先週はアメリカでブリーダーズカップ。そして地方競馬ではJBCと盛り沢山でしたが、中央競馬に関してはG1がおやすみ。しかし、今週のエリザベス女王杯からは年末のホープフルSまで毎週G1が開催されます。年末まで楽しみが続きますね!
今回の記事ではG1連続開催の初戦「エリザベス女王杯」について解説していきます。幸先の良いスタートを切って、年末まで走り切りましょう!
◆中距離以上の牝馬限定戦で序列が覆る理由
エリザベス女王杯は京都競馬場芝2200mで行われます。そして、牝馬限定戦において2200mという距離はオークスの2400mに次ぐ長さ。実は、エリザベス女王杯攻略においてこの点は非常に重要となります。
牝馬重賞の多くはマイル戦を中心に組まれており(距離区分は人によって若干の解釈の違いはありますが)、中距離となる2000m以上のレースはわずか7レースしかありません。そのため、基本的に牝馬はマイラーとしての適性が高い馬が出世しやすい傾向があります。
牝馬クラシック路線を例に挙げると、阪神JFからチューリップ賞、桜花賞まではすべて1600mで行われ、一度決まった序列の変化はあまり起きませんが、桜花賞から2400mのオークスになると一気に上位入線馬の顔触れに変化が生じます。今年こそ桜花賞とオークスの上位の顔ぶれに変化は少なかったですが、2023年は桜花賞2~3着とオークス2~3着は別の馬でした。
距離が変われば当然、求められる適性が変わってきますので、中距離戦では中距離に適性が高い馬が好走します。しかし、前述の通り牝馬路線は基本的にマイルを中心に組まれているため、マイラーが出世しやすい環境ができ上がっています。そうすると一気に距離が延びるエリザベス女王杯で中距離の適性が足りずに敗れてしまうというわけです。
◆過去の勝ち馬に共通する“中距離実績”
実際に、過去の勝ち馬を見ても中距離実績がある馬ばかり並んでいます。
2014年の勝ち馬ラキシスは、新馬戦から徹底して2000m以上を使われたザ・中距離馬。2013年に甲武特別、鳴滝特別と牡馬相手に2200mのレースで勝利すると、格上挑戦の身で挑んだエリザベス女王杯で2着に好走しました。翌年は1600mのヴィクトリアマイルで15着と大敗するも、2200mのオールカマーで2着に好走して挑んだエリザベス女王杯で前年のリベンジを果たしました。
2018年の勝ち馬リスグラシューは2歳時に1600mのアルテミスSを制し、阪神JFでも2着に好走。3歳時も桜花賞2着などマイル路線で活躍していましたが、馬体重が引退時でも460kg台と小柄な馬で、むしろステイヤーとしての資質の方が高いとさえ見えました。
結果的に、2018年のエリザベス女王杯を制した後は中距離馬として完全覚醒。宝塚記念、コックスプレート、有馬記念と3連勝で引退しています。
2019年、2020年連覇のラッキーライラックはデビューから4連勝で阪神JF、チューリップ賞などマイルで活躍しましたが、古馬になってからは1800mで取りこぼし。オークス3着の実績があるように古馬なってからは中距離への適性が開花し、エリザベス女王杯連覇だけでなく香港ヴァーズ2着や大阪杯1着など牡馬相手の中距離戦でも結果を出しました。
ラキシスやラッキーライラックのように、エリザベス女王杯はリピーターが活躍するともよく言われますが、これもマイラーが多い牝馬の中で数少ない中距離馬が連続して好走しているという事を示した結果でしょう。
以上から、今年も注目すべきは中距離実績なのです。この観点に基づき、今年の出走馬から2頭の注目馬を挙げたいと思います。
◆エリザベス女王杯注目馬①「サリエラ」
1頭目はサリエラです。今回の出走馬の中で中距離以上の実績という点に関してはナンバー1だと見ています。
