Infoseek 楽天

2024年「スニーカー、ビジカジ、革靴、サンダル、ブーツ」の各部門ベストバイを発表

日刊SPA! 2024年12月18日 15時52分

こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
2024年の靴業界のキーワードは「想像以上の進化」でした。「進化」をテーマに「歩けるスニーカー」「ビジネスカジュアル」「革靴」「サンダル」「ブーツ」の各ジャンルのベストバイを紹介します。1年前とはラインナップがずらっと変わったことに我ながら驚いています。

◆【歩けるスニーカー部門】第1位オン「クラウドティルト」

スイスのオンは爆発的に愛用者が増えました。機能美のみを追求した超絶ミニマルなデザインと、それまでの超大手メーカーでも実現不可だったへたらないチューブ状のクッションが最大の魅力です。かといってアスリートのみが履ける排他的な要素もなく、なかでもクラウドティルトの特徴はオリジナルのゴム紐。忙しい生活でも一瞬で履けて、歩いても脱げません。ハイブランドのロエベもこのモデルでコラボしています。2024年のベストスニーカーでしょう。

◆【ビジネスカジュアル部門】第1位コールハーン「オリジナルグランドエナジーメリッド ショートウィング」

ビジネスカジュアルの頂点はなんといってもコールハーン。もっともこのモデルはABCマートとのコラボモデルで、デザイン自体は2年ほど前の「おさがり」なので価格を極限まで下げていますが、クオリティはまちがいありません。海外ではコールハーンは役職クラスがこぞってビジネスシーンやゴルフなどでも好む定番ブランド。通常は日本でも3~4万円程するのですが、全国最大チェーンのABCマートと組むことで(ただし取り扱いは大型店舗のみ)、低価格販売を実現しています。1988年から2012年までナイキ傘下で経営にテコ入れされましたが、靴底の「エア」や「ルナ」のハイテク技術を革靴と合体させることに成功。このモデルもナイキの「ルナ」テクノロジーを歩行用に進化させてものです。他のメーカーの一歩先どころか一周先を先行しています。

◆【革靴部門】第1位レイマー「Harper」

静岡県・焼津市に本社をかまえる2015年発足の新鋭「RAYMAR」。知る人ぞ知るメーカーで、国内で設計、生産は上海にもかかわらず、驚異的なコスパと超絶に繊細な手作業、振り子のように足なりに振った設計の木型を誇ります。代表の大石裕介氏も1990年生まれという若さ。このモデルもアッパーの革には世界最高クラスのドイツの「ワインハイマ―」を使用、ソールの仕上げも手作業という徹底ぶり。

紳士靴の本場・イギリスでもここまで手の込んだ靴であれば20万円以上はするでしょう。国産でも10万円以下ということは考えにくい。それが4万円ちょっとで手に入る秘密は、むやみに出店しないことです。今年から銀座松屋に常設されるようになりましたが、それまでは基本的にイベントのみでしか試すことができませんでした。ネットで試着するときには「アシ―レ」という独特の簡易フィッティングで木型・サイズ感を試せます。しかも無料。

私も革靴の設計に10年ほど携わっていたので、正直、手の抜き方は知っていますが、レイマーは本当に妥協がありません。でなければ、革靴マニアの間でもここまで高評価にはならなかったはず。本格靴は世界的に絶滅しつつあるので、近い未来に日本人だけでなく、いずれ世界中から注目されるでしょう。

◆【サンダル部門】第1位リグフットウェア「mguu(ムグー)」

国内初のリカバリーサンダルメーカーがリグ。2019年発足とかなり若いブランドですが、日本人の足形・歩き方を徹底的に研究し、口コミで一気に評価を勝ち取りました。今はアウトドアショップでの販売ですが、HOKAやオンと同様、一部セレクトショップでも置かれるように。リカバリーサンダル独特のソフトな感じはあるものの、しっかり踏み込めて体幹を使える履き心地はほかのブランドにはない唯一無二のもの。腰痛やヘルニアで悩んでいる方でも問題なく履けるはずです。フルマラソンをこれで走るシニアランナーの方がいるほどの実力。今後のサンダル界の台風の目玉です。

◆【ブーツ部門】第1位KOTOKA「一枚革サイドゴア」

こちらも奈良県発のブランド。ブーツだけではありませんが、とんでもない実力を秘めています。ブーツといえば「硬い、重い、蒸れる」といったイメージがあるでしょうが、このブーツ、なんとカカト以外に芯が入っていません。

裏に革を貼っていないので蒸れとは無縁。木型は足の形のままの「オブリークラスト」。ソールもビブラム社のタフなスポンジ底で、軽くてグリップ力も抜群です。カカトだけでも、ソールの全とりかえも可能なのでほぼ不死身です。KOTOKAはとにかく革の風合いにこだわり、機能に支障がないキズや血管の跡はそのまま残しています。このブーツは手作業で表面にロウを浸透させてあり、公式発表でもなんと「基本的にお手入れは不要」。防水スプレーをかけなくても、雨にも十分に強い。KOTOKAも低価格を実現させるため、東京・大阪・名古屋・福岡の4か所の KOTOKA展示体験コーナーやポップアップでサンプルを試着した後、オンラインで届く仕組みです。

以上、2024年の各ジャンルの個人的ベストバイを紹介しました。どこの分野もなにかに突出していないと生き残れませんし、過去の大手が勝つ時代は完全に終わりました。伝統もテクノロジーも販売形態も、本当にいいものが進化しています。来年も各ジャンルの進化は加速していくはずなので、魅力のある靴が生き残っていくい時代になりそうです。

【シューフィッターこまつ】
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」

この記事の関連ニュース