日々多くの人が訪れる「コンビニ」。筆者はライター業の傍ら、知り合いの店長に「人手不足」を理由に頼まれ、空いた時間だけ手伝う生活をしている。
レジで「派遣」の名札を見かけたことがある人もいるはずだが、実際に最近は単発の派遣バイトのスタッフと働く機会が増えた。今回は、その実情を書いていきたい。
◆コンビニで働く「派遣バイト」のスタッフたち
派遣バイトの人たちは人材派遣会社に登録し、働ける日にちや場所、職種などを選んで、店の都合とマッチした場合は単発で働くこととなる。男性が8割といった感じだが、年齢は18歳ぐらいから年配までバラバラな印象だ。大きく以下のようなタイプに分けられる。
まずは、①学生である。彼らはメインでは他のバイトをしていて、時間がある時に派遣バイトをするようだ。なるほど、筆者も学生だったら、派遣バイトをしていたかもしれない。とはいえ、毎回違う店に行くとなれば、その店ならではのルールや商品の場所を頭に入れる必要があるし、初対面の店長やスタッフに気をつかうのは正直疲れてしまうかもしれない。
次に②コンビニ専門のフリーター。毎日違う店舗で働くのが好きな人がいるのを最近知った。
また、③地方からの出稼ぎ者もいる。何らかの事情で仕事を辞めてしまい、バイトをしなければならなくなったが、地方では仕事が全然ないそうで、長距離バスで東京に来て、安いサウナに泊まりながら働きまくっている人が何人かいた。
④何をしているかよくわからない人。こっちも詮索しない。
あとは、⑤他の店のスタッフで、週に4〜5回シフトに入っているが、時間があるときにもっと働きたいという人。これがいちばん多いかもしれない。他の店の情報を聞けるし、彼らは仕事ができるのでありがたい。
◆派遣バイトのスタッフが嘆く「ヤバい仕事」
派遣バイトとして来ていた髪の毛が薄い年配の男性がこう嘆く。
「最近話題の“闇バイト”の影響なのかわからないですけど、こちらとしては働きたいところが減って、ぜんぜんヒットしなくなったんですよ」
派遣会社側も怪しく実態がよくわからない会社からの仕事依頼を削除しているのだろうか。
地方から出稼ぎに来ているAさん(推定30歳)はコンビニだけでなく、マッチすれば、どこでも働くそうだ。
「ちょっと、浜さん(※筆者の名前)聞いてくださいよ。前にヤバい仕事がありましたよ」
詳しく聞いてみると、「廃棄物の片づけ。要・マスク」と募集されていたので、Aさんは少しキツい肉体労働ぐらいだと思って深夜帯の某埋立地に行った。そこには、危険な産業廃棄物があり、目がチカチカして、普通のマスクでは全く役に立たないほどの匂いで危険を感じたそうだ。
Aさんいわく、あきらかに人体には有害で、防塵マスクをしないといけないレベルだったそうだ。逃げたくても深夜で交通機関もない場所。
仕事を無事に終えた後、派遣会社に苦情を入れたそうだ。ただ、残念ながらAさんの苦情は反映されないだろう……。
◆深夜帯に「いきなりワンオペ」の場合も…
コンビニの派遣のスタッフは入ってくると、その店舗のルールや商品が置いてある場所を聞いて、瞬時に覚える必要がある。そんな感じなのだが、Aさんは夜勤帯の22時頃に行くと、まさかの「いきなりワンオペ」だったこともあるらしい。
交代のスタッフに急いで内容を聞いて、その後は朝8時まで1人とか……。そこは深夜1時までまあまあ客の多い店だったそうで、かなり苦戦を強いられた。
また、今は労働基準法で長時間働く人は絶対に休憩しないといけない規定があるのだが、ワンオペだとうまくいかない。にもかかわらず、酷いことに休憩時間分が日給から勝手に引かれていたという。さすがに派遣会社に問い合わせたが、うやむやにされてしまったそうで、なんともかわいそうな話だ。
◆「今は休憩中だから働かない!」レジの下で寝ていた外国人スタッフ
ある日、スタッフのB君が深夜3時に近所のコンビニまで買い物に行った際、レジには誰もスタッフがいなかった。いったいどうしたことか。
レジの下に段ボールを敷いて外国人のスタッフが寝ていたそうだ。「すいません」と声をかけると「今は休憩中だから働かない!」と言われたそうだ。
