過去5万本の記事より大反響だった話をピックアップ!(初公開2023年7月10日 記事は取材時の状況) * * *
昔よりはハードルが低くなった世界一周。現在はLCC(格安航空会社)だけを乗り継いで旅することも可能で、これとは別にセットになった世界一周航空券というのも発売されている。
そのため、仕事を辞めて世界一周の旅に出る日本人も多く、なかには新婚旅行を兼ねて旅に出るカップルも。28歳のとき、1歳下の女性と結婚した加藤佳文さん(仮名・36歳)は、交際中の数年間に旅費を貯めて準備していたとか。そして、結婚のタイミングで2人とも勤めていた会社を退職。一緒に暮らすことなく旅に出発する。
◆4か月目から急激に関係悪化
「最初はシンガポールに向かい、約1か月半かけて東南アジアを周遊。そこからネパール、インドを経て、エジプト、トルコなどを経て、7か月目でヨーロッパに入りました。でも、この時点で彼女との関係はかなり悪化していました……」
実は、彼女は喜怒哀楽がはっきりしたタイプ。そこに魅力を感じていたが世界一周に出て4か月目が過ぎたあたりから不機嫌な態度を取ることが増え、些細なことで言い争いになることも。以前ならすぐに仲直りできたが彼女から歩み寄りの姿勢が見られず、関係がギクシャクしたまま旅を続けていたそうだ。
「私に非があるなら直そうと思い、何度も話し合おうともしました。けど、彼女は『別に悪いところがあるとかそういうのじゃない』って。じゃあ、何でそんな態度を取るんだと聞いても教えてくれなかった。旅行中ですからほかの男がいるわけでもないし、ただただ困惑していました」
◆旅行中なのに同じ部屋に泊まらず別居状態?
次第に彼女は現地で別行動を取るようになり、最後の3週間はホテルの部屋も別々。もはや夫婦とは呼べない状態だった。
「いい加減、旅を中止することも考えました。ちょうどドイツのフランクフルトに滞在していた時、彼女に『ここで終わりにしようか?』と話を切り出しました。向こうも同じ気持ちだったのか即答で同意してくれましたが問題はこの後。今後も夫婦として生活する意思があるのかを尋ねると、『正直、リセットしたいと思ってる』って。ただ、それまでのことがあったので驚きは一切ありませんでした」
◆目的が「結婚ではなく世界一周」だった?
彼女は「悪いのはすべて自分」と理由をなかなか明かさなかったが、納得しない加藤さん何度も尋ねると「旅を続ける中で小さなイライラが積み重なった。一時的なものかと思ったけど、一緒にいたくない気持ちが膨らむ一方だった」と告白。普段と違って淡々と話す姿に、完全に修復不可能だと感じてしまったという。
「彼女の理由には今でも納得してませんが、それまでの経緯があったし、私もこれ以上は関係修復の努力をしようって気になれませんでした。たぶん籍を入れても彼氏・彼女関係のままで本当の意味での夫婦になれてなかったんでしょう。一番の目的が結婚ではなく世界一周にすり替わっていたことも大きかったと思います」
◆帰国した翌日に離婚届を…
この時の話し合いで2人は日本に戻ってから離婚すること、財産分与や慰藉料は発生しないことで合意。加藤さんはこの5日後、彼女はさらに一週間後、それぞれ別の飛行機で帰国する。
「離婚を決めてからは彼女も吹っ切れたんでしょうね。最後の数日間は一緒に過ごしたんですけど、それまでの険悪な雰囲気がウソのように楽しかったです。だから、私は未練が出てきたし、ひょっとしたら撤回のチャンスもあるかなと思ったけど、帰国前日と彼女の帰国後に改めて確認すると、離婚の意思は固かった。それで彼女の帰国の翌日、2人で離婚届を出しに行きました」
加藤さんや彼女の両親は「決めたことなら仕方ない」と必要以上に干渉してくることはなかったが、面倒だったのは友人や元職場の関係者たちへの説明。旅の様子はSNSで随時発信しており、旅を中止して帰国する旨も投稿したが離婚については触れなかった。しかも、その後は2人ともしばらく更新しなかったため、「周りからはかなり心配された」と振り返る。
「さすがにSNSで離婚を明かすのは抵抗があったし、なんと書いていいかわからなかったので……。だから、個別に連絡を取って話しました。友達の中には『世界一周に行かなきゃ別れなかったんじゃない?』と言う奴もいましたが、そうかもしれません。ですが、それだと結婚自体なかったと思うし、やっぱり避けられないことだったと今では割り切っています」
◆離婚後は1人で世界一周の旅を再開
なお、加藤さんは離婚手続きなどで3週間ほど日本に滞在した後、再びヨーロッパへ飛んで今度は1人旅として世界一周を再開。帰国後は元職場の上司が立ち上げたベンチャー企業に就職し、その3年後には仕事を通じて知り合った女性と結婚。ただし、この女性との長旅は一度も経験していない。
「せいぜい4・5日程度の海外旅行ですね。盆や正月なら最長10日前後の休みは取れるけど、前の件があるので長旅がトラウマになっちゃって。ただ、短くても十分楽しめるので今はこれで十分です(笑)」
一緒に暮らした経験もないまま長旅に出れば、パートナーに対する不満も募って当然。恋人同士なら簡単に関係を解消できるが夫婦ならそうもいかない。新婚旅行で世界一周なんてうらやましい話だが、長旅ゆえのリスクもあるようだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
