こんにちは。結婚相談所「マリーミー」で代表を務める植草美幸です。『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)での特集をはじめ、各種メディアで見たことがある――なんて方もいらっしゃるでしょうか。
マリーミーは設立15年となり、現在では年間約2000件もの結婚や恋愛、夫婦関係にまつわる相談を受けています。これだけの相談を聞いていると、多くの問題はいくつかの類型に分けられ、それぞれに存在する鉄板の解決策が見えてくるものです。人間関係は十人十色のようで、対応には同工異曲の趣があります。
本連載では、「結婚後のリアル」な悩みにお答えしていきます。ただ、既婚者の方だけでなく、お相手選びに迷いのある婚活中の方にも参考となるよう、手加減なしの“辛口”モードです。心してお付き合いくださいね。
◆結婚式にまつわる陰陽
円満な関係を保てている夫婦が多用する魔法の言葉「どうしよっか?」について、前回の記事では解説しました。
本記事では「どうしよっか?」を活用できなかったがために、結婚早々に暗雲が立ち込めてしまった事例と、それとは対照的な事例をあわせて紹介します。
両事例のきっかけとなったのは「結婚式」です。結婚はもとより、結婚式や披露宴に対する考え方も、個人差が大きくなっている現代。「どうしよっか?」の使い手でなければ、甘い新婚生活はどこへやら、遠のいてしまう場合も少なくありません。
◆海外挙式じゃないと「お母さんに友達いないのバレちゃう」
結婚式の意向によって先行きが怪しくなってしまったお悩みは、ラジオ「植草美幸の恋愛・結婚相談」(レインボータウンFM /YouTube)に寄せられた事例から。
相談者さんは女性で、交際から1年ほど経ったのちにプロポーズを受けたそうです。その後お相手の異動が重なった関係で、結婚式を挙げるまえにはやばやと婚姻届を提出。しかし結婚式についての意向がどうしても噛み合わず、不和が拡大していった……というお悩みでした。
女性の結婚式・披露宴の希望は、家族だけでなく、友人や会社の人も呼んだにぎやかなもの。お相手の希望は、海外挙式にして家族のみを呼ぶスタイル。
なぜ夫が家族のみの海外挙式にこだわるのかが一向に見えず、相談者が繰り返し尋ねてようやく得られた答えが、「友達がいないことをお母さんにバレたくないから」だったそうです。
結婚してもなお、優先順位が「妻<母親」であることは言うまでもなく気がかりで、今回のテーマとはまた異なる問題の根も存在しています。ただ、本記事では「どうしよっか?」不足に焦点を当てて考えていきましょう。
◆「どうしよっか?」を使いこなせていないから…
結婚相談所の場合ですと、複数の人とデートを重ねる仮交際期間中からすでに、挙式についての意向確認をするのが通常です。一人に絞った本交際の段階では、仮交際時にすり合わせた内容をもとに、プロポーズや挨拶、挙式準備などを行っていきます。
恋愛結婚の場合、そうした過程ごとの区分が明瞭ではないため、良くも悪くも「ふわっと」進んでいきやすいのです。
悪い面としては、お悩みと同じく認識の齟齬が発生しがちですし、良い面としては、サプライズ感やドキドキ感などの高揚感がより強く味わいやすいかもしれないことでしょうか。
相談内容に戻りますと、交際1年でプロポーズがあったのち、直後に仕事の関係でどたばたと結婚されていました。ですが、プロポーズ以前には交際期間が1年あります。
その期間に、どれだけ「どうしよっか?」のやりとりができていたのかが、心配な点なのです。
夫が海外挙式にこだわる理由が少々子供っぽいゆえに、重要な問題が覆い隠されてしまうようですが、このお二人にとっての真の課題は、あくまで「向き合うこと・すり合わせの不足」ですから。
◆「どうしよっか?」で相手を知り、自分を伝える
ちなみに相談者さんの夫の方からは、「自分の血縁には完全に隠したうえで、妻側のゲストのみを呼ぶ披露宴を執り行う」との妥協案も提案されたそうです。
一見「どうしよっか?」からの発展型提案のようにも聞こえます。けれど、あくまで自分のわがままにこだわったままで、相手がにぎやかな結婚式を行いたい理由にまで踏み込んだうえでの提案にはなっていません。
