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カーディーラー担当者を困らせる迷惑客の失言に決意!心機一転で営業に専念した結果

日刊SPA! 2024年12月18日 8時48分

 大きな利益をもたらしてくれる顧客や取引先とは、「できるだけ良好な関係でいたい」と考え、そのために努力している人も多いのではないだろうか。カーディーラーで働く安西芳正さん(仮名・30代)も、そんなひとり。
◆高級車を扱うカーディーラーに転職

 安西さんは、30代を目前に憧れの高級車を扱うカーディーラーに転職した。けれど押しが弱いことも災いし、営業成績は常に底辺。最下位を争っていた社員たちのほとんどは、いつの間にか転職していった。しばらくして安西さんの頭にも転職が過ったとき、転機が訪れる。

「高い営業成績をおさめていた先輩社員が体を壊して辞めることになり、先輩社員が担当していた顧客を営業社員で振り分けることになったのです。そのとき担当させてもらえることになったのが、Fさんでした」

 担当になったときは、父親が経営する会社の一般社員として働いていたFさんだったが、数年後には2代目経営者として就任。父親と付き合いのあったカーディーラーではなく、すべて安西さんに任せてくれるという嬉しいチャンスに恵まれたのだ。

◆担当していた顧客が2代目社長に

「実はFさんがまだ会社員だった頃、夜中にタイヤがパンクしたと電話がかかってきたことがありました。営業社員にもよりますが、私は自分の名刺に携帯電話の番号を記載していたので、車検証といっしょに入っていたのを見つけて連絡したと言っていました」

 山道をドライブ中だったこともあり、「替えのタイヤなんか持っていない!」と軽いパニックになっていたFさん。レッカーを手配するとともに、1人では心細いだろうと安西さんも現場に駆けつけた。

「その行動に感動したのか、社長就任をキッカケにプライベート用の車はもちろん、社用車も私に任せてくれることになったのです。少しあとには、Fさんの奥さんも担当させてもらい、最初のほうは良い関係が続いていました」

◆顧客の機嫌を損ねるのはNG

 けれどしばらく経った頃、Fさんから真夜中に「息子が狭い道に入って立ち往生してしまった」とSOSの着信が。免許を取り立ての息子を案じてすぐに駆けつけ、靴を脱いでトランク部分から車へ乗り込み、狭い道を脱出した安西さん。

「本来はJAF案件だったこの呼び出しに応じてしまったあたりから関係が崩れていった感じです。旅行先でタイヤを交換したいからグループ店舗に予約を入れてほしいとか、新車について知りたいから出張先までパンフレットを持って説明しに来てほしいとか…」

 そのうち、BBQをするのに人数がたりないという理由で参加をお願いされ、気がついたときには参加者の肉や野菜をひたすら焼き続けていたこともあった。いつしかFさんは、迷惑客へと変貌。「このままではいけない」とは思いつつ、日にちだけが経過していった。

「新車は、高級品です。ましてや高級車は1台の売上に対するインセンティブも大きいので、顧客の機嫌を損ねるのはNG。営業担当者にもよりますが、誕生日には花束、年末にはカレンダーと粗品をプレゼントして顧客の心をくすぐることもあるほどです」

◆顧客のBBQで準備を手伝うことに

 Fさん一家は売り上げに大きく貢献していたこともあり、頭が上がらなかったのだ。悩みが募るなか、安西さんはまた、自宅前で開催されるBBQに呼ばれてしまう。そして今度は、到着するなり準備から手伝ってほしいと言われてしまったのだ。

「でも、私以外に準備する人は誰もいないのです。『何回も参加してくれてるし、勝手はわかるよね?』『仕事の電話が終わったら俺も手伝うから、ゴメンね』とFさんから言われ、ガレージにあるBBQセットを取り出すところから1人でやりました」

 ある程度の準備を終えたとき、トングがないことに気づいた安西さん。トングの場所を聞くためFさん宅を尋ねようとしたところ、不用心にも玄関先で「あの営業にやらせりゃいいんだよ」と、スマホ越しに誰かと話している姿を発見してしまう。

◆無理なことは毅然とした態度で断る

「会話を聞かれているとは知らないFさんは、『いい車を何台も買ってやっているんだから、これくらい当たり前』などと止まりません。それを聞いて、愕然としました。良好な関係を築いていると思っていたのは、私だけ。相手は、私を利用していただけでした」

 真実を知った安西さんはその日を境に、無理難題を断ることを決意したのだとか。その後、思い通りにならなくなったことに不満を爆発させたFさんは、「客を大事にできないヤツには担当してもらいたくない」と安西さんを担当から外してしまったのだ。

「一時は急激に営業成績もダウンしましたが、休日や夜中の呼び出しがなくなって疲れやストレスが軽減され、担当から外れてよかったと思います。また、営業力を磨きながら無理のない営業をしているいまのほうが、労働内容と給料が見合っているかもしれません」

 そして、「売り上げのためと相手の理不尽に応えても、要求は膨らむばかり。ある程度の距離を保ち、無理なことは毅然とした態度で断ることも大事だと痛感しました」と話してくれた。お互いの関係を良好に保つためにも、顧客と一線を引くことは必要なことかもしれない。

<TEXT/夏川夏実>

【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Twitter:@natukawanatumi5

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