カスタマーハラスメント対策として、衣料品を販売する店舗を全国展開している大手企業「しまむらグループ」が具体的な対応方針をまとめたと発表したことは記憶に新しい。しまむらのように毅然とした対策を講じる企業も出てきてはいるが、まだまだ大変な現場も多いようだ。
◆返品ありきで購入する迷惑客
七條彩乃さん(仮名・40代後半)は、衣料品店に勤める販売スタッフ。その店舗では、トレンドを取り入れたデザインのリーズナブルな洋服を中心に販売している。そして、客の年齢層は10~70代と幅広い。
「当店だと、10~20代前半の迷惑客は少なく、40代以降が多い印象です。なかには、『家で着てみて、サイズが合わなかったら、いつもみたいに返品しに来ていい?』と、返品ありきで購入して帰るような、クレーマーとは違うタイプの迷惑な人もいます」
返品ありきで購入して帰るのは、よく店に来る60代の女性。店での試着を提案しても、「あ~」と言ってはぐらかすのみ。そして会計中に「家で着てみて、サイズが合わなかったら、いつもみたいに返品しに来ていい?」と聞いてくるということを繰り返すのだ。
「返品作業も手間がかかるので迷惑ですが、理不尽なことを言ってくるクレーマーのような迷惑客よりはマシです。実はこの前、すごい人がいました。販売スタッフとして同じ店で3年働いていますが、ランキング上位に入るカスハラ客です」
◆あきらかにサイズが小さいワンピースを
その客は、40代ぐらいで少し小太りの女性。はじめて見るその女性はしばらく店内をウロウロしたあと、ハンガーに掛かった洋服を触ったり手を離したりしながら、店内をキョロキョロしはじめたとか。
「私が『ご試着ですか?』と声をかけると、女性は頷きました。そこで、『どちらをご試着されますか?』と再び質問したのですが、彼女が『これで』と手渡してきたワンピースは、あきらかにサイズが小さいものだったのです」
ただ、サイズが小さいことをズバリ言うのは失礼。そう思った彩乃さんは、「こちらのメーカーは、一般のサイズより少し小さい仕様になっていたような気がしますので、念のため、ひとつサイズが大きいものもお持ちください」と、やんわりと提案している。
「本当はふたつ上のサイズを提案したかったのですが、さすがにそれは失礼にあたると思い、ひとつだけ上のサイズを提案しました。すぐにひとつ上のサイズを渡そうとしたのですが、見当たりません。焦っていると、近くにいたスタッフが気づいてくれました」
そして、「すぐにお持ち致します」と、ひとつサイズが大きいものを持ってきてくれたのだ。無事2着を手渡し、試着室へ案内。ホッとしていると、女性が入った試着室から「んっ…」と、声を押し殺すような声が聞こえてきた。
◆汗まみれになった女性が試着室から
「耳を澄ましていると、『はぁ…、あとちょっと』と小さな声でつぶやいたかと思った次の瞬間、ビリリッという音が聞こえ、そのあとはしばらく何も音がしなくなったんです。そしてだいぶん経ってから、汗まみれになった女性が試着室から出てこようとしました」
彩乃さんがすかさず「いかがでしたか?」と尋ねると、一瞬気まずそうな顔をした女性。けれどそのすぐあとに、「う~ん、やっぱりいらないかな…?」と、ワンピース2着をすごい勢いと力で突き返してきたのだ。だがよく見ると、ワンピースのファスナーが壊れている。
「しかもそれは、ワンサイズ大きいほうのワンピース。そこで、『お客様、申し訳ございません。こちらワンピースのファスナー部分が損傷しておりまして…』と声をかけました。すると、『は?私が壊したって言いたいの?』『無理やり買わせる気?』と、女性は逆ギレです」
◆私が壊したっていうの?
