―[貧困東大生・布施川天馬]―
勉強は、人生で一番の投資です。参考書や動画が豊富な現代では、紙とペン、そして時間とやる気さえあれば、だれでも勉強を始められます。多くの投資が特殊技能や専門知識、元手となる資金を要求する中で、これは驚異的なハードルの低さ。
そして、勉強のもたらす利潤は、他の多くの投資を上回ります。例えば、大学受験の場合、2億円程度の利益を得られる可能性が。労働政策研究・研修機構による『ユースフル労働統計2022』によれば、大卒男性の平均生涯年収が2.6億円、大卒女性で2億1千万円。
一方、コンサルティング会社AFGの推計によれば、東京大学卒の平均生涯年収は4.6億円にものぼるそうです。
東大に入るためには3,000~5,000時間程度の勉強が必要と言われますが、仮に5,000時間で合格するとした場合、年収の上り幅2億円を5,000時間で割ると、時給換算で4万円の投資となる計算。
もちろん、既に社会人の方にはこの方法は難しいでしょう。何しろ東大合格までで4年から5年程度、そこから学部のカリキュラムを突破するのに最低4年。10年計画で東大を出て、就職先を探さなくてはいけません。これではリスクにリターンが見合っていない。
様々な資格を取得して年収をアップさせるほうが現実的です。では、どんな資格を何年以内に取得すれば、苦労に見合ったリターンが見込めるでしょうか。今回は、「税理士」資格について、徹底検証します。
◆税理士の平均年収は?
令和5年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、税理士の平均月収は約47万円で、賞与が140万円ほど。これは職業区分としては会計士と税理士が合わさっており、日本税理士会連合会による「第6回税理士実態調査報告書」によれば、社員税理士の平均年収は890万円。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査の概況」「毎月勤労統計調査」によれば、年収の中央値は396万円でしたから、この金額はかなり多いといえるでしょう。
もちろん、税理士資格を取って初年度からこの金額をもらえるわけではありません。業務経験年数などによって上昇するため、初期はこれより少ない金額になります。先述の「賃金構造基本統計調査」では、勤続年数次第ですが20代で34万以上、ピークの50代前半では約60万と振れ幅がかなり大きい。
また、勤続年数でも違いが大きく出ます。これによれば、いかに税理士といえども着任から5年目までは高くなく、20万後半から40万程度が大半。ただし、賞与の額が大幅に上昇しており、給与の2倍~3倍程度もらうケースが増えます。
勤続10年以降は給与も40万を超え、賞与が200万、300万を超える人も。15年以降で給与が50万~60万に到達します。
年代ごとに見ても、40代後半~50代半ばあたりを境に給与が減り始めるようで、税理士を目指すのであれば、若ければ若いほどに有利な状況が生み出せそう。
理想を言うのであれば、20代のうちに税理士資格を身に着けて就職し、経験を積みながら独立を狙うコースが鉄板と言えるかもしれません。
◆税理士資格の取得難易度は?
