いまやYouTubeはレッドオーシャンで、収益化やビジネスへつなぐのは難しいと言われる。そうした側面があるのもたしかだろう。しかし、動画メディアが持つ拡散力、影響力はまだまだ健在である。その恩恵を受けた一人が、今回登場する株式会社voyage代表取締役の愛沢えみりさんだ。
「伝説のキャバクラ嬢」といったほうがピンとくる人も多いだろう。愛沢さんは18歳でキャバクラ嬢としてデビューし、トップクラスの売上を出す快挙を遂げた。その後、新宿・歌舞伎町のキャバクラに拠点を移し、その勢いはさらに増し、人気キャバクラ嬢へと駆け上がった。一晩当たりの売上最高額は2800万円。モデル活動やテレビ出演、数々の書籍を出版するなど、キャバクラ嬢にとどまらない活躍を見せる。
2019年に引退した後は、アパレルやSNS運用などを手がける会社経営に注力。年商35億円を売り上げ、今最も勢いのある経営者の一人でもある。「娘が生まれてから、毎日が幸せの絶頂です」と話す愛沢さんに、これまでの成功の秘訣とYouTubeでの活動、そして娘に対する思いと今後の展望について聞いた。
インタビュアーは、出版プロデューサーでビジネス書作家の水野俊哉さん。水野さんは出版プロデューサーとして数々のヒット作を世に送り出し、自らも作家として多くの書籍を出版している。
◆◆起業して気づいた「個」ではなく「組織」で力を発揮することの大切さ
水野:現在も変わらぬ美貌を誇る愛沢さんですが、1年前にお子さんが生まれるなど、ここ最近では大きな変化があったんですよね。
愛沢:はい、そうです。娘がとにかく可愛くて。今まで仕事が大好きで仕事人間だった私が、こうも変わるなんて私自身が本当に驚いています。
水野:愛沢さんといえば「元伝説のキャバクラ嬢」であり、モデルもされていて、現在のインフルエンサーという立ち位置の先駆けだったと思います。その頃の2014年に、株式会社voyageを設立されたんですよね。
愛沢:はい、設立当時はモデルやキャバクラ嬢もしていた時期で、同時に経営者もスタートさせました。最初は起業がどんなものなのか、どうすれば経営がうまくいくのか右も左もわからなかったのですが、ただただ可愛い洋服が好きで、それをみんなに販売して喜んでもらいたい。そういう気持ちが強かったですね。
水野:会社を設立して10年、ファッションブランド「EmiriaWiz」立ち上げからは11年になるわけですが、現在と昔とで大きく変わったことはありますか?
愛沢:一言で言えば「人に任せて、組織で売上を出せるようになった」ことですね。
起業した当時は「自分が動いて売上を立てればいい」という考えが強くありました。キャバクラ嬢という職業は、売上が出るも出ないも自己責任の世界。起業もその延長線上で「自分が頑張ればいい」という思いが強くあったからです。
実際、数年はそれでうまくいっていましたし、これでいいんだとも思っていました。ただ、事業規模が大きくなってくると一人では限界があり、組織の必要性を感じました。
苦しかったですね。今までがむしゃらにやっていればよかったことが、今度は人に任せて売上をつくらなければならない。幸い、アイデアだけはどんどん湧いてくるので売上は増えていくのですが、それと反比例するように人が辞めていってしまう時期も経験しました。
水野:それはちょっと意外です。むしろマネジメントは得意なのかと思っていました。
愛沢:人に弱みを見せるのが苦手で、承認欲求も高くないんですよ。キャバクラ嬢をやっていたのに矛盾するかもしれませんが、自分らしさを押し出すよりも、「求められる愛沢えみり」を出すほうが得意なんです。
だけど企業運営では、そういうことよりも「自分がどうしたいか」っていう判断と決断の連続ですよね。おそらく、そこが足りなかったんだと思います。
そのことに気づいてからは、社長という立場で「事業をどうしたいか」「会社をどんな場所にしたいか」「どんな人と仕事をしたいか」と自分の言葉で語るようになりました。その頃から、マネジメント力もついてきたように思います。
