5合の白飯をウインナー1本やたくあん1枚だけをおかずに黙々と食べる動画投稿者『One food riceman』。動画ではひたすら白飯を食べるだけにもかかわらず、それらの動画が累計1億回以上も視聴されている。しかも彼が在住する日本ではなく、なぜか中国で。
中国では「米饭仙人(お米の妖精)」という愛称で親しまれている彼は一体何者なのか。その真相を確かめるため、彼が住む都内のシェアハウスに向かった。
◆中国で大バズり中の日本人「One food riceman」の正体
謎だらけの『One food riceman』の正体は、芸歴8年目のお笑い芸人・FFヤスエダ氏(27歳)。彼が動画を投稿することになったきっかけとは。
「2023年末にコンビを解散してから、芸人の仕事が2か月に一回程度の舞台のみになっていました。めちゃくちゃ暇で『このままではいけない』とSNSに動画投稿を始めようと思いました」
大量の白飯を食べるアイデアは、売れっ子先輩芸人からのアドバイスによるものだった。
「ピン芸人時代にフードファイターのネタをやっていた時に、作家の方から『本当に食えた方が面白い』と言われたんです。もともとは大食いではなかったんですが、訓練して量を食べられるようにしていました。
動画のネタに悩んでいたところ、お世話になっているレインボーの池田さんから『その大食いを活かしてみたら?』とアドバイスをいただいたんです」
◆先輩芸人の後押しもあって動画投稿をスタート
ただの大食いではつまらないと「少しのおかずで大量の白飯を食べる」企画に。海外でのバズも狙って、アカウントの名前は芸名ではなく「One food riceman」にした。
「きつそうにダラダラ食べている自分の動画を見て『これ面白いのかな…』と不安になりましたが、池田さんに『めちゃくちゃ面白い!』と言ってもらえたのが自信になりましたね」
しかし、もともと大食いではなかったため、完食するのは相当きついそうだ。
「動画にも映っていますが、実際に食べるとなるとちゃんときつくて(笑)。身長180センチ、体重67キロのどちらかというと痩せ型なので体格に恵まれているわけでもなく、頑張って食べています」
◆1本目の動画から900万回再生される“異常事態”に
そうして、今年の8月からOne food riceman動画をYouTubeとTikTokにアップし始めたヤスエダ氏。なんと、1本目から大きな反響を得ることになる。
「TikTokに一番最初にアップした『お米5合を煮卵1個で食う男。』の動画からめちゃくちゃ反応が良くて。現在では約800万回再生、約50万いいねで一番見られています。
まさか、1本目からこんなにハマるとは思いませんでした。コメントでは『途中のきつそうな表情がいい』って言われたり、みんな何を見て喜んでるんだって話ですよね(笑)」
一方、YouTubeには最初から最後までノーカットの動画をアップしており、動画の平均時間は40分ほど。長いものだと1時間を超えるものもある。
「こっちは3分くらいで視聴をやめる人が多いんですよ。長い動画だけど喋らないからラジオ的にも使えないし…改善しなきゃとは思っています。ただ、11月中旬時点でチャンネル登録者が毎日1000人ずつ増えてるので勢いはすごく感じていますね」
◆最もご飯が進んだのは「梅干し」と「たくあん」
ほとんどの人が未経験なうえに想像すらしないだろうが、白米を5合一気に食べて体調に変化はないのか。
「食べた直後に体重が2キロ程度増えるだけで、いまのところは大丈夫です。若さでカバーできているのかもしれませんが、内臓のケアのために野菜ジュースと乳酸菌飲料を飲んでいるくらいですかね。
あと、撮影の時以外はほとんどお米を食べられなくなりました(笑)。普段からほぼ米だけで5合も食べていると、味の濃いラーメンが愛おしくなります」
圧倒的に狂ったバランスの食事。いろいろなおかずで米を5合食べる動画がアップされているが、最も米が進んだおかずは何だろうか。
「昔から愛されているだけあってたくあんとか梅干しはすごくて、ちょっと食べるだけで本当にご飯が進むんですよ。逆にきつかったのはクリームチーズですね。塩味がなく、ご飯の甘味を変えられないので地獄でした(笑)」
◆中国に無断転載された動画が累計1億回以上再生
動画をアップし始めてほどなく、FFヤスエダ氏はある異変に気づく。
「TikTokやYouTubeのコメント欄に中国語が多いんです。翻訳してみると、『お前は中国で人気だ』とか、『今すぐ中国に来てくれ』という内容。
通常だと中国から日本のTikTokは観れないんですが、ちょっと知恵のある人に無断で転載されて、しかもそれが累計1億回以上再生されるほどバズってるらしいです」
