特殊清掃業者に見積もりを依頼したものの、実際の施工費用が見積もりよりも大幅に高くなってしまい、泣き寝入りせざるを得なかったという被害の声をよく聞く。このような悪徳業者に引っかからないためには、どのような対策が必要なのだろうか。
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに悪徳業者の見抜き方について話を聞いた。
◆「50万円の相場が15万円」極端な安さにも注意
悪徳業者はいつの時代も一定数は存在していて、特徴としては、いくつかのパターンがある。
「悪徳業者のあるあるですが、見積もり額が異常に安いパターンや、見積りより異常に高いパターンが多いです。最近はお客さんのリテラシーが上がってきて、事前に調べたり、ネットで検索したりすれば、被害者の口コミなどで悪徳業者だとすぐわかります。なので、変な業者に捕まることは減ってきたと思います。
ただし、わかりにくい例で言うと、見積価格や施工価格が異常に安いパターンでも注意が必要です。例えば普通の業者だったら50万円で請け負う作業を15万円で請け負いますよと謳っている場合です」
◆悪徳業者の姑息なやり口
一見、企業努力で安くしているように見えるが、使用する道具などを考えると明らかに適正金額ではないはず。最初のインパクトとして他社よりも安い金額を提示して顧客を確保する業者がいるそうだ。
「薬用消毒剤や、オゾン水脱臭除菌洗浄機のような機械にしても全て初期投資がかかるので、極端に安い金額で作業を提供できないはずです。悪徳業者は『15万円でやれる範囲までやりましたが、臭いは落とせませんでしたと』いって匙を投げるんです。でもこの臭いをとらないとどうにもならないということで、また別の業者を呼ぶことに。結果として二度手間になり、無駄金になることが多いです」
前の業者ではどうにもならなかった作業を請け負うことを二次施工と呼んでいるが、孤独死現場案件の場合、10%くらいは二次施工の作業となる。
「『業者を呼んだけど、臭いが取れなかった』という相談を受けて、前の業者の続きからやることもありますが、どこまで作業したのかわからないので結局最初からやり直しになります。そうなると同じ作業に対して2回料金を払うことになるので、安さに釣られてみたものの、ただお金の無駄だったというパターンですね。こういう業者も我々は悪徳業者と呼んでいます」
近年は特殊清掃という仕事の知名度自体は上がってきたが、費用の相場感が定着していないため、割り増し請求をしてくる業者もいる。
「『ここは臭いが染み込みすぎているので床を全部剥がして消臭しないとだめですね』と言って、無理やり作業工程を増やして、もともとの見積り額から大幅に値上げする業者も多いです。我々がやるのであれば、床の一部分だけを切り取ればできる作業ですが、彼らは大袈裟な工程に書き換えるんです。もしかしたら業者の技術が足りないだけでわざとではないかもしれませんが、業者選びに失敗すると余計な出費につながります」
◆一度も特殊清掃をしたことないのに…
悪徳業者に引っかかった場合消費者センターに相談するという手もあるが、臭いが取れないと近隣住民に迷惑がかかるため、すぐに作業を手配しなければならず泣き寝入りすることが多いという。
「悪徳業者はすぐに対処しなきゃいけないというところに付け込んで高額請求をしてきます。なので、見積もりの段階で『これ以上の請求をされることはないですか?』と業者に聞くことが大事です。床をはがしてみないと費用がいくらかかるかわからない場合もあるのですが、『多くても追加で何万円くらいまでです』と伝えてくれるのは良い業者ですね」
中には特殊清掃が儲かるといって、最低限の機材だけ揃えて特殊清掃のプロだと広告をだす業者もいるそうだ。
「一度も特殊清掃をしたことない業者が現場に入ることがあるらしいのですが、拭き掃除だけで作業を終了したという話を聞いたことがあります。本人たちは知識がないのでそれしかできないのです」
◆悪徳業者の見分け方は?
