近年、動画投稿サイトなどの広まりにより、世の中のあらゆる映像を目にする機会が増えています。それらは、時として有益な場合もありますが、中にはプライバシーの観点から問題が生じるケースも少なくありません。今回は、報道映像の犠牲になってしまったある男性を紹介します。
◆ほぼ完璧な父親で夫だった
落胆した表情で取材に応えてくれた須藤健一さん(仮名・34歳)。2年前、親と同居していた埼玉での実家暮らしから解放され、横浜に新築マンションを購入しました。妻の沙也加さん(仮名・32歳)と娘の莉音ちゃん(仮名・5歳)の3人でスタートした気兼ねのない生活は幸せそのものだったそうです。
「5年ほど前に転職したんです。それまでは大手物流企業の総務だったのですが、友人からの誘いで全く異業種の広告代理店勤務になりました。待遇は良くなったのですが、残業が多くて帰宅時間も以前に比べかなり遅くなりました。でも、その分、休日にはしっかり家族サービスをして、収入が増えたことで生活水準も上がったので結果オーライという感じです」
ただ、勤務環境は大きく変わったという須藤さん。職業柄、広告絡みで対外的な交渉が増え、女性のモデルや事務所のスタッフなどと頻繁に「打ち合わせ」という名の飲み会が多くなったといいます。
◆妻の鋭いツッコミにドキッ
転職前はどちらかというと地味な感じだった須藤さん。もともと服や髪形に無頓着で、妻の沙也加さんがいつもコーディネートしていたといいます。それが、転職してからは少しずつ変わっていきました。
「クライアントにはアパレル企業も多くて、私の風貌がイケてないからなのかどうか分かりませんが、時々サンプルのスーツやアクセサリーを無償で提供してくれるんです。まあ、一緒に現場に行く相手がダサい格好していても困るでしょうしね。妻もその辺の事情は知っているので、ほぼノータッチなのですが、先日『なんか、最近ますますチャラくなってるよね。変わったわね、あなた』と言われました。実は、内心ドキッとしていました」
実は、この頃から須藤さんは良からぬ行動をとっていたそうです。クライアントのアシスタントディレクターであるA子さんが気になっていたのです。
◆それでも止まらなかったA子への気持ち
幸か不幸か、A子さんと帯同する仕事がますます増えた須藤さん。5歳下のA子さんはサバサバした感じで、妻のにはない、そういった部分が新鮮だったといいます。
「ダメなことだとは分かっているのですが、A子さんへの気持ちが日増しに強くなっていくんです。あれだけ良きパパ、良き夫を自負していたのに、恋心って恐ろしいですね。もう、この頃になると頭の中は彼女のことばかりになって、我慢できなくなり気持ちを打ち明けたんです。バカですよね、私」
ある日、真面目な顔つきで須藤さんから自分への好意を語られたA子さんですが、特にためらうこともなく「私も須藤さんのことを尊敬してるし、大好きですよ」と答えたそうです。
「今から考えたら、特に深い意味はない『大好き』という返事だったのですが、バカな私はそれを真に受け舞い上がってしまいました。調子に乗って、思わず『2人だけで食事をしたい』と誘いました。その3日後の金曜日、予約したフレンチへ一緒に行くことになりました」
◆「あ、パパだ!」娘の声に凍りついた食卓
A子さんと食事に行った次の日の土曜日。昼食の後、莉音ちゃんが好きなアニメをリビングで見ていた須藤さん家族。しばらくして番組は終了し、何気なくチャンネルをニュースに変えました。すると――。
「あ、パパだ!」と、驚いたようにテレビ画面に指をさす莉音ちゃん。最初は何を言っているのかよくわからなかった須藤さんですが、画面に映し出されたのは、昨日発生した都内某所のラブホで起きた傷害事件の現場報道でした。
「女性レポーターがマイク片手に現場から取材している映像でした。注視すると、どうやら傷害事件の続報が入ったようでした。レポーターの声をバックに、事件当日の現場映像が繰り返し流れていたのですが、次の瞬間目を疑いました。私とA子さんが映っているんです。しかも手つなぎで」
チャンネルを変えようと、慌ててテレビリモコンを手に取った須藤さんに、沙也加さんが一言「本当、あれパパだね」と言うと、莉音ちゃんも「パパ、あのお姉さんとお友達なの?」と無邪気な質問をする始末に。
◆すべては自分に責任がある
テレビはすでに天気予報に変わっていましたが、「え、なんで? あれ誰?」と、声を殺しながらも、今にも発狂しそうな沙也加さん。「いや、ちがうんだ、あれはただ……」と答えるしかない須藤さん。
言い訳はすでに通用しないと判断した須藤さんは、大声で「ごめんなさい」と言い土下座しました。しかし、時すでに遅しで何の反応も見せなかった沙也加さん。浮気うんぬんより、裏切られたことにショックを隠せない様子でした。
「あの映像での手つなぎは、たまたまA子さんが段差につまずきそうになったから思わず手を握ったのです。ラブホ街を歩いていたのは、Google Mapの指示通りに歩いていただけなんです。だから、A子さんとは何もありません。でも、すべては自分に責任があるので根気強く謝罪するつもりです」
ただ、この出来事から半年以上たった今でも仮面夫婦から脱却できていないのだとか。
<TEXT/ベルクちゃん>
【ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
―[ラブホの珍ハプニング]―
◆ほぼ完璧な父親で夫だった
落胆した表情で取材に応えてくれた須藤健一さん(仮名・34歳)。2年前、親と同居していた埼玉での実家暮らしから解放され、横浜に新築マンションを購入しました。妻の沙也加さん(仮名・32歳)と娘の莉音ちゃん(仮名・5歳)の3人でスタートした気兼ねのない生活は幸せそのものだったそうです。
「5年ほど前に転職したんです。それまでは大手物流企業の総務だったのですが、友人からの誘いで全く異業種の広告代理店勤務になりました。待遇は良くなったのですが、残業が多くて帰宅時間も以前に比べかなり遅くなりました。でも、その分、休日にはしっかり家族サービスをして、収入が増えたことで生活水準も上がったので結果オーライという感じです」
ただ、勤務環境は大きく変わったという須藤さん。職業柄、広告絡みで対外的な交渉が増え、女性のモデルや事務所のスタッフなどと頻繁に「打ち合わせ」という名の飲み会が多くなったといいます。
◆妻の鋭いツッコミにドキッ
転職前はどちらかというと地味な感じだった須藤さん。もともと服や髪形に無頓着で、妻の沙也加さんがいつもコーディネートしていたといいます。それが、転職してからは少しずつ変わっていきました。
「クライアントにはアパレル企業も多くて、私の風貌がイケてないからなのかどうか分かりませんが、時々サンプルのスーツやアクセサリーを無償で提供してくれるんです。まあ、一緒に現場に行く相手がダサい格好していても困るでしょうしね。妻もその辺の事情は知っているので、ほぼノータッチなのですが、先日『なんか、最近ますますチャラくなってるよね。変わったわね、あなた』と言われました。実は、内心ドキッとしていました」
実は、この頃から須藤さんは良からぬ行動をとっていたそうです。クライアントのアシスタントディレクターであるA子さんが気になっていたのです。
◆それでも止まらなかったA子への気持ち
幸か不幸か、A子さんと帯同する仕事がますます増えた須藤さん。5歳下のA子さんはサバサバした感じで、妻のにはない、そういった部分が新鮮だったといいます。
「ダメなことだとは分かっているのですが、A子さんへの気持ちが日増しに強くなっていくんです。あれだけ良きパパ、良き夫を自負していたのに、恋心って恐ろしいですね。もう、この頃になると頭の中は彼女のことばかりになって、我慢できなくなり気持ちを打ち明けたんです。バカですよね、私」
ある日、真面目な顔つきで須藤さんから自分への好意を語られたA子さんですが、特にためらうこともなく「私も須藤さんのことを尊敬してるし、大好きですよ」と答えたそうです。
「今から考えたら、特に深い意味はない『大好き』という返事だったのですが、バカな私はそれを真に受け舞い上がってしまいました。調子に乗って、思わず『2人だけで食事をしたい』と誘いました。その3日後の金曜日、予約したフレンチへ一緒に行くことになりました」
◆「あ、パパだ!」娘の声に凍りついた食卓
A子さんと食事に行った次の日の土曜日。昼食の後、莉音ちゃんが好きなアニメをリビングで見ていた須藤さん家族。しばらくして番組は終了し、何気なくチャンネルをニュースに変えました。すると――。
「あ、パパだ!」と、驚いたようにテレビ画面に指をさす莉音ちゃん。最初は何を言っているのかよくわからなかった須藤さんですが、画面に映し出されたのは、昨日発生した都内某所のラブホで起きた傷害事件の現場報道でした。
「女性レポーターがマイク片手に現場から取材している映像でした。注視すると、どうやら傷害事件の続報が入ったようでした。レポーターの声をバックに、事件当日の現場映像が繰り返し流れていたのですが、次の瞬間目を疑いました。私とA子さんが映っているんです。しかも手つなぎで」
チャンネルを変えようと、慌ててテレビリモコンを手に取った須藤さんに、沙也加さんが一言「本当、あれパパだね」と言うと、莉音ちゃんも「パパ、あのお姉さんとお友達なの?」と無邪気な質問をする始末に。
◆すべては自分に責任がある
テレビはすでに天気予報に変わっていましたが、「え、なんで? あれ誰?」と、声を殺しながらも、今にも発狂しそうな沙也加さん。「いや、ちがうんだ、あれはただ……」と答えるしかない須藤さん。
言い訳はすでに通用しないと判断した須藤さんは、大声で「ごめんなさい」と言い土下座しました。しかし、時すでに遅しで何の反応も見せなかった沙也加さん。浮気うんぬんより、裏切られたことにショックを隠せない様子でした。
「あの映像での手つなぎは、たまたまA子さんが段差につまずきそうになったから思わず手を握ったのです。ラブホ街を歩いていたのは、Google Mapの指示通りに歩いていただけなんです。だから、A子さんとは何もありません。でも、すべては自分に責任があるので根気強く謝罪するつもりです」
ただ、この出来事から半年以上たった今でも仮面夫婦から脱却できていないのだとか。
<TEXT/ベルクちゃん>
【ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
―[ラブホの珍ハプニング]―