ハローキティ、マイメロディ、リトルツインスターズ、シナモロールなど、だれもが目にしたことのあるキャラクターを生み出し続けている日本企業サンリオ。そんなサンリオの株価が実は絶好調であり、多くの投資家からも注目されていることをご存知でしょうか?
◆営業利益が初めて100億円を突破
実際、2025年3月期第1四半期(直近の四半期決算)において、サンリオ(8136)は売上高289億円(前年同期比42.3%増)、営業利益107億円(前年同期比80.2%増)という好調な業績を上げました。ちなみに四半期で営業利益が100億円を超えたのは同社にとって初めてのことです。
この結果、2024年8月16日の東京株式市場では、サンリオ株が連日続伸し、4013円まで上昇しました。これは、直近の四半期決算の結果だけでなく、岡三証券がサンリオの業績予想を上方修正し、目標株価を2570円から3700円に引き上げたことが、結果的に株価上昇の追い風となったようです。
そこで今回は、サンリオ株の過去最高値更新の理由、ビジネスモデルと業績、北米市場でのデジタル戦略やライセンス収入の拡大など、サンリオの強みを解説し、投資家にとっての魅力とリスクを現状の市場環境を踏まえて分析していきたいと思います。
◆強み1:物販事業の成功とインバウンド需要の増加
サンリオの物販事業は、特に「ハローキティ」50周年や人気投票イベント「2024年サンリオキャラクター大賞」といった施策が大きな影響を与え、国内外からの顧客増加に成功しました。
直近の四半期決算における物販事業の売上高は99億1500万円に達し、前年同期比で19.2%増加しました。特に注目したい数字としては、国内のサンリオ店舗での外国人観光客の売上高シェアが38.0%に達しており、これは前年同期比で大幅な伸びを示しています。
このインバウンド需要の増加は、特に店舗での売上拡大に大きく貢献しています。これこそ、サンリオがグローバルブランドとしての地位を強固にしており、訪日外国人の増加が売上に貢献しているといえます。
◆強み2:ライセンス事業の躍進
サンリオのライセンス事業は、複数キャラクター戦略が功を奏し、すべてのカテゴリーで前年を上回る成績を収めています。直近の四半期決算におけるライセンス事業の売上高は40億9900万円に達し、前年同期比で39.0%の増加を記録しました。
特に、大手アパレルブランドとのコラボレーションが成功を収めており、他社キャラクターとの競争の中でもサンリオキャラクターの人気は依然として高い水準を維持しています。
今年はさらにハローキティ50周年を記念して、サンリオとユニクロがコラボしたコレクションが9月9日から販売される予定です。このコラボ戦略は、サンリオが国内外でのブランド認知度を高めるための重要な手段であり、今後もさらなる知名度向上が期待されます。
近年ではデジタルコンテンツやゲーム事業への進出も進めており、これが新たな収益源として期待される事業です。
◆強み3:海外事業の貢献とロイヤリティ収入の増加
サンリオの日本セグメントにおけるもうひとつの重要な要素は、海外事業からのロイヤリティ収入の増加です。直近の四半期決算における海外事業の売上高は52億1900万円に達し、前年同期比で101.1%の増加を記録しました。また、営業利益も105.9%増加し、50億1400万円に達しました。
海外の各地域での業績が好調に推移しており、これがサンリオの売上高と営業利益に大きく貢献しています。
たとえば北米市場におけるデジタル戦略とライセンス収入の拡大も、サンリオの業績向上に大きく貢献しています。特に北米市場では「価値創造サイクル」と呼ばれる施策が成功を収めており、アパレルや玩具、ヘルス&ビューティなどのカテゴリーでの売上が急増しています。これにより、北米市場での営業利益は前年同期比で100.9%増加しました。
また、サンリオキャラクターを活用したデジタルゲーム「サンリオワールド」は、若年層から高い評価を得ており、今後の収益拡大が期待されています。
◆グローバルSNSは7600万人がフォロー
そのほかの地域としては、中国市場でも物販事業とライセンス事業の両方で顕著な成長が見られます。特に中国国内でのブランド価値向上施策が軌道に乗り、サンリオキャラクターの人気が急速に広がっています。
