パチンコ店で遊技して出た玉を交換せずに会員カードに貯玉し、後日その玉を利用して遊技ができる「貯玉再プレーサービス」。等価交換ではない店舗では、貯玉を利用した方がお得に遊技できる。特に東京都や大阪府など、等価交換の店がない地域では利用している人も多いだろう。
ただ、今後貯玉再プレーをする際に「手数料を取られる」となったら、それでも利用するだろうか。
先日、10月1日に東北や関東を中心に展開する某パチンコ店が、来年の1月から手数料を徴収することを発表した。果たして、この流れは全国的に波及するのか。大手チェーンの営業統括部長のA氏にお話を伺った。
◆過去には一部のホールが手数料を取っていた時期も
一昔前は再プレーの際にシステム管理費の一環として手数料を取るホールは存在していたのだが、そのやり方が問題視され、2012年から手数料の徴収は禁止されている。
「以前、一部のホールが貯玉・再プレーシステムの利用に対して手数料を取っていたんですが、好き勝手にやりたい放題だったんですよ。例えば、特定日に『本日は手数料無料』といった感じで、集客に繋がるような使い方なんかもして。冷静に考えたら、日によって割合が変わる手数料ってあり得ないじゃないですか。そしたら、お上から『それはシステムの維持管理経費の範囲を超えてお店の利益を図る手段となっている』ってことでお叱りを受け、手数料の徴収は禁止になったんです」
その後、システムの整備や維持管理にかかる費用は年々増大、これまでのようにサービスとして提供し続けるのは難しいということで、今回の話が挙がったのだ。
「先ほどの件を踏まえて、『それなら手数料をシステムの維持管理経費の範囲内に必ず収めて、日によって割合がコロコロ変わるような使い方をしなければいいんだよね?』という解釈から、一定のルールを設けた上で再び手数料を取ることが認められたようです」
◆会員規約の変更&承諾がマストとなる
手数料を徴収する上で設けられたルールの一つに「会員規約を変更し承諾を受ける」というものがある。また、個別の会員ごとに承諾を受けるのが難しい場合は、3ヵ月以上の周知期間を設けたうえで変更することになっている。
「今すぐ告知したとしても3ヶ月後からの開始なので、ちょうど年末年始にかかるじゃないですか。手数料を取りたいと思った店も、さすがに集客が見込める時期にはあまりやりたくないですよね。ライバル店がやっていないのにウチだけ手数料を取り始めたら、さすがにお客さんが離れそうじゃないですか」
◆取られる手数料は統一できない
実際に手数料の徴収が導入された場合、再プレーをする度に手数料分の玉が引かれていくシステムがメインとなるが、ここでファンとして最も気になるのが「何%取られるか」だろう。
「具体的な手数料の割合は決まっていなくて、あくまで『維持管理経費の範囲内』としか明示されていません。当然ですが、お店によって規模や導入しているシステム、会員数が違うので、全ホールで統一というワケにはいかないんですよね。それと、もちろん貯玉・再プレーのメリット以上は取れません。取ったら誰も貯玉しなくなりますからね(笑)」
また、お店のシステムによっては、手数料をきっちり取るのが難しいところもあるのではないかとA氏は危惧する。
「ちょっと気になっているのが、古いタイプのシステムを使っているお店についてなんですけど……。設定した手数料をキッチリ引いたうえで玉やメダルを払い出せるのかな?という心配があります。かといって、そのために新しいシステムに変えると設備投資が掛かるし。そういった理由で導入しないホールも多いかもしれませんね」
◆率先して導入するところは少ない
これまで取っていなかった手数料を取れるとなれば、ホールにとっては決して悪い話ではないだろう。今後、A氏のホールでは導入する方向で動いていくのだろうか?
「ウチとしてはとりあえず様子見ですね。近隣のライバル店が導入したら始めるかもしれません。例えば、そこが手数料を7%にしていたら、じゃあウチは6.5%でやるかって感じで。今はウチみたいに、けん制しながら探り合っているホールさんが多いんじゃないですかね」
現状の再プレーシステムは、一日で使える玉数の上限が設けられているところがほとんど。だが、手数料を取るようになったらせめて上限は撤廃して欲しいところだが……。
「手数料を取るとなったら、さすがに一日の再プレー数の上限はなくすと思いますが、軍団がはびこっているお店だと上限なしにはできないでしょう。そうなったら一般ファンからすると迷惑でしかないですよね。実際、来年の1月から徴収予定のホールさんも『状況によっては再プレーの上限を設ける場合もあります』って告知に書いてありましたよ」
◆ホールの意見としては「そこじゃない」
ファンからするとほぼメリットが感じられず、ホール側も乗り気ではない今回の新ガイドライン。A氏曰く、この業界はこういった「微妙な案件」が多いと語る。
「もちろん手数料を取れるとなったら助かるんですが、積極的に動くところは少ないんじゃないですかね。なんかパチンコ業界って、そういう案件が多いんですよ。少しでも良くしようと思って動いているのはわかるんですが『そこじゃないんだよな~』みたいな(笑)。痒いところに手が届きそうで届かない感じ。貯玉再プレーで手数料を徴収できるようになるよりも、早く電子マネーの導入を進めて欲しいですね」
◆場合によっては一気に広まる可能性も
今回の話を聞く限り、即座に手数料の徴収が全国的に広まることはなさそうだ。しかし、機械代の高騰やファンの減少などの理由で、困窮しているホールが多いのも事実。大手のホールが導入に踏み切った途端、一気に広まる可能性も十分考えられる。
それが結果的にさらなる業界の衰退に繋がらないことを、一パチンコファンとして切に願うところである。