少し調べると、中国のSNSや動画サイトに無断転載をしている大量のアカウントがヒット。本人の知らぬところで「米饭仙人(お米の妖精)」という愛称まで付けられていた。
「最初から海外ウケを狙ってOne food ricemanという名前にはしましたが、無断で転載するなよと(笑)。AIを使って僕が白米を食べながら美女とキスしまくる動画を作る奴もいるし、人気になるのは嬉しいですがパクられていたのは悔しかったですね」
そうしたラブコールを受け、彼はついに中国向けにアカウントを作成した。
「中国向けのコンテンツプロデューサーの山下智博さんと、後輩芸人で中国出身のいぜんの二人に協力してもらいながら、中国版TikTokの抖音(ドウイン)、中国版ニコニコ動画のbilibili(ビリビリ)、中国のSNSの小红书(シャオホンシュー)のアカウントを作りました」
◆中国の学生が食堂で真似する事態に
記事執筆時点でbilibiliのアカウントを作成してまだ3日ほどにもかかわらず、2本の動画がすでに500万回以上再生されている。抖音に至っては再生数が1350万回と、中国のネット民から熱烈な歓迎を受けているようだ。
「中国ではかなりバズっているみたいで、学生たちが食堂で僕の真似をしてくれているみたいです(笑)。この前は電車で中国人の方に握手を求められました」
国をまたいで動画を投稿しているが、現時点で収益化されているのは日本のTikTokのみなんだとか。
「10月20日に収益化されて、そこからアップした5本の動画の収益が合計で4万円ほど。まだまだこれからですが、アルバイト生活なのでやっぱり嬉しいです」
そんなOne food ricemanの今後の展望は?
「ネタがシンプルなので飽きられるのは早いかなと思ってて、手を変え品を変え頑張っていけたらなと思っています。おかずを『匂い』だけにしたり、料理の画像にしたりするのもいいかも。
あとは、太ってて大食いだと意外性がなくなっちゃうんで、太らないように気をつけたいですね(笑)」
One food ricemanが「中国で1番人気な日本人」になる日も近い!?
【松嶋三郎】
浅く広くがモットーのフリーライター。紙・web問わず、ジャンルも問わず、記事のためならインタビュー・潜入・執筆・写真撮影・撮影モデル役など、できることは何でもやるタイプ。Twitter:@matsushima36
中国では「米饭仙人(お米の妖精)」という愛称で親しまれている彼は一体何者なのか。その真相を確かめるため、彼が住む都内のシェアハウスに向かった。
◆中国で大バズり中の日本人「One food riceman」の正体
謎だらけの『One food riceman』の正体は、芸歴8年目のお笑い芸人・FFヤスエダ氏(27歳)。彼が動画を投稿することになったきっかけとは。
「2023年末にコンビを解散してから、芸人の仕事が2か月に一回程度の舞台のみになっていました。めちゃくちゃ暇で『このままではいけない』とSNSに動画投稿を始めようと思いました」
大量の白飯を食べるアイデアは、売れっ子先輩芸人からのアドバイスによるものだった。
「ピン芸人時代にフードファイターのネタをやっていた時に、作家の方から『本当に食えた方が面白い』と言われたんです。もともとは大食いではなかったんですが、訓練して量を食べられるようにしていました。
動画のネタに悩んでいたところ、お世話になっているレインボーの池田さんから『その大食いを活かしてみたら?』とアドバイスをいただいたんです」
◆先輩芸人の後押しもあって動画投稿をスタート
ただの大食いではつまらないと「少しのおかずで大量の白飯を食べる」企画に。海外でのバズも狙って、アカウントの名前は芸名ではなく「One food riceman」にした。
「きつそうにダラダラ食べている自分の動画を見て『これ面白いのかな…』と不安になりましたが、池田さんに『めちゃくちゃ面白い!』と言ってもらえたのが自信になりましたね」
しかし、もともと大食いではなかったため、完食するのは相当きついそうだ。
「動画にも映っていますが、実際に食べるとなるとちゃんときつくて(笑)。身長180センチ、体重67キロのどちらかというと痩せ型なので体格に恵まれているわけでもなく、頑張って食べています」
◆1本目の動画から900万回再生される“異常事態”に
そうして、今年の8月からOne food riceman動画をYouTubeとTikTokにアップし始めたヤスエダ氏。なんと、1本目から大きな反響を得ることになる。
