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“繊細な18歳女性”が裏垢の世界にハマったワケ。初対面の男性との“大人”も「あまり抵抗感はなかった」

日刊SPA! 2024年9月18日 15時53分

食事やデート、時には体を重ね、男性から金銭を受け取る“パパ活”。昨今の不景気や、SNSによるルッキズムの増長、ホストクラブの流行などに伴い、パパ活で稼ぐ女性――いわゆる“パパ活女子”は増え続けている。
彼女たちはどのようなきっかけでその世界に足を踏み入れ、何を思いながらパパ活をしているのか。パパ活女子たちの過去と、今、そしてこれからの生き方に迫る。

◆小学校から不登校に…内向的で繊細な学生時代

18歳から1年間ほどパパ活をしていたという美咲さん(仮名・22歳)。あどけない顔立ちに薄化粧を施し、無地の清楚なワンピースを身にまとった彼女は、とても性を売った経験がある女性とは思えない。事実、パパ活と聞いてイメージされるような、派手な遊びや高価な買い物は一度だってしたことがないという。

むしろ、どちらかといえば内向的で、真面目な性格の彼女。繊細な一面もあり、学生時代は苦労も多かったそう。

「私は小学生の頃から不登校でした。多分、ちょっと“アスペ”なところがあり、もともと人と関わるのとか、集団行動も苦手だから、クラスでかなり浮いてしまい。だんだん、クラスメイトから『死ね』などと悪口を言われるようにもなり、学校に行きづらくなってしまって……。

中学校からは頑張って登校しようと思ったんですけど、自分の中学校が結構荒れてるところで、やんちゃな人たちが幅を利かせているような雰囲気でした。そういうテンションが私には合わず、結局中学校も不登校に。それでも、家での勉強は自分なりに頑張っていました」

◆暇を持て余し“裏垢界隈”と出会う

しかし、不登校により内申点が取れず、高校受験に失敗。浪人してもう一度志望校を目指すも、思うように成績が伸びず「いまのレベルで入れるようなところに入っても、周囲の人と合わず、またやめてしまうだろう」と思い、悩んだ末に通信制高校へ入学した。

通信制高校は登校日数が少なく、同級生の友人も作りづらい。家で時間を持て余す日々の中で、美咲さんは徐々に、ネットの海に転がる“性”の世界に引き込まれていく。

「もともと、性的なことには興味が強いほうでして。最初はエロ漫画から始まり、そういうアカウントをサーフィンしていたら、“裏垢”に辿り着きました。裏垢界隈の人たちはオフ会などもよくやっていて、楽しそうだな~と思ったんですけど、当時の私はまだ17歳。この年齢でその界隈に潜り込んだら、当たり前ですが全員に迷惑をかけてしまう。そう思って、最初のうちはただ悶々とアカウントを眺めているだけでした」

裏垢とは、知人友人に公開する表のアカウントとは別に、よりクローズドなアカウントを所有することだが、狭義では自身の性体験などを赤裸々に公開する匿名のアカウントを指す。美咲さんの言う裏垢とは、正に後者のことである。

◆裏垢デビューで交友関係が広がり…

「18歳になる頃にコロナが流行り始めて、家から出る機会がさらに少なくなってしまいました。家にこもりきりの生活が寂しくなり、そろそろ友達がほしくなったので、マッチングアプリのティンダーを始めてみたんです。すると、ティンダーを開始して一発目に、裏垢で見たことのある男性とマッチして……」

なんと、憧れの(?)“裏垢男子”を引き当てた美咲さん。それまでは彼氏ができたことも、性行為の経験もなかった彼女だが、その男性との出会いをきっかけに、さまざまな扉を開いていく。

「彼は裏垢界隈のオフ会をよく開いている人だったので、彼を通じて色んな人と知り合うことができました。裏垢界隈のオフ会では、普通に集まって食事をするだけのときもあれば、複数人で性的な遊びを楽しむこともあり。今まで抑圧されてきた自分の欲求を素直に解放することができて、とても居心地がよかったです」

◆最初から“大人”ありきのパパ活

裏垢界隈のオフ会で交友関係を広げるかたわら、引き続きティンダーでも個人的な遊び相手を探していた美咲さん。そんな中、ティンダー上でパパ活募集をしているおじさんが彼女の目に留まる。

「コロナでバイトがしばらくお休みになっていたのでお金もほしかったし、何より当時はとにかく刺激的な体験がしてみたくて、そのパパ活おじさんとマッチしてみました。裏垢界隈でもパパ活をしている子は結構いて『パパ活やってみようかな~』と自分の裏垢で呟いたら、みんながいろいろアドバイスをくれて。『金額は事前に必ず確認しなきゃだめだよ!』とか(笑)。

裏垢界隈の友達もやっているなら怖くないし、ものは試しだと思ってパパ活おじさんと会うことを決意。そのパパとは最初から、体の関係ありきの“大人”で会う約束をして、当日は直接ホテルへと向かいました」