怒涛のごとく理不尽な言葉を浴びせる女性の声に気づき、女性にワンピースを手渡したスタッフが駆け寄ってきた。そして怒り狂う女性客から事情を聞くと、「私も、試着前まではこのワンピースのファスナー部分が損傷していなかったのを確認しています」とピシャリ。
「女性客は『私が壊したって言うなら、もういいわ!』と、ますます憤慨。店内は一時騒然としましたが、お客様がいなかったのが救いです。そして女性客がワンピースを奪うように手に取り、レジまでズカズカと歩いていき、お金を投げるように支払って帰って行きました」
たまたま商品の状態を事前に確認していたスタッフがもうひとりいたため、商品を買い上げてもらい一件落着となったというが、「トラウマレベルの出来事だった」と彩乃さん。意図せずとも商品を壊したときには、きちんと謝罪して弁償したいものだ。
<TEXT/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意
◆返品ありきで購入する迷惑客
七條彩乃さん(仮名・40代後半)は、衣料品店に勤める販売スタッフ。その店舗では、トレンドを取り入れたデザインのリーズナブルな洋服を中心に販売している。そして、客の年齢層は10~70代と幅広い。
「当店だと、10~20代前半の迷惑客は少なく、40代以降が多い印象です。なかには、『家で着てみて、サイズが合わなかったら、いつもみたいに返品しに来ていい?』と、返品ありきで購入して帰るような、クレーマーとは違うタイプの迷惑な人もいます」
返品ありきで購入して帰るのは、よく店に来る60代の女性。店での試着を提案しても、「あ~」と言ってはぐらかすのみ。そして会計中に「家で着てみて、サイズが合わなかったら、いつもみたいに返品しに来ていい?」と聞いてくるということを繰り返すのだ。
「返品作業も手間がかかるので迷惑ですが、理不尽なことを言ってくるクレーマーのような迷惑客よりはマシです。実はこの前、すごい人がいました。販売スタッフとして同じ店で3年働いていますが、ランキング上位に入るカスハラ客です」
◆あきらかにサイズが小さいワンピースを
その客は、40代ぐらいで少し小太りの女性。はじめて見るその女性はしばらく店内をウロウロしたあと、ハンガーに掛かった洋服を触ったり手を離したりしながら、店内をキョロキョロしはじめたとか。
「私が『ご試着ですか?』と声をかけると、女性は頷きました。そこで、『どちらをご試着されますか?』と再び質問したのですが、彼女が『これで』と手渡してきたワンピースは、あきらかにサイズが小さいものだったのです」
ただ、サイズが小さいことをズバリ言うのは失礼。そう思った彩乃さんは、「こちらのメーカーは、一般のサイズより少し小さい仕様になっていたような気がしますので、念のため、ひとつサイズが大きいものもお持ちください」と、やんわりと提案している。
「本当はふたつ上のサイズを提案したかったのですが、さすがにそれは失礼にあたると思い、ひとつだけ上のサイズを提案しました。すぐにひとつ上のサイズを渡そうとしたのですが、見当たりません。焦っていると、近くにいたスタッフが気づいてくれました」
そして、「すぐにお持ち致します」と、ひとつサイズが大きいものを持ってきてくれたのだ。無事2着を手渡し、試着室へ案内。ホッとしていると、女性が入った試着室から「んっ…」と、声を押し殺すような声が聞こえてきた。
◆汗まみれになった女性が試着室から
「耳を澄ましていると、『はぁ…、あとちょっと』と小さな声でつぶやいたかと思った次の瞬間、ビリリッという音が聞こえ、そのあとはしばらく何も音がしなくなったんです。そしてだいぶん経ってから、汗まみれになった女性が試着室から出てこようとしました」
彩乃さんがすかさず「いかがでしたか?」と尋ねると、一瞬気まずそうな顔をした女性。けれどそのすぐあとに、「う~ん、やっぱりいらないかな…?」と、ワンピース2着をすごい勢いと力で突き返してきたのだ。だがよく見ると、ワンピースのファスナーが壊れている。
「しかもそれは、ワンサイズ大きいほうのワンピース。そこで、『お客様、申し訳ございません。こちらワンピースのファスナー部分が損傷しておりまして…』と声をかけました。すると、『は?私が壊したって言いたいの?』『無理やり買わせる気?』と、女性は逆ギレです」
◆私が壊したっていうの?
怒涛のごとく理不尽な言葉を浴びせる女性の声に気づき、女性にワンピースを手渡したスタッフが駆け寄ってきた。そして怒り狂う女性客から事情を聞くと、「私も、試着前まではこのワンピースのファスナー部分が損傷していなかったのを確認しています」とピシャリ。
「女性客は『私が壊したって言うなら、もういいわ!』と、ますます憤慨。店内は一時騒然としましたが、お客様がいなかったのが救いです。そして女性客がワンピースを奪うように手に取り、レジまでズカズカと歩いていき、お金を投げるように支払って帰って行きました」
たまたま商品の状態を事前に確認していたスタッフがもうひとりいたため、商品を買い上げてもらい一件落着となったというが、「トラウマレベルの出来事だった」と彩乃さん。意図せずとも商品を壊したときには、きちんと謝罪して弁償したいものだ。
<TEXT/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意