高齢者ドライバーによる交通事故や危険運転のニュースが絶えない。
加齢に伴い、注意力が下がることなどが原因として挙げられるが、たとえ運転中でなくとも、ほんの少しの不注意で思いもよらぬトラブルが発生するケースもあるのだ。
◆スーパーの駐車場で祖父とばったり
サキさん(仮名・20代)と妹のユカさん(仮名・20代)は外出先で、危機一髪の出来事に遭遇したという。
その日、サキさんたちは近所のスーパーマーケットに買い物に訪れていた。駐車場で隣に停まっていた車が、偶然にも二人の祖父のものだったそう。
祖父は車内でタバコを吸っていたので、二人は車から降りて何気なく祖父に声をかけた。だが、このとき既に事件は起きていたらしい。
「本当にたまたま居合わせただけだったんですけど、あのとき私たちが声をかけなかったら祖父はどうなっていたのか……考えると今でも恐ろしくなります」
◆車の中が異様に煙たい
サキさんたちの祖父は愛煙家で、普段から車内でもよくタバコを吸っていたそう。しかし、この日はいつもと少し様子が違った。
「ねえ、なんか車の中が煙たすぎない?」
そうユカさんが切り出した通り、祖父の車の中は白い靄がかかったようになっていた。まるで、ボヤ騒ぎが起きているかのようにモクモクとした煙に包まれながらも、祖父は気にせずタバコをふかし続けていた。
「タバコのせいか?とも思ったのですが、それにしたって煙たいなと。買い物に来ていた他の人も不思議そうに祖父の車を見ていたし、車内を覗き込んでみたんです」
◆「燃えてる!」煙のもとは助手席のシート
あまりにも煙たい車内にもかかわらず、タバコを吸い続ける祖父のことを不安に思い、サキさんたちは身を乗り出して車内を見渡してみた。すると、衝撃の光景が目に飛び込んできた。
なんと、祖父が手に持っていたタバコの灰が助手席のシートに落ち、そこから引火して白い煙があがっていた。
車内が異様に煙たい原因は、祖父の吸っているタバコそのものではなく、タバコの灰のせいで燃えている助手席のシートだったのだ。
まだそんなに大きく燃えていないとはいえ、既に車の外にまで漏れだすレベルの煙があがっている。放っておいたら確実に、スーパーの駐車場で火事を起こしてしまう。
◆必死の訴えも祖父には響かず
「ねえ!!燃えてる!!消さなきゃ!!」
このままでは車も祖父も燃えてしまうと思い、二人は車内にいる祖父に大きな声で訴えた。しかし、あろうことか祖父は燃えているシートを一瞥して、また何事もなかったかのようにタバコを吸い続けたという。
この祖父の態度に、二人は怒りを通り越して呆れてしまったそう。
「二人で早くしないと!って怒ったんですけど、ダメでしたね。どうしたらいいか分からなかったのか、それとも本当に気にしてなかったのか……諦めて私たちで火を消せるものを探しました」
◆車が燃える寸前に姉妹で消火に成功
全く動く気配のない祖父に痺れをきらした二人は、とにかく火が消せるものを探した。
たまたまサキさんたちの車の中に、飲みかけのミネラルウォーターがあったのでそれを掴み、祖父に車のドアを開けさせて急いで助手席に水をかけた。幸い、火が大きくあがっていない段階だったのですぐ消火できたそう。
そして、二人は車のドアを全て開けて車内を換気し、事なきを得た。
その間、祖父はとくに動揺もせず孫二人が必死に消火しているのを眺め、処置が終わった後もサキさんたちにお礼を言うわけでもなく、いつも通り運転して自宅に帰っていったそうだ。
「本当にマイペースというか、他人事というか……もともと、家のこともほとんど祖母や母に任せっきりな人ではあったんですけど、今回ばかりはしっかりしてくれ!と思わずにはいられませんでしたね」
偶然孫たちが居てくれたおかげで、奇跡的に大事にならずに済んだ。
サキさん姉妹の祖父には、どうかこのようなことが今回限りになるよう努めてほしいと、そう願わずにはいられない。
<取材・文/沼里にほ>
【沼里にほ】
1994年生まれ。ムーミンとパンクロックをこよなく愛する。高校卒業後に某アパレル企業に就職し、20代をアパレルに捧げる。退職後はフリーライターとして活動中。noteやX(@chi2608)でエッセイや料理レシピを投稿。ベジタブル&フルーツアドバイザー。