「TikTokに一番最初にアップした『お米5合を煮卵1個で食う男。』の動画からめちゃくちゃ反応が良くて。現在では約800万回再生、約50万いいねで一番見られています。
まさか、1本目からこんなにハマるとは思いませんでした。コメントでは『途中のきつそうな表情がいい』って言われたり、みんな何を見て喜んでるんだって話ですよね(笑)」
一方、YouTubeには最初から最後までノーカットの動画をアップしており、動画の平均時間は40分ほど。長いものだと1時間を超えるものもある。
「こっちは3分くらいで視聴をやめる人が多いんですよ。長い動画だけど喋らないからラジオ的にも使えないし…改善しなきゃとは思っています。ただ、11月中旬時点でチャンネル登録者が毎日1000人ずつ増えてるので勢いはすごく感じていますね」
◆最もご飯が進んだのは「梅干し」と「たくあん」
ほとんどの人が未経験なうえに想像すらしないだろうが、白米を5合一気に食べて体調に変化はないのか。
「食べた直後に体重が2キロ程度増えるだけで、いまのところは大丈夫です。若さでカバーできているのかもしれませんが、内臓のケアのために野菜ジュースと乳酸菌飲料を飲んでいるくらいですかね。
あと、撮影の時以外はほとんどお米を食べられなくなりました(笑)。普段からほぼ米だけで5合も食べていると、味の濃いラーメンが愛おしくなります」
圧倒的に狂ったバランスの食事。いろいろなおかずで米を5合食べる動画がアップされているが、最も米が進んだおかずは何だろうか。
「昔から愛されているだけあってたくあんとか梅干しはすごくて、ちょっと食べるだけで本当にご飯が進むんですよ。逆にきつかったのはクリームチーズですね。塩味がなく、ご飯の甘味を変えられないので地獄でした(笑)」
◆中国に無断転載された動画が累計1億回以上再生
動画をアップし始めてほどなく、FFヤスエダ氏はある異変に気づく。
「TikTokやYouTubeのコメント欄に中国語が多いんです。翻訳してみると、『お前は中国で人気だ』とか、『今すぐ中国に来てくれ』という内容。
通常だと中国から日本のTikTokは観れないんですが、ちょっと知恵のある人に無断で転載されて、しかもそれが累計1億回以上再生されるほどバズってるらしいです」
少し調べると、中国のSNSや動画サイトに無断転載をしている大量のアカウントがヒット。本人の知らぬところで「米饭仙人(お米の妖精)」という愛称まで付けられていた。
「最初から海外ウケを狙ってOne food ricemanという名前にはしましたが、無断で転載するなよと(笑)。AIを使って僕が白米を食べながら美女とキスしまくる動画を作る奴もいるし、人気になるのは嬉しいですがパクられていたのは悔しかったですね」
そうしたラブコールを受け、彼はついに中国向けにアカウントを作成した。
「中国向けのコンテンツプロデューサーの山下智博さんと、後輩芸人で中国出身のいぜんの二人に協力してもらいながら、中国版TikTokの抖音(ドウイン)、中国版ニコニコ動画のbilibili(ビリビリ)、中国のSNSの小红书(シャオホンシュー)のアカウントを作りました」
◆中国の学生が食堂で真似する事態に
記事執筆時点でbilibiliのアカウントを作成してまだ3日ほどにもかかわらず、2本の動画がすでに500万回以上再生されている。抖音に至っては再生数が1350万回と、中国のネット民から熱烈な歓迎を受けているようだ。
「中国ではかなりバズっているみたいで、学生たちが食堂で僕の真似をしてくれているみたいです(笑)。この前は電車で中国人の方に握手を求められました」
国をまたいで動画を投稿しているが、現時点で収益化されているのは日本のTikTokのみなんだとか。
「10月20日に収益化されて、そこからアップした5本の動画の収益が合計で4万円ほど。まだまだこれからですが、アルバイト生活なのでやっぱり嬉しいです」
そんなOne food ricemanの今後の展望は?
「ネタがシンプルなので飽きられるのは早いかなと思ってて、手を変え品を変え頑張っていけたらなと思っています。おかずを『匂い』だけにしたり、料理の画像にしたりするのもいいかも。
あとは、太ってて大食いだと意外性がなくなっちゃうんで、太らないように気をつけたいですね(笑)」
One food ricemanが「中国で1番人気な日本人」になる日も近い!?
【松嶋三郎】
浅く広くがモットーのフリーライター。紙・web問わず、ジャンルも問わず、記事のためならインタビュー・潜入・執筆・写真撮影・撮影モデル役など、できることは何でもやるタイプ。Twitter:@matsushima36