ドジャースの大谷翔平がまたも千両役者ぶりを見せつけた。
カブスとの3連戦最終戦となった11日(日本時間12日)の一戦で、大谷は2点を追う1回裏に先頭打者で登場。すると、真ん中に入った4球目のスライダーを真っ芯で捉え、今季47号を右中間に叩き込んだ。
◆まさに“弾丸ライナー”の一撃
試合後、大谷が「ちょっと低い弾道だったので、行ってくれるかわからなかった」と振り返ったように、47号の打球角度は19度という“超低弾道”。これは大谷が今季放った47本の本塁打の中で最も低い角度でもあった。
この角度なら、並みの打者なら高い確率でフェンス直撃だったはずだ。しかし、今季47回目の柵越えを後押ししたのは118.1マイル(約190キロ)という凄まじい打球速度。この速度も今季の47本塁打の中で3番目という速さであった。
まさに“弾丸ライナー”と呼ぶにふさわしい大谷の一撃を皮切りに、ドジャース打線はこの回一挙5点を挙げる猛攻。まさに核弾頭としての役割を担う形となった。
さらに大谷は2回裏に回ってきたこの日の第2打席で、フルカウントからボール球をしっかり見極め一塁に歩くと、3番フレディ・フリーマンの打席で今季48個目の盗塁を成功。夢の「50本塁打&50盗塁」達成まであと3本塁打&2盗塁となった。
ちなみに大谷は第3打席にもセンター前へクリーンヒットを放ち、これで9月に入ってからの10試合で5度目の複数安打。9月の月間打率も.275に引き上げ、徐々に本来の調子を取り戻している。
何より大谷が最も喜んだのは、チームが連敗を止めたことだろう。3点をリードした最終回にカブスの反撃にあったものの、10-8で競り勝ち、同一カード3連敗を阻止。ドジャースは、2位ダイヤモンドバックスとの差を5ゲームとして、地区優勝に向けて大きな勝ち星をつかんだ。
もしドジャースが本拠地で3タテを食らっていれば、ズルズルと連敗地獄に陥ってもおかしくなかったところ。そんな嫌な流れを断ち切った大谷の先頭打者アーチは、今季のドジャースにいい流れを引き寄せる一発と呼べるものだったかもしれない。
◆ライバルの不振で本塁打王は決定的な状況に
そんな大谷が今季47号を放った直後、ある人物が大谷の“位置取り”を冷静にポストしていた。
それがアストロズの右腕ジャスティン・バーランダーの実弟であり、大の“大谷マニア”として知られるベン・バーランダー氏だ。米専門局FOXスポーツのアナリストという肩書も持つバーランダー氏は、Xの自己紹介文に日本語で「大谷翔平大好き」と記載するほどの大谷好き。
そんなバーランダー氏がポストしたのは、「これで大谷はナ・リーグで2位に10本差をつけている。そしてメジャートップのアーロン・ジャッジとは4本差だ」というもの。なかなか一発が出ないライバル打者たちを尻目に、大谷が着実とその数を伸ばしていることに触れた形だ。
実際に、ナ・リーグの本塁打数2位のマルセル・オズナ(ブレーブス)は8月20日に今季37号を放ったのを最後に21試合ノーアーチ。一方、ア・リーグ本塁打王争いを独走中のジャッジ(ヤンキース)も、自己ワーストに並ぶ15試合連続本塁打なしと、思わぬスランプに喘いでいる。
大谷とジャッジには一時期大きな差があったが、気が付けばその差もわずか4本。ドジャースとヤンキースはともにレギュラーシーズン16試合を残しており、大谷がジャッジを抜き去る未来も見えてきたといえるだろう。
◆過去34年で1例しかない“レア記録”の可能性も
また、もし大谷がこのまま10本以上の差をつけてナ・リーグ本塁打王に輝けば、かなりレアな出来事になる。
ア・リーグでは2022年にリーグ新記録の62本を放ったジャッジが、2位マイク・トラウト(エンゼルス)に22本差をつけてタイトルを獲得している。これ以外にも10本以上の差をつけて本塁打王に輝いた選手は、2000年以降に2人、1990年代には3人もいた。
ところがナ・リーグでは、1990年以降の過去34年間でわずか1人だけ。それが、2017年に59本塁打を放ったジャンカルロ・スタントン(当時マーリンズ)で、2位コディ・ベリンジャー(当時ドジャース)に20本差をつけてのタイトル獲得だった。
大谷にとって「50-50」はもはや通過点で、1990年以降、たった1例だけのレアな記録もあっさりと達成してしまうかもしれない。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。