加齢に伴い、注意力が下がることなどが原因として挙げられるが、たとえ運転中でなくとも、ほんの少しの不注意で思いもよらぬトラブルが発生するケースもあるのだ。
◆スーパーの駐車場で祖父とばったり
サキさん(仮名・20代)と妹のユカさん(仮名・20代)は外出先で、危機一髪の出来事に遭遇したという。
その日、サキさんたちは近所のスーパーマーケットに買い物に訪れていた。駐車場で隣に停まっていた車が、偶然にも二人の祖父のものだったそう。
祖父は車内でタバコを吸っていたので、二人は車から降りて何気なく祖父に声をかけた。だが、このとき既に事件は起きていたらしい。
「本当にたまたま居合わせただけだったんですけど、あのとき私たちが声をかけなかったら祖父はどうなっていたのか……考えると今でも恐ろしくなります」
◆車の中が異様に煙たい
サキさんたちの祖父は愛煙家で、普段から車内でもよくタバコを吸っていたそう。しかし、この日はいつもと少し様子が違った。
「ねえ、なんか車の中が煙たすぎない?」
そうユカさんが切り出した通り、祖父の車の中は白い靄がかかったようになっていた。まるで、ボヤ騒ぎが起きているかのようにモクモクとした煙に包まれながらも、祖父は気にせずタバコをふかし続けていた。
「タバコのせいか?とも思ったのですが、それにしたって煙たいなと。買い物に来ていた他の人も不思議そうに祖父の車を見ていたし、車内を覗き込んでみたんです」
◆「燃えてる!」煙のもとは助手席のシート
あまりにも煙たい車内にもかかわらず、タバコを吸い続ける祖父のことを不安に思い、サキさんたちは身を乗り出して車内を見渡してみた。すると、衝撃の光景が目に飛び込んできた。
なんと、祖父が手に持っていたタバコの灰が助手席のシートに落ち、そこから引火して白い煙があがっていた。
車内が異様に煙たい原因は、祖父の吸っているタバコそのものではなく、タバコの灰のせいで燃えている助手席のシートだったのだ。
まだそんなに大きく燃えていないとはいえ、既に車の外にまで漏れだすレベルの煙があがっている。放っておいたら確実に、スーパーの駐車場で火事を起こしてしまう。
◆必死の訴えも祖父には響かず
「ねえ!!燃えてる!!消さなきゃ!!」
このままでは車も祖父も燃えてしまうと思い、二人は車内にいる祖父に大きな声で訴えた。しかし、あろうことか祖父は燃えているシートを一瞥して、また何事もなかったかのようにタバコを吸い続けたという。
この祖父の態度に、二人は怒りを通り越して呆れてしまったそう。
「二人で早くしないと!って怒ったんですけど、ダメでしたね。どうしたらいいか分からなかったのか、それとも本当に気にしてなかったのか……諦めて私たちで火を消せるものを探しました」
◆車が燃える寸前に姉妹で消火に成功
全く動く気配のない祖父に痺れをきらした二人は、とにかく火が消せるものを探した。
たまたまサキさんたちの車の中に、飲みかけのミネラルウォーターがあったのでそれを掴み、祖父に車のドアを開けさせて急いで助手席に水をかけた。幸い、火が大きくあがっていない段階だったのですぐ消火できたそう。
そして、二人は車のドアを全て開けて車内を換気し、事なきを得た。
その間、祖父はとくに動揺もせず孫二人が必死に消火しているのを眺め、処置が終わった後もサキさんたちにお礼を言うわけでもなく、いつも通り運転して自宅に帰っていったそうだ。
「本当にマイペースというか、他人事というか……もともと、家のこともほとんど祖母や母に任せっきりな人ではあったんですけど、今回ばかりはしっかりしてくれ!と思わずにはいられませんでしたね」
偶然孫たちが居てくれたおかげで、奇跡的に大事にならずに済んだ。
サキさん姉妹の祖父には、どうかこのようなことが今回限りになるよう努めてほしいと、そう願わずにはいられない。
<取材・文/沼里にほ>
【沼里にほ】
1994年生まれ。ムーミンとパンクロックをこよなく愛する。高校卒業後に某アパレル企業に就職し、20代をアパレルに捧げる。退職後はフリーライターとして活動中。noteやX(@chi2608)でエッセイや料理レシピを投稿。ベジタブル&フルーツアドバイザー。