くわえて、相談者ご自身(妻)の番組宛ての質問文でも、相手が結婚式・挙式を嫌がる理由は書かれていても、自分の理想の「なぜ」は書かれていないのです。
憶測にはなってしまいますが、「なぜにぎやかにしたいのか」また「なぜ母親にバレたくないのか」について、相互に掘り下げて話すことができていないのではと感じました。
今日のランチをどうするかといった簡単なことであれば、「どうしよっか? 麺類ならなんでもいいなって気分だけど、あなたは?」程度の単純なやりとりで十分。しかし、中長期にわたる議題であれば、より踏み込まないと適切な「どうしよっか?」にはつながりません。
実際、「最近わかったのですが、夫のお父さんが自死されていて、それをずっと隠されていました」「ほかにも隠し事があるのではと不安」と相談者さんは書かれていました。少なくとも夫側には自己開示不足があり、もしかすると相談者さんにも踏み込み切る力が不足していることが窺えるようなエピソードでしょう。
◆絶対譲れないことがあるなら先手を打て
以上の事例と対照的なエピソードとして、マリーミーの元会員さんのお話をします。
彼女は結婚式に強い希望があり、「“絶対”にディズニーウェディングがしたい」とおっしゃっていました。ディズニーでの挙式はやはり高価で、興味がない人にとってはなかなか承諾を得られないプランです。
ただし、彼女は自らの希望について自覚があり、非常に明確です。そのため、初回のお見合いで「ディズニーウェディング希望」を宣言し、相手からNGが出れば即座にその方とは終了して、また別の方と会う作戦で婚活を進めてもらいました。
彼女は2回目の結婚でもありましたが、戦略がうまくいき、トントン拍子でディズニーウェディングを叶えてくれる人との良縁に恵まれました。
少々極端な事例ではあるものの、「自らの絶対に譲れないポイント」がある場合の必須行動なのです。先手を打って希望を宣言して、相手がそれを呑んでくれるかの確認は、出来るだけ早めに行っておきましょう。
◆イチゴミルクシェイクになれ
ですが、多くの人は「自らの絶対に譲れないポイント」や「相手の絶対に譲れないポイント」に対して鈍感です。
「結婚式を挙げさえすればそれ以上の要望はないだろう」「結婚式を挙げるのに同意なら、一般的な国内挙式であるだろう」くらいの思い込みのまま過ごし、いざ具体化する際になって食い違いの大きさに愕然としてしまう人ばかり。
だからこそ、自分と相手はまったく違う生き物であることを念頭に、「どうしよっか?」を重ね、本音を見せ合うようなコミュニケーションを行わなければなりません。
特に勝負となるのは結婚から1年以内です。それ以上が経過してしまうと、どのような形であれ、上下構造を含めて二人の関係性が固定してしまいます。
そうなるまえに、「どうしよっか?」を通じて心を開き、イチゴとミルクの独立した二人から「イチゴミルクシェイク」のような渾然一体の存在を目指していきましょう。
◆「最初に直面する大きな壁」だからこそ…
挙式は長く続くだろう結婚生活のなかで考えれば、「たったそれだけのこと」という見方もできます。他方で、一生涯におけるかけがえのない大切なメモリアルとも、もちろん捉えられます。
したがって、結婚生活をスタートするにあたっての、二人が最初に直面する大きな壁になりうるのが結婚式および披露宴です。
とはいえウェディングプランはあくまで幸福なテーマ。これを二人で解決できなければ先が思いやられることでしょう。
この先に待ち受けるだろう“人生の試練”の練習問題だと思って、「どうしよっか?」を合言葉に、二人三脚で「ウェディングトラブル」を乗り越えてください。
<TEXT/植草美幸>
【植草美幸】
結婚相談所マリーミー代表取締役、恋愛・婚活アドバイザー。 1995年にアパレル業界に特化した人材派遣会社エムエスピーを創業。そこで培ったマッチング能力・人材発掘力を生かし、2009年に結婚相談所マリーミーを設立。日々カウンセリングを行いながら、セミナーの開催、テレビやラジオへの出演など幅広く活動中。著書に『ワガママな女におなりなさい 「婚活の壁」に効く秘密のアドバイス』(講談社)、『モテ理論』(PHP文庫)など
