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「パワポはビジネスマンの“武器”」明石ガクトが力説する理由。クリエイターも例外ではない

日刊SPA! 2024年9月12日 8時49分

 広告界の第一線で活躍するアートディレクターたちがデザインしたパワポのテンプレがダウンロードできる本として好評を博している『電通アートディレクターが本気で考えた!美しすぎるパワポ』(扶桑社刊)。
 その制作総指揮を担当したコピーライター/UXリサーチャーの川崎紗奈氏(電通)と、動画界の最先端をひた走るクリエイティブ企業の代表・明石ガクト氏(ONEMEDIA)が対談を実施!

 明石氏からは「ビジネスパーソンとして生きていくなら、パワポかエクセルのどちらかは極めなければいけない」という言葉が飛び出すなど、白熱した対談となった。

◆“クリエイター”でもパワポからは逃げられない?

川崎:本日は宜しくお願いします。明石さんが経営する「ONE MEDIA」はTikTokやYouTubeなどをプロデュースしていますが、プレゼン用パワポのクオリティにもかなりこだわっていると聞きました。

明石:毎年、若手社員には口を酸っぱく「うちはパワポ使えないとダメだから」って言ってますね。

川崎:どちらかというとクリエイティビティに力点を置いているイメージなので、正直、意外でした。

明石:結局は仕事を取ってくるのってプレゼンとパワポなので。クリエイティブ業界って言っても、やっぱりパワポ作りからは逃げられない。営業や企画の職種の人とかでもそうだけど、「クライアントとの関係を築いてます」とか、ある種の「人間力」や「後輩力」で突破しがちな人たちがいますよね。でも、そういうのって立場とか仕事のフェーズが変わってくると……。

川崎:力技だけでプレゼンを通し続けるのは、だんだん難しくなってくる。

明石:そう。だから「ビジネスパーソンでいる限り、30代までのうちにパワポかエクセルのどちらかはきちんとできるようになっておこうね」と言ってます。

川崎:確かにそう考えると業種や年齢も関係なく大切なスキルですね。クライアントさんをしっかり納得させてお金を頂戴するには地に足のついたプレゼン力が欠かせない。

明石:最近はうちも社風がきちんと伝播されて「こんな資料じゃ恥ずかしくてクライアントに出せないよ!」と社内で叫ぶ、“パワポ狂い”の人間が僕以外にも出てきました(笑)

◆「“白地に1行でドン!”が許されるのは一部の天才だけ」

川崎:ちなみに、資料のデザイン性についても重視していますか?

明石:そうですね。電通にいらっしゃる川崎さんの前で言うのもなんですが、例えばコピーライターの人たちって言葉を磨くのに時間を使い過ぎて、パワポで「白地に1行でドン!」ってやりがちじゃないですか。あれをして通用するのは一部の天才たちだけだと思うんですよね。漫画の『ワンピース』で言うと覇王色の使い手というか。

川崎:確かに!“この人だからこそ通っちゃう”プレゼンみたいなのはあります。

明石:でも、プレゼン資料は発表されてその場で終わりじゃなく、基本的にはその後に現場の担当者さんが会社に戻って上長の決裁を取らなければならないものですよね。そのとき、資料が「1行でドン!」の連続だと情報の伝達が難しい。やっぱり具体的な情報や資料全体のトーンも含めデザインとして資料に集約されてないといけない。

川崎:クリエイター、1行でドン!みたいな資料、作りがちかもです。耳が痛い……。

明石:ミニマリストのひとたちの部屋紹介で、「ほとんど何もない部屋にプロジェクターだけドン!」みたいなのあるじゃないですか。シンプルなのはいいんだけど、果たしてそれはおしゃれなのか?という問題と似てるというか。

いろいろな情報が詰まったうえで“見やすくて美しい”のが資料に求められていることだと思いますね。

川崎:パワポはひとりで旅をしないといけないですからね。

明石:そうそう。俺の親友の三浦崇宏(The Breakthrough Company GO代表)っていう奴も「ドン!」をやりがちだから指摘したんだけど、「俺は決裁者クラスの相手にしかプレゼンしないから」って言ってた。まぁ、かなり特殊なパターンですね(笑)

川崎:多くの人の場合は、プレゼン後に資料だけが社内で何度も回覧されちゃいますもんね。

◆プレゼン資料は顧客に見せる最初のクリエイティブ

川崎:先日、Xでも話題にしていただきましたが書籍『美しすぎるパワポ』のテンプレはいかがでしたか?

