元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半が経過したところで引退を決意し、現在は同人作品やセクシービデオの脚本など、あらゆる方面で活躍中。
◆ホストの売掛問題はセクシー業界にも…
ホストクラブの売掛とは要するに“ツケ”のことで、通常なら期限までに返済せねばならないもの。しかしここ数年、店が売掛の上限を決めなかったり、お客が返すアテもないのにどんどんツケたり、ホストが売り上げのために顧客に無理をさせるといった事案が多発。その結果、各地で様々なトラブルが起きてしまった。
徐々に話が大きくなり、売掛問題はニュースに取り上げられたほど。こうして2024年4月より、歌舞伎町のホストクラブは売掛制度が廃止される。
ただ「ツケ制度は見事になくなり、夜の街はクリーンに遊べるようになりました。めでたしめでたし……」とならないのが繁華街の恐ろしいところ。
売掛の後遺症はセクシー業界にも影響を及ぼし、“そのためだけ”にデビューへと至る女性が増えているという。
◆売掛制度が廃止になっても“チャラ”にはならない現実
2024年4月に売掛制度がストップされたのは事実だが、今まで溜まったツケがチャラになるわけではない。自分で飲み食いした料金なのだから、最後まで責任を持って支払う義務を課せられるのは当たり前の話である。
冷静に考えればわかることなのだけれど、悲しいかな売掛に売掛を重ねるタイプは感覚が麻痺しているので、渦中にいる時は危機に気づかないという。ハッとした頃には目の前にたんまりと溜まったツケが待ち受けており、“時すでに遅し”状態だ。
現実的な数字を目の当たりにし、このままでは払えないことを確信した女性は、最終手段と言わんばかりにセクシー業界へ足を踏み入れていく。
◆セクシー業界入りしても必ず返せるとは限らない
なお、売掛まみれの女性といっても、ホストクラブに通える経済力は持っているので、決して低収入ではない。ホストも明らかに返せないお客にはツケさせないため、売掛をきっかけにセクシー業界入りを決めるタイプは、ほぼ100%夜職の女性だ。
彼女たちはお金がほしいので、やる気は十分ある。事務所としてはありがたい存在だが、セクシー女優になったからといって完済できるとは限らない。まずオファーが来るかはわからないし、仮に大手メーカーの専属が決まっても、ツケの金額が相当なものだったら一回のギャラで全部は返せないだろう。
最近の例だと、一発ドカンとギャラをもらったのに「まったく完済の目処がたたず、夜のお店を掛け持ちしている。それでも終わらない」なんて話も聞いた。
もちろん女優デビューして売れっ子になり、長い目で見ると収入がマイナスからプラスになる流れも多いので、絶対に完済はムリだという話ではない。でも、すでに売掛まみれの女性は手がつけられない状況へ陥っているパターンがほとんど。1本出たくらいでは“足しにする”程度のものなのだ。
◆「サイレント売掛」をするホストクラブも
仮に女優デビューして売掛がゼロになったとしよう。「借金がチャラになった。めでたしめでたし……」と思ったのも束の間。未だに売掛制度をこっそりと続けている、いわば「サイレント売掛」をしているホストクラブも存在し、延々とツケのループにハマり続けるセクシー女優も少なくはない。
そもそも飲食代の返済方法は、主に以下の3つが挙げられる。
①店のキャッシャーで手渡し
②担当ホストに手渡し
③振込
①と②の場合だと未だ店やホストとの繋がりが強いことから、結局お店に足を運んでしまいがちである。売掛が完済できてもホストで遊ぶクセが抜けなければ、またツケをするだろう。
さらに「サイレント売掛」が可能な店舗へ行けば、もはや“アリ地獄状態”に……。喉元過ぎれば熱さを忘れるとはまさにこのことで、再度同じ目に遭いやすいのだ。
「ツケで飲めばイケる」という考えがなくならない限り、売掛の沼からは抜け出せない。もちろんサイレント売掛をする店も悪いけど、苦しい思いをしたのに学ばない本人もダメだ。
そもそも、売掛まみれになる遊び方しかできない時点で繁華街で遊ぶ資格を持っていないようなものだから、セクシー女優デビューしても右から左へお金を流してしまうだろう。
◆女性側が危機感を持つしかない
ただ、彼女たちがルールを守らないホストクラブの餌食になるのは、悩ましい問題である。お金の使い道は人それぞれだが、全てが売掛に消えてしまうのは本人としても悲しいはず。撮影も決してラクなものではないから、せっかく入ったお金が一瞬にして……となると、やり場のない気持ちが芽生えるだろう(それでも、同じことを繰り返す人は大勢いるのだが)。
闇に飲まれた人たちによって作られる売上と、終わらない地獄。光の裏は闇と言わんばかりの現実は、見ていて非常に複雑な気持ちになる。ホストクラブをなくせばいいとか、売掛制度を廃止すれば全て解決する話ではないため、「1人1人が節度を持つ」以外に対策はないのだろう。
文/たかなし亜妖
