現地時間25日(日本時間26日)、第120回ワールドシリーズがついに開幕する。
昨年はワイルドカードから勝ち上がったレンジャーズとダイヤモンドバックスによる“ワイルドカードシリーズ”だったが、今年はドジャースとヤンキースが第1シードから順当に勝ち上がってきた。ともに古豪、名門と呼ばれるメジャー屈指の人気球団だけに現地でも大きな盛り上がりを見せているようだ。
一発が飛び交う空中戦となるなら、ドジャースが有利となる可能性が高いだろう。ただ、最大7試合の短期決戦において、何より重要なのは投手力である。
◆ドジャースは先発投手陣が深刻な状態
それぞれの今ポストシーズンにおける投手成績を比較すると、ヤンキースがドジャースを上回っている。ヤンキースは、ロイヤルズとの4試合、ガーディアンズとの5試合、計9試合でチーム防御率3.27をマーク。パドレスとの5試合、メッツとの6試合、計11試合で4.36をマークしたドジャースに1点以上の差をつけている。
“投懐”状態のドジャースにとって、特に深刻なのが先発投手陣の方だ。すでに第1戦と第2戦の先発投手が発表されており、ジャック・フラーティと山本由伸がマウンドに上がることになっているが、今ポストシーズンの防御率はそれぞれ7.04と5.11。特にフラーティは前回登板で3回8失点と炎上しており、大きな不安が残る。
また故障者の続出で、フラーティと山本に次ぐ確固たる3番手が不在。試合序盤から継投策を用いる“ブルペンデー”で凌がざるを得ない展開も予想されている。
その一方で、ヤンキースの先発陣はドジャースのそれに比べるとかなりマシだ。ヤンキースの今ポストシーズンの先発防御率は3.89。安定しているとは言い難い数字ではあるが、ドジャースの6.08に比べると天と地の差。先発投手の枚数も4人そろっており、救援陣にかかる負担はドジャースほどにはならないだろう。
◆救援陣の防御率もヤンキースより悪いが…
そして注目に値するのが両チームの救援投手陣の成績だ。ドジャースの救援陣は充実していると思われがちだが、今ポストシーズンにおける救援防御率は3.16で、実は2.56のヤンキースよりも悪い数字が残っている。
つまり、ドジャースの強みと思われている救援陣だが、ヤンキース相手にはアドバンテージとはいえないということだ。
ただこれにはちょっとしたカラクリがある。ドジャースはメッツとのリーグ優勝決定シリーズ6試合で、全て4点以上の差がつく一方的な展開となった。そのため、早々と試合の大勢が決まり、勝ちパターンで起用する投手を起用する機会が限られていた。つまり、“敗戦処理投手”の登板が多かったというわけだ。
逆に考えると、勝利の方程式を担うエバン・フィリップス、マイケル・コペック、ブレーク・トライネンなどを酷使せず、ワールドシリーズ臨むことができる。
今年のワールドシリーズは、競り合う試合が続くことも予想され、特にドジャースは勝ちパターンの投手をつぎ込む形になるはずだ。先発陣が手薄なだけに、第6戦、第7戦までもつれ込むようなら、救援陣にかかる負担は気になるところだろう。
そんなドジャースの投手陣をレギュラーシーズン終盤からことごとく救ってきたのが他でもない、大谷翔平を中心としたドジャース打線だ。ポストシーズンでもほぼ全員が好調なだけに初戦からエンジン全開といきたい。
◆勝負のカギとなるのは1戦目の1回表裏?
最後にワールドシリーズの分岐点となり得る場面を予想しておこう。
それはズバリ、第1戦の1回表裏になるのではないか。ヤンキースはフアン・ソト、アーロン・ジャッジ、そして1人でも出塁すれば好調のジャンカルロ・スタントンが打席に立つことになる。レギュラーシーズンで58本塁打を放ったジャッジは、今ポストシーズンで打率.161と低調なだけに、ドジャースとすれば目覚めさせたくないはずだ。
一方で、ドジャースの核弾頭・大谷はパドレスとの地区シリーズで打率.200と不振に陥っていたが、メッツとのリーグ優勝決定シリーズは打率.364と復調。本来の力を徐々に発揮し始めただけに、最初の打席で流れを引き寄せたい。
ジャッジと大谷、両チームの主砲が打てばチームが勢いに乗る可能性が高いだけに、大注目といえるだろう。
◆大谷とゲリット・コールの対戦成績は…
大谷にとっては、第1戦でゲリット・コールと対戦することも大きなカギとなりそう。
昨季までア・リーグにいた大谷は、これまでコールとは何度も対戦しており、通算成績は20打数4安打(打率.200)、1本塁打。やや抑え込まれている印象だが、最後の対戦となった2022年8月31日の試合では剛球右腕から特大の逆転3ランを放っている。2年越しの2連発にも期待が懸かる。
名門同士、そして大谷VSジャッジというMVP対決で盛り上がる今年のワールドシリーズ。その分岐点は第1戦の初回、主砲2人の第1打席であってもおかしくない。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。