裏垢界隈オフ会での慣れもあり、初対面の男性と二人でホテルに入ることにあまり抵抗感はなかったという。部屋では若干の談笑を交わしたのち、すぐに性交渉を開始。3万円ほどのお金を渡され、1~2時間ほどで帰宅した。美咲さんはこのときのことを、「あまりよい経験ではなかった」と語る。

「内容には合意していたし、嫌なことをされたわけではないのですが、なんか想像と違ったんですよね。パパ活のおじさんって、もっとお金持ちで豪快で、今までしたことがないような経験をさせてくれるものだと思ってたから。案外そうでもないとわかり、なんかしょうもないなと思っちゃって。その人とはもう会わないだろうなと思い、帰り道でブロックしてしまいました」

◆お金だけの性交渉を続けたら「そういう行為が嫌いになりそう」

その後も別の男性たちとパパ活をしたが、二人目以降は食事や初回の顔合わせだけに留め、お金をもらっての性交渉は二度としなかった。

「お茶や食事だけだと、もらえるお金は3000円とか5000円くらいだったけど、興味がない人とお金だけのために性交渉していたら、そのうちそういう行為すべてが楽しめなくなってしまいそうで。もし、ある程度人柄にも惹かれるパパが現れたら、もう一度くらい(性交渉を)してもいいかなと思ったけど、結局そういう人とは出会えませんでした」

もともとは内向的で真面目なタイプの美咲さん。精神的な負担や葛藤も大きかったという。

「パパに対して、ウソをつくとか、演技をすることができなくて。普通にごはんを食べているだけなのに、それなりの金額をもらうのもだんだんと申し訳なくなり。また、私に対してガチ恋っぽくなってしまったパパもいて、その人の好意に自分が乗っかってお金をもらうのはよくないことだと悩んだり……。お金はほしいし、いろんな経験をしてみたいと思う反面、ちょっとしんどいなあと感じることは多かったです」

◆コロナに罹患した美咲さんに、心ない返信が

そして、2021年3月。緊急事態宣言の真っ只中に、美咲さんがパパ活から完全に離れるきっかけとなった出来事が起こる。

「感染経路は不明なのですが、コロナにかかってしまって。結構症状がひどくて、実家暮らしなのでホテル療養をすることになりました。当時は今よりもみんなコロナに対して過敏だったので、不安も大きく。味覚嗅覚がなくなっていたこともあり、このまま後遺症が残ったらどうしようとか、戦々恐々としていました」

3~4月に会う約束をしていたパパが何人かいたので、全員にキャンセルの連絡を入れた美咲さん。すると、向こうからの返信は……。

「『はーい』とか『わかった~』とか、ひどい人だと『コロナなんて別にかかっても大丈夫だよ(笑)』とか。とにかくみんな、ものすごく軽い感じの連絡しかくれなかったんです。こっちは本当に辛くて怖くて、それでも約束を断るのは申し訳なかったので、精一杯誠実な対応をしたつもりなのに、労いの言葉ひとつないなんて……と。今思えばあまり大したことでもないんですけど、そのときは私自身かなり極限の状態だったので、すごく悲しくなっちゃって」

それ以来すべてのパパと連絡を絶ち、アプリも辞め、いまは気持ちを切り替えて勉強に打ち込んでいるという。

「いまは近所のカフェでバイトをしながら、大学受験に向けて勉強中です。小中学校は不登校で、高校も通信制だったので、家で勉強をしていたとはいえ、やはりほかの学生と比べると後れを取ってしまっており。高校の全範囲を一からやり直しているような状況です。志望大学は今の自分の実力に見合ってない、レベルの高いところだけど、勉強自体は楽しいので。両親も応援してくれているし、ちょっと大変な道のりかもしれないけど、合格を目指して頑張っています」

◆パパ活は「自分に向いていなかった」

今後、またパパ活を再開することはありそうか尋ねると、美咲さんは「しないと思う」と答えた。

「当時は好奇心が旺盛で、なんでもかんでも試してみたいという気持ちがあったけれど、やってみて自分には向いていないということがわかりました。少し回り道をしてしまいましたが、私はやっぱり真面目に働いてお金を稼ぐほうが性に合っていると思います。大学を出たら、自分でコツコツ取り組める研究職に就きたいですね」

その一方で、趣味の裏垢はこれからも続けていくそう。彼女の志望大学合格と、お金には換えられない自由な裏垢ライフをこれからも応援したい。

<取材・文/渡辺ありさ>

【渡辺ありさ】
1994年生まれ。フリーランスライター兼タレント。ミス東スポ2022グランプリ受賞。東京スポーツ、週刊プレイボーイ、MEN’S NON-NO WEB、bizSPA!フレッシュなどで執筆。隔月刊漫画雑誌「グランドジャンプめちゃ」にて連載中の漫画「スワイプ」の原作も務める

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