迷惑客を撃退するには、「スタッフが一丸となって同じ対応をすることも大切」だと警鐘を鳴らすのは、以前も話を聞かせてくれた篠原恵美さん(仮名・40代)。今回は、ラブホテルの清掃員として働くなかで、そう考えるキッカケになった体験について話を聞いた。
◆新人スタッフが喜ぶナゾの電話
篠原さんは、勤務年数10年以上の大ベテラン。そのため、掃除よりもフロント業務やスタッフの教育をすることのほう多くなっていた。落ち着いた環境で楽しく仕事をしていたのだが、出産・育休のためしばらく休暇を取ることになったのだとか。
「1年近く休みを取っていたこともあって、復帰するとスタッフの顔ぶれがガラリと変わっていて、雰囲気も違いました。私が産休に入る前からいたスタッフは、おっとりとした性格の男性1名だけ。新しく入った20代の男女2人は働くのもはじめてといった様子でした」
新しく入った20代の男Hさんと女M美さんはカップルのようで、来るもの拒まずで雇用してしまうオーナーが同時採用したことが判明。2人をどうやって教育するかと頭を悩ませていたとき、フロントの内線電話が鳴り、なぜかHさんとM美さんが盛り上がった。
「M美さんが出ようとしましたが、電話がすぐ手元にあったのは私のほう。反射的に電話に出ると、『…やっぱり恥ずかしい…』などという女性の声が遠くのほうから聞こえてきます。『もしもし、フロントにつながってますよ』と言うと、しばし無言」
◆受話器を取る手が“光速”だった
そのあと、「…ダメだって…」という女性の声が聞こえ、喘ぎ声が聞こえてきたのだ。「お客様」と、何度声をかけてもまったく反応がなく、喘ぎ声のみが続くため、「お客様、いったん切りますね」と受話器を置いた篠原さん。
「けれど、すぐにまた内線電話がかかってきました。私がトイレへ行こうと席を離れた瞬間だったこともあり、受話器を取ったのはHさん。ただ、このときのスピードは異常で、カルタ取り大会なら優勝しているレベルでした」
そんなHさんは受話器を取るなりニヤニヤし、M美さんに近づくよう手招きする。M美さんが「え?また、あのエロ女から?」と喜んで受話器に近づくと、「うっわ!また喘いでるよ」と声をひそめながらHさん。そんなやり取りが篠原さんの目の前で繰り広げられた。
「HさんとM美さんは、ニヤニヤしながら耳を澄まして電話を聞いています。その様子にまさかと思い、スピーカーボタンを押しました。すると、まさにさっき内線電話をしてきた女性だったのです。思わず受話器を奪い取り、『お客様?』と何度も声をかけました」
◆「楽しんでどうするの?」説教したけど
けれど、反応はない。こちらの問いかけには応じず喘ぎ続けていることを確認した篠原さんは、いったん受話器を置いて電話を切った。そして、「何やってるの? 楽しんでどうするの? きちんと仕事して」と、スタッフ2人を咎めている。
「でも、スタッフ2人はニヤニヤするばかり。『ヒマなときは、別にいいじゃないですか』『面白いし』『無料の生テレクラ』『ラブホの醍醐味』などと盛り上がり、楽しんでいる様子で埒が明かない。しかも電話をかけてきた客は、ここ最近、常連になっていると言います」
2人は「ラブホの客が増えるなら、万々歳」などと、まるで良いことをしているような口ぶり。呆れる篠原さんが追求すると、その客は、ここしばらく週2~3回の頻度でやってきては内線電話をしてくるというのだ。しかも、こちらが切るまで電話を切らないという。
◆特殊な性癖のカップルが集まる不安
「そのため、その間は、ほかからの内線電話はつながらない状態になります。すごく迷惑な行為。しかも、そういった電話を受けてくれるホテルなどと噂が広がれば、喘ぎ声を聞いてもらうことで興奮する性癖を持つ人たちが集まってくるかもしれません」
そうなれば、本当にフロントへ用事のある人が電話をかけられなくなってしまう。篠原さんは、そのことをあらためて説明。迷惑客の部屋へフロントから電話し、営業妨害になるのでやめるよう注意を促している。
「それ以降は、そういった内線電話がかかってくることは少なくなりました。でも、たまに喘ぎ声を聞いてほしいという人、いるんですよね…。ただ、注意をすれば聞き入れてくれる人がほとんどです」
篠原さんは、「今回の件については、HさんやM美さんが面白がってしまったために、相手を調子づかせてしまったことは否めません」と言い、「迷惑客を撃退するためには、スタッフが一丸となって同じ対応をすることも大切」とアドバイスしてくれた。<TEXT/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意
