電車は通勤や通学などで利用する人が多いので、時間帯によって混み合うことも少なくありません。会社員の池田勇さん(仮名・43歳)も、ラッシュ時の車内で不愉快な思いをした経験があると語ります。
◆電車内で女子高生を注意したら…
「あの日、電車内でリュックサックを前抱きにしている女子高生を注意しただけなのに、本人の怒りを買ってしまって……。
一方的に言いがかりをつけられてしまったのです。今思い返すと、彼女の間違いを黙って見過ごせなかった僕も少し大人げなかったのかもしれません」
ふだんは通勤ラッシュの時間帯を避けて電車に乗っていた池田さんだが、その日は珍しく寝坊してしまったという。
「いつも早めに家を出て空いている電車で通勤をしていますが、ラッシュ時の電車に乗り込むことになって。次の瞬間、混雑する電車内で背中に何か当たった感触がしたのです。
振り返ると、女子高生が前に抱えていたリュックサックがぶつかっていたのですが、本人はまったく気づいていない様子。少し我慢していたら、今度はスマホを見る彼女の肘がこちらに当たるようになりました」
混み合う電車内で荷物が体に当たるのは仕方ないと思った勇さん。しかし、そもそも車内でリュックサックはどう持つのが正解なのかと考え始めたと言います。
◆リュックサックを前抱きにする女子高生に疑問を抱いて
「本来リュックサックは背負うものだけど、電車内で通路をふさいでしまったり、他人にぶつかったりしても気づきにくい面があると感じました。すると、そのタイミングで『リュックサックなど大きなかばんをお持ちのお客さまは手に提げてお持ちになるか、座席上の荷物置きをご利用ください』とアナウンスが流れたのです」
池田さんとしては、これで混雑する車内ではリュックサックは前に抱こうが、後ろに背負おうが、マナー違反だとはっきりしたのだとか。
「これを受けて、相手にしっかり指摘した方がいいと思いました。そこで『さっきからあなたの荷物や肘が当たっているんですけど』『それにリュックサックは手に提げるか、荷物置きを利用してくださいとアナウンスがありましたよ』と女子高生に声をかけたのですが……。彼女はじっとこちらを見つめたままリアクションを一切起こさないのです。
不思議に思って『人の話聞いていますか?』と問いかけると、ワイヤレスイヤホンを外してみせて。どうやら音量が大きくて何も聞こえていなかったようなので、再度女子高生を注意しました」
イヤホンの影響で話し声が耳に届かないなんて、何かあった時のために音量を下げてある程度聞こえるようにしておくべきではないかと思ったそう。
◆相手はぐだぐだといいワケするばかり
「彼女はいかにも面倒くさそうな顔で『リュックサックは重いから手で提げられない』と言い出しました。さらに『もし、手に提げて誰かに蹴飛ばされたら嫌なんですけど』とこちらに詰め寄ってきたのです。そこで、すかさず『手に提げるのが難しいなら、荷物置きを利用したらどうですか?』と反撃して。彼女は痛いところをつかれぐうの音も出ないといった感じで、しぶしぶ僕の言うことに従いました」
しかし、リュックサックを持つ女子高生の手は荷物置きに届かなかったと言います。見るに見かねた勇さんが「僕が乗せますよ」と手助けしようとしたものの、彼女にきっぱり断られてしまったのだとか。
「結局無理やり乗せたせいで、すぐにリュックサックが荷物置きから落下してしまったのです。それ見たことかと思っていると、彼女は『だから、荷物置きを使いたくなかったのよ』とつぶやくと『お弁当が入っているのにどうしてくれるの?』と文句を言ってきました」
◆突如味方になってくれた救世主とは…
すると目の前にいた30代くらいの女性が「言いがかりをつけるのもいい加減にしなさい」と女子高生を強く叱りつけたそう。
「女性は『どんなにリュックサックが重くても、混雑時は人にぶつからないよう手に提げる配慮が必要なのよ』と女子高生を説教しました。さらに『荷物置きに手が届かないようなら、周りに助けてもらえばいいじゃない』『現にさっきも声をかけてもらったんだから、お願いすればリュックサックは落ちなかったはず』と諭して。最後に『元はと言えば、スマホに夢中で人にぶつかっていることに気づかなかったあなたも悪い』とズバッと言ってのけたのです」
その後、女子高生はばつが悪そうに電車を降りて行ったと言います。
「彼女のリュックサックが荷物置きから落ちた時はどうなることかと内心ヒヤヒヤしました。自分は正しい行いをしたと考えていたけれど、まさかあんな結末を迎えるとは思ってもみなかったからです。でも、近くにいた女性が僕をかばってくれたので、ほっと胸をなでおろすことができて……。僕は『世の中まだまだ捨てたもんじゃない』と思い、彼女に感謝の意を込めて頭を下げました」
電車内は狭いので、些細なことがきっかけでトラブルに発展することが多々あります。たとえ自分が正しくても、一歩引いて相手と向き合うことも大切です。くれぐれも周りの人に迷惑がかからないように注意しましょう。
<取材・文/菜花明芽>
【菜花明芽】