目黒記念3着やダイヤモンドステークス2着など牝馬にとって不利と言われる長距離戦でも結果を出しているという点が最大の強み。特に今年のダイヤモンドステークスは長距離戦ながら上がり2ハロン22.5秒と非常に優秀でした。実際に芝2500m以上で上がり2ハロンが22.5秒以下になったのは歴代でも15件しかありません。
1着テーオーロイヤルは天皇賞(春)を制し、3着ワープスピードはメルボルンカップ2着とその後に活躍。今年のダイヤモンドステークスは相当レベルが高かったと見ています。昨年のエリザベス女王杯でも0.3秒差の6着と善戦していることからも、今回はかなり適性の高いレースだと考えています。
◆エリザベス女王杯注目馬②「レガレイラ」
もう1頭は1番人気濃厚ではありますが、レガレイラは外せません。ホープフルS以降、勝ち星から遠ざかっており、能力を疑問視する方も多い今回こそがメンバー的にも馬券的にも最も狙い目だと見ています。
今年の皐月賞は勝ちタイムが1分57秒1で、今年の紫苑Sまではコースレコードでした。野芝+直線追い風の超高速馬場だった紫苑Sと違い、3回中山の最終週。時計的な価値は皐月賞のほうが高いと言っても過言ではないでしょう。
さらに、日本ダービーは前半こそスローペースでしたが、レースの上がり4ハロンは45.1秒。これは東京競馬場芝2400mでは歴代最速のタイムでした。
今年の3歳馬はハイレベル世代と言われますが、これはクラシック2戦を筆頭に時計的に価値が高いレースが多かったことが要因。レガレイラも敗れはしているものの、ハイレベル世代の牡馬相手に牝馬でこれだけ善戦しているのはむしろ評価すべきなのです。
G1馬が2頭と少し寂しい顔ぶれとなってしまった今年のエリザベス女王杯。しかし、その分馬券的には面白い一戦となりそうです。ぜひ当記事を参考にしていただき、暮れまで続くG1戦線に向けて幸先の良いスタートを切っていただけると幸いです。
文/安井涼太
【安井涼太】
各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。
今回の記事ではG1連続開催の初戦「エリザベス女王杯」について解説していきます。幸先の良いスタートを切って、年末まで走り切りましょう!
◆中距離以上の牝馬限定戦で序列が覆る理由
エリザベス女王杯は京都競馬場芝2200mで行われます。そして、牝馬限定戦において2200mという距離はオークスの2400mに次ぐ長さ。実は、エリザベス女王杯攻略においてこの点は非常に重要となります。
牝馬重賞の多くはマイル戦を中心に組まれており(距離区分は人によって若干の解釈の違いはありますが)、中距離となる2000m以上のレースはわずか7レースしかありません。そのため、基本的に牝馬はマイラーとしての適性が高い馬が出世しやすい傾向があります。
牝馬クラシック路線を例に挙げると、阪神JFからチューリップ賞、桜花賞まではすべて1600mで行われ、一度決まった序列の変化はあまり起きませんが、桜花賞から2400mのオークスになると一気に上位入線馬の顔触れに変化が生じます。今年こそ桜花賞とオークスの上位の顔ぶれに変化は少なかったですが、2023年は桜花賞2~3着とオークス2~3着は別の馬でした。
距離が変われば当然、求められる適性が変わってきますので、中距離戦では中距離に適性が高い馬が好走します。しかし、前述の通り牝馬路線は基本的にマイルを中心に組まれているため、マイラーが出世しやすい環境ができ上がっています。そうすると一気に距離が延びるエリザベス女王杯で中距離の適性が足りずに敗れてしまうというわけです。
◆過去の勝ち馬に共通する“中距離実績”
実際に、過去の勝ち馬を見ても中距離実績がある馬ばかり並んでいます。