マリーミーは設立15年となり、現在では年間約2000件もの結婚や恋愛、夫婦関係にまつわる相談を受けています。これだけの相談を聞いていると、多くの問題はいくつかの類型に分けられ、それぞれに存在する鉄板の解決策が見えてくるものです。人間関係は十人十色のようで、対応には同工異曲の趣があります。
本連載では、「結婚後のリアル」な悩みにお答えしていきます。ただ、既婚者の方だけでなく、お相手選びに迷いのある婚活中の方にも参考となるよう、手加減なしの“辛口”モードです。心してお付き合いくださいね。
◆結婚式にまつわる陰陽
円満な関係を保てている夫婦が多用する魔法の言葉「どうしよっか?」について、前回の記事では解説しました。
本記事では「どうしよっか?」を活用できなかったがために、結婚早々に暗雲が立ち込めてしまった事例と、それとは対照的な事例をあわせて紹介します。
両事例のきっかけとなったのは「結婚式」です。結婚はもとより、結婚式や披露宴に対する考え方も、個人差が大きくなっている現代。「どうしよっか?」の使い手でなければ、甘い新婚生活はどこへやら、遠のいてしまう場合も少なくありません。
◆海外挙式じゃないと「お母さんに友達いないのバレちゃう」
結婚式の意向によって先行きが怪しくなってしまったお悩みは、ラジオ「植草美幸の恋愛・結婚相談」(レインボータウンFM /YouTube)に寄せられた事例から。
相談者さんは女性で、交際から1年ほど経ったのちにプロポーズを受けたそうです。その後お相手の異動が重なった関係で、結婚式を挙げるまえにはやばやと婚姻届を提出。しかし結婚式についての意向がどうしても噛み合わず、不和が拡大していった……というお悩みでした。
女性の結婚式・披露宴の希望は、家族だけでなく、友人や会社の人も呼んだにぎやかなもの。お相手の希望は、海外挙式にして家族のみを呼ぶスタイル。
なぜ夫が家族のみの海外挙式にこだわるのかが一向に見えず、相談者が繰り返し尋ねてようやく得られた答えが、「友達がいないことをお母さんにバレたくないから」だったそうです。
結婚してもなお、優先順位が「妻<母親」であることは言うまでもなく気がかりで、今回のテーマとはまた異なる問題の根も存在しています。ただ、本記事では「どうしよっか?」不足に焦点を当てて考えていきましょう。
◆「どうしよっか?」を使いこなせていないから…
結婚相談所の場合ですと、複数の人とデートを重ねる仮交際期間中からすでに、挙式についての意向確認をするのが通常です。一人に絞った本交際の段階では、仮交際時にすり合わせた内容をもとに、プロポーズや挨拶、挙式準備などを行っていきます。
恋愛結婚の場合、そうした過程ごとの区分が明瞭ではないため、良くも悪くも「ふわっと」進んでいきやすいのです。
悪い面としては、お悩みと同じく認識の齟齬が発生しがちですし、良い面としては、サプライズ感やドキドキ感などの高揚感がより強く味わいやすいかもしれないことでしょうか。
相談内容に戻りますと、交際1年でプロポーズがあったのち、直後に仕事の関係でどたばたと結婚されていました。ですが、プロポーズ以前には交際期間が1年あります。
その期間に、どれだけ「どうしよっか?」のやりとりができていたのかが、心配な点なのです。
夫が海外挙式にこだわる理由が少々子供っぽいゆえに、重要な問題が覆い隠されてしまうようですが、このお二人にとっての真の課題は、あくまで「向き合うこと・すり合わせの不足」ですから。
◆「どうしよっか?」で相手を知り、自分を伝える
ちなみに相談者さんの夫の方からは、「自分の血縁には完全に隠したうえで、妻側のゲストのみを呼ぶ披露宴を執り行う」との妥協案も提案されたそうです。
一見「どうしよっか?」からの発展型提案のようにも聞こえます。けれど、あくまで自分のわがままにこだわったままで、相手がにぎやかな結婚式を行いたい理由にまで踏み込んだうえでの提案にはなっていません。
