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なぜ「経営」は人から学ばないのか? これからの時代に必要なのは経営者と伴走する「参謀」

日刊SPA! 2024年10月2日 8時48分

「勉強やスポーツを先生や経験者から教わるように、経営も人から教わってもいいはずです。アスリート選手がコーチを付けるように、『参謀』を導入する経営者が増えたら、日本経済はもっと発展するのではないでしょうか」
 そう語るのは、著書に『The 参謀 -歴史に学ぶ起業家のための経営術-』を持つ資産防衛・ビジネスコンサルタントの松本隆宏さんだ。
 なぜ今の日本の企業経営に「参謀」が必要なのか、参謀とはどんな人材なのか、そのメリットは何か、松本さんに話を聞いた。

◆◆なぜ多くの経営者は「経営」を人から教わらないのか?

「学生時代の部活動では、野球でもサッカーでも水泳でも習字でもピアノでも、経験のある顧問の先生やコーチに習ったはずです。受験勉強も、教育のプロである予備校講師や塾講師に教わりました。社会人になってゴルフ教室や英会話教室に通っている人もいるでしょう。

 何か新しいことを学ぶ際には、先生やコーチに頼る。これは当たり前に受け入れられていることですが、なぜか経営については『誰かに習う』ということをしません。考えてみると、これはとても不思議なことだと思いませんか? 他人から経営を教わる機会があってもいいのではないでしょうか」(松本さん)

◆◆優れた経営者には優れた「参謀」がいる

 参謀というと、中国の三国志時代に蜀の初代皇帝となった劉備玄徳の軍師であった諸葛孔明や、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という戦国期の天下人3人の軍師をつとめた黒田官兵衛などがイメージされるかもしれない。

「軍師や参謀が重要視されたのは、歴史上だけではありません。古今東西の優れた経営者たちは、みな一様に、他人の力を借りる大切さを知っていました。

 例えばフォード・モーターの創設者であり自動車王と呼ばれたヘンリー・フォードは、『自分以外の人間に頼むことができて、しかも彼らのほうがうまくやってくれるとしたら自分でやる必要はない』という名言を残しています。Appleのスティーブ・ジョブズも、Googleの創業期を支えたことで知られる名コーチのビル・キャンベルに毎週のようにアドバイスを求めていたと言われています。

 このように、優れた経営者は自分だけの力に頼らず、他人の力や能力、アドバイスを上手に取り入れていた人々ばかりです。どんなに優秀な経営者でも、一人の力でできることには限界があるので、他人の力をうまく借りることが重要だと体感的に理解していたのだと思います」(松本さん)

◆◆専門家を取りまとめ、経営者に寄り添う「伴走者」

「私はこれまで『地主の参謀』というコンサルティング業を営むなかで、多くの地主さんや経営者の方にお会いし、数々の経営に関わる悩みを聞き続けてきました。それらの悩みの根本的な原因は、『適切な相談相手がいないから』という一つの結論にたどり着きました」(松本さん)

 一般的な企業は、財務・会計については税理士や会計士へ、法務については弁護士へ、融資については金融機関へと、分野ごとの専門家に頼るケースは多い。

「特に近年、経営者が専門家に頼る場面は急増しています。財務や法務のみならず、ITやデジタル対策、社員のメンタルケアをはじめとする労務管理など、一つの企業がやることは山ほどあります。

 プロに負けない知識をたった一人の人間が頭に詰め込むのは限界があるので、外部の専門家の意見に頼らざるを得ないのです」(松本さん)

 しかし、この傾向について、松本さんは警鐘を鳴らす。

「専門家はあくまでそのジャンルの知識に長けた専門家であり、“経営のプロ”ではありません。あくまで『専門家の立場からの最適解』です。また、専門家は自分で身銭を切って会社を運営しているわけではないので、『経営者の視点』が大きく欠けている可能性もあります。

