2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。今回は「ラブホ珍事件」部門、元従業員などに取材した数々のエピソードから第1位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月~10月まで。初公開2024年4月23日 記事は取材時の状況) * * *
さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはヒソヒソと向かう場所だ。
実家がラブホ街にある前田裕子さん(仮名・20代)は、独自の視点からラブホを見ている。今回は、ラブホでのアルバイト経験で遭遇した意外なエピソードを教えてくれた。
◆ラブホに多い忘れもの「高価なアクセをなぜ……」
学生時代にラブホの清掃員として働いていた前田さんは、「なぜこんなに大切なものを……」と思ってしまうような忘れものを目にしたことがあった。
傘やお土産に買ったと見られる菓子折りなどは、一般のホテルと同じように、数日間保管して破棄するそうだ。そんななかでも多いのが、アクセサリー類だと前田さんは話す。
「アクセサリーを外す人が多いのかもしれませんね。ラブホはお客様の連絡先を把握していませんから、本人から連絡がない限り、どうしようもないんです」
前田さんたち清掃スタッフは、忘れものを手に取って確認し、「プラチナ製、●年●月●日の刻印、S・Kのイニシャルあり」といったかたちでノートに記載して保管していたという。
「大事なもののはずなのに……。来てはいけない人とラブホを利用したのかもしれないと、妄想はふくらみましたね。時計や指輪は高額だからか、お客様から連絡がくることが多かったです。ただ、直接取りに来る人は少なく、着払いの宅配便で送る場合がほとんどです」
そして、指定の宛先は会社や営業所希望が多く、前田さん側もそれを配慮し、万が一の場合を考え、オーナー名義で「品名 パーツ」として発送していたそうだ。
◆わざと? 大人のおもちゃを忘れる強者も
ときには「これ、わざと?」と思わざるを得ない“大人のおもちゃ”が忘れられていたことも……。
「部屋に入り、大人のおもちゃが忘れられていると、どう使われたのかがわかるだけに……“ハズレ引いた”と思います。使い捨て手袋をもう一枚重ねて清掃していました。持ち主が引き返して来ることはほぼありませんが、アレだけはすぐに処分します」
バイトを始めたころは恥ずかしいと思っていた前田さんも、慣れてしまえば自宅に虫が出たときと同じような感覚になっていたという。
「ドアの内側にも“忘れ物注意”と記してあるので、部屋を出る際は気をつけていただきたいというのが本音でした」
◆ラブホに救急車、呼ぶ側も地獄
意外に静かで、意外に平和なラブホ街でも、噂を含む“地獄絵図”に遭遇することがあると、前田さんは打ち明けた。
「ラブホ街に駆けつけた救急車やパトカーを見つけると、他人の修羅場見たさに人が集まってきます。不思議と野次馬は近所の人たちばかりで、純粋にホテルを利用しようとしている人たちは決して立ち止まりません」
通報の内容は大ごとではないという。ただ、ラブホから担架で運ばれること自体、本人としてはかなりの地獄だろう……。
前田さんは救急車を呼ぶ側だった。当然、住所や建物名を次々と聞かれる。
“●●町のホテルで、△△という名前の……”
「ラブホは変わった名前が多いですからね。目印になるようなものを聞かれても、“目立つ建物です”と答えるしかありません」
ラブホは目立つ建物が多いが、似た建物が密集しており、ホテル名を口に出すのが恥ずかしい場合もあったという。
「電話のやり取りは録音されちゃいますし……。しかも、サイレンが聞こえたら事務所から飛び出して、救急隊員に手を振るんですよ。自分が野次馬を呼ぶことにもつながるんです。そのときは真剣なのですが、無事に搬送したあとが、まさに“地獄絵図”です」
◆“腹上死”のイメージは間違い
前田さんが救急車要請する事態に遭遇したのは、風呂で転んで頭を打って裂傷した、ベッドから落ちた、階段を使って転落したなどだったそうだが、野次馬たちの見方は違う。
「それが厄介だった」と前田さんは振り返る。
“このホテルで腹上死があったらしいよ”
“私は不倫現場に乗り込んで来た奥さんが相手を……って聞いたけど”
「救急車の話が誇張されていくんです。心のなかでは“あれはお風呂での転倒なのに……”と思うのですが、訂正する勇気はありません。腹上死なんて、私の周りではここ2~30年聞いたことがありません。なぜか、救急車=腹上死になってしまうんです」