水野:スタッフさんにどうしてほしいか、どんな動きをしてほしいかまで伝えられるようになり、スタッフさんがやるべき行動が明確になったわけですね。
愛沢:そうですね。また、「個のスタッフはどんなことが得意なのか、何が苦手なのか」よく観察して、適材適所を目指すようにしたことも大きかったと思います。試行錯誤しましたが、私がほしい組織の形を示すことができるようになったのは、本当にここ3~4年だと思います。
水野:自分の役割を無理に広げず、スタッフさんに任せられるようになり、YouTubeも子育ても注力できるようになったのですね。
◆子育てによって業務効率化に拍車がかかった
水野:娘さんとの暮らしについてもお伺いしたいのですが、だいぶ心境の変化もあったと聞いています。
愛沢:出産する前までは、「妊娠・出産・子育てをしながら、バリバリ働こう」って意気込みだったんです。でも、いざ産んでみると変わるものですね。もう子どもとの時間が愛おしくて愛おしくて。常に子どもといたい、いられて幸せっていう完全ママモードになってしまいました。
自分の変わりように自分が一番、驚きました。「ママになるために生まれてきたんだ」とすら思うのですから。
水野:劇的な変化ですね。まさにステージが変わって、気持ちも一新されたということ、正直、男性にはそこまでの変化って感じられないですもんね。
愛沢:そうですね。あわせて私は、付き合う友達にも変化がありました。ママ友と話す機会が増えたことで、「子どもを育てながら働くことの難しさ」を知ることもできました。
働きたい気持ちはあるのに、どうしてもワンオペにならざるを得なくて、仕事ができない。それって、とてももったいないことだなとも感じましたね。
水野:新たな視点が開けたというか、言い換えれば女性として生きることの難しさも知った、ということでしょうか。
愛沢:ええ、そうですね。もちろん私自身、仕事も会社の経営もあるので、べったり子どもといるわけにはいきません。でもだからこそ、「自分でやるべきことをしぼる」「短時間で集中できる環境を整える」「スケジュール管理を徹底する」ことを自分に課しました。
その結果、より効率よく業務が進むようになり、おかげでYouTubeの撮影にもしっかり時間がとれるようになりました。
水野:まさにその気付きをくれたのが娘さん、ということですね。
愛沢:本当に娘には感謝しています。そうした行動の転換って意外と自分からは出てこなくて、外的要因によって生まれるものなのだなとつくづく感じています。
水野:それほどまでに可愛いのだなと思うと同時に、やはり男性経営者にはないしなやかさ、優しさを感じます。
◆「素」の自分を見せられる大事な場所がYouTube
水野:一方でYouTubeチャンネル「愛沢えみり」は2019年2月からスタートし、今やチャンネル登録者数は60万人に迫る勢いです。キャバクラ嬢を引退する前から始められたんですよね。きっかけは何だったのですか?
愛沢:YouTubeを始める当時は、すでにキャバクラ嬢を引退することが決まっていました。「引退イベントの様子を動画で残しておきたい」というシンプルな理由から、YouTubeを始めたんです。
その後、引退イベントの様子を放映したところ、多くの反響をいただきました。愛沢えみりの新たな門出をみんなに見てもらうことができたことは、本当に印象に残っています。最近では娘との日常生活や、親友とのプライベートな映像なども配信しています。
水野:そうした飾らない姿を楽しめることもえみりチャンネルの良さだと思うのですが、YouTubeの影響力を感じることはありますか?
愛沢:ありますね。「いったいどこで私を知ってくれたんだろう?」という主婦の方や、20代の方は、たいていYouTubeを見てくれているようです。そういう意味でも、知名度アップには間違いなくYouTubeだと確信しています。昔はブログを、少し前はインスタグラムなどのSNSでしたがやっぱり伝えられる情報量の多さは動画にはかないません。
水野:具体的にはどんな部分が動画のメリットだと思われますか?