悪徳業者の見分け方としては次のような方法がある。
「まず、自社のホームページがなく、広告のランディングページだけ持ってるパターンです。会社名は載っているけど住所や電話番号が書いてない業者も要注意です。スタッフの顔が載っていない業者も要注意です。
他には当日対応可能と書いてある業者も危険したほうがいいでしょう。そういう企業は電話しても『2週間後になります』と、やたら先延ばしされる場合が多いです。とにかくどんどん仕事を詰め込んでいくやり方ですね。最初の問い合わせさえできてしまえば営業スキルで仕事を取ってこれると思っているのでしょう」
悪徳業者を減らすにはどうしたら良いのだろうか。鈴木さんは「法整備ができていないと言うのも問題だと思う」と率直な胸の内を語る。
「アメリカの特殊清掃業者は、一定の規格をクリアした防護服を着用したり、感染症対策も厳しく見られたりする法律があります。一方、日本にそういった法律がありません。
うちの会社はC型肝炎と破傷風のワクチンを打って半年後に抗体ができるまで現場に入れませんが、悪徳業者の場合はそのような対策もしていないこともあります。日本も法律できちんとワクチン接種を義務付ければ、参入障壁が高くなり悪徳業者も減るはずです。国には特殊清掃業者という存在をきちんと考えてほしいですね」
<取材・文/山崎尚哉>
【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに悪徳業者の見抜き方について話を聞いた。
◆「50万円の相場が15万円」極端な安さにも注意
悪徳業者はいつの時代も一定数は存在していて、特徴としては、いくつかのパターンがある。
「悪徳業者のあるあるですが、見積もり額が異常に安いパターンや、見積りより異常に高いパターンが多いです。最近はお客さんのリテラシーが上がってきて、事前に調べたり、ネットで検索したりすれば、被害者の口コミなどで悪徳業者だとすぐわかります。なので、変な業者に捕まることは減ってきたと思います。
ただし、わかりにくい例で言うと、見積価格や施工価格が異常に安いパターンでも注意が必要です。例えば普通の業者だったら50万円で請け負う作業を15万円で請け負いますよと謳っている場合です」
◆悪徳業者の姑息なやり口
一見、企業努力で安くしているように見えるが、使用する道具などを考えると明らかに適正金額ではないはず。最初のインパクトとして他社よりも安い金額を提示して顧客を確保する業者がいるそうだ。
「薬用消毒剤や、オゾン水脱臭除菌洗浄機のような機械にしても全て初期投資がかかるので、極端に安い金額で作業を提供できないはずです。悪徳業者は『15万円でやれる範囲までやりましたが、臭いは落とせませんでしたと』いって匙を投げるんです。でもこの臭いをとらないとどうにもならないということで、また別の業者を呼ぶことに。結果として二度手間になり、無駄金になることが多いです」
前の業者ではどうにもならなかった作業を請け負うことを二次施工と呼んでいるが、孤独死現場案件の場合、10%くらいは二次施工の作業となる。
「『業者を呼んだけど、臭いが取れなかった』という相談を受けて、前の業者の続きからやることもありますが、どこまで作業したのかわからないので結局最初からやり直しになります。そうなると同じ作業に対して2回料金を払うことになるので、安さに釣られてみたものの、ただお金の無駄だったというパターンですね。こういう業者も我々は悪徳業者と呼んでいます」
近年は特殊清掃という仕事の知名度自体は上がってきたが、費用の相場感が定着していないため、割り増し請求をしてくる業者もいる。
「『ここは臭いが染み込みすぎているので床を全部剥がして消臭しないとだめですね』と言って、無理やり作業工程を増やして、もともとの見積り額から大幅に値上げする業者も多いです。我々がやるのであれば、床の一部分だけを切り取ればできる作業ですが、彼らは大袈裟な工程に書き換えるんです。もしかしたら業者の技術が足りないだけでわざとではないかもしれませんが、業者選びに失敗すると余計な出費につながります」
◆一度も特殊清掃をしたことないのに…
悪徳業者に引っかかった場合消費者センターに相談するという手もあるが、臭いが取れないと近隣住民に迷惑がかかるため、すぐに作業を手配しなければならず泣き寝入りすることが多いという。
「悪徳業者はすぐに対処しなきゃいけないというところに付け込んで高額請求をしてきます。なので、見積もりの段階で『これ以上の請求をされることはないですか?』と業者に聞くことが大事です。床をはがしてみないと費用がいくらかかるかわからない場合もあるのですが、『多くても追加で何万円くらいまでです』と伝えてくれるのは良い業者ですね」
中には特殊清掃が儲かるといって、最低限の機材だけ揃えて特殊清掃のプロだと広告をだす業者もいるそうだ。
「一度も特殊清掃をしたことない業者が現場に入ることがあるらしいのですが、拭き掃除だけで作業を終了したという話を聞いたことがあります。本人たちは知識がないのでそれしかできないのです」
◆悪徳業者の見分け方は?
悪徳業者の見分け方としては次のような方法がある。
「まず、自社のホームページがなく、広告のランディングページだけ持ってるパターンです。会社名は載っているけど住所や電話番号が書いてない業者も要注意です。スタッフの顔が載っていない業者も要注意です。
他には当日対応可能と書いてある業者も危険したほうがいいでしょう。そういう企業は電話しても『2週間後になります』と、やたら先延ばしされる場合が多いです。とにかくどんどん仕事を詰め込んでいくやり方ですね。最初の問い合わせさえできてしまえば営業スキルで仕事を取ってこれると思っているのでしょう」
悪徳業者を減らすにはどうしたら良いのだろうか。鈴木さんは「法整備ができていないと言うのも問題だと思う」と率直な胸の内を語る。
「アメリカの特殊清掃業者は、一定の規格をクリアした防護服を着用したり、感染症対策も厳しく見られたりする法律があります。一方、日本にそういった法律がありません。
うちの会社はC型肝炎と破傷風のワクチンを打って半年後に抗体ができるまで現場に入れませんが、悪徳業者の場合はそのような対策もしていないこともあります。日本も法律できちんとワクチン接種を義務付ければ、参入障壁が高くなり悪徳業者も減るはずです。国には特殊清掃業者という存在をきちんと考えてほしいですね」
<取材・文/山崎尚哉>
【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