野次馬たちの井戸端会議が営業妨害につながっていたと、前田さんは不甲斐なさをあらわにした。
<取材・文/資産もとお>
さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはヒソヒソと向かう場所だ。
実家がラブホ街にある前田裕子さん(仮名・20代)は、独自の視点からラブホを見ている。今回は、ラブホでのアルバイト経験で遭遇した意外なエピソードを教えてくれた。
◆ラブホに多い忘れもの「高価なアクセをなぜ……」
学生時代にラブホの清掃員として働いていた前田さんは、「なぜこんなに大切なものを……」と思ってしまうような忘れものを目にしたことがあった。
傘やお土産に買ったと見られる菓子折りなどは、一般のホテルと同じように、数日間保管して破棄するそうだ。そんななかでも多いのが、アクセサリー類だと前田さんは話す。
「アクセサリーを外す人が多いのかもしれませんね。ラブホはお客様の連絡先を把握していませんから、本人から連絡がない限り、どうしようもないんです」
前田さんたち清掃スタッフは、忘れものを手に取って確認し、「プラチナ製、●年●月●日の刻印、S・Kのイニシャルあり」といったかたちでノートに記載して保管していたという。
「大事なもののはずなのに……。来てはいけない人とラブホを利用したのかもしれないと、妄想はふくらみましたね。時計や指輪は高額だからか、お客様から連絡がくることが多かったです。ただ、直接取りに来る人は少なく、着払いの宅配便で送る場合がほとんどです」
そして、指定の宛先は会社や営業所希望が多く、前田さん側もそれを配慮し、万が一の場合を考え、オーナー名義で「品名 パーツ」として発送していたそうだ。
◆わざと? 大人のおもちゃを忘れる強者も
ときには「これ、わざと?」と思わざるを得ない“大人のおもちゃ”が忘れられていたことも……。
「部屋に入り、大人のおもちゃが忘れられていると、どう使われたのかがわかるだけに……“ハズレ引いた”と思います。使い捨て手袋をもう一枚重ねて清掃していました。持ち主が引き返して来ることはほぼありませんが、アレだけはすぐに処分します」
バイトを始めたころは恥ずかしいと思っていた前田さんも、慣れてしまえば自宅に虫が出たときと同じような感覚になっていたという。
「ドアの内側にも“忘れ物注意”と記してあるので、部屋を出る際は気をつけていただきたいというのが本音でした」
◆ラブホに救急車、呼ぶ側も地獄
意外に静かで、意外に平和なラブホ街でも、噂を含む“地獄絵図”に遭遇することがあると、前田さんは打ち明けた。
「ラブホ街に駆けつけた救急車やパトカーを見つけると、他人の修羅場見たさに人が集まってきます。不思議と野次馬は近所の人たちばかりで、純粋にホテルを利用しようとしている人たちは決して立ち止まりません」
通報の内容は大ごとではないという。ただ、ラブホから担架で運ばれること自体、本人としてはかなりの地獄だろう……。
前田さんは救急車を呼ぶ側だった。当然、住所や建物名を次々と聞かれる。
“●●町のホテルで、△△という名前の……”
「ラブホは変わった名前が多いですからね。目印になるようなものを聞かれても、“目立つ建物です”と答えるしかありません」
ラブホは目立つ建物が多いが、似た建物が密集しており、ホテル名を口に出すのが恥ずかしい場合もあったという。
「電話のやり取りは録音されちゃいますし……。しかも、サイレンが聞こえたら事務所から飛び出して、救急隊員に手を振るんですよ。自分が野次馬を呼ぶことにもつながるんです。そのときは真剣なのですが、無事に搬送したあとが、まさに“地獄絵図”です」
◆“腹上死”のイメージは間違い
前田さんが救急車要請する事態に遭遇したのは、風呂で転んで頭を打って裂傷した、ベッドから落ちた、階段を使って転落したなどだったそうだが、野次馬たちの見方は違う。
「それが厄介だった」と前田さんは振り返る。
“このホテルで腹上死があったらしいよ”
“私は不倫現場に乗り込んで来た奥さんが相手を……って聞いたけど”
「救急車の話が誇張されていくんです。心のなかでは“あれはお風呂での転倒なのに……”と思うのですが、訂正する勇気はありません。腹上死なんて、私の周りではここ2~30年聞いたことがありません。なぜか、救急車=腹上死になってしまうんです」
野次馬たちの井戸端会議が営業妨害につながっていたと、前田さんは不甲斐なさをあらわにした。
<取材・文/資産もとお>