愛沢:動画って10分という長い時間を視聴者の方からいただくわけじゃないですか。なかなか10分もその人をじーっと見るってあまりないですよね。
そんな状況で10分間、その人の映像と言葉が入ってくるから、おそらく自然とその人のことを好きになってくれるんだと思うんですよね。
もちろん、内容によっては嫌いになる可能性もありますが、それよりも私は「好きになってもらいやすい」ほうにかけて動画を出していくのがいいと思います。
水野:影響力は間違いなく出るという一方で、登録者数の伸び悩みなどが気になり、始められない方も結構いますよね。その点、どんなふうにとらえればよいでしょうか。
愛沢:今はたしかにレッドオーシャン化していて、難しい部分もあると思います。ほとんどの人が知らない有益な情報を届けられるとか、ビジュアルがいいなど、特長がないと難しいのは間違いありません。
ただ、その一方で「長く続ける」ことができないのもYouTubeの世界ではよくあることです。私は更新ができないときもありましたが6年間、続けられています。だからこそ、今これだけの影響力があると思っています。
たとえ特長がそこまで打ち出せなくても「長く続ける」ことこそが、最大の差別化になるのではないでしょうか。
水野:たしかに、長く続けていくことでインフルエンサーさんやユーチューバー同士でのつながりができたりとか、そういった横のつながりは期待できそうですよね。
愛沢:それは絶対あると思います。私もYouTubeをやっていたからこそ実現したコラボもありましたし、YouTubeをやっていなかったら出会えてなかったタレントさんは何人もいます。
特に経営者の方はYouTubeを始めるのはメリットしかないと思います。自分の会社の宣伝が無料でできる。また、社長のマインドを広く発信できる。それだけでも効果は抜群ですし、これらの動画が採用する際には「情報」として大きな価値を持ってくれます。
水野:「経営者は四の五の言わずにYouTubeをやる」一択ですね。
愛沢:間違いないです。ただ、動画撮影も大変ですし、継続していくのは相応の覚悟も必要です。時に更新が止まってしまうこともあると思いますが、月に1本でも継続し続ける、というある意味「ゆるさ」も大事だと思います。
水野:愛沢さんもそういった経験があるんですね。
愛沢:はい。私はキャバクラで働いていたのは24歳までで、それから30歳までは数えるくらいしかお店には出勤していなかったんです。ただし、完全にキャバクラ嬢を辞めることはせず継続していました。
そうやって辞めなかったおかげで、多くの出会いもありました。24歳でスッパリお店を辞めていたら、おそらくYouTubeもお店のプロデュースもしていなかったと思います。
興味が移り変わることもありますし、飽きてしまうこともありますよね。だから、そんなときは無理せず休む。だけど辞めない。そうやって私はYouTubeを6年間、続けてくることができました。
水野:なるほど。どんなことでもいきなり辞めずに、「徐々に別のことにシフトしていく」ということが成功の大事なポイントなのですね。
◆娘との時間を大事にしながら、事業も動画配信も続けていきたい
水野:最後に、今後の展望を聞かせてください。
愛沢:大きく分けて2つあります。1つは、自分の事業拡大に伴い、「私がいなくてもより組織が運営できるよう環境を整備する」ことです。それには、「利益率が悪い事業を見直す」ことも必要だと思います。トップとしてそうした決断も速くしていきたいですね。
もう1つは、「女性が活躍し続けられるような社会を目指して、制度を整えていく」ことです。まずは当社の中で「評価制度」の整備などを進めていく予定です。ハードルは高いですが、そうやってひとつでも女性が働きやすい企業が増えていけば、本当の意味で女性が活躍する社会になると信じています。
今後も模索は続きますが、新たな愛沢えみりのステージを楽しみにいただけたら幸いです。
水野:ありがとうございました!
【インタビューを終えて(水野)】
今回、初めてお会いしたが、吸い込まれるような大きな瞳とスタイルの良さ、人当たりの良さにすっかり魅了されてしまった。伝説のキャバクラ嬢、若者のカリスマとして一世を風靡した愛沢えみりさんもついにママに。“えみり伝説”第2章も期待しています。
【プロフィール】
愛沢えみり