カブスとの3連戦最終戦となった11日(日本時間12日)の一戦で、大谷は2点を追う1回裏に先頭打者で登場。すると、真ん中に入った4球目のスライダーを真っ芯で捉え、今季47号を右中間に叩き込んだ。
◆まさに“弾丸ライナー”の一撃
試合後、大谷が「ちょっと低い弾道だったので、行ってくれるかわからなかった」と振り返ったように、47号の打球角度は19度という“超低弾道”。これは大谷が今季放った47本の本塁打の中で最も低い角度でもあった。
この角度なら、並みの打者なら高い確率でフェンス直撃だったはずだ。しかし、今季47回目の柵越えを後押ししたのは118.1マイル(約190キロ)という凄まじい打球速度。この速度も今季の47本塁打の中で3番目という速さであった。
まさに“弾丸ライナー”と呼ぶにふさわしい大谷の一撃を皮切りに、ドジャース打線はこの回一挙5点を挙げる猛攻。まさに核弾頭としての役割を担う形となった。
さらに大谷は2回裏に回ってきたこの日の第2打席で、フルカウントからボール球をしっかり見極め一塁に歩くと、3番フレディ・フリーマンの打席で今季48個目の盗塁を成功。夢の「50本塁打&50盗塁」達成まであと3本塁打&2盗塁となった。
ちなみに大谷は第3打席にもセンター前へクリーンヒットを放ち、これで9月に入ってからの10試合で5度目の複数安打。9月の月間打率も.275に引き上げ、徐々に本来の調子を取り戻している。
何より大谷が最も喜んだのは、チームが連敗を止めたことだろう。3点をリードした最終回にカブスの反撃にあったものの、10-8で競り勝ち、同一カード3連敗を阻止。ドジャースは、2位ダイヤモンドバックスとの差を5ゲームとして、地区優勝に向けて大きな勝ち星をつかんだ。
もしドジャースが本拠地で3タテを食らっていれば、ズルズルと連敗地獄に陥ってもおかしくなかったところ。そんな嫌な流れを断ち切った大谷の先頭打者アーチは、今季のドジャースにいい流れを引き寄せる一発と呼べるものだったかもしれない。
◆ライバルの不振で本塁打王は決定的な状況に
そんな大谷が今季47号を放った直後、ある人物が大谷の“位置取り”を冷静にポストしていた。
それがアストロズの右腕ジャスティン・バーランダーの実弟であり、大の“大谷マニア”として知られるベン・バーランダー氏だ。米専門局FOXスポーツのアナリストという肩書も持つバーランダー氏は、Xの自己紹介文に日本語で「大谷翔平大好き」と記載するほどの大谷好き。
そんなバーランダー氏がポストしたのは、「これで大谷はナ・リーグで2位に10本差をつけている。そしてメジャートップのアーロン・ジャッジとは4本差だ」というもの。なかなか一発が出ないライバル打者たちを尻目に、大谷が着実とその数を伸ばしていることに触れた形だ。
実際に、ナ・リーグの本塁打数2位のマルセル・オズナ(ブレーブス)は8月20日に今季37号を放ったのを最後に21試合ノーアーチ。一方、ア・リーグ本塁打王争いを独走中のジャッジ(ヤンキース)も、自己ワーストに並ぶ15試合連続本塁打なしと、思わぬスランプに喘いでいる。
大谷とジャッジには一時期大きな差があったが、気が付けばその差もわずか4本。ドジャースとヤンキースはともにレギュラーシーズン16試合を残しており、大谷がジャッジを抜き去る未来も見えてきたといえるだろう。
◆過去34年で1例しかない“レア記録”の可能性も
また、もし大谷がこのまま10本以上の差をつけてナ・リーグ本塁打王に輝けば、かなりレアな出来事になる。
ア・リーグでは2022年にリーグ新記録の62本を放ったジャッジが、2位マイク・トラウト(エンゼルス)に22本差をつけてタイトルを獲得している。これ以外にも10本以上の差をつけて本塁打王に輝いた選手は、2000年以降に2人、1990年代には3人もいた。
ところがナ・リーグでは、1990年以降の過去34年間でわずか1人だけ。それが、2017年に59本塁打を放ったジャンカルロ・スタントン(当時マーリンズ)で、2位コディ・ベリンジャー(当時ドジャース)に20本差をつけてのタイトル獲得だった。
大谷にとって「50-50」はもはや通過点で、1990年以降、たった1例だけのレアな記録もあっさりと達成してしまうかもしれない。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。