さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
そこで目にした意外な光景とは……。
◆近所に住む“憧れの女性”がラブホ街で知らない男性と…
学生時代、市原正孝さん(仮名・40代)はラブホ街の近くにある男子校に通っていた。学校の帰り道に起こった切ないエピソードを教えてくれた。
「通学路のラブホ街を歩いていると、スーツ姿の若い男性と並んで歩く女性に目がとまりました。何となく女性の顔に見覚えがあるような気がしたんです」
市原さんは、女性をよく見て驚いたという。
「その人は近所に住んでいる2つ上の女子大生でした。私は当時、彼女に密かに憧れていて、ときどき目で追ってしまうような存在だったんです」
市原さんにとって憧れていた女性を、まさか“こんな場所”で見かけるなんて……心のなかでドキドキしたそうだ。しかし、その胸の高鳴りはすぐに別の感情へと変わった。
◆彼女の“大人な一面”なんて知りたくなかった
「ラブホ街だから当然なのですが、彼女がスーツ姿の男性と親しげにラブホへ入っていったんです。頭のなかが真っ白になり、『まさか、あの彼女が……?』という気持ちでいっぱいになりました」
市原さんのなかで彼女のイメージが崩れていくのを感じ、ショックと混乱でどうしていいのか分からなくなってしまったという。
「今なら、20代の男女がラブホに行くなんて普通のことですし、冷静に考えられます。でも、高校生の私はすごくウブで、恋愛の現実をまったく理解していませんでした。彼女に対して勝手な理想を抱いていたんだと思います」
ラブホ街で彼女を見かけてから数週間、市原さんはまったく勉強に集中できなくなってしまった。学校の授業中も塾でも、彼女のことばかりを考えていたそうだ。
「今でも、ふとした瞬間にあのときのウブな自分を思い出して、笑ってしまうことがありますね。学校がラブホ街ではなかったら、彼女への見方は変わらなかったはずなんですが」
市原さんは、恋愛や大人の世界に対する憧れと現実とのギャップに戸惑いながらも、“それが青春だったのかもしれない”としみじみと思っている。
◆部屋に散らばる使い捨て歯ブラシと輪ゴム
ラブホでのバイト経験がある松嶋潤さん(仮名・30代)。5年ほど前に見た不思議なカップルについて教えてくれた。
「熟年カップルが利用した部屋を清掃することになりました。年配のお客さんは、それほど珍しくないのですが、そのカップルが利用した部屋には異様な雰囲気がありました」
部屋に入るとまず目についたのは、大量の使い捨て歯ブラシだった。
「ラブホにはだいたい1組に2本の歯ブラシが置かれていますが、その部屋にはなぜか10本近い使用済みの歯ブラシが散乱していたんです」
松嶋さんは、「何が起きたんだ?」と首をかしげつつも清掃を続けたという。さらに部屋の奥へと進むと、さらに不思議な光景が広がっていた。
「大量の輪ゴムが床に散らばっていました。何に使ったのかまったく分からず、推測しながら清掃作業を進めました。とにかく数が多すぎて掃除機でも吸いきれないほどでした」
◆ラブホはさまざまなカップルの物語が見える場所
その後、ベッドの清掃に取りかかると、ベッドサイドにはまたもや輪ゴムが……。
「また、夜のムードを高めるためなのかキャンドルが置かれており、キャンドルにも輪ゴムが巻かれていたんです」
まるで、カップルが輪ゴムを何かの象徴やアイテムとして楽しんだかのようだったと松嶋さん。結局、熟年カップルがどうして大量の輪ゴムを使用したのかは謎のままだったという。
「この状況を同僚に話すと、それからしばらくの間は“輪ゴムのカップル”の話題で持ちきりでした。ラブホで働いていると、さまざまなカップルの物語が見えてきます」
松嶋さんにとって特に印象に残る出来事だったそうで、いまだに記憶に刻まれている。
「年齢に関係なく、ラブホは多くの人たちにとって自由で楽しい場所なんだと、改めて思い知らされました」
