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“町の喫茶店”が減少の一途をたどる中、スタバ・コメダ・ドトールの「大手3チェーン」が店舗拡大を続けるワケ

日刊SPA! 2024年9月4日 15時53分

 昔ながらの町の喫茶店、大手チェーンが展開するコーヒーショップ、スイーツが人気の喫茶店、お洒落な雰囲気のカフェなど、時代の流れに応じて多様化する喫茶店のスタイル。喫茶店の経営は、定年後のセカンドキャリアや若者の起業の手段として選ばれることも多い。
 全日本コーヒー協会によると、国内の喫茶店の事業所数(個所)は5万8669店(2021年)で、 1981年をピークに減少の一途にあるようだ。

 日本フードサービス協会がまとめた外食産業市場規模推計によると、喫茶店の市場規模は8055億円(2020年)だ。2012年以降、拡大基調となっていたが、コロナ禍の外食不況に連動して急減した。昨年(2023年5月)、感染症法上の位置づけが5類に移行し、人流が復活し、年間を通して外食需要の回復基調が継続したことで、外食の全体売上は前年比114.1%、コロナ前の2019年比107.7%となった。

 喫茶店の市場動向を分析すると、売上120.6%、客数109.3%、客単価110.2%と前年比で大きく伸ばしている。ただし、店舗数は100.2%と横ばいである(日本フードサービス協会、2024年1月発表)。地域のコミュニティとして、また待ち合わせのために利用されてきた町の喫茶店が、スマホの普及や店主の高齢化で閉店する店が増えている。

◆経営が厳しい中での喫茶チェーン店市場

 世界のコーヒー収穫量の約35%を占める世界最大のコーヒー生産国であるブラジルの環境問題、世界的な需要の高まり、円安などでコーヒー豆の価格が高騰中で、今後も続く予想であり、経営環境はあまりよくないのが実情だ。そういった厳しい環境の中、スターバックス、コメダ、ドトールなど大手は成長戦略に工夫が求められている。

 今回はコーヒー市場の動向と店舗数1位スタバ(1948店舗)、2位ドトール(1067店舗)、3位コメダ珈琲店(1046店舗)の大手3社の違いを調べてみたいと思う。コメダ珈琲店とドトールはフランチャイズで多店舗展開をしているが、スターバックスは直営店での展開だ。

 他人資本を有効に活用し、リスクを抑えながら積極展開しているコメダ珈琲店、ドトールに対し、管理統制を徹底して店舗を束ねるスタバは、店舗開発や運営マネジメントに関する基本的考えが異なるようだ。

◆コメダ珈琲店:経営効率とくつろぎの演出

 コメダ珈琲店は1968年創業で、コメダホールディングスが傘下に持つ4社の連結子会社のひとつであるコメダ株式会社が運営している。2016年6月29日に東証プライム、名証プレミアに上場した店舗数・売上に関して日本最大級のフルサービス型喫茶店チェーンである。

 お客様のくつろぎにこだわった店づくり・独自製法と材料にこだわった自社製造商品・独自のFC運営システムなどといった強みにより、外食市場における独自のポジションを確立し、FC加盟店を中心に、全国でフルサービス型喫茶店の運営している。

 総店舗数1046店舗(2024年7月現在)を展開しているが、直営店舗は28店舗のみだ。エリアフランチャイジーに運営を委託し、フランチャイザーとして加盟店指導に徹して、食材卸などを収益の柱としている。コーヒーの提供方法を工夫し、モーニングやランチの調理手順の効率化を徹底している。そういった工夫により、厨房スペースを縮小し、営業スペースにその分を広く配分している。これらで、経営効率の向上とくつろぎの演出との両立性が確保されている。

◆パンも原則、自社製造

 コメダ珈琲店の業績は売上432億円、営業利益87億円、営業利益率20.2%(2024年2月期)の高収益状況で、自己資本比率も41.9%と財務も安定している。今年度(2025年2月期)に入っても売上(FC向け卸売売上)3月115.4%→4月112.8%→ 5月100.4%→6月117.8%→7月102.1%と順調に前年を上回っている。

 モーニングメニューやランチメニューなどフードメニューの充実さも話題であり、郊外型店の週末は常に朝から駐車場は満車状態である。パンも原則、自社製造だ。コメダ珈琲店は、お店が自宅のリビングルームの延長線上のように元気や英気を養い誰もがくつろげる「街のリビングルーム」を目的に運営されている。

 だから、単に体を休めるだけでなく、心まで安らげる、くつろぎの提供に向け、おいしさ・おもてなし・居心地に、徹底的にこだわった店であり、それらが圧倒的な集客力になっているようだ。

◆スターバックス:直営方式にこだわる

 アメリカ発祥のコーヒーチェーンで、日本法人は1995年10月に設立され、来年で30周年を迎えるスターバックスコーヒージャパン株式会社。1996年8月、東京・銀座に日本1号店をオープンしてから、現在(2024年6月時点)は総店舗数1948店舗(ライセンス店舗は64店舗)のセルフ型の巨大喫茶店チェーンで、店舗数は最も多い。ライセンス店舗というのは直営で出店が困難な特殊な要因の商圏や立地などに限り契約を結んでいる。