明石:すごくいいなと思いました。詰まるところ、プレゼン資料のデザインってクライアントに見せる最初のクリエイティブだから、そこが上質じゃないと通らないし、仮に通ってもなんとなく不安が残っちゃいますから。

パワポを作るのが苦手な人って「①情報の整理の仕方がわからない」、「②言葉の絞り方がわからない」という2つのレイヤーがあると思うんだけど、この本は前者をメインにカバーしてますよね。

川崎:そうですね。あと、テンプレをダウンロードしてもらえばわかるんですが、実はテンプレ内に「ここは重要な点を一言で」とか、どんな言葉を入れればいいかのガイドも付いていて。

明石:え!? (ダウンロードしたテンプレのガイドを見て)……本当だ。すみません、まだダウンロードしてなくて(笑)

川崎:書籍でも色々と使い方のコツを解説してるんですが、ダウンロードできるテンプレの方にもガイドがあるので、「書き込み式ドリル」みたいに従えば、それだけでも美しさを保ちつつ、情報の整理された資料ができるようになっています。

明石:めちゃくちゃいいじゃないですか。そのガイド文言については帯とか書籍にも書いておいた方がよかったね。

◆資料を作ったら一度は音読すべし?

川崎:あとは書籍内にテンプレを使ったサンプルスライドを載せているんですが、これもかなり作り込んでいます。

明石:確かに各スライドごとにテキストの口調などを変えていて、資料のトンマナ(様式や雰囲気)がわかりやすい。実はこれって結構重要なんですよ。資料作成における一貫した雰囲気とかゴールが見えてると資料作りって進み方が全然違う。

川崎:音読されても耐えられるくらいの作り込みにしてあります(笑)

明石:音読と言えばうちにプレゼンが通る確率が8割以上のヤツがいるんだけど。

川崎:かなり通過率高いですね。

明石:彼が言うには「資料ができたら一旦音読するのがコツ」なんだとか。そうすると自分の強調したい部分というのがはっきりわかるようになるから。

川崎:よりブラッシュアップされるってことですね。この書籍に掲載するためのサンプルスライドも、私自身通しで何度も読んで推敲しました。

明石:ちなみに、僕の特技のひとつに「初見のパワポ資料であたかも自分が作ったかのようにスラスラとプレゼンをする」というのがあります。

◆パワポ資料は「強力な武器」

明石:『フォートナイト』って知ってます?

川崎:オンラインでみんなで戦うやつですよね。サバイバルバトル的な。

明石:あれって生存率を上げるのに何が大事かというと、最初にどれだけ強い武器を拾うかなんです。

友人に麻野耕司さん(ナレッジワーク代表取締役)という有名な起業家の方がいるんですが、「パワポはフォートナイトでいえば強い武器」とおっしゃっていて。いい資料をつくれるようになるということは会社全体の戦闘力が上がるということなんですね。

川崎:「パワポ=武器」!

明石:だからもう、経営者たちはこの本を会社で配るべき。全体の効率や生産性が上がるから。

川崎:めっちゃアピールしてくれてる(笑)。でも確かに「資料作り」というのが単なる「こなす作業」みたいに思われてますよね。

明石:そう。ちゃんとしたものを作れば「強力な武器」になるわけで。

川崎:確かに。そう考えるとパワポはまだまだ過小評価されてる気はしますね。

デジタルプレゼンとか、他のツールでのプレゼンも増えてるけど、紙として出力する習慣もまだまだ残っている。A4に刷ったときの見えやすさだとパワポは強いのではと思っています。

明石:確かに。「A4」が死なない限り、パワポも死なない(笑)。

明石ガクト
1982年生まれ。静岡市出身。上智大学卒。ショート動画広告を手掛けるワンメディア株式会社代表取締役。最新の著書『動画大全』(SBクリエイティブ)は韓国・台湾でも出版決定

川崎紗奈
コピーライター/UXリサーチャー。早稲田大学卒業後、株式会社電通入社。入社以来、コピーライターとして国内外多数の企業の広告クリエイティブ制作に従事。主な受賞歴に朝日広告賞/審査員賞、ACC賞ゴールドなど

取材・文/SPA!編集部 撮影/宮下祐介

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