くわえて、相談者ご自身(妻)の番組宛ての質問文でも、相手が結婚式・挙式を嫌がる理由は書かれていても、自分の理想の「なぜ」は書かれていないのです。
憶測にはなってしまいますが、「なぜにぎやかにしたいのか」また「なぜ母親にバレたくないのか」について、相互に掘り下げて話すことができていないのではと感じました。
今日のランチをどうするかといった簡単なことであれば、「どうしよっか? 麺類ならなんでもいいなって気分だけど、あなたは?」程度の単純なやりとりで十分。しかし、中長期にわたる議題であれば、より踏み込まないと適切な「どうしよっか?」にはつながりません。
実際、「最近わかったのですが、夫のお父さんが自死されていて、それをずっと隠されていました」「ほかにも隠し事があるのではと不安」と相談者さんは書かれていました。少なくとも夫側には自己開示不足があり、もしかすると相談者さんにも踏み込み切る力が不足していることが窺えるようなエピソードでしょう。
◆絶対譲れないことがあるなら先手を打て
以上の事例と対照的なエピソードとして、マリーミーの元会員さんのお話をします。
彼女は結婚式に強い希望があり、「“絶対”にディズニーウェディングがしたい」とおっしゃっていました。ディズニーでの挙式はやはり高価で、興味がない人にとってはなかなか承諾を得られないプランです。
ただし、彼女は自らの希望について自覚があり、非常に明確です。そのため、初回のお見合いで「ディズニーウェディング希望」を宣言し、相手からNGが出れば即座にその方とは終了して、また別の方と会う作戦で婚活を進めてもらいました。
彼女は2回目の結婚でもありましたが、戦略がうまくいき、トントン拍子でディズニーウェディングを叶えてくれる人との良縁に恵まれました。
少々極端な事例ではあるものの、「自らの絶対に譲れないポイント」がある場合の必須行動なのです。先手を打って希望を宣言して、相手がそれを呑んでくれるかの確認は、出来るだけ早めに行っておきましょう。
◆イチゴミルクシェイクになれ
ですが、多くの人は「自らの絶対に譲れないポイント」や「相手の絶対に譲れないポイント」に対して鈍感です。
「結婚式を挙げさえすればそれ以上の要望はないだろう」「結婚式を挙げるのに同意なら、一般的な国内挙式であるだろう」くらいの思い込みのまま過ごし、いざ具体化する際になって食い違いの大きさに愕然としてしまう人ばかり。
だからこそ、自分と相手はまったく違う生き物であることを念頭に、「どうしよっか?」を重ね、本音を見せ合うようなコミュニケーションを行わなければなりません。
特に勝負となるのは結婚から1年以内です。それ以上が経過してしまうと、どのような形であれ、上下構造を含めて二人の関係性が固定してしまいます。
そうなるまえに、「どうしよっか?」を通じて心を開き、イチゴとミルクの独立した二人から「イチゴミルクシェイク」のような渾然一体の存在を目指していきましょう。
◆「最初に直面する大きな壁」だからこそ…
挙式は長く続くだろう結婚生活のなかで考えれば、「たったそれだけのこと」という見方もできます。他方で、一生涯におけるかけがえのない大切なメモリアルとも、もちろん捉えられます。
したがって、結婚生活をスタートするにあたっての、二人が最初に直面する大きな壁になりうるのが結婚式および披露宴です。
とはいえウェディングプランはあくまで幸福なテーマ。これを二人で解決できなければ先が思いやられることでしょう。
この先に待ち受けるだろう“人生の試練”の練習問題だと思って、「どうしよっか?」を合言葉に、二人三脚で「ウェディングトラブル」を乗り越えてください。
<TEXT/植草美幸>
【植草美幸】
結婚相談所マリーミー代表取締役、恋愛・婚活アドバイザー。 1995年にアパレル業界に特化した人材派遣会社エムエスピーを創業。そこで培ったマッチング能力・人材発掘力を生かし、2009年に結婚相談所マリーミーを設立。日々カウンセリングを行いながら、セミナーの開催、テレビやラジオへの出演など幅広く活動中。著書に『ワガママな女におなりなさい 「婚活の壁」に効く秘密のアドバイス』(講談社)、『モテ理論』(PHP文庫)など