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プロ野球「14球団制」への布石?今季二軍に参加「新潟&静岡」に“一軍昇格”の可能性はあるか

日刊SPA! 2024年11月29日 15時51分

 日本にプロ野球が誕生したのはちょうど90年前。大日本東京野球倶楽部(現在の読売ジャイアンツ)が、同年12月に創設されたのが起源である。
 2年後の1936年には、東京巨人、大阪タイガースら7球団により日本職業野球連盟が発足し、プロ野球(NPB)のリーグ戦がスタートした。その後は第二次世界大戦による一時休止を経て、1950年には2リーグに分裂。当初はセ・リーグ8球団、パ・リーグ7球団による15球団制だった。

 その後、幾度かの吸収合併を経て、1958年にセ・パ6球団ずつの12球団制に辿り着いた。2004年には、オーナーサイドが8~10球団に規模を縮小した上での1リーグ制移行を画策したこともあったが、選手会やファンの大反発を招き、結局12球団による2リーグ制が維持され今日に至っている。

 そんな中、2014年に取り沙汰されたのが「16球団構想」である。自民党の日本経済再生本部が、地域活性化の起爆剤の一つとして、NPBの球団数を「12」から「16」に拡大してはどうかという提案だった。

 ただ、球団拡張の話題はたびたび俎上には載るものの、具体的な方針は見いだされないまま時間だけが過ぎていた。

◆今年から二軍戦に新たな2チームが参加

 ところが2023年春に小さな波が生まれた。NPBが2024年から二軍戦のみに参加する2チームを新たに公募したのだ。将来的に一軍の球団数を増やすための布石ともいえる動きだった。

 NPBは「人気のセ、実力のパ」と呼ばれた時代を乗り越え、かつて閑古鳥が鳴いていたパ・リーグ球団の球場にも多くのファンが押し寄せるようになっている。実際にパ・リーグ球団が主催する試合の入場者数は堅調に伸びており、今季はリーグ史上初めて1200万人を突破。1試合平均は過去最多の2万8121人を動員した。

 そんな中、今季の開幕から二軍戦に参加したのが公募で選ばれた2チームだった。オイシックス新潟アルビレックス(以下、オイシックス)と、くふうハヤテベンチャーズ静岡(以下、ハヤテ)である。

 オイシックスはイースタン・リーグの8球団目、ハヤテはウエスタン・リーグの6球団目として参戦。1年目となった今シーズンの結果は、それぞれのリーグで大きく離された最下位に沈みはしたが、オイシックスの知念大成が首位打者、ハヤテの増田将馬が盗塁王にそれぞれ輝くなど、爪痕を残す選手も登場した。

 残念ながら知念と増田は先月のドラフト会議で指名漏れとなったが、オイシックス・下川隼佑と、ハヤテ・早川太貴の両投手が育成3位指名を受け、晴れて“プロ入り”を果たしている。

◆参戦初年度の集客は…

 では、肝心の集客はどうだったかというと、オイシックスは1試合平均1247人、ハヤテは同866人を動員。これだけ見ると、かなり厳しい数字にも映るが、1000人を下回ったハヤテでも二軍14球団の中では8位と決して悪くなかった。

 試合開始が平日の昼すぎということも珍しくなく、さほど気にする必要はないだろう。むしろ、オイシックスはBCリーグ所属時の前年から平均入場者数は2倍以上に増えており、事業収入も目標の6億円を達成する見込み。1年目としては合格点といえる運営だった。

 また、オイシックスが本拠地を置く『HARD OFF ECOスタジアム』は、3万人を収容できる大箱。これまでも多くのNPB主催試合が行われており、近い将来、新潟に一軍の球団が誕生してもおかしくない。

◆サッカー王国で野球熱を高めることはできるのか

 一方で、ハヤテのホーム球場、静岡市の『ちゅ~るスタジアム清水』は、収容人員が1万人と小規模。今季はほかに約2万人以上を収容できる静岡草薙球場や浜松球場でも主催試合を行ったが、そもそも静岡県はサッカー王国と呼ばれる土地柄でもある。東名高速と東海道新幹線が東西に延びる交通アクセスの利点はあるものの、野球熱の高まりを期待するのは来季以降のハヤテ次第といったところか。

 もし将来的に一軍の球団数を拡張するとなると、毎試合少なくとも1万5000~2万人の集客は必要不可欠。新潟市(約76万人)と静岡市(約67万人)は、人口自体は変わらないが、減少幅は後者の方が大きい。その点でも一軍に13球団目が誕生するとすれば新潟が有力候補といえるだろう。

◆阪神ファンの多い関西圏も成功する可能性あり?

 また、それ以外の都市となると、約145万人を抱える京都市も候補の一つ。『わかさスタジアム京都』は収容人員が2万人とやや手狭だが、交通アクセスは悪くない。何より訪日客でごった返す京都なら、阪神ファンが多い関西圏でも成功の可能性は十分あるはずだ。

 まずはオイシックスとハヤテが二軍で地盤を固める必要があるが、数年後に14球団制への移行が本格的に議論されていることを願いたい。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

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