迷惑行為は、そこで働く人たちの精神を傷つけるだけでなく、従業員同士や利用客への対応にまで影響することも少なくないようだ。今回は、まさにそのような状況を体験し、どうにかしたいと悩み続けている羽柴実里さん(仮名・20代後半)に話を聞いた。
◆働きやすい職場環境だったが
実里さんは最初に、「詳しい内容については、ほんの一部のスタッフしか知りません。いろいろバレると面倒だし怖いので、私が働いている場所については、夜間まで開いている施設のようなところをイメージしていただければと思います」と説明のうえ話しはじめた。
「私が勤めている施設のオーナーは、穏やかで人が良すぎるぐらいの人。管理人としても毎日のように施設に顔を出し、掃除も率先してやるようなリスペクトすべき存在。そんなオーナーの右腕として働けることを誇りに思っていました」
オーナーは、「ひとりひとりのお客様を大切に」と考える主義。利用客が料金を支払って成り立つ施設だったため売上目標はあったが、金額について口うるさく言われることもなく、のびのびとした働きやすい職場環境にあった。
「そんなやさしいオーナーの恩恵を受けていたのは、施設で働くスタッフだけではありません。施設の営業終了後は、駐車場を解放していたのです。積極的に『使ってください』というようなPRはしていませんでしたが、暗黙の了解みたいな感じでした」
◆「事故や事件が起こってからでは遅い」
キャンピングカーや車中泊などのために駐車場を利用する人もいれば、周辺住宅などへ遊びに行くのに駐車する人もいたとか。そのため、スタッフから「事故や事件が起こってからでは遅い。夜間は封鎖したほうがいいのでは?」という意見が出たこともある。
「けれどオーナーは、『検討します』の一点張り。私には、『スタッフの意見が正しいことはわかるんだけど…。この辺りは駐車場もあまりないし、この駐車場が使えなくなったら、きっと不便でしょ?』と、心の葛藤をポロリと吐き出すこともありました」
そしてそういった意見が出るたび、悩んだ末に「夜間はどうせ使わない場所なんだから、マナーに気を付けながら有意義に使ってもらえるならそれでいい。自動販売機の商品も少しだけど売れているし」と、言うばかり。
「ただ、オーナーの意見は反発や不満につながりそうな内容だったため、意見を出してくれたスタッフには、私のほうから『上層部で検討中』と伝えるしかありませんでした。そして、営業終了後も駐車場を解放することは続いていたのですが…」
◆穏健派のオーナーらしい選択
そのうち、ゴミをあちこちに捨てる人が増加。出勤したときの駐車場の掃除が大変だという意見もポツポツ出るようになる。最初のうちはのんびりと構えていたオーナーだったが、ポイ捨てが酷くなり、騒音などについて周辺住民からも注意を受けるようになってしまう。
「注意してきた周辺住民の方々が施設の利用客だったこともあり、やんわり苦情を言われた程度で済みましたが、無視はできない状況でした。早急に駐車場を閉鎖するよう意見を出しましたが、オーナーは決断しきれずに悩むばかり。私も困ってしまいました」
そしてしばらく悩んだオーナーは「駐車場を全面的に閉鎖するのではなく、まずはルールを守れない人に注意喚起をして、難しいようなら駐車場を閉鎖しよう」と、決断。実里さんは「正直、甘いなぁと思いましたが、反面、オーナーらしいとも思いました」と話す。
「そしてすぐに、どういった人たちが騒音騒ぎやポイ捨てをしているのか、オーナーと私の2人で防犯カメラをチェックすることになりました。するとそこには、想像もしていなかったショッキングな内容が映っていたのです」
◆率先してゴミを捨てていたのはまさかの…
騒音騒ぎやポイ捨てをしていた一般人に混じり、施設スタッフの姿が映っていたのだ。普段はおとなしく、物腰もやわらかくて利用客にも人気のある20代の男性スタッフ。しかも防犯カメラの映像から、施設スタッフが率先してゴミなどを捨てていたことが判明したのだ。
「該当スタッフを呼び出すと迷惑行為は認めましたが、目的については口を割らず、不明。警察へは相談しないかわりに迷惑行為をいますぐやめ、3か月以内に別の職場を探して自主退職することで決着しています。営業終了後の駐車場も、そっと閉鎖されることになりました」
そして、「オーナーはスタッフのことを信頼しきっていたので、相当ショクを受けたようです。騒動のあと、オーナーは体調不良を理由にしばらく欠勤。出勤後は、まるで人が変わったようにスタッフを疑うようになりました」と実里さん。
「ちょっとしたことでも不安や不信感の火種になるようで、『〇〇(スタッフの名前)さんの行動、最近おかしくないか?』『こんなことがあったんけど、こいつは信用できるのだろうか?』と言って、私に監視のようなことをさせるようになってしまい悩んでいます」
働きやすかった職場の雰囲気もイマイチとなり、「以前のような職場に戻ってほしい」と実里さんは嘆く。駐車場の閉鎖だけにとどまらず、オーナーの人柄さえも変えてしまった迷惑行為。こういった残念が少しでも減るよう、マナーやモラルを大切に過ごしたいものだ。<TEXT/夏川夏実>
