―[東京にビルを持とう。/青木龍]―
こんにちは。中小企業の経営者や富裕層向けの投資ビルを売買仲介する不動産会社アグノストリを経営している青木龍です。
物価上昇や円安が進むなか、お金を銀行に預けているだけではどんどん価値が目減りしていく。そんななかで、“ビル保有”こそ最強の資産防衛策だと思っています。
連載の最後となりますが、「本業とは別の手堅い収益を得て、企業が今後も繁栄していく方法論とマインド」をテーマに、不動産の垣根を越えた企業経営のあり方について話していきたいと思います。
◆既存事業に固執していては激動の時代についていけない
激動の時代、企業が継続していくためには新規事業にも取り組み、イノベーションを起こすことが重要となります。しかし、“既存事業だけでやっていくのが美学”という考え方に固執している人がいかに多いか。これでは時代についていけず、むしろ成長を阻害する原因にもなりかねません。
法人は株主に対する還元はもとより、利益や純資産の増加が大事になるわけで、その結果として株主価値を向上させることにつながります。
そう考えたとき、既存事業では株主に対してじゅうぶんに還元できなかったぶん、不動産事業に力を入れることで、株主還元の強化に努める企業も少なくありません。
例えば直近ですと、サッポロホールディングスの事例が顕著になっています。
同社の主力事業はビールの製造・販売ですが、少子高齢化によって若者が減少し、ビール市場は年々縮小傾向にあります。こうした状況下でも、サッポロホールディングスの株価は上場来高値を記録するなど、非常に堅調な推移を見せています。
これはなぜかと言うと、シンガポールの投資ファンドの資本を入れ、不動産事業を拡大していく方向性を検討しているからです。本業である酒販事業を継続していくために、“第2の収益源をつくる”という観点で不動産事業の強化を見据えているのがわかりやすい事例となります。
◆不動産投資のメリットは「安定収入の確立」と「返済実績による信用」
そんななか、世の中に存在する経営者の約8割が創業者ではなく、「ここぞ」という場面で勝負できない、攻められない人たちが多い印象を持っています。
「先代が残した資産を、投機的な側面を持つ不動産へ移してしまっていいのか……」
そう疑問に思う2代目、3代目の経営者は、どうしても新しい事業に踏み込んでいくのを躊躇してしまうのです。さらに、製造業であれば工場の新設といった設備投資に踏み切れないなど、本業であっても攻めの姿勢を貫くことができないものなんです。
こうした現状を踏まえて、不動産がもたらすメリットや効果について話すと、第2の収益源をつくること以外にも「返済原資のある借り入れの実績をつくれる」ことが言えます。
入居しているテナント企業がいる状態で不動産を購入すれば、少なくとも賃料は入ってくるわけで、しっかりと返済できる事業計画が整っているものであれば、借金を怖がる必要はないということです。
逆に返済原資のある借り入れ経験がないと、本業が傾いた際に金融機関からお金を借りづらくなってしまいます。
ひとつの例として有名なのが、1950年創業の老舗メーカーであるメリーチョコレートです。同社は2009年にロッテホールディングスが全株式を取得して買収し、現在はロッテグループの傘下になっていますが、歴史のある会社が事業売却するまでに追い込まれたのは、無借金経営を貫いていたからです。
無借金で会社を経営するのは安定的で、健全な状態だと言えますが、いざ本業の業績が悪化したときに、今まで借入実績がないために、お金を貸してもらえない。つまり本業が好調なときこそ、いかに“借り入れ慣れ”をしておくかが大事になるんです。
◆「何もしないで資産をとっておく」のは大きなリスク
経営者は重大な意思決定を下し、会社の方向性を定めるのが最も重要な仕事です。
一方で、変化を恐れて現状維持を望んだり、情に流されて的確な判断を怠ったりすれば、「悪くなることはあっても、良くなることはない」という状況に陥ってしまいます。
また、日本の企業全体のうち、中小企業は99%を占め、30〜40年以上続いている会社の多くは2代目が継いでいますが、創業者を超える手腕を発揮する人がなかなか現れないため、新しい事業へ取り組む企業は少数派だと感じています。
先代の築いた事業を維持するために「攻め」よりも「守り」を重視するのが日本の中小企業における文化だとも言えますが、資産を守るために相続や会社の株式譲渡をするにしても譲渡税が発生し、資産価値が減っていくのが税制の仕組みになっている。
つまり、現状維持をしようとすればするほど、先代から後継者へと代替わりを重ねていくうちに、資産がどんどん目減りしてしまうわけです。
相続税の最高税率は55%なので、20億の資産を引き継いだら半分は税金で差し引かれて10億を相続する形になります。その10億を資産として大事に保管しておいたとしても、次の代にバトンタッチしたらその資産は5億になってしまう。こうした税制の仕組みがある以上、「何もしないで資産をとっておく」のは大きなリスクだと言えるでしょう。