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。
―[元セクシー女優のよもやま話]―
◆ホストの売掛問題はセクシー業界にも…
ホストクラブの売掛とは要するに“ツケ”のことで、通常なら期限までに返済せねばならないもの。しかしここ数年、店が売掛の上限を決めなかったり、お客が返すアテもないのにどんどんツケたり、ホストが売り上げのために顧客に無理をさせるといった事案が多発。その結果、各地で様々なトラブルが起きてしまった。
徐々に話が大きくなり、売掛問題はニュースに取り上げられたほど。こうして2024年4月より、歌舞伎町のホストクラブは売掛制度が廃止される。
ただ「ツケ制度は見事になくなり、夜の街はクリーンに遊べるようになりました。めでたしめでたし……」とならないのが繁華街の恐ろしいところ。
売掛の後遺症はセクシー業界にも影響を及ぼし、“そのためだけ”にデビューへと至る女性が増えているという。
◆売掛制度が廃止になっても“チャラ”にはならない現実
2024年4月に売掛制度がストップされたのは事実だが、今まで溜まったツケがチャラになるわけではない。自分で飲み食いした料金なのだから、最後まで責任を持って支払う義務を課せられるのは当たり前の話である。
冷静に考えればわかることなのだけれど、悲しいかな売掛に売掛を重ねるタイプは感覚が麻痺しているので、渦中にいる時は危機に気づかないという。ハッとした頃には目の前にたんまりと溜まったツケが待ち受けており、“時すでに遅し”状態だ。
現実的な数字を目の当たりにし、このままでは払えないことを確信した女性は、最終手段と言わんばかりにセクシー業界へ足を踏み入れていく。
◆セクシー業界入りしても必ず返せるとは限らない
なお、売掛まみれの女性といっても、ホストクラブに通える経済力は持っているので、決して低収入ではない。ホストも明らかに返せないお客にはツケさせないため、売掛をきっかけにセクシー業界入りを決めるタイプは、ほぼ100%夜職の女性だ。
彼女たちはお金がほしいので、やる気は十分ある。事務所としてはありがたい存在だが、セクシー女優になったからといって完済できるとは限らない。まずオファーが来るかはわからないし、仮に大手メーカーの専属が決まっても、ツケの金額が相当なものだったら一回のギャラで全部は返せないだろう。
最近の例だと、一発ドカンとギャラをもらったのに「まったく完済の目処がたたず、夜のお店を掛け持ちしている。それでも終わらない」なんて話も聞いた。
もちろん女優デビューして売れっ子になり、長い目で見ると収入がマイナスからプラスになる流れも多いので、絶対に完済はムリだという話ではない。でも、すでに売掛まみれの女性は手がつけられない状況へ陥っているパターンがほとんど。1本出たくらいでは“足しにする”程度のものなのだ。
◆「サイレント売掛」をするホストクラブも
仮に女優デビューして売掛がゼロになったとしよう。「借金がチャラになった。めでたしめでたし……」と思ったのも束の間。未だに売掛制度をこっそりと続けている、いわば「サイレント売掛」をしているホストクラブも存在し、延々とツケのループにハマり続けるセクシー女優も少なくはない。
そもそも飲食代の返済方法は、主に以下の3つが挙げられる。
①店のキャッシャーで手渡し
②担当ホストに手渡し
③振込
①と②の場合だと未だ店やホストとの繋がりが強いことから、結局お店に足を運んでしまいがちである。売掛が完済できてもホストで遊ぶクセが抜けなければ、またツケをするだろう。
さらに「サイレント売掛」が可能な店舗へ行けば、もはや“アリ地獄状態”に……。喉元過ぎれば熱さを忘れるとはまさにこのことで、再度同じ目に遭いやすいのだ。
「ツケで飲めばイケる」という考えがなくならない限り、売掛の沼からは抜け出せない。もちろんサイレント売掛をする店も悪いけど、苦しい思いをしたのに学ばない本人もダメだ。
そもそも、売掛まみれになる遊び方しかできない時点で繁華街で遊ぶ資格を持っていないようなものだから、セクシー女優デビューしても右から左へお金を流してしまうだろう。
◆女性側が危機感を持つしかない
ただ、彼女たちがルールを守らないホストクラブの餌食になるのは、悩ましい問題である。お金の使い道は人それぞれだが、全てが売掛に消えてしまうのは本人としても悲しいはず。撮影も決してラクなものではないから、せっかく入ったお金が一瞬にして……となると、やり場のない気持ちが芽生えるだろう(それでも、同じことを繰り返す人は大勢いるのだが)。
闇に飲まれた人たちによって作られる売上と、終わらない地獄。光の裏は闇と言わんばかりの現実は、見ていて非常に複雑な気持ちになる。ホストクラブをなくせばいいとか、売掛制度を廃止すれば全て解決する話ではないため、「1人1人が節度を持つ」以外に対策はないのだろう。
文/たかなし亜妖
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。
―[元セクシー女優のよもやま話]―