 特定の専門家の意見を部分的に取り入れることで、経営方針を見誤ってしまう経営者の方は少なくありません。そのような事態を防ぐためには、全体を統括し、経営者と同じ視点で見てくれる『参謀』の存在が必要だと考えています」(松本さん)

◆◆愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

「プロイセン・ドイツの政治家で、鉄血宰相とも呼ばれたオットー・フォン・ビスマルクの有名な言葉に『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』があります。

 愚者とは自分で失敗をしないと失敗の原因を学ぶことができない人物のことで、自分の『経験』からしか学ぶことができない人を意味しています。一方、賢者とは自分は経験していなくても、先人たちが経験したことを『歴史』から学び、より多くの経験や知識を身につけ、失敗を避けることができる人のこと。

 これは、経営にも当てはまるのではないでしょうか。自分が失敗して初めて「失敗」を「失敗」として学ぶのではなく、自分よりも経験のある経営者たちから知識や知恵を学ぶことができれば、それだけ成功確率を高めることができます」(松本さん)

◆◆参謀のメリットとは?

 参謀から教えを請うことで得られるメリットは何か? 松本さんは「最大のメリットを挙げるなら、自分の気づいていない可能性に気づかせてくれる点」と話す。

「自分自身のことは、わかっているようで意外とわからないもの。特に、人より秀でている部分に関しては、『自分ができることは他人もできる』と思い込んでいて、自分の強みは自分ではなかなか見つけることができません。

 そんな自分の可能性に気づかせてくれて、自分の価値を最大化してくれるのが参謀です」(松本さん)

 自分のアイデアや事業には可能性があるのに、気づいていないだけかもしれない。そんな埋もれている可能性を見出し、適切なアドバイスをくれる存在なのだ。

◆◆すべての人が経営者の視点を

 これからの日本は、定年は65歳、70歳と引き上げられ、年金も減っていくだろう。

「私はこれからの時代、日本人全員が『起業する』という意識を持ってもおかしくないと思っています。今40代、50代の会社員の方であれば、今から少しずつ外に出ていく準備をすれば、定年のころには起業で十分稼ぐことも可能でしょう。

 定年が近い世代が起業するとなると、守るべきものも増え、簡単には失敗できません。そこで、すでにその道でいろいろな経験を積んできた参謀を置くことで、ほかの経営者が若い頃にしてきたような失敗をしなくても済むようになる。参謀から知恵を授かることで、ゼロから踏み出すのではなく、成功への近道をたどることができるのです。

 いかに他人の力を上手に借りるか。子供が塾や習い事に行くのと同じように、私たち社会人が仕事終わりにジムや英会話に行くのと同じ感覚で、自分のビジネスの先生を据えてアドバイスをもらう選択肢があってもよいのではないでしょうか」(松本さん)

<取材・文/日刊SPA!編集部>

【松本隆宏】
ライフマネジメント株式会社代表取締役。1976年、神奈川県相模原市生まれ。高校時代は日大三高の主力選手として甲子園に出場。東京六大学野球に憧れ法政大学へ進学。大学卒業後、住宅業界を経て起業。「地主の参謀」として資産防衛コンサルティングに従事し、この10年で数々の実績を生み出している。また、最年少ながらコンサルタント名鑑『日本の専門コンサルタント50』で紹介されるなど、プロが認める今業界注目の逸材。
ラジオ大阪OBC(FM91.9 AM1314)にて、毎週水曜日19:45~20:00「松本隆宏の参謀チャンネル®︎」を放送中。
著書に、『地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方』(2018年、エベレスト出版)、『アスリート人材』(2022年、マネジメント社)、『地主の決断―これからの時代を生き抜く実践知』(2023年、サンライズパブリッシング)、『地主の真実―これからの時代を生き抜く実践知』(2023年、マネジメント社)、『プロたちのターニングポイント』(2024年、サンライズパブリッシング)、
『アスリート人材の底力 折れない自分のつくり方』(2024年、サンライズパブリッシング)がある。

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