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パテックフィリップ・ノーチラスは90万円→1600万円。次に流行る高級腕時計の“穴場”は「50万円台で買える宝石ブランド」の理由

日刊SPA! 2024年9月8日 15時53分

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

 腕時計投資家の斉藤由貴生です。
 私は、2002年にパテックフィリップのノーチラスを約90万円で購入したのですが、その際購入したモデルの相場は、現在約1600万円となっています。

 また、2017年には同じくパテックフィリップのゴールデンエリプスを約130万円で購入。そのモデルは、先日約370万円といった価格で売られていましたが、すぐに売り切れとなっていました。

 ノーチラスとゴールデンエリプス、どちらにも共通するのが、私が買った時点では「誰も興味を示していなかった」という点であります。購入した際は、だれからも褒められることはなく、むしろ「なんでそれを買ったの?」などと言われるほど。しかし、そういったモデルが数年後には「多くの人にとって“良い”」と認知されるわけです。

 こういった実績があるために、私はよく「次にどれが流行りそうか?」と聞かれます。

 ということで今回は、その問に対する回答をしてみたいと思います。

◆人気が出るモデルの「良い要素」とは?

 その時点で人気がなくても、後に人気が出る時計の要素として、最も重要なのは、そのモデル自体に「良い要素」があるという点です。

 一見、簡単にも見えるのですが、「良い要素がある」ということをきちんと見極めることができる人は意外とあまり多くありません。

 良い要素を持つ時計でも、意外と安いというモデルがあるのですが、そういった時計は「いつかは評価されるようになる」ことだと思います。

 では、何が良い要素かというと、定価とブランド力などです。

 例えばですが、2001年時点での定価が300万円の時計が今、100万円で売られていた場合、同じ時期に300万円だったロレックスが、今いくらなのか、などと見てみます。

 仮に500万円となっていた場合、100万円の時計は「お得感満載」。しかし、かつての定価である300万円が「本当に機能していたかどうか」を知る必要があります。そこで重要になるのがブランド力です。

 稀に、あえて定価を高く設定して、実勢価格を下げるという商品があります。例えば、昔の通販では、定価20万円の腕時計が、「1本買うともう1本ついてくる!19800円!」といった具合で売られていました。

 2001年時点の定価が300万円だったとしても、それが聞いたこともないブランドの場合、実際にその定価で買う人がいたのかは怪しいといえます。しかし、名のあるブランドの腕時計であれば、定価は機能していたと考えられます。

 ちなみに、2001年時点はロレックスといった有名ブランドでも、定価を下回る価格で並行輸入の新品が売られていました。しかし、その場合、「定価は50万円、新品実勢価格は約35万円」といった感じであるため、「定価20万円、実勢価格が2万円」といった通販の腕時計とは事情が異なります。

◆高級腕時計の前提条件は“自社一貫生産”

 2つ目のポイントとして、昔から「高級腕時計」として認知されているブランドや、古くからのマニュファクチュールというブランドは「強い」といえます。

 例えばですが、高級品として名のあるブランドでも、それが腕時計以外の製品で有名。かつ、腕時計への参入は結構最近といった場合は「強くありません」。

 また、マニュファクチュールというのは、自社一貫生産を指す言葉。つまり、自社製ムーブメントを搭載するブランドがそれに当たります。

 ただ、2000年代後半から自社製ムーブメントを開発し、“売りの1つ”とするブランドが急増したため、評価ポイントとしては「古くからのマニュファクチュール」が重要であります。

 ここで重要なのは、古くからのマニュファクチュールでないブランドだったとしても、昔から高級腕時計として認知されているブランドは「強い」という点です。

 例えばですが、カルティエは、自社製ムーブメント搭載モデルを一般化したのは、2010年頃からでありますが、今、中古市場で高い評価となっているのは、「他社製ムーブメント」を搭載したモデルなのです。

 カルティエは、腕時計専門ブランドではなく、いわゆる「宝飾ブランド」と分類できますが、カルティエの腕時計は昔から「高級腕時計」として認知。むしろ、腕時計を最初につくったメーカーともいわれているほどの老舗であります。

 ですから市場では、「カルティエの自社製ムーブメント搭載モデル」よりも、「他社製ムーブメント搭載」のモデル(往年の名作)が評価されているのです。

 近頃目立って評価されているのは、1990年代後半頃に現行品だったモデルですが、例えば、グレー文字盤のサントスガルベ(W20067D6)は、2020年頃まで中古相場が30万円を切っていたのにもかかわらず、値上がりした結果、現在では130万円以上といった相場に変貌しているのです。