税理士になるためには、資格が必要です。試験は全11科目のうち5科目を選択して受験する形式で、合格基準は1科目あたり正答率60%。ただし、実際に配点は公表されず平均合格率は15%程度であることから、全体の上位10%を目指す試験対策が必要です。
さらに、税理士試験に合格したら税理士事務所などで「租税または会計に関する事務」の実務経験を最低2年積む必要が。これらを経て、ようやく税理士として仕事ができるようになります。
試験は科目合格制をとっており、1度の試験で5科目全てを合格しなくても大丈夫。一度合格した科目は一生涯有効です。試験は年に一度ですが、何回かに分けて合格すれば、税理士資格を手にできます。
税理士資格に合格するまでの時間は、一説には早くて3年から5年程度、平均約10年と言われます。1年~2年で1科目か2科目ずつ勉強して合格すると考えれば、これは妥当でしょう。
税理士として活動するまでには、早くて5年、平均12年ほど必要と考えられます。仮に平均の12年で税理士になれるとしたとき、何歳から目指し始めれば、苦労に見合った年収アップが見込めるのでしょうか。
◆40歳代前半までの税理士登録が理想的か
国税庁「令和4年民間給与実態統計調査」によれば、各世代の年収中央値は、20代前半で230万、後半で330万。ここから徐々に上がっていき、55歳から59歳でピークとなる470万円を迎えます。
年収470万円となると、ボーナスの有無にもよりますが月当たり30~40万程度もらっている計算。年代次第ですが、税理士勤続2年目から回収できる範囲です。
ただ、「頑張って勉強したのに年収が今まで通り」では骨折り損のくたびれ儲け。税理士として年収がピークに達するのは30代半ば~50代前半の時期で、この時期にはある程度の勤続年数を積み重ねておきたい。
となれば、20代半ば~30代半ばの頃から税理士資格の勉強を始めて、遅くとも40代前半までに税理士登録するコースだと、苦労に見合っただけの年収増が見込めそうです。
仮に40歳で税理士登録した場合、初年度こそ額面30万にも満たないのですが、2年目以降は額面で40万程度もらえそうです。さらに賞与は100万程度が相場であるため、年収600万~700万程度は見込めるでしょう。
先述の国税庁の調査では、40代の給与中央値は420万~450万程度ですから、単純計算で年間200~300万円の給与アップ。40代だけで2,000万~3,000万を回収できる計算で、生涯年収が大きくあがることは間違いないでしょう。
◆財テクとしての勉強を見直すべき
もちろん、税理士が夢であれば、年収に関係なく目指すべき。ですが、コスパで考えれば、20代半ば~30代半ばが勝負どころになりそうです。40歳までに税理士登録できれば、苦労に見合った年収が得られる可能性が高い。
勉強がもたらす生涯年収アップは、庶民の投資によるリターンを大きく上回ります。株式、不動産投資で数千万を儲けるよりも、勉強による自己投資のほうが、獲得金額、可能性ともに高くなると私は考えています。財テクとしての勉強を検討してみてはいかがでしょうか。
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
―[貧困東大生・布施川天馬]―
勉強は、人生で一番の投資です。参考書や動画が豊富な現代では、紙とペン、そして時間とやる気さえあれば、だれでも勉強を始められます。多くの投資が特殊技能や専門知識、元手となる資金を要求する中で、これは驚異的なハードルの低さ。
そして、勉強のもたらす利潤は、他の多くの投資を上回ります。例えば、大学受験の場合、2億円程度の利益を得られる可能性が。労働政策研究・研修機構による『ユースフル労働統計2022』によれば、大卒男性の平均生涯年収が2.6億円、大卒女性で2億1千万円。
一方、コンサルティング会社AFGの推計によれば、東京大学卒の平均生涯年収は4.6億円にものぼるそうです。
東大に入るためには3,000~5,000時間程度の勉強が必要と言われますが、仮に5,000時間で合格するとした場合、年収の上り幅2億円を5,000時間で割ると、時給換算で4万円の投資となる計算。
もちろん、既に社会人の方にはこの方法は難しいでしょう。何しろ東大合格までで4年から5年程度、そこから学部のカリキュラムを突破するのに最低4年。10年計画で東大を出て、就職先を探さなくてはいけません。これではリスクにリターンが見合っていない。
様々な資格を取得して年収をアップさせるほうが現実的です。では、どんな資格を何年以内に取得すれば、苦労に見合ったリターンが見込めるでしょうか。今回は、「税理士」資格について、徹底検証します。
◆税理士の平均年収は?
