今回取材に応じてくれたのは、とある不動産会社の人事部長の男性です。立場上、これまでにもいろんな新入社員に触れてきたそうですが、今回報告してくれたエピソードは今までで一番衝撃的だったようです。
◆いわゆる「腰掛け」入社
都内に数店舗の支店を構える不動産会社で人事部長を務める吉永さん(仮名・42歳)。その年も数名の新入社員が入社しました。
「女性が3名、男性が5名の、計8名が入社しました。その中に三原くん(仮名)という男性がいて、彼は社長の友人が経営する長野県の不動産会社の御曹司なんです。いわゆる“丁稚”という扱いで、いずれは親の会社を継ぐのでしょう」
他の7名の新人はとても謙虚でおとなしい雰囲気なのですが、三原くんはその真逆で少し横柄な態度をとることが多く、他の社員からもあまり良い印象を持たれていなかったそうです。
◆協調性ゼロ、不真面目で遅刻魔
三原君くんの素行の悪さは日を追うごとに顕著になったと言います。理由もなく席を外したり、同期の輪に入ろうとしなかったり……。社長絡みの人材ということもあり、皆見て見ぬ振りをしていました。
「社長絡みでなかったら、とっくに解雇していましたよ。あんな低レベルな人材は今まで当社にはいませんでしたし、入社試験で落としていましたね。おそらく、自分は地元に帰って次期社長の椅子が待っているからなのか、常に同期に対して上から目線で、どこかバカにした発言が散見されました」
その後も遅刻が多くなり、大切な研修にもほとんど参加しないなど、会社にとっては「目障り」でしかない人物になっていました。
「いつも我慢しているのですが、他の新入社員が真面目で優秀なだけに、三原くんの素行の悪さが極端に浮き出て感じるのです。今度何か問題を起こせば直接社長に直訴も考えていました」
◆駅前でのティッシュ配り
新入社員にとって、毎年恒例となっている駅前でのティッシュ配りの時期がやってきました。ただ配るのではなく、通行人に手渡す際に大きな声を出して「ありがとうございます」と言う度胸試しという意味合いも兼ねているそうです。
「正直、三原くんのティッシュ配りをチェックしたかったんです。決めつけもいけませんが、真面目に取り組めるかが心配でした。だから、彼の当番の日だけ少し離れた場所からこっそりと監視しました。それで、もし作業をサボっていたら、それを理由にして社長に直訴するつもりでした」
ティッシュ配りは日ごとに担当者を替えていて、三原くんには、日曜日の比較的人通りの多い駅前を指示したそうです。指示された三原くんはとても嫌そうな表情を浮かべ、配布するために与えられたティッシュを持って帰宅したそうです。
◆ティッシュ配りの様子を見てあぜん
ティッシュ配布開始は10時と指示した吉永さん。彼は、少し早めに三原くんが配る駅前に出向き、様子を監視することにしました。しかし、10時を過ぎても指示した場所に三原くんは現れず、ようやく現れたのは30分ほど過ぎてからでした。しかし、そこでティッシュを配っていたのは――。
「ティッシュが入った手提げの紙袋は確かに私が三原くんに渡した袋でしたが、なんと、配っている人間が彼本人ではなく、髪の長い女性だったのです。しかも、一人の通行人に3、4個のティッシュを渡していました」
憤りさえ感じていた吉永さんは、週明けの月曜日に三原くんを呼び出し、当時の状況を説明させました。すると、信じられない言葉が返ってきました。
「なんと、ティッシュ配りはアルバイトを雇ったとのことなんです。どういうことかというと、親の会社がアカウントを所持しているスキマバイト紹介アプリで募集を募り、応募してきた人にティッシュ配りを託したそうです。もう呆れてものが言えませんでした」
堪忍袋の緒が切れた吉永さんは、今回の状況を赤裸々に社長へ報告したと言います。社長も看過できないと判断したようで、三原君の父親に直接連絡を取り、受け入れを取りやめることに合意してくれました。その後、父親に大目玉をくらい、かなり反省したようで、半年後に吉永さんの会社へ足を運び、みんなの前で謝罪したそうです。
<TEXT/ベルクちゃん>
【ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
―[とんでも新入社員録]―
◆いわゆる「腰掛け」入社
都内に数店舗の支店を構える不動産会社で人事部長を務める吉永さん(仮名・42歳)。その年も数名の新入社員が入社しました。
「女性が3名、男性が5名の、計8名が入社しました。その中に三原くん(仮名)という男性がいて、彼は社長の友人が経営する長野県の不動産会社の御曹司なんです。いわゆる“丁稚”という扱いで、いずれは親の会社を継ぐのでしょう」
他の7名の新人はとても謙虚でおとなしい雰囲気なのですが、三原くんはその真逆で少し横柄な態度をとることが多く、他の社員からもあまり良い印象を持たれていなかったそうです。
◆協調性ゼロ、不真面目で遅刻魔
三原君くんの素行の悪さは日を追うごとに顕著になったと言います。理由もなく席を外したり、同期の輪に入ろうとしなかったり……。社長絡みの人材ということもあり、皆見て見ぬ振りをしていました。
「社長絡みでなかったら、とっくに解雇していましたよ。あんな低レベルな人材は今まで当社にはいませんでしたし、入社試験で落としていましたね。おそらく、自分は地元に帰って次期社長の椅子が待っているからなのか、常に同期に対して上から目線で、どこかバカにした発言が散見されました」
その後も遅刻が多くなり、大切な研修にもほとんど参加しないなど、会社にとっては「目障り」でしかない人物になっていました。
「いつも我慢しているのですが、他の新入社員が真面目で優秀なだけに、三原くんの素行の悪さが極端に浮き出て感じるのです。今度何か問題を起こせば直接社長に直訴も考えていました」
◆駅前でのティッシュ配り
新入社員にとって、毎年恒例となっている駅前でのティッシュ配りの時期がやってきました。ただ配るのではなく、通行人に手渡す際に大きな声を出して「ありがとうございます」と言う度胸試しという意味合いも兼ねているそうです。
「正直、三原くんのティッシュ配りをチェックしたかったんです。決めつけもいけませんが、真面目に取り組めるかが心配でした。だから、彼の当番の日だけ少し離れた場所からこっそりと監視しました。それで、もし作業をサボっていたら、それを理由にして社長に直訴するつもりでした」
ティッシュ配りは日ごとに担当者を替えていて、三原くんには、日曜日の比較的人通りの多い駅前を指示したそうです。指示された三原くんはとても嫌そうな表情を浮かべ、配布するために与えられたティッシュを持って帰宅したそうです。
◆ティッシュ配りの様子を見てあぜん
ティッシュ配布開始は10時と指示した吉永さん。彼は、少し早めに三原くんが配る駅前に出向き、様子を監視することにしました。しかし、10時を過ぎても指示した場所に三原くんは現れず、ようやく現れたのは30分ほど過ぎてからでした。しかし、そこでティッシュを配っていたのは――。
「ティッシュが入った手提げの紙袋は確かに私が三原くんに渡した袋でしたが、なんと、配っている人間が彼本人ではなく、髪の長い女性だったのです。しかも、一人の通行人に3、4個のティッシュを渡していました」
憤りさえ感じていた吉永さんは、週明けの月曜日に三原くんを呼び出し、当時の状況を説明させました。すると、信じられない言葉が返ってきました。
「なんと、ティッシュ配りはアルバイトを雇ったとのことなんです。どういうことかというと、親の会社がアカウントを所持しているスキマバイト紹介アプリで募集を募り、応募してきた人にティッシュ配りを託したそうです。もう呆れてものが言えませんでした」
堪忍袋の緒が切れた吉永さんは、今回の状況を赤裸々に社長へ報告したと言います。社長も看過できないと判断したようで、三原君の父親に直接連絡を取り、受け入れを取りやめることに合意してくれました。その後、父親に大目玉をくらい、かなり反省したようで、半年後に吉永さんの会社へ足を運び、みんなの前で謝罪したそうです。
<TEXT/ベルクちゃん>
【ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
―[とんでも新入社員録]―