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『ときメモ』が30周年で大復活。あの頃の恋愛ゲームを振り返る

日刊SPA! 2024年9月15日 8時51分

―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]―

◆『ときメモ』のリマスター版が発表
 1994年にPCエンジン SUPER CD-ROM2で発売され、その後、PS1やスーパーファミコンでもヒットし社会現象となった『ときめきメモリアル』。8月27日に「Nintendo Direct」でリマスター版が告知されるや、当時青春を過ごしたファンは大盛り上がり。「『一緒に帰って、友達に噂とかされると恥ずかしいし』とまた言われたい」「虹弁(人気ヒロイン・虹野さんの手作り弁当)憧れたなあ……」「あの絵柄を新規でいい感じに作れててすごい!」などSNSにコメントがあふれていました。

 そこで今回は、『ときメモ』を筆頭に1990年代の恋愛ゲーム、特に恋愛シミュレーションをメインに振り返っていきたいと思います。みなさんが本気で恋したヒロインは?

◆1990年代は恋愛ゲームの黄金時代

●同級生
1992年/エルフ

 1992年にPC向けに発売された『同級生』は、当時のエルフ代表取締役でヒットメーカーの蛭田昌人氏がディレクターを務めた作品。18禁ゲームながらヒロインたちとの恋愛を丁寧に描き、当時としては異例のヒットを記録しました。本作や『同級生2』『下級生』などの一連のシリーズは、のちの恋愛ものに大きな影響を与えています。

 清楚なお嬢様・桜木舞、陸上部のエース・田中美沙など、全14人のヒロインとの会話はテンポが良く、記号的な攻略対象ではない魅力を放っていました。最近では、今年4月にコンシューマ向けのリメイク版『同級生リメイクCSver』も発売されています。

 ちなみに当時のPC向けタイトルとしては、元勇者が養女を育成する『プリンセスメーカー』(1991年/ガイナックス)や、女子高教師として5人の問題児たちを指導する『卒業 Graduation』(1992年/ジャパンホームビデオ)など育成シミュレーションも人気がありました。

●ときめきメモリアル
1994年/コナミ

 CD-ROMドライブを搭載したゲーム機、PCエンジン SUPER CD-ROM2のハード末期に発売されたのが『ときめきメモリアル』。ヒロインたちのボイスが多数収録されていたことも話題になりました。まだ現在のようなSNSがなかった時代、パソコン通信の会議室で評判を呼び、恋愛シミュレーションブームの火付け役となったタイトル。現在本編シリーズは『4』まで、女性向けの『ときめきメモリアル Girl’s Side』も『4th Heart』までリリースされています。

 ゲームの舞台は私立きらめき高校。コマンドを実行して「文系」「容姿」など各種パラメータを高めて自分を磨き、デートでヒロインの好感度を上げて、卒業式の日に伝説の樹の下で告白を受けるのが目標。ラスボスともいうべき最強ヒロイン・藤崎詩織をいかに攻略するか? キャラの絶妙な性格付けと、イベント多数の学園生活シミュレーションが見事に噛み合って、どっぷりハマる人が続出しました。

 前述した2025年発売予定のリマスター版『ときめきメモリアル~forever with you~ エモーショナル』は、PS1版をベースに、オリジナルのグラフィックと新グラフィックを切り替え可能。もちろんフルボイスで、ヒロインたちがプレイヤーの名前を呼んでくれます。

◆恋愛シミュレーションが多様化する1990年代半ば

●アンジェリーク
1994年/光栄(現コーエーテクモゲームス)

『ときめきメモリアル』と同年の1994年にスーパーファミコンで発売された女性向け恋愛シミュレーションの元祖『アンジェリーク』。現コーエーテクモホールディングス会長の襟川恵子氏の、女性向けゲームが作りたいという念願がかなって誕生しました。

 宇宙を治める女王の候補となった少女アンジェリークが、光や水など9つの力を司る守護聖たちの助けを借りて大陸を育成するなか、恋が芽生えていく……。女性向けという新規性にとどまらず、壮大な世界観や光栄らしいシミュレーション要素など、内容盛りだくさんで独自のブランドを築くことに成功しました。

 その後女性向け恋愛シミュレーションは、NECホームエレクトロニクスがPC-FX向けに出した『アルバレアの乙女』(1997年)など数本があった程度で、本格的な発展は2000年以降を待つことになります。

