―[メンズファッションバイヤーMB]―
メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第505回をよろしくお願いします。
◆人気3ファストブランドの「マストバイコート」
そろそろ気温が下がってきてコートを選ぶ時期になってまいりました。
今回は人気3ファストブランドから「マストバイコート」を1点ずつご紹介。ぜひショッピングの参考にしてみてください。
◆すべてのダウンを過去のものにした傑作中の傑作!
・ハイブリッドダウンパーカ 1万2900円
ユニクロからはどう考えてもコレ。カシミアウールチェスターコートやシームレスダウンなど名作が山ほどあるユニクロですが、このハイブリッドダウンには敵わない! 一時代を築いたアイテムと言えるでしょう。
「モコモコした不恰好なダウンジャケットをきれいなシルエットにする!」というのは過去さまざまなブランドが挑戦してきた命題。ユニクロの過去の定番アイテム「シームレスダウン」もその類。ダウンジャケットのパーテーションを熱圧着によって自然に見せ、「ミシュランマン」のような印象を消したものでした。が、ハイブリッドダウンの前ではその工夫も霞むばかり。
ハイブリッドダウンはダウン素材と中綿素材を駆使して、ボリューム感を隠しつつ防寒性を維持したテクニカルなアイテム。大事なボディ部分はダウンを使い防寒性を高く、膨らみがあると一気にダボダボ感が出る腕部分はダウンではなく、中綿で上手にシルエットをきれいに見せています。
さらにミシュランマンのようなパーテーションは内側に隠し表側からはまるでブルゾンのように見える仕様に。他のブランドが出してきた「ダウンに見えないけど、ダウンです」アイテムをすべて過去のものにした傑作です。
◆身の丈にあった適度なスペック
無論デメリットとして「防寒性が下がる」わけですが、正直日本の気候ならこの程度で十二分すぎる。北海道など雪国の極寒地ならまだしも都内の真冬程度ならこれで問題なし。そもそも有名ダウンブランドをはじめ多くは日本の気候から考えればオーバースペック過ぎる。
「プロの登山家が選ぶ本物のダウンジャケット!」をなぜ温暖な東京の冬で使わなくてはいけないのか。冷静に考えるとダウン市場はスペックに踊らされすぎていたのでは……。その点、ハイブリッドダウンは身の丈にあったスペック、これで十分です。
スノーボードウェアから着想されたスタイリッシュなデザインは年々マイナーチェンジを重ねてモダンに仕上がっており、今年はカラーリング含めて高く評価できる傑作の域に。1万2900円とユニクロの中ではやや高値ですが……少し経つとどうせ9000円くらいに下がります(笑)。高ぇな、と思った人は少し待ちましょう。
◆高級ウールを擬態した名作コート
・コージーメルトンバルマカーンコート 6990円
ウールはここ10年で一気に価格高騰しました。10年前、日本のデザイナーズブランドでウール100%のロングコートを買おうとするとおよそ5万~6万円程度で手に入れることができましたが、最近では10万円を切るものを探すのが難しくなってきたほど。
さらに素材の希少性も高まっており、中価格帯市場から徐々に姿を消しつつあります。ウールはナイロンやポリエステルなど化学繊維の登場により一時的に需要が落ちましたが、その後SDGsの文脈やトレンドの流れから中国市場を中心に再び需要が高まっています。
ウールの生産は職人の技術や工場の設備が当然必要、また需要が落ちればそれらは削減されます。再び需要が高まったからといってすぐに職人を育てられるわけでもないし、工場のキャパを簡単に増やせるわけでもない。然して希少性も高まるわけです。価格高騰と高い希少性、ウールのコートを安価で手に入れるのはすっかり難しくなったというわけ。
◆デザイナーズブランドのウールコートに擬態
そこで、ポリエステルを駆使したウールライク生地が支持されているわけですが、GUはかなり前からこのあたりに着手していました。もちろんウールを完璧に真似できるわけもなく、風合いも防寒性も劣るのは間違いありません。
ただ、パッと見の印象はかなり高級感があり、しかもGUは長年の展開でデザインやシルエットもこなれており、ブランドライクな印象がお上手。デザイナーズブランドのウールコートに擬態したポリエステルの格安コートが完成している、これはもう匠の域です。
6990円と格安でこの雰囲気が楽しめるなら文句なし。今やGU以外のブランドもこの手のコートを展開していますが、まだまだGUはクオリティが高い。防寒性はやや頼りないため、真冬に着るならインナーダウンなどを重ねるのがおすすめです。
◆すでにメルカリでプレ値! 今季最注目のスーパーコスパアイテム!