【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Twitter:@natukawanatumi5
◆働きやすい職場環境だったが
実里さんは最初に、「詳しい内容については、ほんの一部のスタッフしか知りません。いろいろバレると面倒だし怖いので、私が働いている場所については、夜間まで開いている施設のようなところをイメージしていただければと思います」と説明のうえ話しはじめた。
「私が勤めている施設のオーナーは、穏やかで人が良すぎるぐらいの人。管理人としても毎日のように施設に顔を出し、掃除も率先してやるようなリスペクトすべき存在。そんなオーナーの右腕として働けることを誇りに思っていました」
オーナーは、「ひとりひとりのお客様を大切に」と考える主義。利用客が料金を支払って成り立つ施設だったため売上目標はあったが、金額について口うるさく言われることもなく、のびのびとした働きやすい職場環境にあった。
「そんなやさしいオーナーの恩恵を受けていたのは、施設で働くスタッフだけではありません。施設の営業終了後は、駐車場を解放していたのです。積極的に『使ってください』というようなPRはしていませんでしたが、暗黙の了解みたいな感じでした」
◆「事故や事件が起こってからでは遅い」
キャンピングカーや車中泊などのために駐車場を利用する人もいれば、周辺住宅などへ遊びに行くのに駐車する人もいたとか。そのため、スタッフから「事故や事件が起こってからでは遅い。夜間は封鎖したほうがいいのでは?」という意見が出たこともある。
「けれどオーナーは、『検討します』の一点張り。私には、『スタッフの意見が正しいことはわかるんだけど…。この辺りは駐車場もあまりないし、この駐車場が使えなくなったら、きっと不便でしょ?』と、心の葛藤をポロリと吐き出すこともありました」
そしてそういった意見が出るたび、悩んだ末に「夜間はどうせ使わない場所なんだから、マナーに気を付けながら有意義に使ってもらえるならそれでいい。自動販売機の商品も少しだけど売れているし」と、言うばかり。
「ただ、オーナーの意見は反発や不満につながりそうな内容だったため、意見を出してくれたスタッフには、私のほうから『上層部で検討中』と伝えるしかありませんでした。そして、営業終了後も駐車場を解放することは続いていたのですが…」
◆穏健派のオーナーらしい選択
そのうち、ゴミをあちこちに捨てる人が増加。出勤したときの駐車場の掃除が大変だという意見もポツポツ出るようになる。最初のうちはのんびりと構えていたオーナーだったが、ポイ捨てが酷くなり、騒音などについて周辺住民からも注意を受けるようになってしまう。
「注意してきた周辺住民の方々が施設の利用客だったこともあり、やんわり苦情を言われた程度で済みましたが、無視はできない状況でした。早急に駐車場を閉鎖するよう意見を出しましたが、オーナーは決断しきれずに悩むばかり。私も困ってしまいました」
そしてしばらく悩んだオーナーは「駐車場を全面的に閉鎖するのではなく、まずはルールを守れない人に注意喚起をして、難しいようなら駐車場を閉鎖しよう」と、決断。実里さんは「正直、甘いなぁと思いましたが、反面、オーナーらしいとも思いました」と話す。
「そしてすぐに、どういった人たちが騒音騒ぎやポイ捨てをしているのか、オーナーと私の2人で防犯カメラをチェックすることになりました。するとそこには、想像もしていなかったショッキングな内容が映っていたのです」
◆率先してゴミを捨てていたのはまさかの…
騒音騒ぎやポイ捨てをしていた一般人に混じり、施設スタッフの姿が映っていたのだ。普段はおとなしく、物腰もやわらかくて利用客にも人気のある20代の男性スタッフ。しかも防犯カメラの映像から、施設スタッフが率先してゴミなどを捨てていたことが判明したのだ。
「該当スタッフを呼び出すと迷惑行為は認めましたが、目的については口を割らず、不明。警察へは相談しないかわりに迷惑行為をいますぐやめ、3か月以内に別の職場を探して自主退職することで決着しています。営業終了後の駐車場も、そっと閉鎖されることになりました」
そして、「オーナーはスタッフのことを信頼しきっていたので、相当ショクを受けたようです。騒動のあと、オーナーは体調不良を理由にしばらく欠勤。出勤後は、まるで人が変わったようにスタッフを疑うようになりました」と実里さん。
「ちょっとしたことでも不安や不信感の火種になるようで、『〇〇(スタッフの名前)さんの行動、最近おかしくないか?』『こんなことがあったんけど、こいつは信用できるのだろうか?』と言って、私に監視のようなことをさせるようになってしまい悩んでいます」
働きやすかった職場の雰囲気もイマイチとなり、「以前のような職場に戻ってほしい」と実里さんは嘆く。駐車場の閉鎖だけにとどまらず、オーナーの人柄さえも変えてしまった迷惑行為。こういった残念が少しでも減るよう、マナーやモラルを大切に過ごしたいものだ。<TEXT/夏川夏実>
【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Twitter:@natukawanatumi5