文部科学省や国連などの統計によれば、2024年現在、世界の英語人口は約15億人と言われている。英語を公用語・準公用語としている国は54か国であり、総人口は約21億人にのぼる。
日本でも英語学習に勤しんでいる人は多いが、学習方法に悩んでいる人も中にはいるかもしれない。37歳でTOEIC905点を取得したという山添博之さん(40)に英語学習方法のコツを伺った。山添さんは子どものころに虐待、学校でのいじめを受けており、自閉症スペクトラムの診断も下りている。元ひきこもりでもありながら独学で英語を習得したという、極めて異色の人物だ。
◆いじめ、虐待でひきこもりに
「小学校6年生のときに百人一首大会の練習会というのがあって、各家庭を会場にして練習をしていたんです。最初は『読むスピードが遅い』だとか、言葉による攻撃から始まりました。やがてエスカレートして、殴る蹴るの暴力を受けるようになったんです。当時は全身あざだらけになっていました」
当然学校に行くことに恐怖を覚え、不登校となった山添さん。それを理由に親からも暴力を受けたという。
「家にいると親から殴られるので、仕方なく学校へ行くとそこでもいじめられる。苦しい状況でした。ひきこもりになって、高卒認定試験を受けて合格しました。ホームヘルパーの仕事や製造業勤務を経て、25歳のときに親元から独立したんです。20代前半まではずっと人生を終わらせることばかり考えていました。死にたいのに死にきれなかった」
◆辛い現実世界を変えたきっかけ
精神科へも通院し、措置入院も経験するなど、ずっと希死念慮に苛まれていた山添さんに転機が訪れる。きっかけは「英語」だった。
「ひきこもっていた当時から、オンラインゲームで海外の人と片言の英語でチャットしていたんです。自分の身近な周囲は敵だらけだけれど、その向こうには広い世界が広がっているのかな、と漠然と考えていました。25歳で家から独立してからは、ようやく気持ちが安定したんです。自然と将来のことも考えられるようになりました。ブロークンイングリッシュでの海外放浪経験を経て、もっと英語を勉強したいと思うようになったんです。本格的に英語の勉強を始めたのは34歳からです」
そう言って見せてくれたスマホの写真には、勉強に使用したという英語のテキストや問題集が山のように写っていた。
「僕がやった英語学習方法は主に3つです。まずはTOEIC800点を突破しよう、という目標を立てました。その上で①『いちばんはじめの英文法』やTOEICの問題集などの机上の学習、②「abceed」などのアプリによる学習、③リスニング(YouTubeで英語のコンテンツを観る、Spotify、BBCラジオなど)などです」
◆元ひきこもりの経験を英語で世界に発信
「勉強時間は1日何時間というのは決めてなくて、余暇時間を全部英語学習に充てるようにしてました。するとインターネットでつながっている海外の人との会話もわかるようになってきて、だんだん楽しくなってきました」
現在は「カウチサーフィン」というアプリを用いて海外の旅行者に自宅を滞在先として開放しつつ、英語でYouTube発信を行う山添さん。元ひきこもりとしての経験などを世界へ紹介しているとのことだ。
「日本語でひきこもっていた経験などを語ると、『自業自得だ』など罵詈雑言のようなコメントがつくことが多いんです。英語での配信だと、『頑張れよ』といったポジティブなコメントが多い」
◆英語学習のコツは英語を話し続けること
現在つらい状況に置かれている人にとっても、世界へ目を向けてみることが時として有効なのかもしれない。最後に日本の英語学習者へメッセージはあるか聞いてみた。
「ブロークンイングリッシュでも全然構わないので、とにかくどんどん英語を話し続けることが一つかなと思います。僕だけではなく、脳科学者の茂木健一郎さんなども言っている方法ですが……。英語ができるとコミュニケーションの幅も広がりますし、海外から情報や知識をダイレクトに入手できます。苦しい状況にいる人ばかりでなく、あらゆる人にとって英語はメリットが大きいかもしれません」
終始温和な様子で控えめに話していた山添さん。英語学習の可能性を垣間見た思いだった。
<取材・文/延岡佑里子>
【延岡佑里子】
障害者雇用でIT企業に勤務しながらの兼業ライター、小説家。ビジネス実務法務検定2級、行政書士試験合格済み。資格マニアなのでいろいろ所持している。バキバキのASD(アスペルガー症候群)だが、パラレルキャリアライフを楽しんでいる。Xアカウント名:@writer_nobuoka