ライター。ゾッとする実録記事を中心に執筆中。カフェでのんびり過ごすことが好き。
―[乗り物で腹が立った話]―
◆電車内で女子高生を注意したら…
「あの日、電車内でリュックサックを前抱きにしている女子高生を注意しただけなのに、本人の怒りを買ってしまって……。
一方的に言いがかりをつけられてしまったのです。今思い返すと、彼女の間違いを黙って見過ごせなかった僕も少し大人げなかったのかもしれません」
ふだんは通勤ラッシュの時間帯を避けて電車に乗っていた池田さんだが、その日は珍しく寝坊してしまったという。
「いつも早めに家を出て空いている電車で通勤をしていますが、ラッシュ時の電車に乗り込むことになって。次の瞬間、混雑する電車内で背中に何か当たった感触がしたのです。
振り返ると、女子高生が前に抱えていたリュックサックがぶつかっていたのですが、本人はまったく気づいていない様子。少し我慢していたら、今度はスマホを見る彼女の肘がこちらに当たるようになりました」
混み合う電車内で荷物が体に当たるのは仕方ないと思った勇さん。しかし、そもそも車内でリュックサックはどう持つのが正解なのかと考え始めたと言います。
◆リュックサックを前抱きにする女子高生に疑問を抱いて
「本来リュックサックは背負うものだけど、電車内で通路をふさいでしまったり、他人にぶつかったりしても気づきにくい面があると感じました。すると、そのタイミングで『リュックサックなど大きなかばんをお持ちのお客さまは手に提げてお持ちになるか、座席上の荷物置きをご利用ください』とアナウンスが流れたのです」
池田さんとしては、これで混雑する車内ではリュックサックは前に抱こうが、後ろに背負おうが、マナー違反だとはっきりしたのだとか。
「これを受けて、相手にしっかり指摘した方がいいと思いました。そこで『さっきからあなたの荷物や肘が当たっているんですけど』『それにリュックサックは手に提げるか、荷物置きを利用してくださいとアナウンスがありましたよ』と女子高生に声をかけたのですが……。彼女はじっとこちらを見つめたままリアクションを一切起こさないのです。
不思議に思って『人の話聞いていますか?』と問いかけると、ワイヤレスイヤホンを外してみせて。どうやら音量が大きくて何も聞こえていなかったようなので、再度女子高生を注意しました」
イヤホンの影響で話し声が耳に届かないなんて、何かあった時のために音量を下げてある程度聞こえるようにしておくべきではないかと思ったそう。
◆相手はぐだぐだといいワケするばかり
「彼女はいかにも面倒くさそうな顔で『リュックサックは重いから手で提げられない』と言い出しました。さらに『もし、手に提げて誰かに蹴飛ばされたら嫌なんですけど』とこちらに詰め寄ってきたのです。そこで、すかさず『手に提げるのが難しいなら、荷物置きを利用したらどうですか?』と反撃して。彼女は痛いところをつかれぐうの音も出ないといった感じで、しぶしぶ僕の言うことに従いました」
しかし、リュックサックを持つ女子高生の手は荷物置きに届かなかったと言います。見るに見かねた勇さんが「僕が乗せますよ」と手助けしようとしたものの、彼女にきっぱり断られてしまったのだとか。
「結局無理やり乗せたせいで、すぐにリュックサックが荷物置きから落下してしまったのです。それ見たことかと思っていると、彼女は『だから、荷物置きを使いたくなかったのよ』とつぶやくと『お弁当が入っているのにどうしてくれるの?』と文句を言ってきました」
◆突如味方になってくれた救世主とは…
すると目の前にいた30代くらいの女性が「言いがかりをつけるのもいい加減にしなさい」と女子高生を強く叱りつけたそう。
「女性は『どんなにリュックサックが重くても、混雑時は人にぶつからないよう手に提げる配慮が必要なのよ』と女子高生を説教しました。さらに『荷物置きに手が届かないようなら、周りに助けてもらえばいいじゃない』『現にさっきも声をかけてもらったんだから、お願いすればリュックサックは落ちなかったはず』と諭して。最後に『元はと言えば、スマホに夢中で人にぶつかっていることに気づかなかったあなたも悪い』とズバッと言ってのけたのです」
その後、女子高生はばつが悪そうに電車を降りて行ったと言います。
「彼女のリュックサックが荷物置きから落ちた時はどうなることかと内心ヒヤヒヤしました。自分は正しい行いをしたと考えていたけれど、まさかあんな結末を迎えるとは思ってもみなかったからです。でも、近くにいた女性が僕をかばってくれたので、ほっと胸をなでおろすことができて……。僕は『世の中まだまだ捨てたもんじゃない』と思い、彼女に感謝の意を込めて頭を下げました」
電車内は狭いので、些細なことがきっかけでトラブルに発展することが多々あります。たとえ自分が正しくても、一歩引いて相手と向き合うことも大切です。くれぐれも周りの人に迷惑がかからないように注意しましょう。
<取材・文/菜花明芽>
【菜花明芽】
ライター。ゾッとする実録記事を中心に執筆中。カフェでのんびり過ごすことが好き。
―[乗り物で腹が立った話]―