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パチンコ店の“大量閉店ラッシュ”が止まらないワケ。ホール関係者が語る「絶望的な未来」――ニュース傑作選

日刊SPA! 2024年12月12日 8時45分

2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。企業や業界の実態から2024年を振り返る「経済ニュース」部門、第2位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月~10月まで。初公開2024年2月29日 記事は取材時の状況、ご注意ください) *  *  *

 相次ぐパチンコ店の閉店にメーカーの民事再生や廃業など、ここ数年暗い話ばかりのパチンコ業界。スマスロの登場でパチスロは回復の兆しがみえるが、30兆円産業と言われ隆盛を極めた時代にはまだほど遠い。

 そこで今回は、関東地方で十数店舗展開する大手チェーンの営業統括部長のA氏に、パチンコの現状と未来についてお話を伺ってみた。パチンコ店が再び活気に満ち溢れる為には何が必要なのか。

◆甘く使えないから人気が出ないスマパチ

 立て続けにヒット機種が登場しているスマスロに対し、イマイチ盛り上がりに欠けている感が否めないスマパチ。どちらも、機能や出玉性能面では進化しているのだが、この違いはなんだろうか。

「スマパチに限らずパチンコは甘くしづらいんですよね。甘くすると見た目でわかるから打ち子軍団に占拠されておしまい(笑)。毎日来てくれる常連さんに還元できないなら甘くする意味がないし……。もちろん、お店のメイン機種となっている『エヴァ』や『リゼロ』はそれなりに遊べるようにしていますが、それ以外は基本的に辛く使っているので勝てません。勝てないから機種の魅力も伝わらない。だから人気機種にならないという流れですね」

 パチンコ店はお客さんに『明日も打ちに来られるくらいの小さな負け』を繰り返してもらう薄利多売営業をするのが理想だが、今のパチンコでそれを実現させるのは難しいとA氏は語る。

「パチスロは中間設定を使えば薄利営業もできますが、パチンコでそれと同じくらいの調整にすると、やっぱり見た目でわかるからプロに狙われ、技術介入を使って抜かれちゃう。お店としてトータルで赤字にするわけにはいかないので、メイン機種以外は甘くできないのが現状ですね」

◆パチンコ店の利益率はここ数年で2倍に!!

 パチプロや打ち子軍団の存在により、手放しで甘く使うのが難しいパチンコだが、実は利益率はパチスロよりも高く、しかもここ数年でさらに上がっているそうだ。

「ホールデータのひとつに、1時間あたりの利益率、『時粗(じあら)』というものがあるんですが、一昔前のパチンコは1台600円前後だったんです。それが今は1400円になっています。もちろん、昔と比べて営業形態や機種が荒くなっているという点もありますが、それにしても上がり過ぎですよね。もはや薄利多売営業とは真逆の状態です」

◆儲けているのに止まらない閉店ラッシュ

 パチンコの利益率が2倍近くになっているのならホールは潤っているハズ。それなのに、なぜ閉店ラッシュが止まらないのだろう。

「パチンコの利益が上がっていても、それ以上に機械代が上がっているんですよ。昔は一台20万円くらいだったのが今は60万円ですよ。甘デジのリユースだって、昔は10万円だったのが30万円。利益が2倍になったとはいえ機械代が3倍になっているから、そりゃ資金力のないホールは閉店しますよ」

 仕入れるモノの値段が上がったら販売価格も上がるのが商売の基本。だが、パチンコ店ではこれが通用しないのである。

「パチンコ店は機械代が上がったからといって貸玉料金を上げることができません。上限は4円と法律で決まっているので。時代と共にモノの値段は上下するのに、パチンコの貸玉料金は46年前から一切変わっていない。これもおかしな話じゃないですか。本当に今の時代に合っているのか疑問に思う時もあります」

◆初心者にはハードルが高すぎる遊び

 業界全体が活気を取り戻すには、新規ファンの獲得が必要不可欠。だが、昔と違い今のパチンコは初心者が手軽に始められる遊びではなくなっているとA氏は言う。

「今のパチンコは、初心者が始めやすい入門機的な機種がないですよね。自分がパチンコを始めた時代は、羽根モノがメインで500円、1000円で十分遊べました。そこからハマっていってデジパチ、権利モノ、一発台を打つ立派なヘビーユーザーへと成長したわけですが(笑)、今は最低でも3万円くらいは持って行かないと遊べない。初心者にとって『3万円の遊び』って相当ハードルが高くないですか? きっと、ホテルに泊まってご飯を食べるのと同じくらいの感覚じゃないですかね」

◆インフレが進めば手軽な遊びになる!?

 時代と共にじわじわと射幸性が高まっていき、過去最高峰のギャンブル性に達しているともいわれるパチンコ。遊びやすい1パチという営業形態もあるが、機種自体は4パチと同じなのでレートの違いはあれど、どちらも荒い勝負をしているのは変わらない。

「ここまで射幸性が高い機種や営業形態が当たり前になってしまったら、ホールもお客さんも昔のパチンコには戻れないですよね。だから、もうインフレがもっと進むことを願うしかないです(笑)。貸玉が4円で変わらない以上、世の中がデフレになれば高級な遊びになるし、インフレなら手軽な遊びになる。インフレが今の4倍くらいになったら、さすがに1パチを打つ人はいなくなるんじゃないですか」

◆薄利営業ができる環境作りが大事

 昨年6月に行われた内規改正によって新機能「ラッキートリガー」を搭載した機種が間もなく登場するが、近々再び内規が改正されるという噂も耳にするパチンコ。そんな迷走状態から抜け出し、再び活気を取り戻す為には何が必要なのだろうか。A氏は「やっぱり、昔みたいに時粗600円くらいで営業できる環境に戻すしかないですよね」と話した。

 ホールが薄利営業できれば、新規ユーザーも入りやすく既存のファンも今より長く遊べるようになる。そのために、まずは高騰し続ける機械代、高すぎる射幸性に待ったをかける必要があるのではないだろうか。

取材・文/サ行桜井

【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。

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