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娘の世話を一切しないのに「親権をよこせ」と言う妻。破綻した夫婦が下した“至極当然の結論”

日刊SPA! 2024年9月20日 15時53分

文部科学省が公表した2022年の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」に驚くべき数字が含まれています。具体的にいうと小学校、中学校で不登校の生徒が30万人(299,048人)に達する勢い。これは前年度から、たった1年で22.1%(54,108人)も増えており、当然のことながら過去最多です。しかも全生徒に占める割合は3.2%に及びます。
次に不登校の理由ですが、最も多いのは無気力、不安(51.8%)ですが、筆者が注目しているのは親子の関わり方(7.4%)、家庭内の不和(1.6%)。つまり、家庭の事情で学校に通えなくなったケースもあるのです。

今回、紹介する相談者・宮田玲央さん(仮名)の娘(9歳)もそんな一人。玲央さんの妻は性格の振れ幅が大きく、娘さんに干渉したかと思えば、今度は放棄したり……娘さんは母親が自分に愛情があるのかどうか分からず、苦しみ、悩み、傷ついた結果、心身のバランスを崩し、昨年の夏休み明けに学校へ通えなくなってしまったのです。

◆なぜ9歳の娘は不登校になってしまったのか

夫婦が離婚する場合、どちらが子どもを引き取るのかを決めなければなりません(民法819条)。これを単独親権といいますが、将来的には共同親権(離婚しても元夫婦が一緒に子どもを育てる。2026年の予定)が決まっています。しかし、現在の制度では両親の離婚によって、どちらかの親を失うことになります。

これはまだ小さい子どもにとって辛い経験ですが、玲央さんはそれでも娘さんを妻から引き離すため、離婚しようと動き出したのです。昨年9月、玲央さんが筆者の事務所を訪れたとき、傍らには筆者の著書が置かれていました。しかも、ふせんがびっしりと貼られており、玲央さんの本気度が伝わってきました。

玲央さんが第一声で「こんなこと言いにくいのですが、娘が『おもらし』をしてしまって……」と恥ずかしそうに言いますが、娘さんはすでに9歳。「よほどのこと」がなければ、おもらしをしない年齢。娘さんが幼児返りしてしまうほどの出来事とは一体、何なのでしょうか?

<相談者の属性(すべて仮名)>
夫:宮田玲央(38歳・会社員・年収400万円)
妻:宮田杏奈(34歳・会社員・年収350万円)
長女:宮田里奈(9歳・小学生)

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。夫婦の年齢や性格、家事や育児のやり方、子どもの不調の症状や原因などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

◆家を出て行く娘をスルーする妻

「スマホが欲しい」と頼む娘、「まだ早い」と諭す父。これはどこの家庭にもある一つの光景ですが、その日の娘さんは「パパなんて大嫌い!」と大声で叫び、泣き出し、家を出て行ってしまったそう。玲央さんの家庭では万が一のときに備え、娘さんのパスモに少々の残高をチャージしておくのですが、娘さんはそのパスモを使ってバスや電車に乗って、どこかへ行ってしまったのです。

玲央さんは急いで後を追おうとするのですが、妻はいっこうに動こうとせず。韓流ドラマをテレビで見ながらポップコーンをむしゃむしゃと食すのです。玲央さんが「早く行かないと見失っちゃう!」と促しても、妻は我関せずという感じ。「そのうち、帰ってくるでしょ!」と突き放すのです。筆者が「奥さんはなぜ動かないのですか?」と尋ねると、玲央さんは「娘の家出は今回が初めてではなく、何度も同じことを繰り返しているんです」と答えます。

◆娘を連れて帰った後も、妻は無言のまま

妻も最初のうちは追いかけ、娘さんの姿をショッピングモールで発見したものの、娘さんは妻の姿が見えた途端、また走り出すのです。娘さんは吹き抜けから手を振ったりして、からかう仕草をすることも。こうして発見する、逃走するの繰り返しで妻はとうとう娘さんを捕まえることができませんでした。夜の8時、妻はほうほうのていで帰宅すると、娘さんは9時、何食わぬ顔で帰宅したのです。

だから、妻は今回も心配ないだろうと踏んでいるのですが、どうだったのでしょうか? 玲央さんは娘さんの姿を駅ビルで発見。やはり、妻と同じく鬼ごっこに付き合わされたものの、娘さんに追いつき、手を掴み、そのまま連れ帰ることができたのです。

玲央さんは「里奈(娘の名前、仮名)は女の子だろ? 犯罪に巻き込まれたらどうするんだ!」と怒りますが、妻は無言のまま。筆者は「娘さんは自分が気にかけているかを試しているのでは? 追いかけてこない奥さんから愛されていないと感じたのでしょう」と指摘。このことで娘さんは不安な気持ちを増長させたのです。