1988年生まれ。雑誌『小悪魔ageha』の専属モデルとして一躍有名に。その後、全国のキャバ嬢がもっとも憧れる新世代歌舞伎町NO.1として人気を博す。2013年、自身のECファッションブランド「Emiria Wiz」を立ち上げ、2015年には新宿に直営店を出店。月間売上2億5000万円を超え、話題となる。2019年にキャバクラ嬢を引退した後は、美容クリニック「Venus Beauty Clinic」や飲食店、アイドルのプロデュース、化粧品ブランド「norm+」の立ち上げなど事業の多角化を行うほか、モデル、インフルエンサーとして活躍中。SNSの総フォロワー数は約180万人。
<取材・文・構成/水野俊哉・高橋真以・掛端 玲 撮影/星 亘>
【水野俊哉】
1973年生まれ。作家。実業家。投資家。サンライズパブリッシング株式会社プロデューサー。経営者を成功に導く「成功請負人」。富裕層のコンサルタントも行う。著書も多数。『幸福の商社、不幸のデパート』『「成功」のトリセツ』『富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み』などがある。
「伝説のキャバクラ嬢」といったほうがピンとくる人も多いだろう。愛沢さんは18歳でキャバクラ嬢としてデビューし、トップクラスの売上を出す快挙を遂げた。その後、新宿・歌舞伎町のキャバクラに拠点を移し、その勢いはさらに増し、人気キャバクラ嬢へと駆け上がった。一晩当たりの売上最高額は2800万円。モデル活動やテレビ出演、数々の書籍を出版するなど、キャバクラ嬢にとどまらない活躍を見せる。
2019年に引退した後は、アパレルやSNS運用などを手がける会社経営に注力。年商35億円を売り上げ、今最も勢いのある経営者の一人でもある。「娘が生まれてから、毎日が幸せの絶頂です」と話す愛沢さんに、これまでの成功の秘訣とYouTubeでの活動、そして娘に対する思いと今後の展望について聞いた。
インタビュアーは、出版プロデューサーでビジネス書作家の水野俊哉さん。水野さんは出版プロデューサーとして数々のヒット作を世に送り出し、自らも作家として多くの書籍を出版している。
◆◆起業して気づいた「個」ではなく「組織」で力を発揮することの大切さ
水野:現在も変わらぬ美貌を誇る愛沢さんですが、1年前にお子さんが生まれるなど、ここ最近では大きな変化があったんですよね。
愛沢:はい、そうです。娘がとにかく可愛くて。今まで仕事が大好きで仕事人間だった私が、こうも変わるなんて私自身が本当に驚いています。
水野:愛沢さんといえば「元伝説のキャバクラ嬢」であり、モデルもされていて、現在のインフルエンサーという立ち位置の先駆けだったと思います。その頃の2014年に、株式会社voyageを設立されたんですよね。
愛沢:はい、設立当時はモデルやキャバクラ嬢もしていた時期で、同時に経営者もスタートさせました。最初は起業がどんなものなのか、どうすれば経営がうまくいくのか右も左もわからなかったのですが、ただただ可愛い洋服が好きで、それをみんなに販売して喜んでもらいたい。そういう気持ちが強かったですね。
水野:会社を設立して10年、ファッションブランド「EmiriaWiz」立ち上げからは11年になるわけですが、現在と昔とで大きく変わったことはありますか?
愛沢:一言で言えば「人に任せて、組織で売上を出せるようになった」ことですね。
起業した当時は「自分が動いて売上を立てればいい」という考えが強くありました。キャバクラ嬢という職業は、売上が出るも出ないも自己責任の世界。起業もその延長線上で「自分が頑張ればいい」という思いが強くあったからです。
実際、数年はそれでうまくいっていましたし、これでいいんだとも思っていました。ただ、事業規模が大きくなってくると一人では限界があり、組織の必要性を感じました。
苦しかったですね。今までがむしゃらにやっていればよかったことが、今度は人に任せて売上をつくらなければならない。幸い、アイデアだけはどんどん湧いてくるので売上は増えていくのですが、それと反比例するように人が辞めていってしまう時期も経験しました。
水野:それはちょっと意外です。むしろマネジメントは得意なのかと思っていました。
愛沢:人に弱みを見せるのが苦手で、承認欲求も高くないんですよ。キャバクラ嬢をやっていたのに矛盾するかもしれませんが、自分らしさを押し出すよりも、「求められる愛沢えみり」を出すほうが得意なんです。
