こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
やっと快適に歩ける季節になりました。とは言っても、靴にお金をかけたくない中高年は多いはず。そこで、コスパが高く、履くだけである程度サマになってしまうズボラ靴を3足紹介します。①色はブラック、②価格は8000円以下で、しっかり歩けてかつ「休日のおじさんスタイル」にならない靴を3つ探しました。
◆無印良品のミニマルデザイン、快適さと安定感を両立した一足
中高年がスニーカーを履いたときに、ダサく見えてしまうのは、サイドのブランドマークが過剰に目立つものを選んでいるからです。ナイキでもニューバランスでもブランドマークが目立つと、途端に部活感が出てしまいます。
そこでお勧めなのが、無印良品のミニマルデザインです。「歩きやすいカーブソールスニーカー」は6990円。このモデルはHOKAをはじめとする「厚底・ハイテクスニーカー」の、いわば廉価版。さすがに走ることは想定していませんが、日常履きや旅行程度なら問題なくスピーディに歩くことができます。
というか、勝手に歩行速度スピードが上がります。なぜか。名前にもある「カーブソール」は、本来ハンディキャップのある方に向けて開発された構造で、専門的にはローリングソールとかロッカーソールとも呼びます。つまさきに重心をかけただけで「靴が歩いてくれる」ので、つまづきづらく、見た目より安定して素早く歩くことができるのです。今ではどの一流スポーツメーカーも採用している構造です。スポーツメーカーでは2万円前後するモデルの廉価版といっていいと思います。無印なので安っぽさはなく、厚底に慣れていない方でもなんなく履きこなすことができます。
履き心地はややタイト。足幅が細めな方はそのままのサイズでOKですが、私のような3E幅の幅広足の人は通常のスニーカーよりもハーフサイズアップが必要です。
しかし、靴紐が少し惜しい。デザイン重視なのはわかりますが、ビジネスシューズのような丸く細い形状の紐はグリップが効かず、すぐにほどけます。イラつかずに歩くなら、数百円で買える「平紐」に替えたほうがいいでしょう。
◆雨で汚れてもOK。GUサイドゴアブーツのズルすぎる快適さ
そのコスパの高さから、靴業界が戦々恐々としているGU。先にネタばらしをしておくと、合皮でハーフサイズがありません。だからがゆえのこの価格です。「チャンキーソール サイドゴアブーツ」は3990円。これは本当に意外でした。
一見、「重そう、硬そう」にみえる外見を完全に裏切る履き心地。サイドゴアなのでゴム長のように乱暴に「ズボッ」と履くことができます。ゴム長や格安製品のブーツと異なり、甲の部分をきっちり「面」でおさえてくるので、脱げません。ここがキモで、足を通して歩いてみると5秒でわかりますが、カカトが食いついてきます。
ややオーバーな言い方ですが、そのへんのスニーカーより履き心地・歩き心地・足への食いつきのよさは上でしょう。底は合成ゴムでボリュームがありますが、中は完全にくりぬいているはず。もちろん手抜きではなく、軽量化とクッション性をアップさせるための工夫です。しかも合成皮革なので、雨でも大丈夫。子育てで砂場に突っ込んだり、泥だらけのグラウンドを歩くことになっても平気でしょう。汚れてしまったら、履いたまま公園や校庭の水道で洗い流せばOK。ある意味メンテナンスフリーです。
とはいえ合皮なので、基本的には1年限りで使い倒しましょう。天然革のように味が出ることはありませんし、深いキズは、直りません。しかし4000円以下での実用靴としては、ワークマンでもつくれないと思います。
ボリュームがかなりあるので、スニーカーのサイズからワンサイズ下げるのが目安。ナイキやニューバランスを28㎝で履いている筆者は、27㎝がジャストでした。
◆見た目はニューバランスのハイクラス。ムーンスターの本気スニーカー
なにかと「わかってる」国内メーカーの雄、ムーンスターのエイトテンスシリーズから「トラスデン」7700円。まずは一言、走れます。昭和世代だと誰でも一度はお世話になった「月星」、現「ムーンスター」がガチンコでつくった「大人のための魅せる実用靴」シリーズが、エイトテンスです。学生の運動靴をベースにしているのでちゃんと走れます。
以前のエイトテンスは「ぼってり」としたフォルムが特徴で、中年以降にはちょっと手が出ししづらいデザインでしたが、このモデルは完全にアダルトな雰囲気に振ってきました。1メートルも離れてしまえば、ニューバランスの3万円台のモデルと見分けがつきません。それもそのはず、ムーンスターは70年代からニューバランスに技術提供をしたり、共同開発をしてきたからです。「1300」「1400」といった超高級モデルも、ムーンスターの存在なしには実現不可でした。
このモデルもニューバランスのハイエンドモデルを彷彿とさせるシルエット、補強パーツの配置、ぶ厚いアンクルパッドなど、「わかってる」メーカーじゃないとつくれません。ハイテクシューズならではのクッションはもちろん、歩いた時の横ブレを徹底的に抑えるので、関節にかかる負担が少ないのも嬉しいところ。
コストカットのために天然革ではなく合皮のスエード、幅も「2E」の一択にしていますが、随所に反射材もちりばめており夜間はバチバチに光ります。
黒スニーカーや黒靴というものは汚れも目立ちづらく、服にも合わせやすいのですが、ある程度シルエットが美しくなければ途端にダサく見えます。しかし今はテクノロジーの進化とともに、価格の割に、より足に近づき、歩行も研究されたモデルが見つけやすいのも確かです。スタイルと快適さの両立が可能なのが黒スニーカーの特権。びしっと決まった足元で、気分も上げていきましょう。
【シューフィッターこまつ】