●NOeL NOT DiGITAL
1996年/パイオニアLDC

 1996年にPS1で発売された『NOeL NOT DiGITAL(ノエル・ノット・デジタル)』は、ある意味で時代を先取りしすぎたタイトル。夏の海辺で3人の女子高生と出会った主人公は、ビデオ通話で会話を続け、クリスマスまでに仲を深めていきます。アニメで多彩に表情を変えながら滑らかに動くヒロインたちのビジュアルと、女子高生らしいリアルな会話は、現代にも通じる感覚がありました。

 ミーハーでおしゃれが好きな清水代歩(かほ)、メカやコンピュータに強いメガネ少女の岡野由香、落ち着いた雰囲気の陸上部員・佐野倉恵壬(えみ)と登場する少女を3人に絞り、その分学園生活で起きた事件やバイト先の話、同級生の噂など、会話が濃密になっているのが特徴。PS1でシリーズが3作展開されましたが、その後は音沙汰なし。復活の可能性はあるのでしょうか。

◆ゲーム史に名を刻むセガの恋愛ゲーム

●サクラ大戦
1996年/セガ

 1996年にセガサターンで発売された『サクラ大戦』は、恋愛と戦略シミュレーションが融合した「ドラマチックアドベンチャー」。数多くのアニメやゲームを手掛けてきたクリエイター・広井王子氏が総合プロデューサーを務めました。もうひとつの大正時代「太正」を舞台に、平時は大帝国劇場のモギリ係、非常時は「帝国華撃団」の隊長となって少女たちとともに帝都の平和を脅かす「降魔」と戦っていきます。

 正義感が強くて明るい性格ながらヤキモチ焼きの真宮寺さくら、高飛車なお嬢様の神崎すみれ、フランスから来たおしゃまな少女アイリスなどヒロインは個性派揃い。大正ロマン世界でのスチームパンクという目新しい切り口や、リアル舞台「サクラ大戦・歌謡ショウ」で2.5次元のパイオニアとなった意義など、恋愛ゲームの枠を超えて、ゲーム史のマイルストーンとなった作品です。

●トゥルー・ラブストーリー
1996年/アスキー

『ときメモ』のヒットを受け、さまざまなメーカーから恋愛ゲームが発売されていた1990年代半ば。特にファンから支持を集めたのが、1996年にPS1で発売された『トゥルー・ラブストーリー』です。

 主人公は青空高校に通う2年生。1ヵ月後に転校が決まり、学園での思い出づくりに励むことに……。ゲーム冒頭で春夏秋冬、四季のいずれかを選べるのがポイント。メインヒロインとして高い人気を誇ったピアノ好きの桂木綾音をはじめ、登場するヒロインはいずれも身近にいそうな親近感がありました。

 下校時のヒロインたちとの会話は「天気」「進路」「テレビ」「占い」「男性の好み」など選択肢豊富。仲良くなっても、転校というタイムリミットが迫る空気感も青春の切なさを醸し出しています。

 当時アイドルだった仲間由紀恵さんが主題歌を担当。CMも仲間由紀恵さんが制服姿で出演していました。シリーズは4作発売され、その後も『キミキス』『アマガミ』など系譜を受け継いだタイトルが登場しています。

●センチメンタルグラフティ
1998年/NECインターチャネル

 1998年にセガサターン向けに発売された『センチメンタルグラフティ』は、最高潮だった恋愛シミュレーションブームを象徴するような1本です。メディアミックス企画として、本編発売前から大きな話題となり、数量限定の予告用ディスク『センチメンタルグラフティ ファーストウィンドウ』がプレミアム価格で取り引きされていたのを覚えています。

 主人公は幼い頃から親の仕事の都合で転校を繰り返していた少年。春休みを間近に控えたある日、「あなたにあいたい……」という差出人不明の手紙が届きます。

 語尾が「~りゅん」の不思議系少女・永倉えみる(仙台)、県議の令嬢で病弱な杉原真奈美(高松)、ロックバンドのギター兼ヴォーカルで気が強い松岡千恵(福岡)……と、バイトでお金を稼ぎ各種交通機関を駆使して、ヒロインたちがいる全国12都市をまわる主人公の1年間は大忙し。冷静に考えるとなかなかにツッコミどころ満載でした。『1』の主人公の葬式に12人のヒロインが参列するところから始まる続編『センチメンタルグラフティ2』(2000年)も語り草になっています。

 以上、駆け足で1990年代の恋愛ゲームを振り返りました。個人的には恋愛アドベンチャーになりますが、『美少女花札紀行 みちのく秘湯恋物語』(1997年)、『久遠の絆』(1998年)、『風雨来記』(2001年)という一連のFOG作品も思い出深いです。甘酸っぱい記憶が蘇るのは、本物の初恋のようですね。

<文/卯月 鮎>

【卯月鮎】
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も

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