 サントスガルベには、現行モデルといえる「サントスドゥカルティエ」がありますが、自社製ムーブメントを搭載する現行モデルの中古相場は約85万円。他社製ムーブメントを搭載する昔のモデルのほうがはるかに高値となっているのです。

◆次に“欲しくなる”を見極める

 その時点で多くの人に憧れられている腕時計を自分が持っていると仮定して、次に「欲しい」となりそうなキャラクターを探します。

 私がかつて、ノーチラスを買った際の心理は以下の通り。

・エクスプローラーがプレミアム価格状態
・次のエクスプローラー的モデルを当てれば「安く買える」かも
・エクスプローラーの上位互換といえるのがパテックフィリップアクアノート
・アクアノートを買ったらノーチラスの良さが分かった

 といった感じです。
 
 こういった視点を持つと、現時点では、誰もが「なんでそんな変な時計買うの?」となるようなモデルでも、数年後には手のひら返したように「多くの人が評価する」というモデルを当てる可能性が高くなります。

 私は、2017年、ゴールデンエリプスを買ったのですが、当時の中古相場は「最も安価なパテックフィリップ」でした。

 そんなゴールデンエリプスは今や、「非・スポーツ系で最も高値」といったぐらいの価格帯に変化。例えば、私が所有していた3738/100J-012は、先日370万円台ですぐに売り切れとなっていましたが、その価格は、同世代のモデルと比較して「相対的に高値」であります。

 私が買った2017年時点では、自動巻ムーブメントを搭載するパテックフィリップとしては、安価な部類、もしくは最も安価とすらいえたわけですから、地位が変化したといえるのです。

 ゴールデンエリプスは、現時点でもノーチラスほど有名な存在ではありませんが、2017年と今とでは、「地位が全く変わっている」という出世をしたのです。

◆次に来る腕時計は?

1.古くから「高級腕時計」として認知されているブランド
2.昔からマニュファクチュールである
3.次に欲しくなりそう(まだ多くの人が買っていない)

 以上、3つのポイントを加味すると、次に来る腕時計は、どういったものになるか。

 1と2を満たしながらも、まだ誰にも注目されていない。そんなブランドはあるかというと、いくつもあります。

 そして、そういった要件を満たすブランドの中でも、最も有力なのがピアジェであると私は考えます。

 ピアジェは、多くの人から「宝石ブランド」と認知されているようで、私がピアジェが良いというと、「宝石ブランドでしょ?」とか「宝石ギラギラ時計」と言われます。しかし、実はピアジェは、古くからのマニュファクチュールなのです。

 この「古くからのマニュファクチュール」という点が認知されていないというだけでも、ピアジェの穴場感は満載だといえます。

◆かつてのノーチラスも評価は厳しかった

 ただ、ピアジェの腕時計はシリーズが多々ある点と、それが時期によって変わるというマイナスポイントが存在。

 時計に詳しい人でも「どれがどういったキャラクター」か分かりづらいことだと思います。

 そのため、単にピアジェといっても「どれを買うか」、その見極めるのは難しいのですが、最も簡単に判断する方法は中古相場が安価となっているモノに着目するということでしょう。

 先のように、ピアジェは古くからのマニュファクチュールであるため、ムーブメントは自社製。なおかつ、ハイブランドであるため、かつての定価も高値です。

 しかしながら、そういった要素を持つにも関わらず、現在50万円程度といった価格帯で購入できるモデルが多々あります。

 同じ時期、新品実勢価格が約35万円だったロレックスは、現在160万円台。その一方、新品実勢価格が50万円程度だったピアジェが、現在40万円程度で手に入る、などという事例は珍しくありません。

 そして、そういった状況がみられるピアジェを見て「グッと来る」というモデルがあったならば、その魅力に気づく人が増え、いつかは評価されるモデルになる可能性があるといえます。

 この記事を見て「ピアジェ?」と疑問に思った人は多々いると思います。しかし、かつてのノーチラスやゴールデンエリプスも、同じように思われていたのです。

 ですからこういったトレンド変化が腕時計の面白いところ。ぜひ、隠れた魅力を持つ腕時計をいち早く発掘してみてはいかがでしょうか。

<文/斉藤 由貴生>

【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

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