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」
やっと快適に歩ける季節になりました。とは言っても、靴にお金をかけたくない中高年は多いはず。そこで、コスパが高く、履くだけである程度サマになってしまうズボラ靴を3足紹介します。①色はブラック、②価格は8000円以下で、しっかり歩けてかつ「休日のおじさんスタイル」にならない靴を3つ探しました。
◆無印良品のミニマルデザイン、快適さと安定感を両立した一足
中高年がスニーカーを履いたときに、ダサく見えてしまうのは、サイドのブランドマークが過剰に目立つものを選んでいるからです。ナイキでもニューバランスでもブランドマークが目立つと、途端に部活感が出てしまいます。
そこでお勧めなのが、無印良品のミニマルデザインです。「歩きやすいカーブソールスニーカー」は6990円。このモデルはHOKAをはじめとする「厚底・ハイテクスニーカー」の、いわば廉価版。さすがに走ることは想定していませんが、日常履きや旅行程度なら問題なくスピーディに歩くことができます。
というか、勝手に歩行速度スピードが上がります。なぜか。名前にもある「カーブソール」は、本来ハンディキャップのある方に向けて開発された構造で、専門的にはローリングソールとかロッカーソールとも呼びます。つまさきに重心をかけただけで「靴が歩いてくれる」ので、つまづきづらく、見た目より安定して素早く歩くことができるのです。今ではどの一流スポーツメーカーも採用している構造です。スポーツメーカーでは2万円前後するモデルの廉価版といっていいと思います。無印なので安っぽさはなく、厚底に慣れていない方でもなんなく履きこなすことができます。
履き心地はややタイト。足幅が細めな方はそのままのサイズでOKですが、私のような3E幅の幅広足の人は通常のスニーカーよりもハーフサイズアップが必要です。
しかし、靴紐が少し惜しい。デザイン重視なのはわかりますが、ビジネスシューズのような丸く細い形状の紐はグリップが効かず、すぐにほどけます。イラつかずに歩くなら、数百円で買える「平紐」に替えたほうがいいでしょう。
◆雨で汚れてもOK。GUサイドゴアブーツのズルすぎる快適さ
そのコスパの高さから、靴業界が戦々恐々としているGU。先にネタばらしをしておくと、合皮でハーフサイズがありません。だからがゆえのこの価格です。「チャンキーソール サイドゴアブーツ」は3990円。これは本当に意外でした。
一見、「重そう、硬そう」にみえる外見を完全に裏切る履き心地。サイドゴアなのでゴム長のように乱暴に「ズボッ」と履くことができます。ゴム長や格安製品のブーツと異なり、甲の部分をきっちり「面」でおさえてくるので、脱げません。ここがキモで、足を通して歩いてみると5秒でわかりますが、カカトが食いついてきます。
ややオーバーな言い方ですが、そのへんのスニーカーより履き心地・歩き心地・足への食いつきのよさは上でしょう。底は合成ゴムでボリュームがありますが、中は完全にくりぬいているはず。もちろん手抜きではなく、軽量化とクッション性をアップさせるための工夫です。しかも合成皮革なので、雨でも大丈夫。子育てで砂場に突っ込んだり、泥だらけのグラウンドを歩くことになっても平気でしょう。汚れてしまったら、履いたまま公園や校庭の水道で洗い流せばOK。ある意味メンテナンスフリーです。
とはいえ合皮なので、基本的には1年限りで使い倒しましょう。天然革のように味が出ることはありませんし、深いキズは、直りません。しかし4000円以下での実用靴としては、ワークマンでもつくれないと思います。
ボリュームがかなりあるので、スニーカーのサイズからワンサイズ下げるのが目安。ナイキやニューバランスを28㎝で履いている筆者は、27㎝がジャストでした。
◆見た目はニューバランスのハイクラス。ムーンスターの本気スニーカー
なにかと「わかってる」国内メーカーの雄、ムーンスターのエイトテンスシリーズから「トラスデン」7700円。まずは一言、走れます。昭和世代だと誰でも一度はお世話になった「月星」、現「ムーンスター」がガチンコでつくった「大人のための魅せる実用靴」シリーズが、エイトテンスです。学生の運動靴をベースにしているのでちゃんと走れます。
以前のエイトテンスは「ぼってり」としたフォルムが特徴で、中年以降にはちょっと手が出ししづらいデザインでしたが、このモデルは完全にアダルトな雰囲気に振ってきました。1メートルも離れてしまえば、ニューバランスの3万円台のモデルと見分けがつきません。それもそのはず、ムーンスターは70年代からニューバランスに技術提供をしたり、共同開発をしてきたからです。「1300」「1400」といった超高級モデルも、ムーンスターの存在なしには実現不可でした。
このモデルもニューバランスのハイエンドモデルを彷彿とさせるシルエット、補強パーツの配置、ぶ厚いアンクルパッドなど、「わかってる」メーカーじゃないとつくれません。ハイテクシューズならではのクッションはもちろん、歩いた時の横ブレを徹底的に抑えるので、関節にかかる負担が少ないのも嬉しいところ。
コストカットのために天然革ではなく合皮のスエード、幅も「2E」の一択にしていますが、随所に反射材もちりばめており夜間はバチバチに光ります。
黒スニーカーや黒靴というものは汚れも目立ちづらく、服にも合わせやすいのですが、ある程度シルエットが美しくなければ途端にダサく見えます。しかし今はテクノロジーの進化とともに、価格の割に、より足に近づき、歩行も研究されたモデルが見つけやすいのも確かです。スタイルと快適さの両立が可能なのが黒スニーカーの特権。びしっと決まった足元で、気分も上げていきましょう。
【シューフィッターこまつ】
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」