昨年はワイルドカードから勝ち上がったレンジャーズとダイヤモンドバックスによる“ワイルドカードシリーズ”だったが、今年はドジャースとヤンキースが第1シードから順当に勝ち上がってきた。ともに古豪、名門と呼ばれるメジャー屈指の人気球団だけに現地でも大きな盛り上がりを見せているようだ。
一発が飛び交う空中戦となるなら、ドジャースが有利となる可能性が高いだろう。ただ、最大7試合の短期決戦において、何より重要なのは投手力である。
◆ドジャースは先発投手陣が深刻な状態
それぞれの今ポストシーズンにおける投手成績を比較すると、ヤンキースがドジャースを上回っている。ヤンキースは、ロイヤルズとの4試合、ガーディアンズとの5試合、計9試合でチーム防御率3.27をマーク。パドレスとの5試合、メッツとの6試合、計11試合で4.36をマークしたドジャースに1点以上の差をつけている。
“投懐”状態のドジャースにとって、特に深刻なのが先発投手陣の方だ。すでに第1戦と第2戦の先発投手が発表されており、ジャック・フラーティと山本由伸がマウンドに上がることになっているが、今ポストシーズンの防御率はそれぞれ7.04と5.11。特にフラーティは前回登板で3回8失点と炎上しており、大きな不安が残る。
また故障者の続出で、フラーティと山本に次ぐ確固たる3番手が不在。試合序盤から継投策を用いる“ブルペンデー”で凌がざるを得ない展開も予想されている。
その一方で、ヤンキースの先発陣はドジャースのそれに比べるとかなりマシだ。ヤンキースの今ポストシーズンの先発防御率は3.89。安定しているとは言い難い数字ではあるが、ドジャースの6.08に比べると天と地の差。先発投手の枚数も4人そろっており、救援陣にかかる負担はドジャースほどにはならないだろう。
◆救援陣の防御率もヤンキースより悪いが…
そして注目に値するのが両チームの救援投手陣の成績だ。ドジャースの救援陣は充実していると思われがちだが、今ポストシーズンにおける救援防御率は3.16で、実は2.56のヤンキースよりも悪い数字が残っている。
つまり、ドジャースの強みと思われている救援陣だが、ヤンキース相手にはアドバンテージとはいえないということだ。
ただこれにはちょっとしたカラクリがある。ドジャースはメッツとのリーグ優勝決定シリーズ6試合で、全て4点以上の差がつく一方的な展開となった。そのため、早々と試合の大勢が決まり、勝ちパターンで起用する投手を起用する機会が限られていた。つまり、“敗戦処理投手”の登板が多かったというわけだ。
逆に考えると、勝利の方程式を担うエバン・フィリップス、マイケル・コペック、ブレーク・トライネンなどを酷使せず、ワールドシリーズ臨むことができる。
今年のワールドシリーズは、競り合う試合が続くことも予想され、特にドジャースは勝ちパターンの投手をつぎ込む形になるはずだ。先発陣が手薄なだけに、第6戦、第7戦までもつれ込むようなら、救援陣にかかる負担は気になるところだろう。
そんなドジャースの投手陣をレギュラーシーズン終盤からことごとく救ってきたのが他でもない、大谷翔平を中心としたドジャース打線だ。ポストシーズンでもほぼ全員が好調なだけに初戦からエンジン全開といきたい。
◆勝負のカギとなるのは1戦目の1回表裏?
最後にワールドシリーズの分岐点となり得る場面を予想しておこう。
それはズバリ、第1戦の1回表裏になるのではないか。ヤンキースはフアン・ソト、アーロン・ジャッジ、そして1人でも出塁すれば好調のジャンカルロ・スタントンが打席に立つことになる。レギュラーシーズンで58本塁打を放ったジャッジは、今ポストシーズンで打率.161と低調なだけに、ドジャースとすれば目覚めさせたくないはずだ。
一方で、ドジャースの核弾頭・大谷はパドレスとの地区シリーズで打率.200と不振に陥っていたが、メッツとのリーグ優勝決定シリーズは打率.364と復調。本来の力を徐々に発揮し始めただけに、最初の打席で流れを引き寄せたい。
ジャッジと大谷、両チームの主砲が打てばチームが勢いに乗る可能性が高いだけに、大注目といえるだろう。
◆大谷とゲリット・コールの対戦成績は…
大谷にとっては、第1戦でゲリット・コールと対戦することも大きなカギとなりそう。
昨季までア・リーグにいた大谷は、これまでコールとは何度も対戦しており、通算成績は20打数4安打(打率.200)、1本塁打。やや抑え込まれている印象だが、最後の対戦となった2022年8月31日の試合では剛球右腕から特大の逆転3ランを放っている。2年越しの2連発にも期待が懸かる。
名門同士、そして大谷VSジャッジというMVP対決で盛り上がる今年のワールドシリーズ。その分岐点は第1戦の初回、主砲2人の第1打席であってもおかしくない。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。