◆デフレ状況下での現金保有は投資に等しい
我々にとって身近な資産は現金や株だと思いますが、これだけ為替が動いているということは「円で持っていること自体が投資」に等しい状態となっていることに気づくべきだと思います。
「現金が安全資産」というのは、あくまでデフレ状況下での話。いまだにその印象を引きずっている人もいますが、人間の意思でいくらでも増やせて、かつ流動性の高い現金や株は、価値が下がりやすいんですよ。
自分の手元にある資産を守るためには、人間が供給できないものに投資する。すなわち、資産を安全なところに移すことが重要になってくるわけです。
投資対象を例に挙げると、金の場合は元本の保全性が高い代わりに配当がなく、株式の場合は元本の保全性がないものの、配当を得られます。これらのいいところ取りをしたのが「オフィスビル投資」だと私は考えています。
価値の値崩れがしにくく、賃料収入という形で配当が出るため、オフィスビル投資は安定収入の確保や返済実績による信用の獲得、売却できる資産の保有をするための選択肢のひとつになり得るわけです。
加えて、Cグレードのオフィスビル(1フロア20坪〜100坪、総面積1万平米未満)の供給が約20年間ほどされていないことは以前の連載でも述べたとおりで、日本の企業の99%を占める中小企業が必要とするCグレードビルへの投資が最適な資産防衛策だと考えています。
現在、Sグレードビル(総面積4万平米以上、階数40階以上の大型ビル)やAグレードビルの建設が進むなかで、Cグレードビルの数は減ってきています。
さらに、日本の不動産は海外勢に買い漁られている状況であり、必然的にCグレードビルの売買価格が上がってきている今こそ、オフィスビル投資へ参入する最適なタイミングだと言えるのではないでしょうか。
弊社では、メーカーやビルメンテナンス、産業廃棄物処理、カーディーラーなど、さまざまな業種・業界のクライアントを支援していますが、オフィスビル投資による安定収入や不動産の買い増しなど、首尾よく成果をあげています。
本業はうまくいっていても、この先何が起こるかわからない。自分の身は自分で守る。そのために投資を始める。
このようなマインドを持ち、現状維持に対する危機感からオフィスビル投資へ注力しているのに加え、「自分たちで使うもの」と「人に貸すもの」を完全に分け、合理的な判断を下して取り組んでいるのが結果に結びついていますね。
◆金融リテラシーに関する情報弱者を減らしたい
最後にあらためてお伝えしておきたいのが「安定収入を確保しておくことで、自分たちの生き方を貫ける」ということです。
どんなに良い理念、優れたサービスを提供していても、資本主義社会である以上、会社が存続できなかったら崩壊してしまうわけです。
そうならないためのひとつの手段が不動産投資になります。労働収入には限界があり、組織を継続していく上では属人的ではない売り上げの確保が重要です。
私は2018年にアグノストリという会社を立ち上げ、中小企業の経営者や富裕層向けにオフィスビルの売買仲介を行ってきました。
彼らは一国一城の主として、独自の考え方やこだわりをもっている場合もあるわけですが、私の意見や助言に歩み寄ってくれて、その結果として節税効果や利益提供につながった場合にやりがいを感じます。
今後の展望としては「金融リテラシーの情報弱者を減らしたい」と考えています。先代が資産をたくさん作っている中小企業の経営者は、節税対策や事業継承を税理士に任せているケースが多く、金融リテラシーが備わっていない場合も少なくありません。
今の時代、企業や個人がネット広告を出したりSEO対策をしたりすれば、インターネット上での検索で上位に表示されるため、何が正しい情報なのかが分かりづらくなっています。
そんななかで、私はアナログかもしれませんが、地道に1人でも多くに金融リテラシーに関する事実を伝えていくことが“使命”だと思っています。
<構成・文/古田島大介>
【青木龍】
株式会社Agnostri(アグノストリ)代表取締役社長。1989年、東京都出身。小学校から高校1年まで野球を続け、厳しい監督に鍛え上げられる。22歳で事業系不動産に特化した不動産売買の会社に就職。中小企業の経営者をターゲットに、ビル売買の営業開拓を実施。その後大阪支店・名古屋支店の立ち上げに携わる。最終的に東京で課長職に就任。会社員時代は1人で50億円を販売しトップセールスに。2018年に独立し、東京都千代田区にアグノストリを設立。会社設立後、年間100億円ほどの売買を締結。著書に『2%の人しか知らない、3億円儲かるビル投資術』(ぱる出版)、『御社の新しい収益基盤を構築する 区分オフィスビル投資術』(ビジネス教育出版社)がある。X(旧Twitter):@agnostri_aoki