・紳士 カシミヤ混ダッフルコート 2万9900円
最後は無印良品の特別ラインMUJI Laboから。長らくディレクターを務めたNハリウッド・尾花大輔さんが退任するという知らせで「これでMUJI Laboは買うものがなくなる」と多くの服好きが落胆していた……のですが、蓋を開けてみるとまったく逆。
さらに価格帯を上げて、「ブランド化した無印」にリブランディング。これが大成功で、「価格は高いが、コスパはいい」と多くの服好きを熱狂させるに至りました。
その中でも屈指の人気アイテムがこのカシミア混シリーズ。高混率のカシミアを使ったハイクオリティな素材で、しかもリバーてという大変コストと手間のかかる高級仕立てを採用し、2万9900円。価格的には当然高いのですが、このスペックなら普通6万~7万円してもおかしくありません。
ブランドによっては10万円を超えるものだってありそう……。デザインはおそらくどなたか有名なデザイナーが裏に入ってるのでしょう(”無印”だけに公表していませんが)、トレンドライクなシルエットと気の利いたディティールでデザイナーズブランドで出されていてもまったくおかしくない。
◆服好きじゃなくても実物を見れば驚愕
すでにこのシリーズは発売以降じわじわと売れはじめ、すでに人気色サイズは完売状態でメルカリではプレ値がついているほどです。
高混率カシミアのリバー仕立て、ロング丈で3万円を切る価格は市場で探してもまず見当たらない。服好きじゃないとなかなか手が出せない価格かもしれませんが、服好きじゃなくても実物を見れば驚愕するはず。
難点は展開店舗が少なく、オンラインなどでしか見ることができない点。それだけに服に詳しくないと反応が難しいかもしれませんが……これは騙されたと思ってぜひ手にしてみてください。
ちなみに同シリーズのチェスターコートは最早壊滅状態の希少在庫。ダッフルコートならまだ手に入ります。急げ!
というわけで、冬選ぶべきファストファッションのマストバイコート3選をお届けしました。
【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Twitterアカウント:@MBKnowerMag)
―[メンズファッションバイヤーMB]―
メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第505回をよろしくお願いします。
◆人気3ファストブランドの「マストバイコート」
そろそろ気温が下がってきてコートを選ぶ時期になってまいりました。
今回は人気3ファストブランドから「マストバイコート」を1点ずつご紹介。ぜひショッピングの参考にしてみてください。
◆すべてのダウンを過去のものにした傑作中の傑作!
・ハイブリッドダウンパーカ 1万2900円
ユニクロからはどう考えてもコレ。カシミアウールチェスターコートやシームレスダウンなど名作が山ほどあるユニクロですが、このハイブリッドダウンには敵わない! 一時代を築いたアイテムと言えるでしょう。
「モコモコした不恰好なダウンジャケットをきれいなシルエットにする!」というのは過去さまざまなブランドが挑戦してきた命題。ユニクロの過去の定番アイテム「シームレスダウン」もその類。ダウンジャケットのパーテーションを熱圧着によって自然に見せ、「ミシュランマン」のような印象を消したものでした。が、ハイブリッドダウンの前ではその工夫も霞むばかり。
ハイブリッドダウンはダウン素材と中綿素材を駆使して、ボリューム感を隠しつつ防寒性を維持したテクニカルなアイテム。大事なボディ部分はダウンを使い防寒性を高く、膨らみがあると一気にダボダボ感が出る腕部分はダウンではなく、中綿で上手にシルエットをきれいに見せています。
さらにミシュランマンのようなパーテーションは内側に隠し表側からはまるでブルゾンのように見える仕様に。他のブランドが出してきた「ダウンに見えないけど、ダウンです」アイテムをすべて過去のものにした傑作です。
◆身の丈にあった適度なスペック
無論デメリットとして「防寒性が下がる」わけですが、正直日本の気候ならこの程度で十二分すぎる。北海道など雪国の極寒地ならまだしも都内の真冬程度ならこれで問題なし。そもそも有名ダウンブランドをはじめ多くは日本の気候から考えればオーバースペック過ぎる。
「プロの登山家が選ぶ本物のダウンジャケット!」をなぜ温暖な東京の冬で使わなくてはいけないのか。冷静に考えるとダウン市場はスペックに踊らされすぎていたのでは……。その点、ハイブリッドダウンは身の丈にあったスペック、これで十分です。