 スターバックス自体は1971年にシアトルでコーヒー焙煎の会社としてスタートし、世界83か国に3万2660店舗を展開しているが、内訳は直営が1万6637店、FCが1万6023店だ。日本は直営店がほとんどだ。なぜ、スターバックスは直営方式にこだわるかの理由は、スタバの理念やコンセプトを共有し、チェーンとしての統一性の順守、ブランド価値と提供品質の維持強化を目的としているからである。

 フランチャイズシステムを採用すると、短期間でかつ低コストでの積極展開が可能で、規模の経済が発揮できるメリットがあり、また加盟金などの収入も得られる。しかし、加盟店は本部の理念やコンセプトを守るより、自店の儲けを優先するオーナーが存在するから、全体の足を引っ張りかねないのも実情だ。

◆ブランド価値を守るための管理統制

 筆者も外食チェーンでFC運営部に所属し、デメリットの多さも経験してきた。海千山千の人が集まったチェーンで統一性を遵守させるのがいかに大変か思い知ったものだ。直営店を抱えるのは、固定費が相当増え、損益分岐点も高くなるなど経営リスクもあるが、全体のブランド価値を守るためには、直営方式で管理統制の適度な厳格なほうがいい。
 
 業績は2015年に非上場となっており公開されていないが、最後の決算報告であった2014年度を見ると、売上1257億円、営業利益110億円、営業利益率8.7%と損益状況で、費用構造を見るとFLコスト(需要指標である原価(26.2%)+人件費(26.7%)が52.9%と標準値である60%を7.1%下回っている。賃料(R)も11%と低位水準でFLR比率は、標準値を大きく下回り、採算性が高い費用構造になっている。財務の安定性も自己資本比率65.4%と高く、年々盤石化してきているようだ。

 メニューを見ると、コーヒーはもちろん、フラペチーノなどやケーキ・クッキー・ドーナツなどデザートメニューも充実しており、通りに面したオープンテラスなど、お洒落な雰囲気でステータスを感じながら、ひと時を過ごせる店である。

◆ドトールコーヒーショップ:創業62年で財務は盤石

 ドトールは、1962年設立で、今年62年目の企業である。2007年に「飲と食」の融合により新しい外食文化を社会に発信するため、日本レストランシステム株式会社と株式会社ドトールコーヒーが経営統合し、株式会社ドトール・日レスホールディングスを設立した。ドトール・日レスHDは、グループ全体(傘下のドトールや日レスなど7社)の最適化をはかるための企画・運営・管理等を行い、グループ全体を統括している。

 ドトールは、コーヒー豆の生産・調達から焙煎・卸・小売りまでを自社で一貫して行うことで高い品質を維持し、多様な業態店を展開し、コーヒーを中心に多様なニーズに対応している企業である。総店舗数1274店舗で、特に駅前やビジネス立地に出店し、滞留時間の短く、客席回転率が高い効率経営を実現しているセルフ型コーヒーショップである。

 売上は772億円、原価率は卸小売り事業があるため、50.3%と高めだ。そのため、営業利益は30億円、営業利益率3.9%と、収益性はそれほど高くないが、自己資本比率は71.8%と財務状態は盤石である。

 ちなみに、株式会社ドトール・日レスホールディングスの同じ傘下であり、提携関係を強化している日本レストランシステム株式会社は「洋麺屋 五右衛門」「星乃珈琲店」「俵屋」など多業態型直営レストランチェーンを中心に展開しているが、自己資本比率87.7%と相当な財務基盤である。グループの店舗数の内訳は中核ブランドのドトールが1067店舗(FC809店舗、直営258店舗)、エクセルシオールカフェが122店舗(FC16店舗、直営106店舗)、その他85店舗である。

◆モーニングで差別化を図るコーヒー店

 喫茶店のモーニング文化で有名なのは名古屋だが、今はどこの喫茶店も当然のように提供しており、色々と工夫して差別化を図っている。それを目当てに朝から常連が来店しており、店は地域コミュニティの場として存在感を発揮している。同じコーヒー1杯の値段でトースト、ゆで卵、サラダなどが付いてくるなら、注文しないともったいないだろう。

 モーニングサービスが増大する理由は、需要面の事情として、最近は朝食を摂ることが健康に良いと見直されており、朝食抜きの生活だった人のモーニングを注文するケースも増えているそうだ。供給面の事情として、喫茶店・コーヒーチェーン・ファストフード・ファミレス・ホテルバイキングなどが主な提供店だったが、今は多様な業種業態が伸び悩む売上を拡大させるため、朝食マーケットに参入していることもある。

 その結果、内容が進化し、ここまで出すかとコスパ最強の店がネットで紹介され話題になり、さらに朝食需要への意識が高まっているようだ。喫茶店の独占場ではなくなったが、モーニングは喫茶店という意識は相変わらず、根強くあるから、今後も売上と顧客の拡大に向け力を注いで欲しい。

<TEXT/中村清志>

【中村清志】
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan

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