だけど企業運営では、そういうことよりも「自分がどうしたいか」っていう判断と決断の連続ですよね。おそらく、そこが足りなかったんだと思います。
そのことに気づいてからは、社長という立場で「事業をどうしたいか」「会社をどんな場所にしたいか」「どんな人と仕事をしたいか」と自分の言葉で語るようになりました。その頃から、マネジメント力もついてきたように思います。
水野:スタッフさんにどうしてほしいか、どんな動きをしてほしいかまで伝えられるようになり、スタッフさんがやるべき行動が明確になったわけですね。
愛沢:そうですね。また、「個のスタッフはどんなことが得意なのか、何が苦手なのか」よく観察して、適材適所を目指すようにしたことも大きかったと思います。試行錯誤しましたが、私がほしい組織の形を示すことができるようになったのは、本当にここ3~4年だと思います。
水野:自分の役割を無理に広げず、スタッフさんに任せられるようになり、YouTubeも子育ても注力できるようになったのですね。
◆子育てによって業務効率化に拍車がかかった
水野:娘さんとの暮らしについてもお伺いしたいのですが、だいぶ心境の変化もあったと聞いています。
愛沢:出産する前までは、「妊娠・出産・子育てをしながら、バリバリ働こう」って意気込みだったんです。でも、いざ産んでみると変わるものですね。もう子どもとの時間が愛おしくて愛おしくて。常に子どもといたい、いられて幸せっていう完全ママモードになってしまいました。
自分の変わりように自分が一番、驚きました。「ママになるために生まれてきたんだ」とすら思うのですから。
水野:劇的な変化ですね。まさにステージが変わって、気持ちも一新されたということ、正直、男性にはそこまでの変化って感じられないですもんね。
愛沢:そうですね。あわせて私は、付き合う友達にも変化がありました。ママ友と話す機会が増えたことで、「子どもを育てながら働くことの難しさ」を知ることもできました。
働きたい気持ちはあるのに、どうしてもワンオペにならざるを得なくて、仕事ができない。それって、とてももったいないことだなとも感じましたね。
水野:新たな視点が開けたというか、言い換えれば女性として生きることの難しさも知った、ということでしょうか。
愛沢:ええ、そうですね。もちろん私自身、仕事も会社の経営もあるので、べったり子どもといるわけにはいきません。でもだからこそ、「自分でやるべきことをしぼる」「短時間で集中できる環境を整える」「スケジュール管理を徹底する」ことを自分に課しました。
その結果、より効率よく業務が進むようになり、おかげでYouTubeの撮影にもしっかり時間がとれるようになりました。
水野:まさにその気付きをくれたのが娘さん、ということですね。
愛沢:本当に娘には感謝しています。そうした行動の転換って意外と自分からは出てこなくて、外的要因によって生まれるものなのだなとつくづく感じています。
水野:それほどまでに可愛いのだなと思うと同時に、やはり男性経営者にはないしなやかさ、優しさを感じます。
◆「素」の自分を見せられる大事な場所がYouTube
水野:一方でYouTubeチャンネル「愛沢えみり」は2019年2月からスタートし、今やチャンネル登録者数は60万人に迫る勢いです。キャバクラ嬢を引退する前から始められたんですよね。きっかけは何だったのですか?
愛沢:YouTubeを始める当時は、すでにキャバクラ嬢を引退することが決まっていました。「引退イベントの様子を動画で残しておきたい」というシンプルな理由から、YouTubeを始めたんです。
その後、引退イベントの様子を放映したところ、多くの反響をいただきました。愛沢えみりの新たな門出をみんなに見てもらうことができたことは、本当に印象に残っています。最近では娘との日常生活や、親友とのプライベートな映像なども配信しています。
水野:そうした飾らない姿を楽しめることもえみりチャンネルの良さだと思うのですが、YouTubeの影響力を感じることはありますか?
愛沢:ありますね。「いったいどこで私を知ってくれたんだろう?」という主婦の方や、20代の方は、たいていYouTubeを見てくれているようです。そういう意味でも、知名度アップには間違いなくYouTubeだと確信しています。昔はブログを、少し前はインスタグラムなどのSNSでしたがやっぱり伝えられる情報量の多さは動画にはかないません。
水野:具体的にはどんな部分が動画のメリットだと思われますか?