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―
そこで目にした意外な光景とは……。
◆近所に住む“憧れの女性”がラブホ街で知らない男性と…
学生時代、市原正孝さん(仮名・40代)はラブホ街の近くにある男子校に通っていた。学校の帰り道に起こった切ないエピソードを教えてくれた。
「通学路のラブホ街を歩いていると、スーツ姿の若い男性と並んで歩く女性に目がとまりました。何となく女性の顔に見覚えがあるような気がしたんです」
市原さんは、女性をよく見て驚いたという。
「その人は近所に住んでいる2つ上の女子大生でした。私は当時、彼女に密かに憧れていて、ときどき目で追ってしまうような存在だったんです」
市原さんにとって憧れていた女性を、まさか“こんな場所”で見かけるなんて……心のなかでドキドキしたそうだ。しかし、その胸の高鳴りはすぐに別の感情へと変わった。
◆彼女の“大人な一面”なんて知りたくなかった
「ラブホ街だから当然なのですが、彼女がスーツ姿の男性と親しげにラブホへ入っていったんです。頭のなかが真っ白になり、『まさか、あの彼女が……?』という気持ちでいっぱいになりました」
市原さんのなかで彼女のイメージが崩れていくのを感じ、ショックと混乱でどうしていいのか分からなくなってしまったという。
「今なら、20代の男女がラブホに行くなんて普通のことですし、冷静に考えられます。でも、高校生の私はすごくウブで、恋愛の現実をまったく理解していませんでした。彼女に対して勝手な理想を抱いていたんだと思います」
ラブホ街で彼女を見かけてから数週間、市原さんはまったく勉強に集中できなくなってしまった。学校の授業中も塾でも、彼女のことばかりを考えていたそうだ。
「今でも、ふとした瞬間にあのときのウブな自分を思い出して、笑ってしまうことがありますね。学校がラブホ街ではなかったら、彼女への見方は変わらなかったはずなんですが」
市原さんは、恋愛や大人の世界に対する憧れと現実とのギャップに戸惑いながらも、“それが青春だったのかもしれない”としみじみと思っている。
◆部屋に散らばる使い捨て歯ブラシと輪ゴム
ラブホでのバイト経験がある松嶋潤さん(仮名・30代)。5年ほど前に見た不思議なカップルについて教えてくれた。
「熟年カップルが利用した部屋を清掃することになりました。年配のお客さんは、それほど珍しくないのですが、そのカップルが利用した部屋には異様な雰囲気がありました」
部屋に入るとまず目についたのは、大量の使い捨て歯ブラシだった。
「ラブホにはだいたい1組に2本の歯ブラシが置かれていますが、その部屋にはなぜか10本近い使用済みの歯ブラシが散乱していたんです」
松嶋さんは、「何が起きたんだ?」と首をかしげつつも清掃を続けたという。さらに部屋の奥へと進むと、さらに不思議な光景が広がっていた。
「大量の輪ゴムが床に散らばっていました。何に使ったのかまったく分からず、推測しながら清掃作業を進めました。とにかく数が多すぎて掃除機でも吸いきれないほどでした」
◆ラブホはさまざまなカップルの物語が見える場所
その後、ベッドの清掃に取りかかると、ベッドサイドにはまたもや輪ゴムが……。
「また、夜のムードを高めるためなのかキャンドルが置かれており、キャンドルにも輪ゴムが巻かれていたんです」
まるで、カップルが輪ゴムを何かの象徴やアイテムとして楽しんだかのようだったと松嶋さん。結局、熟年カップルがどうして大量の輪ゴムを使用したのかは謎のままだったという。
「この状況を同僚に話すと、それからしばらくの間は“輪ゴムのカップル”の話題で持ちきりでした。ラブホで働いていると、さまざまなカップルの物語が見えてきます」
松嶋さんにとって特に印象に残る出来事だったそうで、いまだに記憶に刻まれている。
「年齢に関係なく、ラブホは多くの人たちにとって自由で楽しい場所なんだと、改めて思い知らされました」
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―