令和5年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、税理士の平均月収は約47万円で、賞与が140万円ほど。これは職業区分としては会計士と税理士が合わさっており、日本税理士会連合会による「第6回税理士実態調査報告書」によれば、社員税理士の平均年収は890万円。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査の概況」「毎月勤労統計調査」によれば、年収の中央値は396万円でしたから、この金額はかなり多いといえるでしょう。
もちろん、税理士資格を取って初年度からこの金額をもらえるわけではありません。業務経験年数などによって上昇するため、初期はこれより少ない金額になります。先述の「賃金構造基本統計調査」では、勤続年数次第ですが20代で34万以上、ピークの50代前半では約60万と振れ幅がかなり大きい。
また、勤続年数でも違いが大きく出ます。これによれば、いかに税理士といえども着任から5年目までは高くなく、20万後半から40万程度が大半。ただし、賞与の額が大幅に上昇しており、給与の2倍~3倍程度もらうケースが増えます。
勤続10年以降は給与も40万を超え、賞与が200万、300万を超える人も。15年以降で給与が50万~60万に到達します。
年代ごとに見ても、40代後半~50代半ばあたりを境に給与が減り始めるようで、税理士を目指すのであれば、若ければ若いほどに有利な状況が生み出せそう。
理想を言うのであれば、20代のうちに税理士資格を身に着けて就職し、経験を積みながら独立を狙うコースが鉄板と言えるかもしれません。
◆税理士資格の取得難易度は?
税理士になるためには、資格が必要です。試験は全11科目のうち5科目を選択して受験する形式で、合格基準は1科目あたり正答率60%。ただし、実際に配点は公表されず平均合格率は15%程度であることから、全体の上位10%を目指す試験対策が必要です。
さらに、税理士試験に合格したら税理士事務所などで「租税または会計に関する事務」の実務経験を最低2年積む必要が。これらを経て、ようやく税理士として仕事ができるようになります。
試験は科目合格制をとっており、1度の試験で5科目全てを合格しなくても大丈夫。一度合格した科目は一生涯有効です。試験は年に一度ですが、何回かに分けて合格すれば、税理士資格を手にできます。
税理士資格に合格するまでの時間は、一説には早くて3年から5年程度、平均約10年と言われます。1年~2年で1科目か2科目ずつ勉強して合格すると考えれば、これは妥当でしょう。
税理士として活動するまでには、早くて5年、平均12年ほど必要と考えられます。仮に平均の12年で税理士になれるとしたとき、何歳から目指し始めれば、苦労に見合った年収アップが見込めるのでしょうか。
◆40歳代前半までの税理士登録が理想的か
国税庁「令和4年民間給与実態統計調査」によれば、各世代の年収中央値は、20代前半で230万、後半で330万。ここから徐々に上がっていき、55歳から59歳でピークとなる470万円を迎えます。
年収470万円となると、ボーナスの有無にもよりますが月当たり30~40万程度もらっている計算。年代次第ですが、税理士勤続2年目から回収できる範囲です。
ただ、「頑張って勉強したのに年収が今まで通り」では骨折り損のくたびれ儲け。税理士として年収がピークに達するのは30代半ば~50代前半の時期で、この時期にはある程度の勤続年数を積み重ねておきたい。
となれば、20代半ば~30代半ばの頃から税理士資格の勉強を始めて、遅くとも40代前半までに税理士登録するコースだと、苦労に見合っただけの年収増が見込めそうです。
仮に40歳で税理士登録した場合、初年度こそ額面30万にも満たないのですが、2年目以降は額面で40万程度もらえそうです。さらに賞与は100万程度が相場であるため、年収600万~700万程度は見込めるでしょう。
先述の国税庁の調査では、40代の給与中央値は420万~450万程度ですから、単純計算で年間200~300万円の給与アップ。40代だけで2,000万~3,000万を回収できる計算で、生涯年収が大きくあがることは間違いないでしょう。
◆財テクとしての勉強を見直すべき
もちろん、税理士が夢であれば、年収に関係なく目指すべき。ですが、コスパで考えれば、20代半ば~30代半ばが勝負どころになりそうです。40歳までに税理士登録できれば、苦労に見合った年収が得られる可能性が高い。
勉強がもたらす生涯年収アップは、庶民の投資によるリターンを大きく上回ります。株式、不動産投資で数千万を儲けるよりも、勉強による自己投資のほうが、獲得金額、可能性ともに高くなると私は考えています。財テクとしての勉強を検討してみてはいかがでしょうか。
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
―[貧困東大生・布施川天馬]―