さらに、偽造品対策を強化することで、ブランドの信頼性が向上し、売上高は前年同期比で61.1%増加、営業利益も87.5%増加しました。サンリオは今後も中国市場での物販拡大に力を入れる計画であり、特に大都市圏におけるサンリオストアの展開を積極的に進めることで、さらなる成長が期待されます。
またサンリオのグローバルSNSのフォロワーが約7600万人ほどに広がっており、ファン層が確実に世界中で広がっていることも、サンリオの事業成長を占う上でプラス材料です。
◆強み4:サンリオピューロランドとハーモニーランドの成長
サンリオピューロランド(東京都多摩市)とハーモニーランド(大分県)の両テーマパークも、日本セグメントの売上高と営業利益の成長に重要な役割を果たしています。
直近の四半期決算におけるサンリオピューロランドの売上高は27億7700万円、営業利益は5億3700万円に達し、それぞれ前年同期比で20.0%および29.3%の増加を記録しました。これらの結果は、サンリオピューロランドがコロナ禍からの回復を遂げ、再び多くの来場者を引き寄せていることを示しています。
ハーモニーランドも、シーズンイベントの成功により、売上高は6億3100万円、営業利益は600万円でした。前年同期比では売上高は+10.8%でしたが、営業利益は−81.2%と減少しています。これは、園内のショップのリニューアル工事などによるものと推測されます。
特に、夏季のイベントやシーズンごとの特別プログラムが家族連れや観光客に支持されており、来場者数の増加が売上高の伸びに貢献しています。
◆強み5:サンリオの魅力とリスク
サンリオの日本セグメントの業績が顕著に成長している中で、投資家にとっての魅力とリスクを客観的に評価することが重要です。魅力的なポイントとして、サンリオの強力なブランド力と成功したライセンス事業が挙げられます。特に、複数キャラクター戦略や北米・アジア市場での成功は、今後も安定した収益をもたらす可能性が高いでしょう。
また、サンリオピューロランドやハーモニーランドのテーマパーク事業が再び成長軌道に乗っている点も、投資家にとって安心材料となります。さらに、サンリオの配当利回りは約1%あり、安定した配当を受け取りながら長期的な株価成長を期待する投資家にとっても魅力があるといえるでしょう。
その一方、リスクとしては、現在の株価がすでに高値圏にあることが挙げられます。特に、株価が過去最高値を更新し続けている中で、今後の上昇余地が限定的である可能性があります。また、サンリオの業績が予想通りに進まない場合、株価下落のリスクが存在します。
さらに、北米やアジア市場での競争が激化した場合、サンリオの成長にブレーキをかけるリスク要因となり得ます。競合他社との競争が続く中で、サンリオがどのようにして競争優位を維持し、さらなる成長を遂げるかが今後の注目ポイントとなるでしょう。
◆投資家の視点で見るサンリオ
投資家の視点で投資判断する場合の魅力として、サンリオが手掛けるキャラクタービジネスは景気に左右されにくい特徴が挙げられます。一般的に、趣味や娯楽に関連する出費は、生活費とは別枠で考えることが多く、景気の変動による影響を受けにくい傾向にあるからです。
サンリオが展開するキャラクターグッズやライセンス事業もこの特徴を持っており、キャラクター商品は、消費者にとって日常生活の癒しや楽しみを提供する存在として、景気の良し悪しに関わらず支持を集め続けています。
こうした要因から、ファンの心を鷲掴みし続ける限り、サンリオの株式は安定的かつ成長が期待できるため、投資対象としても検討の余地があり、魅力的だと判断できると思います。なにより景気の変動に強く、消費者心理に深く根ざしたビジネスモデルを持つサンリオは、長期的な投資先として注目に値する企業だと筆者は考えます。
日常生活の中でいかにユーザーの「サンリオ時間」を増やせるのか、サンリオの今後の動向に注目しつつ、さらなるグローバルカンパニーへと成長することが期待されます。
<TEXT/鈴木林太郎>
【鈴木林太郎】