実際、店と派遣会社には休ませないといけない規定があるので、スタッフの行動は間違っていない。せめて店のカギを締めて電気を消せばいいと思うが……。
B君もコンビニ店員なので同情して話しかけると、その外国人スタッフは南アジア出身のようで、こう答えたという。
「派遣会社に登録してここのバイトに入ったけど、来てみたら急にワンオペで、休憩も取りようがない。こうするしかないんですよ」
◆店から「派遣NG」となったスタッフ
さて、そんな派遣バイトたちの質はどうなのか。筆者はこの数か月、かなりの人数の派遣バイトといっしょにシフトに入ったが、ほとんどの人が何も問題なかった。なかにはコミュニケーション能力が低い人もいるが、それでも真面目に働いてくれればそれでいい。
最後に「派遣NG」となった1人の話を書いていこう。
15時〜17時まで2時間だけシフトが被ったCさん(推定30代半ば)。彼はよくしゃべる男で派遣会社の話や、かつて変な客に暴力をふるわれた話などを筆者に熱弁した。
そして、なぜか遅刻の話になった。派遣バイトは1分でも遅刻すると、スマホで修正や報告する必要が出てくるので、たいていの人はそれが面倒なので早めに現場に着いている。しかしCさんは「そんな面倒ですかね。僕も今日は朝9時からなのですが5分遅刻しちゃったんですよ」と言っていた。そして17時になり、Cさんは退勤した。
そこに女性スタッフの大井さん(仮名)が筆者のところにやってきて「浜さん、あの人、じつは“ヤバい人”なのよ」という。
かつて大井さんは別の店でCさんと働いたことがあるそうだ。
「そのときも彼は朝9時に来ないといけないはずなのに遅刻してきて、お客さんに対する態度も悪くて店から派遣NGを出したのよ。今日も1時間遅刻してきて何の連絡もナシよ」
ようやくやってきたと思ったら、別の店で問題のあったCさんで驚いたようだ。
「え、僕には5分の遅刻って言いましたよ」
「は? 1時間よ。なんでそんなすぐにバレる嘘をつくのかしら」
もちろん、そんな人はこの店でも派遣NGとなる。2度と呼ばれることはないのだ。
<文/浜カツトシ>
レジで「派遣」の名札を見かけたことがある人もいるはずだが、実際に最近は単発の派遣バイトのスタッフと働く機会が増えた。今回は、その実情を書いていきたい。
◆コンビニで働く「派遣バイト」のスタッフたち
派遣バイトの人たちは人材派遣会社に登録し、働ける日にちや場所、職種などを選んで、店の都合とマッチした場合は単発で働くこととなる。男性が8割といった感じだが、年齢は18歳ぐらいから年配までバラバラな印象だ。大きく以下のようなタイプに分けられる。
まずは、①学生である。彼らはメインでは他のバイトをしていて、時間がある時に派遣バイトをするようだ。なるほど、筆者も学生だったら、派遣バイトをしていたかもしれない。とはいえ、毎回違う店に行くとなれば、その店ならではのルールや商品の場所を頭に入れる必要があるし、初対面の店長やスタッフに気をつかうのは正直疲れてしまうかもしれない。
次に②コンビニ専門のフリーター。毎日違う店舗で働くのが好きな人がいるのを最近知った。
また、③地方からの出稼ぎ者もいる。何らかの事情で仕事を辞めてしまい、バイトをしなければならなくなったが、地方では仕事が全然ないそうで、長距離バスで東京に来て、安いサウナに泊まりながら働きまくっている人が何人かいた。
④何をしているかよくわからない人。こっちも詮索しない。
あとは、⑤他の店のスタッフで、週に4〜5回シフトに入っているが、時間があるときにもっと働きたいという人。これがいちばん多いかもしれない。他の店の情報を聞けるし、彼らは仕事ができるのでありがたい。
◆派遣バイトのスタッフが嘆く「ヤバい仕事」
派遣バイトとして来ていた髪の毛が薄い年配の男性がこう嘆く。
「最近話題の“闇バイト”の影響なのかわからないですけど、こちらとしては働きたいところが減って、ぜんぜんヒットしなくなったんですよ」
派遣会社側も怪しく実態がよくわからない会社からの仕事依頼を削除しているのだろうか。