―[東京にビルを持とう。/青木龍]―
こんにちは。中小企業の経営者や富裕層向けの投資ビルを売買仲介する不動産会社アグノストリを経営している青木龍です。
物価上昇や円安が進むなか、お金を銀行に預けているだけではどんどん価値が目減りしていく。そんななかで、“ビル保有”こそ最強の資産防衛策だと思っています。
連載の最後となりますが、「本業とは別の手堅い収益を得て、企業が今後も繁栄していく方法論とマインド」をテーマに、不動産の垣根を越えた企業経営のあり方について話していきたいと思います。
◆既存事業に固執していては激動の時代についていけない
激動の時代、企業が継続していくためには新規事業にも取り組み、イノベーションを起こすことが重要となります。しかし、“既存事業だけでやっていくのが美学”という考え方に固執している人がいかに多いか。これでは時代についていけず、むしろ成長を阻害する原因にもなりかねません。
法人は株主に対する還元はもとより、利益や純資産の増加が大事になるわけで、その結果として株主価値を向上させることにつながります。
そう考えたとき、既存事業では株主に対してじゅうぶんに還元できなかったぶん、不動産事業に力を入れることで、株主還元の強化に努める企業も少なくありません。
例えば直近ですと、サッポロホールディングスの事例が顕著になっています。
同社の主力事業はビールの製造・販売ですが、少子高齢化によって若者が減少し、ビール市場は年々縮小傾向にあります。こうした状況下でも、サッポロホールディングスの株価は上場来高値を記録するなど、非常に堅調な推移を見せています。
これはなぜかと言うと、シンガポールの投資ファンドの資本を入れ、不動産事業を拡大していく方向性を検討しているからです。本業である酒販事業を継続していくために、“第2の収益源をつくる”という観点で不動産事業の強化を見据えているのがわかりやすい事例となります。
◆不動産投資のメリットは「安定収入の確立」と「返済実績による信用」
そんななか、世の中に存在する経営者の約8割が創業者ではなく、「ここぞ」という場面で勝負できない、攻められない人たちが多い印象を持っています。
「先代が残した資産を、投機的な側面を持つ不動産へ移してしまっていいのか……」
そう疑問に思う2代目、3代目の経営者は、どうしても新しい事業に踏み込んでいくのを躊躇してしまうのです。さらに、製造業であれば工場の新設といった設備投資に踏み切れないなど、本業であっても攻めの姿勢を貫くことができないものなんです。
こうした現状を踏まえて、不動産がもたらすメリットや効果について話すと、第2の収益源をつくること以外にも「返済原資のある借り入れの実績をつくれる」ことが言えます。
入居しているテナント企業がいる状態で不動産を購入すれば、少なくとも賃料は入ってくるわけで、しっかりと返済できる事業計画が整っているものであれば、借金を怖がる必要はないということです。
逆に返済原資のある借り入れ経験がないと、本業が傾いた際に金融機関からお金を借りづらくなってしまいます。
ひとつの例として有名なのが、1950年創業の老舗メーカーであるメリーチョコレートです。同社は2009年にロッテホールディングスが全株式を取得して買収し、現在はロッテグループの傘下になっていますが、歴史のある会社が事業売却するまでに追い込まれたのは、無借金経営を貫いていたからです。
無借金で会社を経営するのは安定的で、健全な状態だと言えますが、いざ本業の業績が悪化したときに、今まで借入実績がないために、お金を貸してもらえない。つまり本業が好調なときこそ、いかに“借り入れ慣れ”をしておくかが大事になるんです。
◆「何もしないで資産をとっておく」のは大きなリスク
経営者は重大な意思決定を下し、会社の方向性を定めるのが最も重要な仕事です。
一方で、変化を恐れて現状維持を望んだり、情に流されて的確な判断を怠ったりすれば、「悪くなることはあっても、良くなることはない」という状況に陥ってしまいます。
また、日本の企業全体のうち、中小企業は99%を占め、30〜40年以上続いている会社の多くは2代目が継いでいますが、創業者を超える手腕を発揮する人がなかなか現れないため、新しい事業へ取り組む企業は少数派だと感じています。
先代の築いた事業を維持するために「攻め」よりも「守り」を重視するのが日本の中小企業における文化だとも言えますが、資産を守るために相続や会社の株式譲渡をするにしても譲渡税が発生し、資産価値が減っていくのが税制の仕組みになっている。
つまり、現状維持をしようとすればするほど、先代から後継者へと代替わりを重ねていくうちに、資産がどんどん目減りしてしまうわけです。
相続税の最高税率は55%なので、20億の資産を引き継いだら半分は税金で差し引かれて10億を相続する形になります。その10億を資産として大事に保管しておいたとしても、次の代にバトンタッチしたらその資産は5億になってしまう。こうした税制の仕組みがある以上、「何もしないで資産をとっておく」のは大きなリスクだと言えるでしょう。