金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数
X(旧ツイッター):@usjp_economist
◆営業利益が初めて100億円を突破
実際、2025年3月期第1四半期(直近の四半期決算)において、サンリオ(8136)は売上高289億円(前年同期比42.3%増)、営業利益107億円(前年同期比80.2%増)という好調な業績を上げました。ちなみに四半期で営業利益が100億円を超えたのは同社にとって初めてのことです。
この結果、2024年8月16日の東京株式市場では、サンリオ株が連日続伸し、4013円まで上昇しました。これは、直近の四半期決算の結果だけでなく、岡三証券がサンリオの業績予想を上方修正し、目標株価を2570円から3700円に引き上げたことが、結果的に株価上昇の追い風となったようです。
そこで今回は、サンリオ株の過去最高値更新の理由、ビジネスモデルと業績、北米市場でのデジタル戦略やライセンス収入の拡大など、サンリオの強みを解説し、投資家にとっての魅力とリスクを現状の市場環境を踏まえて分析していきたいと思います。
◆強み1:物販事業の成功とインバウンド需要の増加
サンリオの物販事業は、特に「ハローキティ」50周年や人気投票イベント「2024年サンリオキャラクター大賞」といった施策が大きな影響を与え、国内外からの顧客増加に成功しました。
直近の四半期決算における物販事業の売上高は99億1500万円に達し、前年同期比で19.2%増加しました。特に注目したい数字としては、国内のサンリオ店舗での外国人観光客の売上高シェアが38.0%に達しており、これは前年同期比で大幅な伸びを示しています。
このインバウンド需要の増加は、特に店舗での売上拡大に大きく貢献しています。これこそ、サンリオがグローバルブランドとしての地位を強固にしており、訪日外国人の増加が売上に貢献しているといえます。
◆強み2:ライセンス事業の躍進
サンリオのライセンス事業は、複数キャラクター戦略が功を奏し、すべてのカテゴリーで前年を上回る成績を収めています。直近の四半期決算におけるライセンス事業の売上高は40億9900万円に達し、前年同期比で39.0%の増加を記録しました。
特に、大手アパレルブランドとのコラボレーションが成功を収めており、他社キャラクターとの競争の中でもサンリオキャラクターの人気は依然として高い水準を維持しています。
今年はさらにハローキティ50周年を記念して、サンリオとユニクロがコラボしたコレクションが9月9日から販売される予定です。このコラボ戦略は、サンリオが国内外でのブランド認知度を高めるための重要な手段であり、今後もさらなる知名度向上が期待されます。
近年ではデジタルコンテンツやゲーム事業への進出も進めており、これが新たな収益源として期待される事業です。
◆強み3:海外事業の貢献とロイヤリティ収入の増加
サンリオの日本セグメントにおけるもうひとつの重要な要素は、海外事業からのロイヤリティ収入の増加です。直近の四半期決算における海外事業の売上高は52億1900万円に達し、前年同期比で101.1%の増加を記録しました。また、営業利益も105.9%増加し、50億1400万円に達しました。
海外の各地域での業績が好調に推移しており、これがサンリオの売上高と営業利益に大きく貢献しています。
たとえば北米市場におけるデジタル戦略とライセンス収入の拡大も、サンリオの業績向上に大きく貢献しています。特に北米市場では「価値創造サイクル」と呼ばれる施策が成功を収めており、アパレルや玩具、ヘルス&ビューティなどのカテゴリーでの売上が急増しています。これにより、北米市場での営業利益は前年同期比で100.9%増加しました。
また、サンリオキャラクターを活用したデジタルゲーム「サンリオワールド」は、若年層から高い評価を得ており、今後の収益拡大が期待されています。
◆グローバルSNSは7600万人がフォロー
そのほかの地域としては、中国市場でも物販事業とライセンス事業の両方で顕著な成長が見られます。特に中国国内でのブランド価値向上施策が軌道に乗り、サンリオキャラクターの人気が急速に広がっています。