取材・文/サ行桜井
【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。
ただ、今後貯玉再プレーをする際に「手数料を取られる」となったら、それでも利用するだろうか。
先日、10月1日に東北や関東を中心に展開する某パチンコ店が、来年の1月から手数料を徴収することを発表した。果たして、この流れは全国的に波及するのか。大手チェーンの営業統括部長のA氏にお話を伺った。
◆過去には一部のホールが手数料を取っていた時期も
一昔前は再プレーの際にシステム管理費の一環として手数料を取るホールは存在していたのだが、そのやり方が問題視され、2012年から手数料の徴収は禁止されている。
「以前、一部のホールが貯玉・再プレーシステムの利用に対して手数料を取っていたんですが、好き勝手にやりたい放題だったんですよ。例えば、特定日に『本日は手数料無料』といった感じで、集客に繋がるような使い方なんかもして。冷静に考えたら、日によって割合が変わる手数料ってあり得ないじゃないですか。そしたら、お上から『それはシステムの維持管理経費の範囲を超えてお店の利益を図る手段となっている』ってことでお叱りを受け、手数料の徴収は禁止になったんです」
その後、システムの整備や維持管理にかかる費用は年々増大、これまでのようにサービスとして提供し続けるのは難しいということで、今回の話が挙がったのだ。
「先ほどの件を踏まえて、『それなら手数料をシステムの維持管理経費の範囲内に必ず収めて、日によって割合がコロコロ変わるような使い方をしなければいいんだよね?』という解釈から、一定のルールを設けた上で再び手数料を取ることが認められたようです」
◆会員規約の変更&承諾がマストとなる
手数料を徴収する上で設けられたルールの一つに「会員規約を変更し承諾を受ける」というものがある。また、個別の会員ごとに承諾を受けるのが難しい場合は、3ヵ月以上の周知期間を設けたうえで変更することになっている。
「今すぐ告知したとしても3ヶ月後からの開始なので、ちょうど年末年始にかかるじゃないですか。手数料を取りたいと思った店も、さすがに集客が見込める時期にはあまりやりたくないですよね。ライバル店がやっていないのにウチだけ手数料を取り始めたら、さすがにお客さんが離れそうじゃないですか」
◆取られる手数料は統一できない
実際に手数料の徴収が導入された場合、再プレーをする度に手数料分の玉が引かれていくシステムがメインとなるが、ここでファンとして最も気になるのが「何%取られるか」だろう。
「具体的な手数料の割合は決まっていなくて、あくまで『維持管理経費の範囲内』としか明示されていません。当然ですが、お店によって規模や導入しているシステム、会員数が違うので、全ホールで統一というワケにはいかないんですよね。それと、もちろん貯玉・再プレーのメリット以上は取れません。取ったら誰も貯玉しなくなりますからね(笑)」
また、お店のシステムによっては、手数料をきっちり取るのが難しいところもあるのではないかとA氏は危惧する。
「ちょっと気になっているのが、古いタイプのシステムを使っているお店についてなんですけど……。設定した手数料をキッチリ引いたうえで玉やメダルを払い出せるのかな?という心配があります。かといって、そのために新しいシステムに変えると設備投資が掛かるし。そういった理由で導入しないホールも多いかもしれませんね」
◆率先して導入するところは少ない
これまで取っていなかった手数料を取れるとなれば、ホールにとっては決して悪い話ではないだろう。今後、A氏のホールでは導入する方向で動いていくのだろうか?
「ウチとしてはとりあえず様子見ですね。近隣のライバル店が導入したら始めるかもしれません。例えば、そこが手数料を7%にしていたら、じゃあウチは6.5%でやるかって感じで。今はウチみたいに、けん制しながら探り合っているホールさんが多いんじゃないですかね」
現状の再プレーシステムは、一日で使える玉数の上限が設けられているところがほとんど。だが、手数料を取るようになったらせめて上限は撤廃して欲しいところだが……。
「手数料を取るとなったら、さすがに一日の再プレー数の上限はなくすと思いますが、軍団がはびこっているお店だと上限なしにはできないでしょう。そうなったら一般ファンからすると迷惑でしかないですよね。実際、来年の1月から徴収予定のホールさんも『状況によっては再プレーの上限を設ける場合もあります』って告知に書いてありましたよ」
◆ホールの意見としては「そこじゃない」
ファンからするとほぼメリットが感じられず、ホール側も乗り気ではない今回の新ガイドライン。A氏曰く、この業界はこういった「微妙な案件」が多いと語る。
「もちろん手数料を取れるとなったら助かるんですが、積極的に動くところは少ないんじゃないですかね。なんかパチンコ業界って、そういう案件が多いんですよ。少しでも良くしようと思って動いているのはわかるんですが『そこじゃないんだよな~』みたいな(笑)。痒いところに手が届きそうで届かない感じ。貯玉再プレーで手数料を徴収できるようになるよりも、早く電子マネーの導入を進めて欲しいですね」
◆場合によっては一気に広まる可能性も
今回の話を聞く限り、即座に手数料の徴収が全国的に広まることはなさそうだ。しかし、機械代の高騰やファンの減少などの理由で、困窮しているホールが多いのも事実。大手のホールが導入に踏み切った途端、一気に広まる可能性も十分考えられる。
それが結果的にさらなる業界の衰退に繋がらないことを、一パチンコファンとして切に願うところである。
取材・文/サ行桜井
【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。