地方から出稼ぎに来ているAさん(推定30歳)はコンビニだけでなく、マッチすれば、どこでも働くそうだ。
「ちょっと、浜さん(※筆者の名前)聞いてくださいよ。前にヤバい仕事がありましたよ」
詳しく聞いてみると、「廃棄物の片づけ。要・マスク」と募集されていたので、Aさんは少しキツい肉体労働ぐらいだと思って深夜帯の某埋立地に行った。そこには、危険な産業廃棄物があり、目がチカチカして、普通のマスクでは全く役に立たないほどの匂いで危険を感じたそうだ。
Aさんいわく、あきらかに人体には有害で、防塵マスクをしないといけないレベルだったそうだ。逃げたくても深夜で交通機関もない場所。
仕事を無事に終えた後、派遣会社に苦情を入れたそうだ。ただ、残念ながらAさんの苦情は反映されないだろう……。
◆深夜帯に「いきなりワンオペ」の場合も…
コンビニの派遣のスタッフは入ってくると、その店舗のルールや商品が置いてある場所を聞いて、瞬時に覚える必要がある。そんな感じなのだが、Aさんは夜勤帯の22時頃に行くと、まさかの「いきなりワンオペ」だったこともあるらしい。
交代のスタッフに急いで内容を聞いて、その後は朝8時まで1人とか……。そこは深夜1時までまあまあ客の多い店だったそうで、かなり苦戦を強いられた。
また、今は労働基準法で長時間働く人は絶対に休憩しないといけない規定があるのだが、ワンオペだとうまくいかない。にもかかわらず、酷いことに休憩時間分が日給から勝手に引かれていたという。さすがに派遣会社に問い合わせたが、うやむやにされてしまったそうで、なんともかわいそうな話だ。
◆「今は休憩中だから働かない!」レジの下で寝ていた外国人スタッフ
ある日、スタッフのB君が深夜3時に近所のコンビニまで買い物に行った際、レジには誰もスタッフがいなかった。いったいどうしたことか。
レジの下に段ボールを敷いて外国人のスタッフが寝ていたそうだ。「すいません」と声をかけると「今は休憩中だから働かない!」と言われたそうだ。
実際、店と派遣会社には休ませないといけない規定があるので、スタッフの行動は間違っていない。せめて店のカギを締めて電気を消せばいいと思うが……。
B君もコンビニ店員なので同情して話しかけると、その外国人スタッフは南アジア出身のようで、こう答えたという。
「派遣会社に登録してここのバイトに入ったけど、来てみたら急にワンオペで、休憩も取りようがない。こうするしかないんですよ」
◆店から「派遣NG」となったスタッフ
さて、そんな派遣バイトたちの質はどうなのか。筆者はこの数か月、かなりの人数の派遣バイトといっしょにシフトに入ったが、ほとんどの人が何も問題なかった。なかにはコミュニケーション能力が低い人もいるが、それでも真面目に働いてくれればそれでいい。
最後に「派遣NG」となった1人の話を書いていこう。
15時〜17時まで2時間だけシフトが被ったCさん(推定30代半ば)。彼はよくしゃべる男で派遣会社の話や、かつて変な客に暴力をふるわれた話などを筆者に熱弁した。
そして、なぜか遅刻の話になった。派遣バイトは1分でも遅刻すると、スマホで修正や報告する必要が出てくるので、たいていの人はそれが面倒なので早めに現場に着いている。しかしCさんは「そんな面倒ですかね。僕も今日は朝9時からなのですが5分遅刻しちゃったんですよ」と言っていた。そして17時になり、Cさんは退勤した。
そこに女性スタッフの大井さん(仮名)が筆者のところにやってきて「浜さん、あの人、じつは“ヤバい人”なのよ」という。
かつて大井さんは別の店でCさんと働いたことがあるそうだ。
「そのときも彼は朝9時に来ないといけないはずなのに遅刻してきて、お客さんに対する態度も悪くて店から派遣NGを出したのよ。今日も1時間遅刻してきて何の連絡もナシよ」
ようやくやってきたと思ったら、別の店で問題のあったCさんで驚いたようだ。
「え、僕には5分の遅刻って言いましたよ」
「は? 1時間よ。なんでそんなすぐにバレる嘘をつくのかしら」
もちろん、そんな人はこの店でも派遣NGとなる。2度と呼ばれることはないのだ。
<文/浜カツトシ>