◆妻が持つ「表の顔」と「裏の顔」

玲央さんは「もともと妻とは子育てをめぐって喧嘩が絶えませんでした。娘が産まれてからずっとです」と振り返ります。妻は娘さんに対して「表の顔」と「裏の顔」を交互に見せるので、娘さんはどちらが本当の顔なのか分からず、そのたびに混乱するそうなのです。

まず表の顔とは娘さんのことを何もせず、完全に放棄すること。例えば、娘さんと一緒に遊んだりせず、外に連れ出したりせず、ずっとテレビを見せ続けるのです。せめて一緒にテレビを見たり、一場面について話したり、驚いたリアクションをとったりすれば、まだ娘さんが寂しい思いをすることもなかったでしょう。しかし、妻は別室で寝転がったり、友達とLINEをしたり、スマホでバチェラーを見たりするので、娘さんは一人寂しく、テレビを見るしかありませんでした。

妻のネグレクトな傾向は娘さんの成長にも悪影響を及ぼしました。例えば、平仮名の読み書き、絵の書き方、時計の見方、数字の数え方……当時、5歳だった娘さんに妻は何も教えませんでした。妻は「保育園で教えてもらったらいいでしょ!」と開き直るのですが、玲央さんは「保育園よりも、まずは家で親が基本的なことを教えるべきだと思うんですが。普通は……」と嘆きます。

次に裏の顔ですが、妻はキレたら何を仕出かすか分からないタイプですが、それは娘さんに対しても同様でした。例えば、ある日の朝、娘さんが朝食をなかなか食べ終わらずに保育園に行く時間が迫っていたそう。娘さんは当時4歳なので食べるペースが遅いのは仕方がないこと。それなのに玲央さんは「早くご飯食べなさいよ!これじゃ、みんなと一緒に学校行けないから」と叱ったのですが、娘は完全に委縮してしまい、食べるペースがますます遅くなったのです。

そのことに腹を立てた妻は娘さんの箸を取り上げ、シンクに「バンッ」と叩きつけ、「保育園やめるか?早く食べないなら、もう帰ってこなくていい、どこかに捨ててこようか!」とまくし立てたので、娘さんは恐怖のあまり、激しく号泣。結局、保育園の送迎バスには間に合いませんでした。

◆娘のカウンセリングも「断固拒否」

このように親子にもかかわらず、妻は娘さんとまともなコミュニケーションがとれていませんでした。玲央さんは娘さんが夜になっても眠れなかったり、食事をまともにとれなかったり、行動がおかしな方向へ向かったり……玲央さんはその原因が妻にあると思っていました。

玲央さんは娘さんの心身が少しでも良くなればと思い、心療内科で見てもらおう、カウンセリングを受けさせようと提案しました。しかし、妻は断固拒否。「里奈を病人扱いしないで!思春期外来に行くなんて大げさすぎる…放っておけば、そのうち良くなるのよ」と他人事のよう。妻は娘さんが他の子と違うと思っていて、そんな子どもの母親であることが「恥ずかしい」と感じていて、臭いものに蓋をするつもりでした。

厚生労働省の人口動態統計(2022年)によると子ども1人の場合(45,551組)、父親が親権を獲得したのはわずかに12%(5,475組)、母親(88%、40,076組)の方が圧倒的に有利ですが、そうも言っていられません。

◆離婚を切り出すも、「親権をよこせ」と…

玲央さんは限界に達し、ついに9年間、積もり積もったうっぷんをぶつけたのです。「悪いけど、母親失格だよ。お前がいると治るものも治らないよ。里奈から距離を置いてくれ!」と。

そうすると妻は「離婚するのは結構よ。あなたは私の邪魔でしかしないんだから。でも、あなたの言いなりにはならないわ!里奈は私が引き取って育てるんだから」と言い張るのです。

娘さんを夏休みの間だけスイミングスクールに通わせていたのですが、筆者は前もって「このエピソードを使いましょう」とアドバイスしておきました。妻は娘さんを決まった時間にプールへ送り届けることができず、受付の女性に「初回からこんなじゃ困りますよ!」と注意されたのです。プライドが高い妻は「もう来ない!」と逆ギレ。娘さんを連れて帰宅してしまったのです。

そこで玲央さんがスクールに平謝りをし、今後は妻ではなく玲央さんが送迎することで事なきを得たのですが、もし妻が親権を持ち、再度送迎をするのなら、受付やコーチを仲直りしなければなりません。

筆者は「それは無理でしょう。スイミングをしたい娘さんより、謝りたくない自分の方がかわいいのだから」と指摘しました。そのことを踏まえた上で玲央さんは「今後も通い続けるなら、保護者会や大会もあるんだよ。そのたびに日が潰れたり、休みを取らなければならないけど、それで本当にいいの?」と念押しをしたのです。

◆娘が宿題に追われるなか、夏休みを満喫

妻は夏休み中、娘さんとスイミング以外でどのように接していたのでしょうか? 小学生にとって最大の難敵は宿題です。実際のところ、妻が夏休みの宿題に触れることはなく、玲央さんに丸投げ状態。玲央さんはすべての休日を使い、娘さんが宿題を終えるまで、付きっ切りで見てあげたのですが、妻はどうでしょうか?