昔よりはハードルが低くなった世界一周。現在はLCC(格安航空会社)だけを乗り継いで旅することも可能で、これとは別にセットになった世界一周航空券というのも発売されている。
そのため、仕事を辞めて世界一周の旅に出る日本人も多く、なかには新婚旅行を兼ねて旅に出るカップルも。28歳のとき、1歳下の女性と結婚した加藤佳文さん(仮名・36歳)は、交際中の数年間に旅費を貯めて準備していたとか。そして、結婚のタイミングで2人とも勤めていた会社を退職。一緒に暮らすことなく旅に出発する。
◆4か月目から急激に関係悪化
「最初はシンガポールに向かい、約1か月半かけて東南アジアを周遊。そこからネパール、インドを経て、エジプト、トルコなどを経て、7か月目でヨーロッパに入りました。でも、この時点で彼女との関係はかなり悪化していました……」
実は、彼女は喜怒哀楽がはっきりしたタイプ。そこに魅力を感じていたが世界一周に出て4か月目が過ぎたあたりから不機嫌な態度を取ることが増え、些細なことで言い争いになることも。以前ならすぐに仲直りできたが彼女から歩み寄りの姿勢が見られず、関係がギクシャクしたまま旅を続けていたそうだ。
「私に非があるなら直そうと思い、何度も話し合おうともしました。けど、彼女は『別に悪いところがあるとかそういうのじゃない』って。じゃあ、何でそんな態度を取るんだと聞いても教えてくれなかった。旅行中ですからほかの男がいるわけでもないし、ただただ困惑していました」
◆旅行中なのに同じ部屋に泊まらず別居状態?
次第に彼女は現地で別行動を取るようになり、最後の3週間はホテルの部屋も別々。もはや夫婦とは呼べない状態だった。
「いい加減、旅を中止することも考えました。ちょうどドイツのフランクフルトに滞在していた時、彼女に『ここで終わりにしようか?』と話を切り出しました。向こうも同じ気持ちだったのか即答で同意してくれましたが問題はこの後。今後も夫婦として生活する意思があるのかを尋ねると、『正直、リセットしたいと思ってる』って。ただ、それまでのことがあったので驚きは一切ありませんでした」
◆目的が「結婚ではなく世界一周」だった?
彼女は「悪いのはすべて自分」と理由をなかなか明かさなかったが、納得しない加藤さん何度も尋ねると「旅を続ける中で小さなイライラが積み重なった。一時的なものかと思ったけど、一緒にいたくない気持ちが膨らむ一方だった」と告白。普段と違って淡々と話す姿に、完全に修復不可能だと感じてしまったという。
「彼女の理由には今でも納得してませんが、それまでの経緯があったし、私もこれ以上は関係修復の努力をしようって気になれませんでした。たぶん籍を入れても彼氏・彼女関係のままで本当の意味での夫婦になれてなかったんでしょう。一番の目的が結婚ではなく世界一周にすり替わっていたことも大きかったと思います」
◆帰国した翌日に離婚届を…
この時の話し合いで2人は日本に戻ってから離婚すること、財産分与や慰藉料は発生しないことで合意。加藤さんはこの5日後、彼女はさらに一週間後、それぞれ別の飛行機で帰国する。
「離婚を決めてからは彼女も吹っ切れたんでしょうね。最後の数日間は一緒に過ごしたんですけど、それまでの険悪な雰囲気がウソのように楽しかったです。だから、私は未練が出てきたし、ひょっとしたら撤回のチャンスもあるかなと思ったけど、帰国前日と彼女の帰国後に改めて確認すると、離婚の意思は固かった。それで彼女の帰国の翌日、2人で離婚届を出しに行きました」
加藤さんや彼女の両親は「決めたことなら仕方ない」と必要以上に干渉してくることはなかったが、面倒だったのは友人や元職場の関係者たちへの説明。旅の様子はSNSで随時発信しており、旅を中止して帰国する旨も投稿したが離婚については触れなかった。しかも、その後は2人ともしばらく更新しなかったため、「周りからはかなり心配された」と振り返る。
「さすがにSNSで離婚を明かすのは抵抗があったし、なんと書いていいかわからなかったので……。だから、個別に連絡を取って話しました。友達の中には『世界一周に行かなきゃ別れなかったんじゃない?』と言う奴もいましたが、そうかもしれません。ですが、それだと結婚自体なかったと思うし、やっぱり避けられないことだったと今では割り切っています」
◆離婚後は1人で世界一周の旅を再開
なお、加藤さんは離婚手続きなどで3週間ほど日本に滞在した後、再びヨーロッパへ飛んで今度は1人旅として世界一周を再開。帰国後は元職場の上司が立ち上げたベンチャー企業に就職し、その3年後には仕事を通じて知り合った女性と結婚。ただし、この女性との長旅は一度も経験していない。
「せいぜい4・5日程度の海外旅行ですね。盆や正月なら最長10日前後の休みは取れるけど、前の件があるので長旅がトラウマになっちゃって。ただ、短くても十分楽しめるので今はこれで十分です(笑)」
一緒に暮らした経験もないまま長旅に出れば、パートナーに対する不満も募って当然。恋人同士なら簡単に関係を解消できるが夫婦ならそうもいかない。新婚旅行で世界一周なんてうらやましい話だが、長旅ゆえのリスクもあるようだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。