さらに、偽造品対策を強化することで、ブランドの信頼性が向上し、売上高は前年同期比で61.1%増加、営業利益も87.5%増加しました。サンリオは今後も中国市場での物販拡大に力を入れる計画であり、特に大都市圏におけるサンリオストアの展開を積極的に進めることで、さらなる成長が期待されます。
またサンリオのグローバルSNSのフォロワーが約7600万人ほどに広がっており、ファン層が確実に世界中で広がっていることも、サンリオの事業成長を占う上でプラス材料です。
◆強み4:サンリオピューロランドとハーモニーランドの成長
サンリオピューロランド(東京都多摩市)とハーモニーランド(大分県)の両テーマパークも、日本セグメントの売上高と営業利益の成長に重要な役割を果たしています。
直近の四半期決算におけるサンリオピューロランドの売上高は27億7700万円、営業利益は5億3700万円に達し、それぞれ前年同期比で20.0%および29.3%の増加を記録しました。これらの結果は、サンリオピューロランドがコロナ禍からの回復を遂げ、再び多くの来場者を引き寄せていることを示しています。
ハーモニーランドも、シーズンイベントの成功により、売上高は6億3100万円、営業利益は600万円でした。前年同期比では売上高は+10.8%でしたが、営業利益は−81.2%と減少しています。これは、園内のショップのリニューアル工事などによるものと推測されます。
特に、夏季のイベントやシーズンごとの特別プログラムが家族連れや観光客に支持されており、来場者数の増加が売上高の伸びに貢献しています。
◆強み5:サンリオの魅力とリスク
サンリオの日本セグメントの業績が顕著に成長している中で、投資家にとっての魅力とリスクを客観的に評価することが重要です。魅力的なポイントとして、サンリオの強力なブランド力と成功したライセンス事業が挙げられます。特に、複数キャラクター戦略や北米・アジア市場での成功は、今後も安定した収益をもたらす可能性が高いでしょう。
また、サンリオピューロランドやハーモニーランドのテーマパーク事業が再び成長軌道に乗っている点も、投資家にとって安心材料となります。さらに、サンリオの配当利回りは約1%あり、安定した配当を受け取りながら長期的な株価成長を期待する投資家にとっても魅力があるといえるでしょう。
その一方、リスクとしては、現在の株価がすでに高値圏にあることが挙げられます。特に、株価が過去最高値を更新し続けている中で、今後の上昇余地が限定的である可能性があります。また、サンリオの業績が予想通りに進まない場合、株価下落のリスクが存在します。
さらに、北米やアジア市場での競争が激化した場合、サンリオの成長にブレーキをかけるリスク要因となり得ます。競合他社との競争が続く中で、サンリオがどのようにして競争優位を維持し、さらなる成長を遂げるかが今後の注目ポイントとなるでしょう。
◆投資家の視点で見るサンリオ
投資家の視点で投資判断する場合の魅力として、サンリオが手掛けるキャラクタービジネスは景気に左右されにくい特徴が挙げられます。一般的に、趣味や娯楽に関連する出費は、生活費とは別枠で考えることが多く、景気の変動による影響を受けにくい傾向にあるからです。
サンリオが展開するキャラクターグッズやライセンス事業もこの特徴を持っており、キャラクター商品は、消費者にとって日常生活の癒しや楽しみを提供する存在として、景気の良し悪しに関わらず支持を集め続けています。
こうした要因から、ファンの心を鷲掴みし続ける限り、サンリオの株式は安定的かつ成長が期待できるため、投資対象としても検討の余地があり、魅力的だと判断できると思います。なにより景気の変動に強く、消費者心理に深く根ざしたビジネスモデルを持つサンリオは、長期的な投資先として注目に値する企業だと筆者は考えます。
日常生活の中でいかにユーザーの「サンリオ時間」を増やせるのか、サンリオの今後の動向に注目しつつ、さらなるグローバルカンパニーへと成長することが期待されます。
<TEXT/鈴木林太郎>
【鈴木林太郎】
金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数
X(旧ツイッター):@usjp_economist