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1億円超「新築タワマン」を購入も妻からの三下り半。手堅い選択だったはずの“ペアローン”が災いの種に

日刊SPA! 2024年9月12日 15時52分

 およそ1000万軒はあるとされる「訳あり物件」。その数は、今後も増えていき、大きな社会問題となりつつある。そうした訳あり物件の問題に巻き込まれたら、どうすべきか?
「訳あり物件」を専門に扱う株式会社ネクスウィルの代表取締役、丸岡智幸さんにアドバイスをいただく記事の前編では、実家の相続と空き家のトラブルについて教えていただいた。

 後編では、ペアローンを組んだ夫婦や熟年夫婦の離婚、そして親の孤独死に伴って子に降りかかった難題という実例をもとに、対処法をうかがう。

◆妻に鍵を交換されマンションに入れなくなった夫

――夫婦が、同じ金融機関で各自の収入に応じてローンを組むペアローンが増えています。ですが、のちに離婚となってトラブルに陥るカップルも少なくないそうですが。

丸岡智幸(以下、丸岡):Iさんの例があります。結婚してすぐ、都心の新築高層マンションを買いました。眺めのいい上層階ということもあり、1億円以上もする物件です。

 購入にあたって、ペアローンを組みました、ローンを含めた資金はIさんが3割、妻が7割。妻のほうは、母親にも資金を出してもらっての比率です。どのような経緯があったかまではわかりませんが、やがて夫婦仲は険悪なものとなり、Iさんはマンションを追い出されてしまいます。

 ある日、Iさんが帰宅すると、鍵が別のものと交換されていて入れない。妻に連絡すると、「あなたのものは全部運び出してトランクルームに預けましたから」との返答。妻から三下り半を突き付けられたIさんは、途方に暮れて弊社に相談に来られました。

◆万が一の離婚でトラブルになりやすいペアローン

――それはIさんにとって一大事ですね。どのように解決がついたのでしょうか?

丸岡:ペアローンは、5組に1組が利用する時代です。いまや都心のマンションを買おうと思ったら1億円は超え、相当な自己資金がないと融資が下りないことは多々あります。

 でも、例えば共働きでそれぞれ500万円ぐらいの年収の夫婦が、1億円ぐらいの物件をペアローンで買えることが結構増えています。住宅ローン控除を受けるのもメリットですね。ペアローン自体は悪い制度ではないのですが、もしも離婚となったら揉めることが多いのです。

 お互いが納得の上、物件を売却して代金を分けるのがシンプルな解決策ですが、そうはならずトラブルに発展することもあります。

 Iさんの場合、それが上手く行きませんでした。資金の一部を出してくれた妻の母親が、一緒に住んでおり、売却は嫌だと言ったのです。売却には、共有者全員の同意が必要で、一人でも反対するとそれができません。

 このままでは、Iさんは、自分が住んでもいないマンションのローンを払い続けることになります。このケースでは、弊社がIさんの持ち分を買い取り、元妻とその母親と交渉しました。最終的には、この持ち分を奥さんが買い取って、住み続けるというかたちで決着がつきました。

◆モラハラ夫に知られずに自宅の持ち分を売却

――離婚と言えば、熟年離婚も増えています。これに絡んだトラブルというのはありますか?

丸岡:長年にわたりモラハラ夫と暮らしてきたSさんは、娘さんの結婚を機に別れる決意をしました。それで、共有になっている自宅の自身の持ち分を売りたいと相談に来られました。

 その際、Sさんは希望を出されてきて、売却の手続きは夫に全く知られずに行いたいとのことでした。

 そのご希望に従って手続きを進ませ、その後のことも顧問弁護士と相談しながらやり取りしました。すべての段取りを済ませ、弊社から夫へと連絡し、協議をしました。最終的に夫は自分の持ち分も売却して、自宅を出て行くことを選択されました。今の熟年世代で自宅を共有していることは少なく、こうしたケースは、どちらかと言えばまれなものです。ただ、自宅取得の自己資金を奥さんも結構出した場合は、共有になることがありますね。

 ポイントは、持ち家が夫婦の共有になっている場合は、買い手さえ見つかれば、共有者の同意がなくても自分の持ち分を売却することが可能なことです。これについては、不動産会社によって対応日数がかかることが多いので、弊社のような訳あり不動産の専門業者に依頼するのがいいでしょう。

◆増える管理不全マンションという問題

――ご著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』のなかでは、一人暮らしをしている90歳の父親が、脳出血で死亡しているのを息子が発見するというエピソードがあります。発見が早く、特殊清掃業者が大がかりな処置をすることもなく済んだようですが、これも訳あり物件という扱いになるのでしょうか?

丸岡:はい。心理的瑕疵の事故物件として、不動産会社は告知しなくてはいけません。ただ、一口に事故物件と言っても、ランクのようなものがあります。病死され発見も早い場合と違って、他殺や自殺ですと心理的なインパクトがまったく違いますし、特別な扱いとなります。

 ところで、90歳の父親が住まわれていたのは、かなり古いマンションという問題もありました。

 マンションの老朽化の問題は、これからどんどん表に出てくると予想します。改修しようにも修繕積立金だけでは賄えなかったり、所有者も管理組合も高齢化するなど、管理不全マンションは増えています。通常の不動産会社では難色を示す物件ですが、弊社で買い取らせていただき、リフォームなど適正な処置をして、買い手が見つかりました。

 今後、おひとりさまの高齢者は増えていくのは確実です。同様の問題を未然に防ぐには、親族の方々がまめにコミュニケーションをとるのが大事だと思います。

<取材・文/鈴木拓也>

【丸岡智幸】
株式会社ネクスウィル代表取締役。1983年生まれ。大手電力会社に約10年勤務の後、不動産会社で投資用アパートの販売業務などに従事。2019年に独立して、ネクスウィルを創業。訳あり不動産の買い取りサービス「ワケガイ」や、訳あり不動産のオンラインマッチングサイト「空き家のURI・KAI」のサイト運営もする。訳あり不動産が社会問題化するなか、そうした不動産を取り扱うリーディングカンパニーとして注目されている。著書に『拝啓 売りたいのに家が売れません』(自由国民社)がある

【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki

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