スノーボードウェアから着想されたスタイリッシュなデザインは年々マイナーチェンジを重ねてモダンに仕上がっており、今年はカラーリング含めて高く評価できる傑作の域に。1万2900円とユニクロの中ではやや高値ですが……少し経つとどうせ9000円くらいに下がります(笑)。高ぇな、と思った人は少し待ちましょう。
◆高級ウールを擬態した名作コート
・コージーメルトンバルマカーンコート 6990円
ウールはここ10年で一気に価格高騰しました。10年前、日本のデザイナーズブランドでウール100%のロングコートを買おうとするとおよそ5万~6万円程度で手に入れることができましたが、最近では10万円を切るものを探すのが難しくなってきたほど。
さらに素材の希少性も高まっており、中価格帯市場から徐々に姿を消しつつあります。ウールはナイロンやポリエステルなど化学繊維の登場により一時的に需要が落ちましたが、その後SDGsの文脈やトレンドの流れから中国市場を中心に再び需要が高まっています。
ウールの生産は職人の技術や工場の設備が当然必要、また需要が落ちればそれらは削減されます。再び需要が高まったからといってすぐに職人を育てられるわけでもないし、工場のキャパを簡単に増やせるわけでもない。然して希少性も高まるわけです。価格高騰と高い希少性、ウールのコートを安価で手に入れるのはすっかり難しくなったというわけ。
◆デザイナーズブランドのウールコートに擬態
そこで、ポリエステルを駆使したウールライク生地が支持されているわけですが、GUはかなり前からこのあたりに着手していました。もちろんウールを完璧に真似できるわけもなく、風合いも防寒性も劣るのは間違いありません。
ただ、パッと見の印象はかなり高級感があり、しかもGUは長年の展開でデザインやシルエットもこなれており、ブランドライクな印象がお上手。デザイナーズブランドのウールコートに擬態したポリエステルの格安コートが完成している、これはもう匠の域です。
6990円と格安でこの雰囲気が楽しめるなら文句なし。今やGU以外のブランドもこの手のコートを展開していますが、まだまだGUはクオリティが高い。防寒性はやや頼りないため、真冬に着るならインナーダウンなどを重ねるのがおすすめです。
◆すでにメルカリでプレ値! 今季最注目のスーパーコスパアイテム!
・紳士 カシミヤ混ダッフルコート 2万9900円
最後は無印良品の特別ラインMUJI Laboから。長らくディレクターを務めたNハリウッド・尾花大輔さんが退任するという知らせで「これでMUJI Laboは買うものがなくなる」と多くの服好きが落胆していた……のですが、蓋を開けてみるとまったく逆。
さらに価格帯を上げて、「ブランド化した無印」にリブランディング。これが大成功で、「価格は高いが、コスパはいい」と多くの服好きを熱狂させるに至りました。
その中でも屈指の人気アイテムがこのカシミア混シリーズ。高混率のカシミアを使ったハイクオリティな素材で、しかもリバーてという大変コストと手間のかかる高級仕立てを採用し、2万9900円。価格的には当然高いのですが、このスペックなら普通6万~7万円してもおかしくありません。
ブランドによっては10万円を超えるものだってありそう……。デザインはおそらくどなたか有名なデザイナーが裏に入ってるのでしょう(”無印”だけに公表していませんが)、トレンドライクなシルエットと気の利いたディティールでデザイナーズブランドで出されていてもまったくおかしくない。
◆服好きじゃなくても実物を見れば驚愕
すでにこのシリーズは発売以降じわじわと売れはじめ、すでに人気色サイズは完売状態でメルカリではプレ値がついているほどです。
高混率カシミアのリバー仕立て、ロング丈で3万円を切る価格は市場で探してもまず見当たらない。服好きじゃないとなかなか手が出せない価格かもしれませんが、服好きじゃなくても実物を見れば驚愕するはず。
難点は展開店舗が少なく、オンラインなどでしか見ることができない点。それだけに服に詳しくないと反応が難しいかもしれませんが……これは騙されたと思ってぜひ手にしてみてください。
ちなみに同シリーズのチェスターコートは最早壊滅状態の希少在庫。ダッフルコートならまだ手に入ります。急げ!
というわけで、冬選ぶべきファストファッションのマストバイコート3選をお届けしました。
【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Twitterアカウント:@MBKnowerMag)
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