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<漫画>「夫が突然殺された」女性漫画家が育った驚きの家庭環境「母の手料理を1度も食べたことがない」

日刊SPA! 2024年11月21日 15時53分

 人気漫画家・森園みるく氏の人生を振り返るインタビューの前編では、精神科病院に入院歴のある男性に48箇所をメッタ刺しにされて絶命した配偶者・村崎百郎氏との思い出を語ってもらった。後編では、世にあまり知られることのない森園氏本人の生育歴などに迫る。
◆「私の家とずいぶん違うな」と思った

――当時、村崎さんの事件に衝撃を受けたのは当然ですが、実は村崎さんがご自身の活動を森園先生以外のご家族にも打ち明けていなかったことをあとから知って、驚きました。

森園みるく(以下、森園):そうなんですよね、自分が鬼畜系・電波系ライターの村崎百郎であることは、家族の誰にも話していなかったみたいです。唯一、可愛がっていた彼の姪には、言っていたようですけれど。村崎の家庭は非常にまっとうで、お父様が教員をされていてお母様もとても家庭的で素晴らしい方でした。私の父も教師でしたが、母が真逆のキャラクターだったせいか、私の家とずいぶん違うな、なんて思ったりして(笑)。

――先生の育ったご家庭について、メディアでおっしゃっているのをあまり見かけないですよね。

森園:別に隠していないんですけどね。一部を切り取って漫画にしたこともありますし。簡単に言うと、母がとても派手な人で。地味に生きられないんですよね。私は山口県で育ったんですが、小さい頃に母はほとんど家にいませんでした。家事をしてくれるのは母の母、つまり祖母でした。小学校のとき、他の同級生の家には“家族団らん”があるらしいと知って、驚いたほどです。母は各地で書道教室を運営していて、仕事が終わったら色んなところで飲み歩いて、愛人らしき男が複数いる――そんな感じの人です。

◆母の手料理を1度も食べたことがない

――それはかなり衝撃です。奔放な方だったんですね。

森園:だから私、母の手料理を1度も食べたことがないんです。1度くらい食べてみたかったですよね。唯一、母が米を炊こうとしたことがありましたが、それも失敗していました(笑)。そのくらい、家庭的という言葉とかけ離れた人でした。すべて祖母がやってくれていたからだと思います。祖母が甘やかしたことも、一因だとは思いますが。

――ご家族の苦労もかなりのものだったでしょうね。

森園:父は特に苦労したと思います。家のなかで2人がたまに顔を合わせても、かなり険悪でした。母が父を詰って、父は無言になるのが常でした。そうした心労からかわかりませんけれども、父は割合に早く亡くなってしまったんです。父の葬式の席で、父側の親族が「あんな女と一緒になったからこうなったんだ」と言っていたのが印象的です。また、その親族は子どもである私たちに向かって、こう言いました。「お前らの母親がこのあたりでなんて言われていたか、知っているか? 高級娼婦だぞ」って(笑)。高級なんだ、と思いましたね。話していて思い出したのですが、村崎も私の母のルックスは絶賛していました。「美人でいい女だな、あれならヤレる」って(笑)。

◆「妹と顔が似ていない」真相を母に問い詰めたが…

――ちょっと『キアラ』の世界観がわかったように思います(笑)。お子さんの立場からすると、どう感じるものなのですか?

森園:実はその後、しばらくして母も亡くなるんですね。前々から、「私たち姉妹の父親は、全員別々なんじゃないか」という説が出ていたんですよ。顔も似てないし。妹なんて愛人と思われるある男性にそっくりなので(笑)。それで、母が亡くなる前、入院しているときに、妹が問い詰めたことがあるんです。しかしついぞ口を割らなかったらしいです。あっぱれな母親だなと思います。そういえば村崎が亡くなる以前から母は脳梗塞による半身不随状態だったのですが、村崎は「義母さんは俺より長く生きるよ」と明言していました。ちょうど先ほどお話しした、村崎が自身の死を予期していた時期です。そして、実際にその通りになりました。

◆当時は実家を出たくて仕方がなかったが…

――そこまでくると、自分勝手を通り越して豪快なお母様ですね。

森園:どうも母には父と結婚する前、交際していた男性がいたらしいんですね。しかしその方には家庭があった。それで言い寄ってきた父と結婚したらしいんです。父が死ぬ前、病気が何とかならないかと思って、霊媒師を呼んだことがあるんです。すると霊媒師が母親に、「愛してもいない男と一緒になったあんたが悪いんだ」って説教始めて……とうとう母親は泣いていました(笑)。

 もともと派手はところはあったんですけど、とある政党の方々と顔見知りになって交流していくうちに、拍車がかかった印象はありますね。著名な方との写真とかも家にありましたよ。政治絡みの方はお金をたくさん持っているから、いろいろなものを変えられてしまうんだなと感じたのを覚えています。

――森園先生はお母様に対して、いま、何を思いますか?

森園:当時は本当に家が嫌で、出たくて仕方なかったですね。それで東京に出てきて、デザインの専門学校へ入学し、漫画の投稿をやったりしていたらこうなった、という人生なんです。母をひとりの女性としてみたとき、間違いだらけだと思う一方で、あそこまで好きに生きれるってすごいなとも感じます。同時に、私たち姉妹にも、少しずつ母の要素が入っているように感じるんですよね。特に男性に対しての考え方などが似ていることがあって、ぞっとします(笑)。私たち姉妹は全員離婚歴がありますしね。でも、なぜか父と母はついに離婚しなかったんですよね(笑)。

◆少し前に「占い師としてデビューした」

――これまでのご自身の体験を振り返って、今後の創作に何か変化はありそうでしょうか?

森園:私の漫画にどう影響してくるかはわからないのですが、実は少し前に、占い師としてのデビューを果たしました(笑)。結構いろいろな体験をしてきたし、占いの勉強をすることで少し誰かの役に立つのではないかと思ったんです。先ほどお話しした村崎がかわいがっていた姪っ子も占い師として活動していて、なんだか不思議な縁を感じます。

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 森園作品は、ページをめくるたび、粗密のはっきりした独特な描線のなかにやや重たい色気と余韻を残す。波乱、劇的、怒涛――いずれの言葉さえ矮小に感じるほど、奇々怪々な出来事の連続を森園氏は生き抜いた。氏の精神は、大きなうねりを幾度となく経験しながらも、必ず再生していく。決してへこたれない。

 ときにグロテスクで目を背けたくなる真理を描きながらも、読後になぜか生きる活力や人生の奥深さが作品から匂い立つのは、森園氏の人生観の結晶がそこに煌めいているからかもしれない。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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