ターゲットにされてしまうと日々の生活が一気に地獄へと変わってしまういじめ。学校では、最近まで親しかったはずの友人がいじめっ子に豹変するケースも珍しくない。
食品卸売会社に勤める大窪聖人さん(仮名・28歳)も高校2年の時、同じクラスになった中学時代からの友人にいじめられた経験を持つ。クラスカースト上位の連中と一緒になってからかってくるようになり、昼休みには購買にパシリに行かされていた。
◆友達だったはずなのに……中学時代の思い出を否定されてしまった
「暴力はなかったけど、毎日のようにイジってくるのが本当に辛かった。最初のうちは言い返すも強い口調で恫喝してくるので怖くて受け入れるしかなかったんです。
一度、友達なのに何でそんなことするんだよ、って聞いたことがありましたが、『冗談だろ? お前のこと友達と思ったことなんかねーよ』って。中学のころは互いの家に遊びに行くほど仲がよかったからあの一言は涙が出るほどショックでした」
進学校ではなかったが、元友人は県外の大学に進学。一方の大窪さんは実家の経済的な事情もあって就職を選んだ。この決断についても「進学しないって人生負け犬確定だな」など心無い言葉を浴びせられてしまう。
◆フットサルサークルでいじめっ子と再会
「ただ、奴は地元を離れるので会う機会もないと思い、それがせめてもの救いでした。でも、高校卒業から4年数か月が経ったある日、再会してしまったんです」
それは就職後に趣味で参加していた地元の社会人フットサルサークルでのこと。新メンバーとして入ったのが大学卒業後に地元に戻ってきた元友人だったのだ。
「奴の前で弱みを見せたくなかったので平静を装っていましたが、実は動悸が止まりませんでした。
みんなの前で『山岸とは中学高校の同級生なんですよ』とか爽やかそうに言うのに、挨拶後には自分の耳元で『まさかお前もいたとは思わなかったよ。これで楽しみが増えたわ』って。高校時代の嫌な奴のままでした」
◆フットサルの練習中、自分だけにラフプレーをしてくる元友人
元友人は最初のうちはおとなしくしており、絡んでくることもほとんどなかったがチーム内でのゲーム形式の紅白戦になると山岸さんにだけファールまがいのチャージを繰り返していた。それもボールではなく明らかに彼の足を削る場面も一度や二度ではなかった。
「試合だったらレッドカードを出されてもおかしくないプレーもありました。さすがに周りの方たちが注意してくれましたが、『大丈夫っすよ。俺との仲なんで』とどこ吹く風。その態度に周りも『同級生って割には全然仲良くないよな』と疑問を持たれ始めたんです」
それまでは「同じクラスだったけど、特に親しいわけではなかった」と話していた山岸さんだが、元友人が欠席した時の練習後の飲み会の席で2人の本当の関係を話してしまう。
元友人に自分へのラフプレーをやめてほしいと訴えても聞き入れてもらえなかったことを明かすと、メンバーたちの表情が強張ったのは言うまでもない。
それでも山岸さん自身が元友人を無理やり追放することは望んでおらず、当面は様子を見することに。ところが、そんな温情を知らない元友人の横暴さますますひどくなる一方。
「ウチのサークルは、専門学校卒や自分のような高卒が多いんですけど、奴は話の節々で自身が大卒であることをアピール。みなさん大人なので受け流していましたが、奴の学歴マウントにうんざりしていました」
◆高校時代と違い、元友人のいじめに加担する者はいなかった
そして、元友人はついにやらかしてしまう。隣町のチームとの試合後の飲み会の席上、酔って調子に乗ったのか口に含んだビールを山岸さんの顔に吹きかけてしまう。しかも、ビールまみれの彼を見てひとりで大笑い。だが、一線を越えてしまった元友人に対し、メンバーの1人がついに鉄槌を下す。
元友人の後ろに立ったかと思うとジョッキに入ったビールを頭からぶっかけたのだ。当然、元友人はキレたがそのメンバーは、「えっ、そういうの好きじゃないの? だって山岸君にもやってたじゃん!」と一言。それでも納得がいかない様子だったが、ほかのメンバーたちもここぞと言わんばかりに元友人の態度について次々と苦言を呈したそうだ、
「誰一人、奴の味方をする人はおらず、結局キレながら店を出て行こうとしました。ただ、飲み代を払ってなかったので奴にビールをかけた方が後を追い、『飲み逃げはいかんぞ』と肩を掴み、ちゃんと支払わせていましたけどね(笑)」
この日以降、元友人はフットサルサークルの練習や試合に姿を見せなくなり、そのままフェイドアウトしてしまったそうだ。
「私1人では何もできなかったでしょうから自分のために注意し、怒ってくれたメンバーのみんなには感謝してもしきれません。最後まで奴から謝罪の言葉がなかったのは残念でしたけどね」
いじめを受けた忌まわしき過去を払拭することは簡単なことではない。それでも仲間たちのおかげでトラウマを克服することができたようだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