愛沢:動画って10分という長い時間を視聴者の方からいただくわけじゃないですか。なかなか10分もその人をじーっと見るってあまりないですよね。
そんな状況で10分間、その人の映像と言葉が入ってくるから、おそらく自然とその人のことを好きになってくれるんだと思うんですよね。
もちろん、内容によっては嫌いになる可能性もありますが、それよりも私は「好きになってもらいやすい」ほうにかけて動画を出していくのがいいと思います。
水野:影響力は間違いなく出るという一方で、登録者数の伸び悩みなどが気になり、始められない方も結構いますよね。その点、どんなふうにとらえればよいでしょうか。
愛沢:今はたしかにレッドオーシャン化していて、難しい部分もあると思います。ほとんどの人が知らない有益な情報を届けられるとか、ビジュアルがいいなど、特長がないと難しいのは間違いありません。
ただ、その一方で「長く続ける」ことができないのもYouTubeの世界ではよくあることです。私は更新ができないときもありましたが6年間、続けられています。だからこそ、今これだけの影響力があると思っています。
たとえ特長がそこまで打ち出せなくても「長く続ける」ことこそが、最大の差別化になるのではないでしょうか。
水野:たしかに、長く続けていくことでインフルエンサーさんやユーチューバー同士でのつながりができたりとか、そういった横のつながりは期待できそうですよね。
愛沢:それは絶対あると思います。私もYouTubeをやっていたからこそ実現したコラボもありましたし、YouTubeをやっていなかったら出会えてなかったタレントさんは何人もいます。
特に経営者の方はYouTubeを始めるのはメリットしかないと思います。自分の会社の宣伝が無料でできる。また、社長のマインドを広く発信できる。それだけでも効果は抜群ですし、これらの動画が採用する際には「情報」として大きな価値を持ってくれます。
水野:「経営者は四の五の言わずにYouTubeをやる」一択ですね。
愛沢:間違いないです。ただ、動画撮影も大変ですし、継続していくのは相応の覚悟も必要です。時に更新が止まってしまうこともあると思いますが、月に1本でも継続し続ける、というある意味「ゆるさ」も大事だと思います。
水野:愛沢さんもそういった経験があるんですね。
愛沢:はい。私はキャバクラで働いていたのは24歳までで、それから30歳までは数えるくらいしかお店には出勤していなかったんです。ただし、完全にキャバクラ嬢を辞めることはせず継続していました。
そうやって辞めなかったおかげで、多くの出会いもありました。24歳でスッパリお店を辞めていたら、おそらくYouTubeもお店のプロデュースもしていなかったと思います。
興味が移り変わることもありますし、飽きてしまうこともありますよね。だから、そんなときは無理せず休む。だけど辞めない。そうやって私はYouTubeを6年間、続けてくることができました。
水野:なるほど。どんなことでもいきなり辞めずに、「徐々に別のことにシフトしていく」ということが成功の大事なポイントなのですね。
◆娘との時間を大事にしながら、事業も動画配信も続けていきたい
水野:最後に、今後の展望を聞かせてください。
愛沢:大きく分けて2つあります。1つは、自分の事業拡大に伴い、「私がいなくてもより組織が運営できるよう環境を整備する」ことです。それには、「利益率が悪い事業を見直す」ことも必要だと思います。トップとしてそうした決断も速くしていきたいですね。
もう1つは、「女性が活躍し続けられるような社会を目指して、制度を整えていく」ことです。まずは当社の中で「評価制度」の整備などを進めていく予定です。ハードルは高いですが、そうやってひとつでも女性が働きやすい企業が増えていけば、本当の意味で女性が活躍する社会になると信じています。
今後も模索は続きますが、新たな愛沢えみりのステージを楽しみにいただけたら幸いです。
水野:ありがとうございました!
【インタビューを終えて(水野)】
今回、初めてお会いしたが、吸い込まれるような大きな瞳とスタイルの良さ、人当たりの良さにすっかり魅了されてしまった。伝説のキャバクラ嬢、若者のカリスマとして一世を風靡した愛沢えみりさんもついにママに。“えみり伝説”第2章も期待しています。
【プロフィール】
愛沢えみり
1988年生まれ。雑誌『小悪魔ageha』の専属モデルとして一躍有名に。その後、全国のキャバ嬢がもっとも憧れる新世代歌舞伎町NO.1として人気を博す。2013年、自身のECファッションブランド「Emiria Wiz」を立ち上げ、2015年には新宿に直営店を出店。月間売上2億5000万円を超え、話題となる。2019年にキャバクラ嬢を引退した後は、美容クリニック「Venus Beauty Clinic」や飲食店、アイドルのプロデュース、化粧品ブランド「norm+」の立ち上げなど事業の多角化を行うほか、モデル、インフルエンサーとして活躍中。SNSの総フォロワー数は約180万人。
<取材・文・構成/水野俊哉・高橋真以・掛端 玲 撮影/星 亘>
【水野俊哉】
1973年生まれ。作家。実業家。投資家。サンライズパブリッシング株式会社プロデューサー。経営者を成功に導く「成功請負人」。富裕層のコンサルタントも行う。著書も多数。『幸福の商社、不幸のデパート』『「成功」のトリセツ』『富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み』などがある。