2014年の勝ち馬ラキシスは、新馬戦から徹底して2000m以上を使われたザ・中距離馬。2013年に甲武特別、鳴滝特別と牡馬相手に2200mのレースで勝利すると、格上挑戦の身で挑んだエリザベス女王杯で2着に好走しました。翌年は1600mのヴィクトリアマイルで15着と大敗するも、2200mのオールカマーで2着に好走して挑んだエリザベス女王杯で前年のリベンジを果たしました。
2018年の勝ち馬リスグラシューは2歳時に1600mのアルテミスSを制し、阪神JFでも2着に好走。3歳時も桜花賞2着などマイル路線で活躍していましたが、馬体重が引退時でも460kg台と小柄な馬で、むしろステイヤーとしての資質の方が高いとさえ見えました。
結果的に、2018年のエリザベス女王杯を制した後は中距離馬として完全覚醒。宝塚記念、コックスプレート、有馬記念と3連勝で引退しています。
2019年、2020年連覇のラッキーライラックはデビューから4連勝で阪神JF、チューリップ賞などマイルで活躍しましたが、古馬になってからは1800mで取りこぼし。オークス3着の実績があるように古馬なってからは中距離への適性が開花し、エリザベス女王杯連覇だけでなく香港ヴァーズ2着や大阪杯1着など牡馬相手の中距離戦でも結果を出しました。
ラキシスやラッキーライラックのように、エリザベス女王杯はリピーターが活躍するともよく言われますが、これもマイラーが多い牝馬の中で数少ない中距離馬が連続して好走しているという事を示した結果でしょう。
以上から、今年も注目すべきは中距離実績なのです。この観点に基づき、今年の出走馬から2頭の注目馬を挙げたいと思います。
◆エリザベス女王杯注目馬①「サリエラ」
1頭目はサリエラです。今回の出走馬の中で中距離以上の実績という点に関してはナンバー1だと見ています。
目黒記念3着やダイヤモンドステークス2着など牝馬にとって不利と言われる長距離戦でも結果を出しているという点が最大の強み。特に今年のダイヤモンドステークスは長距離戦ながら上がり2ハロン22.5秒と非常に優秀でした。実際に芝2500m以上で上がり2ハロンが22.5秒以下になったのは歴代でも15件しかありません。
1着テーオーロイヤルは天皇賞(春)を制し、3着ワープスピードはメルボルンカップ2着とその後に活躍。今年のダイヤモンドステークスは相当レベルが高かったと見ています。昨年のエリザベス女王杯でも0.3秒差の6着と善戦していることからも、今回はかなり適性の高いレースだと考えています。
◆エリザベス女王杯注目馬②「レガレイラ」
もう1頭は1番人気濃厚ではありますが、レガレイラは外せません。ホープフルS以降、勝ち星から遠ざかっており、能力を疑問視する方も多い今回こそがメンバー的にも馬券的にも最も狙い目だと見ています。
今年の皐月賞は勝ちタイムが1分57秒1で、今年の紫苑Sまではコースレコードでした。野芝+直線追い風の超高速馬場だった紫苑Sと違い、3回中山の最終週。時計的な価値は皐月賞のほうが高いと言っても過言ではないでしょう。
さらに、日本ダービーは前半こそスローペースでしたが、レースの上がり4ハロンは45.1秒。これは東京競馬場芝2400mでは歴代最速のタイムでした。
今年の3歳馬はハイレベル世代と言われますが、これはクラシック2戦を筆頭に時計的に価値が高いレースが多かったことが要因。レガレイラも敗れはしているものの、ハイレベル世代の牡馬相手に牝馬でこれだけ善戦しているのはむしろ評価すべきなのです。
G1馬が2頭と少し寂しい顔ぶれとなってしまった今年のエリザベス女王杯。しかし、その分馬券的には面白い一戦となりそうです。ぜひ当記事を参考にしていただき、暮れまで続くG1戦線に向けて幸先の良いスタートを切っていただけると幸いです。
文/安井涼太
【安井涼太】
各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。