―[ラブホの珍エピソード]―
◆新人スタッフが喜ぶナゾの電話
篠原さんは、勤務年数10年以上の大ベテラン。そのため、掃除よりもフロント業務やスタッフの教育をすることのほう多くなっていた。落ち着いた環境で楽しく仕事をしていたのだが、出産・育休のためしばらく休暇を取ることになったのだとか。
「1年近く休みを取っていたこともあって、復帰するとスタッフの顔ぶれがガラリと変わっていて、雰囲気も違いました。私が産休に入る前からいたスタッフは、おっとりとした性格の男性1名だけ。新しく入った20代の男女2人は働くのもはじめてといった様子でした」
新しく入った20代の男Hさんと女M美さんはカップルのようで、来るもの拒まずで雇用してしまうオーナーが同時採用したことが判明。2人をどうやって教育するかと頭を悩ませていたとき、フロントの内線電話が鳴り、なぜかHさんとM美さんが盛り上がった。
「M美さんが出ようとしましたが、電話がすぐ手元にあったのは私のほう。反射的に電話に出ると、『…やっぱり恥ずかしい…』などという女性の声が遠くのほうから聞こえてきます。『もしもし、フロントにつながってますよ』と言うと、しばし無言」
◆受話器を取る手が“光速”だった
そのあと、「…ダメだって…」という女性の声が聞こえ、喘ぎ声が聞こえてきたのだ。「お客様」と、何度声をかけてもまったく反応がなく、喘ぎ声のみが続くため、「お客様、いったん切りますね」と受話器を置いた篠原さん。
「けれど、すぐにまた内線電話がかかってきました。私がトイレへ行こうと席を離れた瞬間だったこともあり、受話器を取ったのはHさん。ただ、このときのスピードは異常で、カルタ取り大会なら優勝しているレベルでした」
そんなHさんは受話器を取るなりニヤニヤし、M美さんに近づくよう手招きする。M美さんが「え?また、あのエロ女から?」と喜んで受話器に近づくと、「うっわ!また喘いでるよ」と声をひそめながらHさん。そんなやり取りが篠原さんの目の前で繰り広げられた。
「HさんとM美さんは、ニヤニヤしながら耳を澄まして電話を聞いています。その様子にまさかと思い、スピーカーボタンを押しました。すると、まさにさっき内線電話をしてきた女性だったのです。思わず受話器を奪い取り、『お客様?』と何度も声をかけました」
◆「楽しんでどうするの?」説教したけど
けれど、反応はない。こちらの問いかけには応じず喘ぎ続けていることを確認した篠原さんは、いったん受話器を置いて電話を切った。そして、「何やってるの? 楽しんでどうするの? きちんと仕事して」と、スタッフ2人を咎めている。
「でも、スタッフ2人はニヤニヤするばかり。『ヒマなときは、別にいいじゃないですか』『面白いし』『無料の生テレクラ』『ラブホの醍醐味』などと盛り上がり、楽しんでいる様子で埒が明かない。しかも電話をかけてきた客は、ここ最近、常連になっていると言います」
2人は「ラブホの客が増えるなら、万々歳」などと、まるで良いことをしているような口ぶり。呆れる篠原さんが追求すると、その客は、ここしばらく週2~3回の頻度でやってきては内線電話をしてくるというのだ。しかも、こちらが切るまで電話を切らないという。
◆特殊な性癖のカップルが集まる不安
「そのため、その間は、ほかからの内線電話はつながらない状態になります。すごく迷惑な行為。しかも、そういった電話を受けてくれるホテルなどと噂が広がれば、喘ぎ声を聞いてもらうことで興奮する性癖を持つ人たちが集まってくるかもしれません」
そうなれば、本当にフロントへ用事のある人が電話をかけられなくなってしまう。篠原さんは、そのことをあらためて説明。迷惑客の部屋へフロントから電話し、営業妨害になるのでやめるよう注意を促している。
「それ以降は、そういった内線電話がかかってくることは少なくなりました。でも、たまに喘ぎ声を聞いてほしいという人、いるんですよね…。ただ、注意をすれば聞き入れてくれる人がほとんどです」
篠原さんは、「今回の件については、HさんやM美さんが面白がってしまったために、相手を調子づかせてしまったことは否めません」と言い、「迷惑客を撃退するためには、スタッフが一丸となって同じ対応をすることも大切」とアドバイスしてくれた。<TEXT/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意
―[ラブホの珍エピソード]―