 ところが、ここに住んでからくじ運がすごいのですね。ふと、近所の宝くじ売り場で宝くじを買ったところ、最後の一桁だけが一等賞と違う前後賞に当たって5000万円獲得します。それ以外にもハローキティのくじの1等が2回、ロト6も30万当たるなどしました。

 でも、金縛りがつらすぎて、引っ越しました。それ以来、金縛りをしなくなりましたが、くじ運もなくなったそうです。

<取材・文/鈴木拓也>

【松原タニシ】
1982年4月28日生まれ。兵庫県神戸市出身。松竹芸能所属のピン芸人。現在は「事故物件住みます芸人」として活動。2012年よりテレビ番組「北野誠のおまえら行くな。」(エンタメ~テレ)の企画により大阪で事故物件に住みはじめ、これまでに17軒の事故物件に住む。ラジオ関西「松原タニシの生きる」、MBSラジオ「松原タニシの恐味津々」、CBCラジオ「北野誠のズバリ」などレギュラー出演中。最新の著書は『恐い怪談』(二見書房)。
X:@tanishisuki
Instagram:@tanishi_m
YouTube:「松原タニシch」

【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki

この記事の関連ニュース