食品卸売会社に勤める大窪聖人さん(仮名・28歳)も高校2年の時、同じクラスになった中学時代からの友人にいじめられた経験を持つ。クラスカースト上位の連中と一緒になってからかってくるようになり、昼休みには購買にパシリに行かされていた。
◆友達だったはずなのに……中学時代の思い出を否定されてしまった
「暴力はなかったけど、毎日のようにイジってくるのが本当に辛かった。最初のうちは言い返すも強い口調で恫喝してくるので怖くて受け入れるしかなかったんです。
一度、友達なのに何でそんなことするんだよ、って聞いたことがありましたが、『冗談だろ? お前のこと友達と思ったことなんかねーよ』って。中学のころは互いの家に遊びに行くほど仲がよかったからあの一言は涙が出るほどショックでした」
進学校ではなかったが、元友人は県外の大学に進学。一方の大窪さんは実家の経済的な事情もあって就職を選んだ。この決断についても「進学しないって人生負け犬確定だな」など心無い言葉を浴びせられてしまう。
◆フットサルサークルでいじめっ子と再会
「ただ、奴は地元を離れるので会う機会もないと思い、それがせめてもの救いでした。でも、高校卒業から4年数か月が経ったある日、再会してしまったんです」
それは就職後に趣味で参加していた地元の社会人フットサルサークルでのこと。新メンバーとして入ったのが大学卒業後に地元に戻ってきた元友人だったのだ。
「奴の前で弱みを見せたくなかったので平静を装っていましたが、実は動悸が止まりませんでした。
みんなの前で『山岸とは中学高校の同級生なんですよ』とか爽やかそうに言うのに、挨拶後には自分の耳元で『まさかお前もいたとは思わなかったよ。これで楽しみが増えたわ』って。高校時代の嫌な奴のままでした」
◆フットサルの練習中、自分だけにラフプレーをしてくる元友人
元友人は最初のうちはおとなしくしており、絡んでくることもほとんどなかったがチーム内でのゲーム形式の紅白戦になると山岸さんにだけファールまがいのチャージを繰り返していた。それもボールではなく明らかに彼の足を削る場面も一度や二度ではなかった。
「試合だったらレッドカードを出されてもおかしくないプレーもありました。さすがに周りの方たちが注意してくれましたが、『大丈夫っすよ。俺との仲なんで』とどこ吹く風。その態度に周りも『同級生って割には全然仲良くないよな』と疑問を持たれ始めたんです」
それまでは「同じクラスだったけど、特に親しいわけではなかった」と話していた山岸さんだが、元友人が欠席した時の練習後の飲み会の席で2人の本当の関係を話してしまう。
元友人に自分へのラフプレーをやめてほしいと訴えても聞き入れてもらえなかったことを明かすと、メンバーたちの表情が強張ったのは言うまでもない。
それでも山岸さん自身が元友人を無理やり追放することは望んでおらず、当面は様子を見することに。ところが、そんな温情を知らない元友人の横暴さますますひどくなる一方。
「ウチのサークルは、専門学校卒や自分のような高卒が多いんですけど、奴は話の節々で自身が大卒であることをアピール。みなさん大人なので受け流していましたが、奴の学歴マウントにうんざりしていました」
◆高校時代と違い、元友人のいじめに加担する者はいなかった
そして、元友人はついにやらかしてしまう。隣町のチームとの試合後の飲み会の席上、酔って調子に乗ったのか口に含んだビールを山岸さんの顔に吹きかけてしまう。しかも、ビールまみれの彼を見てひとりで大笑い。だが、一線を越えてしまった元友人に対し、メンバーの1人がついに鉄槌を下す。
元友人の後ろに立ったかと思うとジョッキに入ったビールを頭からぶっかけたのだ。当然、元友人はキレたがそのメンバーは、「えっ、そういうの好きじゃないの? だって山岸君にもやってたじゃん!」と一言。それでも納得がいかない様子だったが、ほかのメンバーたちもここぞと言わんばかりに元友人の態度について次々と苦言を呈したそうだ、
「誰一人、奴の味方をする人はおらず、結局キレながら店を出て行こうとしました。ただ、飲み代を払ってなかったので奴にビールをかけた方が後を追い、『飲み逃げはいかんぞ』と肩を掴み、ちゃんと支払わせていましたけどね(笑)」
この日以降、元友人はフットサルサークルの練習や試合に姿を見せなくなり、そのままフェイドアウトしてしまったそうだ。
「私1人では何もできなかったでしょうから自分のために注意し、怒ってくれたメンバーのみんなには感謝してもしきれません。最後まで奴から謝罪の言葉がなかったのは残念でしたけどね」
いじめを受けた忌まわしき過去を払拭することは簡単なことではない。それでも仲間たちのおかげでトラウマを克服することができたようだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。