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どれが「鯖(サバ)」か分かりますか?今さら聞けない「刺身の種類」の見分け方

日刊SPA! 2024年10月9日 8時53分

居酒屋で刺身の盛り合わせを頼んだ場合、店員から「どれがなんの魚か」をざっと説明されるはずだ。しかし、覚えているのは序盤のうちで、徐々に自分がどの魚を食べているのか怪しくなってくることはなかろうか。
「白身魚の見分け方」を専門家に聞いた前回の記事に引き続き、今回はアジ、イワシ、サンマ、サバといった「光り物」を見分ける方法を紹介したい。

◆サンマは体が細長く身も薄く身がピンク系

今回も、羽田市場の創業者・社長の野本良平氏に話を聞いた。野本氏は外食産業などで経験を積んだ後、2014年に羽田市場を創業。鮮魚の独自流通システムを構築し、朝に漁獲された鮮魚をその日のうちに空輸する「超速鮮魚」というビジネスモデルで注目を集めている。「ととけん」(日本さかな検定)の最難関である1級を持ち、切身からでも高確率で魚種を当てる魚界の偉人である。

候補としてあげるなら、冒頭の通り、アジ、イワシ、サンマ、サバかと思いきや……。イワシを刺身にするならマイワシなのだが、「夏の終わりから秋にかけては味が落ちて全然ダメ」らしく、今回はパス。野本氏曰く、「梅雨時から夏の初めにかけてが最も脂がのって最高に美味なので、その時期にこそ皆さんにぜひ召し上がっていただきたいです」とのことだ。

では、まずはサンマから。体が細長く身も薄いので、刺身にしても筋肉の層が薄く、小ぢんまりとしている。皮は背中側は青黒く、腹側は銀白色で、身の色は淡いピンク系。血合いの部分も大きめで、陸から遠い外洋を泳ぎ回る運動量を支えていることがわかる。

◆サバの身は透明感があり、血合いは鮮やかな赤色

次はサバ(マサバ)について。アジ、サンマ、サバの中では最も体が大きい。背中は青~緑系の色で波状のまだら模様があり、腹側は銀白色。

サバの皮は銀色で光沢があるが、酢で締めると、ツヤ感が増す。鮮度が落ちやすいものの、酢締めにすると保存性が高まり、脂がさっぱりした味わいになるという利点が。身は透明感があり、血合いは鮮やかな赤色だ。

消費者にとって怖いのが「アニサキス」だが、実は2種類存在する。太平洋側のサバに主につく種は、生食によるアニサキス症のリスクが高い。一方、日本海側のサバに主につく種は生食をしても比較的安全とされているのだ。

◆アジは透明感のある身と控えめな血合いで見分ける

そして、アジ(マアジ)。尾の付け根の側面にとげ状のかたいウロコがある。「ぜいご」や「ぜんご」などとも呼ばれるが、正式名称は「稜鱗(りょうりん)」だ。

アジには、主に沖合を回遊し全体的に黒っぽい色をしたクロアジと、沿岸部の浅場にすむ=瀬付きの、黄味がかったキアジがある。キアジの方が脂がのって美味と評価され、鹿児島県の「出水の黄金アジ」などは、とんでもない旨さ。新鮮なアジを刺身にすると、断面のエッジがきれいに立つ。身に透明感があり、血合いも上品で控えめだ。

◆地球温暖化とサンマ漁、日本の漁業の未来

食欲の秋が到来しつつある。すべての魚種に当てはまるわけではないが、夏の間に痩せた魚の多くは、秋にかけて栄養を蓄え、おいしくなるから楽しみだ。台風によって海水がかき混ぜられ、栄養が豊富な水が表層に上がり、魚の食べ物が増えることも一因とされる。

さて、今年はサンマが豊漁という報道があったが、「特定の漁場で、魚が多くいる群れが見つかったとか、複数の群れが同じ場所にも集まったとか、そうした偶然により大量に獲れたというだけのことでしょう」と野本氏は述べる。回転ずしで「サンマの握り100円!」を期待していたが、どうやら難しそう。

そして、「資源量は増えていないので、豊漁だから安くなるという期待はできないかもしれません。根室あたりでたくさん獲れたけど、天候のために豊洲に送れず、地元で安値で取り引きされただけという事情もあります」と続ける。

また、これまでだったら小さすぎて、見向きもされなかったサイズのものが水揚げされるようになっているんだとか。かつてであれば、漁師さんが「売っても燃料費にもならない」なんて言っていたかもしれないレベルのサイズのものも。

「5、6年前くらいまでは、刺身でも焼いても、何してもおいしいサンマは少なくなかったんですが。身には、真っ白な雪のような脂肪がついて、厚さ5ミリに達することだってありましたね」と野本氏は嘆く。これから北海道の道東沖でサンマ漁が本格化するはずが、地球温暖化の影響で海水温が上昇し、サンマの南下のタイミングが遅れていることが懸念されていると聞く。こうした変化に対応しながら、漁業の持続可能性を確保するための取り組みが求められている。

<取材・文/木村悦子 取材協力・羽田市場>

【木村悦子】
フリーの編集者・ライター。出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」を創業。実用書やガイドブックの企画・編集を行う傍らで、Webライターとしても活動。飲食・日本文化・占い・農業など、あらゆることに興味があるが、生き物が大好きすぎて本も書く。『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』、『ラッコBOOK』を執筆。

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