◆デフレ状況下での現金保有は投資に等しい
我々にとって身近な資産は現金や株だと思いますが、これだけ為替が動いているということは「円で持っていること自体が投資」に等しい状態となっていることに気づくべきだと思います。
「現金が安全資産」というのは、あくまでデフレ状況下での話。いまだにその印象を引きずっている人もいますが、人間の意思でいくらでも増やせて、かつ流動性の高い現金や株は、価値が下がりやすいんですよ。
自分の手元にある資産を守るためには、人間が供給できないものに投資する。すなわち、資産を安全なところに移すことが重要になってくるわけです。
投資対象を例に挙げると、金の場合は元本の保全性が高い代わりに配当がなく、株式の場合は元本の保全性がないものの、配当を得られます。これらのいいところ取りをしたのが「オフィスビル投資」だと私は考えています。
価値の値崩れがしにくく、賃料収入という形で配当が出るため、オフィスビル投資は安定収入の確保や返済実績による信用の獲得、売却できる資産の保有をするための選択肢のひとつになり得るわけです。
加えて、Cグレードのオフィスビル(1フロア20坪〜100坪、総面積1万平米未満)の供給が約20年間ほどされていないことは以前の連載でも述べたとおりで、日本の企業の99%を占める中小企業が必要とするCグレードビルへの投資が最適な資産防衛策だと考えています。
現在、Sグレードビル(総面積4万平米以上、階数40階以上の大型ビル)やAグレードビルの建設が進むなかで、Cグレードビルの数は減ってきています。
さらに、日本の不動産は海外勢に買い漁られている状況であり、必然的にCグレードビルの売買価格が上がってきている今こそ、オフィスビル投資へ参入する最適なタイミングだと言えるのではないでしょうか。
弊社では、メーカーやビルメンテナンス、産業廃棄物処理、カーディーラーなど、さまざまな業種・業界のクライアントを支援していますが、オフィスビル投資による安定収入や不動産の買い増しなど、首尾よく成果をあげています。
本業はうまくいっていても、この先何が起こるかわからない。自分の身は自分で守る。そのために投資を始める。
このようなマインドを持ち、現状維持に対する危機感からオフィスビル投資へ注力しているのに加え、「自分たちで使うもの」と「人に貸すもの」を完全に分け、合理的な判断を下して取り組んでいるのが結果に結びついていますね。
◆金融リテラシーに関する情報弱者を減らしたい
最後にあらためてお伝えしておきたいのが「安定収入を確保しておくことで、自分たちの生き方を貫ける」ということです。
どんなに良い理念、優れたサービスを提供していても、資本主義社会である以上、会社が存続できなかったら崩壊してしまうわけです。
そうならないためのひとつの手段が不動産投資になります。労働収入には限界があり、組織を継続していく上では属人的ではない売り上げの確保が重要です。
私は2018年にアグノストリという会社を立ち上げ、中小企業の経営者や富裕層向けにオフィスビルの売買仲介を行ってきました。
彼らは一国一城の主として、独自の考え方やこだわりをもっている場合もあるわけですが、私の意見や助言に歩み寄ってくれて、その結果として節税効果や利益提供につながった場合にやりがいを感じます。
今後の展望としては「金融リテラシーの情報弱者を減らしたい」と考えています。先代が資産をたくさん作っている中小企業の経営者は、節税対策や事業継承を税理士に任せているケースが多く、金融リテラシーが備わっていない場合も少なくありません。
今の時代、企業や個人がネット広告を出したりSEO対策をしたりすれば、インターネット上での検索で上位に表示されるため、何が正しい情報なのかが分かりづらくなっています。
そんななかで、私はアナログかもしれませんが、地道に1人でも多くに金融リテラシーに関する事実を伝えていくことが“使命”だと思っています。
<構成・文/古田島大介>
【青木龍】
株式会社Agnostri(アグノストリ)代表取締役社長。1989年、東京都出身。小学校から高校1年まで野球を続け、厳しい監督に鍛え上げられる。22歳で事業系不動産に特化した不動産売買の会社に就職。中小企業の経営者をターゲットに、ビル売買の営業開拓を実施。その後大阪支店・名古屋支店の立ち上げに携わる。最終的に東京で課長職に就任。会社員時代は1人で50億円を販売しトップセールスに。2018年に独立し、東京都千代田区にアグノストリを設立。会社設立後、年間100億円ほどの売買を締結。著書に『2%の人しか知らない、3億円儲かるビル投資術』(ぱる出版)、『御社の新しい収益基盤を構築する 区分オフィスビル投資術』(ビジネス教育出版社)がある。X(旧Twitter):@agnostri_aoki
―[東京にビルを持とう。/青木龍]―