日本でも英語学習に勤しんでいる人は多いが、学習方法に悩んでいる人も中にはいるかもしれない。37歳でTOEIC905点を取得したという山添博之さん(40)に英語学習方法のコツを伺った。山添さんは子どものころに虐待、学校でのいじめを受けており、自閉症スペクトラムの診断も下りている。元ひきこもりでもありながら独学で英語を習得したという、極めて異色の人物だ。
◆いじめ、虐待でひきこもりに
「小学校6年生のときに百人一首大会の練習会というのがあって、各家庭を会場にして練習をしていたんです。最初は『読むスピードが遅い』だとか、言葉による攻撃から始まりました。やがてエスカレートして、殴る蹴るの暴力を受けるようになったんです。当時は全身あざだらけになっていました」
当然学校に行くことに恐怖を覚え、不登校となった山添さん。それを理由に親からも暴力を受けたという。
「家にいると親から殴られるので、仕方なく学校へ行くとそこでもいじめられる。苦しい状況でした。ひきこもりになって、高卒認定試験を受けて合格しました。ホームヘルパーの仕事や製造業勤務を経て、25歳のときに親元から独立したんです。20代前半まではずっと人生を終わらせることばかり考えていました。死にたいのに死にきれなかった」
◆辛い現実世界を変えたきっかけ
精神科へも通院し、措置入院も経験するなど、ずっと希死念慮に苛まれていた山添さんに転機が訪れる。きっかけは「英語」だった。
「ひきこもっていた当時から、オンラインゲームで海外の人と片言の英語でチャットしていたんです。自分の身近な周囲は敵だらけだけれど、その向こうには広い世界が広がっているのかな、と漠然と考えていました。25歳で家から独立してからは、ようやく気持ちが安定したんです。自然と将来のことも考えられるようになりました。ブロークンイングリッシュでの海外放浪経験を経て、もっと英語を勉強したいと思うようになったんです。本格的に英語の勉強を始めたのは34歳からです」
そう言って見せてくれたスマホの写真には、勉強に使用したという英語のテキストや問題集が山のように写っていた。
「僕がやった英語学習方法は主に3つです。まずはTOEIC800点を突破しよう、という目標を立てました。その上で①『いちばんはじめの英文法』やTOEICの問題集などの机上の学習、②「abceed」などのアプリによる学習、③リスニング(YouTubeで英語のコンテンツを観る、Spotify、BBCラジオなど)などです」
◆元ひきこもりの経験を英語で世界に発信
「勉強時間は1日何時間というのは決めてなくて、余暇時間を全部英語学習に充てるようにしてました。するとインターネットでつながっている海外の人との会話もわかるようになってきて、だんだん楽しくなってきました」
現在は「カウチサーフィン」というアプリを用いて海外の旅行者に自宅を滞在先として開放しつつ、英語でYouTube発信を行う山添さん。元ひきこもりとしての経験などを世界へ紹介しているとのことだ。
「日本語でひきこもっていた経験などを語ると、『自業自得だ』など罵詈雑言のようなコメントがつくことが多いんです。英語での配信だと、『頑張れよ』といったポジティブなコメントが多い」
◆英語学習のコツは英語を話し続けること
現在つらい状況に置かれている人にとっても、世界へ目を向けてみることが時として有効なのかもしれない。最後に日本の英語学習者へメッセージはあるか聞いてみた。
「ブロークンイングリッシュでも全然構わないので、とにかくどんどん英語を話し続けることが一つかなと思います。僕だけではなく、脳科学者の茂木健一郎さんなども言っている方法ですが……。英語ができるとコミュニケーションの幅も広がりますし、海外から情報や知識をダイレクトに入手できます。苦しい状況にいる人ばかりでなく、あらゆる人にとって英語はメリットが大きいかもしれません」
終始温和な様子で控えめに話していた山添さん。英語学習の可能性を垣間見た思いだった。
<取材・文/延岡佑里子>
【延岡佑里子】
障害者雇用でIT企業に勤務しながらの兼業ライター、小説家。ビジネス実務法務検定2級、行政書士試験合格済み。資格マニアなのでいろいろ所持している。バキバキのASD(アスペルガー症候群)だが、パラレルキャリアライフを楽しんでいる。Xアカウント名:@writer_nobuoka