高校時代の旧友と旅行に行ったりして満喫していたのです。それなのに妻は「私にだってできる」と軽々しく言ってきたのですが、玲央さんは「お前にできるのか。しかも夏休みの宿題は毎年、増えるんだぞ! 旅行なんて行けなくなるけど」と一喝したのです。

◆無職時代に家事や育児に専念していたからこそ…

そもそも娘さんがずっと元気とは限りません。もともと娘さんは生まれつき鼻が悪く、毎年のように夏風邪をこじらせていましたが、いつも看病するのは玲央さんです。その年の夏は娘さんが治る前に、玲央さんが風邪をうつされてしまい、玲央さんは高熱にうなされながら、娘さんが嘔吐した食べ物を片付けるなど大変な思いをしました。

一方の妻は「風邪をうつされるくらいなら何もしたくない」と我関せずという態度でした。実際のところ、妻の実家は遠く、頼れる親戚は近くにいません。妻は子どものために自分を犠牲にするという気持ちがありません。そのため、玲央さんは「里奈が風邪を引いたら、どんなにつらくても、自分で看病をするんだぞ。本当にできるのか?」と投げかけたのです。

ところで玲央さんは過去にリストラの憂き目に遭い、一時的に職を失っていた時期があったそう。仕事が見つかるまでの間、玲央さんが家事や育児のすべてをやっており、その名残で今でも玲央さんが大半を担っています。こうして娘さんは妻より玲央さんと接している時間の方が長く、妻より玲央さんに懐いていました。

そのため、妻は娘さんに相手にされず、女親なのに子どもとの間に距離を感じていました。そのうち、週末は妻が留守番をし、玲央さんと子どもが遊びに行くように。そのため、不貞腐れた妻は転職する際、土日出勤の会社を選んだので、ますます家庭内で孤立していった経緯があります。

◆結局どうなったのかというと…

妻が「あんたたちが勝手にして私をのけものにしてきたじゃない!」と訴えてきたのですが、玲央さんは「一緒に出掛けても、いつも不機嫌じゃないか」と応酬。また妻が「あんたが無視するから、私は居場所がなかったの!」と吐露しても、玲央さんは「居場所がないのはお前のせいだろ?」と相手にしませんでした。

妻はこれ以上、この家にいても仕方がないと覚悟を決めたようです。娘さんを引き取り、シングルマザーとして苦労するより。ゼロから新しく人生をやり直したい。そんな一心で娘さんの親権を玲央さんに譲ることを約束したのです。

離婚後、玲央さんは娘さんを思春期外来のクリニックへ連れていき、薬を処方してもらったり、教育センター相談室に足を運んで専門的なカウンセリングをしてもらうなど懸命に看病しました。これらの効果は少しずつ現れ始め、食事の量や睡眠の質が改善されていきました。11月から少しずつ登校できるようになり、離婚から1年が経過した今は問題なく登校しています。

ここまで玲央さんが妻と離婚し、子の親権を持つという苦渋の決断を実現するまでの悪戦苦闘を見てきました。もちろん、結婚生活を続け、両親が揃った環境で子を育てることが第一だということは言うまでもありません。玲央さんの決断は子の不調の原因が妻にある場合に限られるでしょう。

仏の顔も三度までという言葉があります。玲央さんは今まで家出の対処、日常のしつけ、そしてスイミングの件など妻に挽回する機会を何度も与えてきました。しかし、妻が反省せず、改心せず、ただただ同じ態度を続けたので、最終的に玲央さんは心を鬼にせざるを得ませんでした。読者の方は仏が鬼にならなくてもいいように、まずは最大限の努力を重ねてください。

<TEXT/露木幸彦>

【露木幸彦】
1980年生まれ。国学院大学卒。行政書士・FP。男の離婚に特化し開業。6年目で相談7千件、「離婚サポートnet」会員は6千人を突破。「ノンストップ」(フジテレビ)、「ホンマでっかTV」(フジテレビ)、「市民のミカタ」などに出演。著書は「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷)など11冊。

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