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4軒連続で“事故物件”に住む女性が「先入観にとらわれるあやうさを実感した」出来事

日刊SPA! 2024年9月7日 15時54分

 真夏のエンタメと言えば、お化け屋敷。常設のお化け屋敷は、遊園地に付属しているものが多いが、夏になると期間限定のものが増える。既存の建物をお化け屋敷に改装し、終わったら元に戻すのだが、多くの場合、その道のプロが企画制作を請け負う。
 その1人が、京都在住のCoco(ココ)さん(@coco_horror)。いただいた真っ黒い名刺には、「ホラーの総合商社 京都オカルト商会 創業令和元年」とある。肩書は「ホラープランナー」だ。

◆お化け屋敷の企画から現場の作業まで

――具体的に、今はどのような仕事をなさっているのでしょうか?

Coco:明日(8月4日)から熊本市に飛び、小泉八雲旧居を一時改装したところで、怪談師として登壇します。開催期間は8月7日から12日と短いものですが、小泉八雲の「雪女」や「耳なし芳一」など5作を、20人ぐらい入る部屋で朗読します。

 お話にあわせ、例えば雪女に扮したアクターさんが登場し、お客さんを怖がらせるという趣向です。私の役割は、朗読のほか、お化け役を演じるアクターのメイクや演技の指導、衣装の製作、恐怖演出を考案するなどさまざまです。

 その少し前には、京都府舞鶴市の観光施設、舞鶴赤れんがパークの一部をお化け屋敷にしました。廃病院で次々起こる怪奇現象というコンセプトで、制作・演出・監修を手がけました。主催はウッディーハウスという、舞鶴市に本社があるアパレルメーカーです。

 そこの社長さんが本当にホラー好きで、お化け屋敷を開くのが夢だったそうです。先方から声をかけられたのが今年の1月初め。最初はオンラインで打ち合わせをし、日程が近づいてくると現地に行ってお化けの配置からなにから、微調整しながら完成にこぎつけました。

◆恐いモノ好きが高じてお化け屋敷の世界に

――そもそも、この世界に入るきっかけは何だったのでしょうか?

Coco:高校時代から心霊スポットにはよく行っていて、恐い世界には関心は高かったのです。縁あって、京都にあった常設のお化け屋敷で行われるイベントに、怪談師として参加しました。そこのオーナーに気に入られて、運営まで任されるようになったのです。

 あいにくそこは、建物の老朽化で閉めてしまいましたが、その後数人の仲間と京都オカルト商会を結成して、今に至ります。ちなみに、高校卒業後はトリマーの養成学校に通っていました。もし、あのお化け屋敷との縁がなかったら、ペットを相手にトリマーとして働いていたと思います。

◆没入感を生む作り込みにこだわる

――お化け屋敷の企画制作は、クリエイティブな能力をかなり要求されると思いますが、この仕事の大変さは、どんなところにありますか?

Coco:仕事の依頼は、私の活動をSNSで知ったり、知り合いのツテからくることが多いのですが、どの案件もそれぞれ違った苦労はあります。

 例えば、赤れんがのお化け屋敷ですと、ストーリーの中身から設営に至るまで、本来の赤れんがのイメージを損なってしまうものは避けなくてはいけません。先方の担当者に、何がNGで、何がOKかをヒアリングして、それをふまえて提案していきます。また、京都オカルト商会のメンバーは3人ですが、他のスタッフとの内部の意見調整もあります。

 あとは、お化け屋敷に来られるお客様が、いかに怖がってもらうかの仕掛けの工夫も大変です。私の手掛けるお化け屋敷は、没入感を大切にしています。そのため、世界観の作りこみはしっかり行い、お客様には入場前に、ストーリーがわかるイントロビデオを5分ぐらい見ていただきます。そうすると、没入しやすくなって、より恐さを楽しめます。

 昔のお化け屋敷は、機械仕掛けの部分が多かったのです。ですが最近のは、アクターと呼ばれる人がお化けを演じるものが増えています。私も、アクターが重要な要素だと思っています。機械だと、相手を驚かせるタイミングを外すことがあったりするので、大変ではありますが、プロのアフターさんを起用するようにしています。

◆年中無休でホラーに浸るため事故物件に住む

――お化け屋敷は夏だけの季節限定というイメージですが、その職業だけで生活していけるかんじですか?

Coco:はい。収入的には、おおむねお化け屋敷の企画制作でまかなえています。ただ、どうしても閑散期はあって、そのときは怪談や心霊スポットに関する本を書いたりしています。そうした仕事以外でも、24時間年中無休でホラーに浸っていたくて、事故物件に住み始めて、今4軒目です。

 一人暮らしで、ペットの猫がいますが、ほかにお化け屋敷で使ったお化けが7体ぐらいいて、玄関開けたらそこにお化けがいます。でも、事故物件でも、なかなか本物のお化けにはめぐりあえないですね……。

 2軒前の事故物件での話をしましょう。ある日、流し台に水をためた鍋を置いていました。見ると、なぜか水が揺れているのです。事故物件だから、「もしかして霊現象?」と思いがちになりますが、冷静に考えました。それで気づいたのですが、流し台の裏に洗濯機があって、そのとき脱水で回っていたのです。その振動が、鍋の水に伝わっていたのだと分かりました。先入観にとらわれるあやうさを実感しました。

 今の物件では、24時間定点のペットカメラを、玄関とリビングに設置しています。外にいても、カメラのセンサーが何か動いたものをとらえると、自動で録画して送信してくれるのですね。それでも今のところは心霊現象と呼ぶような事件は起きていないです。

◆長い髪の女が壁に吸い込まれて…

――事故物件に住み始める前に、室内で心霊体験をしたことはありますか?

Coco:私の実家で1度ありました。9歳頃のときです。私は生まれも育ちも京都で、実家は中古物件でした。なぜか、寝たきりの人用のベッドが私の部屋にありました。その日は、夜中に1人で起きて深夜アニメを観ていました。番組が終わってテレビを消し、リビングの電気だけはつけておいて、お風呂に入りました。

 お風呂からあがって、「またテレビ見ようかな」と向かった途中で、目の端の壁から、白い服を着た長い黒髪の女の人が、すーっと私の前を滑るように横切って、もう一方の壁に吸い込まれていきました。そこは、私の部屋があるところです。

「これはもうダメ。自分の部屋には戻れない」と、親の寝ている部屋に潜り込んで一夜を明かしました。実家の心霊現象はそれっきり、他の家族も体験はしていません。あれは結局なんだったのかなと思います。今の自分だと、見ても平気だと思いますね。

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 子供時代から一転、幽霊はむしろ見たいと明るく語るCocoさんだが、事故物件に住むだけでなく、全国の心霊スポットも探訪しているという。後編では、心霊スポットでの体験について語っていただいく。

<取材・文/鈴木拓也>

【Coco(ココ)】
京都市出身のホラークリエイター(お化け屋敷プロデューサー)。SNSの総フォロワー数は50万人超の「ホラー界のインフルエンサー」として活躍。最近は怪談作家としても活動の幅を広げ、著書(共著含む)に『京都怪談 猿の聲』『怪談怨霊館』『投稿 瞬殺怪談 怨速』『おかるとらべる 365日ホラー旅』(いずれも竹書房)がある。
公式サイト:「怪談専門のお店 京都怪談商店」
YouTube:「オカトラTV」
X:@coco_horror
Instagram:@coco_horror

【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki

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