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「ドウデュースが負けるとすれば…」武豊に一抹の不安? “東大卒の予想家”が有馬記念を徹底分析

日刊SPA! 2024年12月18日 15時30分

 12月も半ばを迎え、本格的な冬の訪れを感じる日が増えてきた。しかし、競馬ファンにとって1年で最も熱くなるのがこの時期かもしれない。そう、今年も冬の風物詩「有馬記念」が中山競馬場で開催される。
 22日のグランプリに今年は22頭が登録。出走できるのはそのうち16頭だ。今年は半数を超える10頭がG1ウイナーという豪華メンバーがそろった。

 競馬ファンにとって有馬記念は最も当てたいレースの一つ。筆者の一年の負けを取り戻すべく、ある人物に話をうかがった。それが新進気鋭の競馬ライター・鈴木ユウヤ氏だ。2020年春に東京大学を卒業後、編集者を経て競馬ライターとして独立した彼は日夜、複雑に入り組んだ競馬予想に鋭いメスを入れ、さまざまな馬やレースを徹底的に究明している。

 幼いころから勉強面で苦労したことがないという“東大の頭脳”は主に過去10年のデータを基に鋭い切り口でデータを分析。買い目を極限まで絞ったうえで、高い回収率を狙うのがスタイルだ。実際に今年のJRA・G1(フェブラリーS~朝日杯FS)における回収率は141%というハイアベレージを叩き出している。この秋のG1で“未勝利”の筆者が鈴木氏に有馬記念の見解を聞いた。

(取材・構成=中川大河、取材日=12月16日)

◆この秋はマイルCSとジャパンCを本線的中!

——本日はインタビューに応じていただきありがとうございます。有馬記念が数日後に迫っていますが、この秋はかなり馬券の調子がいいようですね。

鈴木:マイルCSで本命にしたエルトンバローズ(7番人気)と、対抗ソウルラッシュ(4番人気)のワンツーは会心の一撃でした。あと、ジャパンCでも本命ドゥレッツァ(7番人気)、対抗ドウデュース(1番人気、1着)も読み通りでした。

——基本的には過去10年のデータからレースの傾向を多角的に分析し、2頭をピックアップした上で本命馬の単勝とワイド1点を買うというのがポリシーですね。

鈴木:オッズがあまりにも低いときはワイドを馬連にすることもありますが、今はこの買い方が中心です。有馬記念といえば、エフフォーリアが勝った3年前のレースをズバリ的中させた得意なレースの一つなので、何かしら攻略につながるヒントを紹介できればと思っています。

◆有馬記念で“一発逆転”はあるのか

——では早速ですが、今年の有馬記念はどんなレースになりそうですか?

鈴木:実は今年に限らずですが、有馬記念自体がそれほど荒れるレースではありません。過去10年で見ても、単勝オッズ10倍未満の馬が『9-5-8-20』と圧倒的な成績を残しています。10倍台の馬で『1-1-1-17』なのですが、20倍以上となると、『0-4-1-93』と好走率が一気に下がります。

——人気馬が人気通りに走っているということですね。

鈴木:ただ複勝回収率ベースで見ても、単勝10倍未満が103%、10.0~19.9倍が53%、20倍以上になると25%なので、大穴狙いが得策とは言えません。

——なるほど。年末の有馬記念で一発逆転ホームランを狙っても空振りする確率が高いということですね……。

鈴木:過去10年で最も荒れたのが、8番人気のゴールドアクターが勝利した2015年でしたが、その時でも三連単配当は12万円。それ以降もかなり平穏な決着が目立っています。

◆勝つ確率が圧倒的に高い馬は…

——ドウデュース、イクイノックス、エフフォーリア、クロノジェネシス……。確かに、強い馬が強い勝ち方をしていますね。そうなると今年も大荒れにはならないと。

鈴木:そうですね。今年の想定メンバーを見ても、人気薄の馬を手広く買うというよりは実力上位の馬をしっかりと見極めた上で絞って厚く買うのがオススメですね。

——となると、やはり軸はドウデュースということになるんでしょうか。

鈴木:まず馬券圏外に飛ぶことはないと思います。おそらく単勝1倍台の圧倒的な支持を集めるはずなので、私自身は単勝を買うつもりはありませんが、勝つ確率が最も高いのはドウデュースでしょうね。

——ドウデュースに死角らしい死角は見当たりませんか?

鈴木:データでいうと、ジャパンCを勝った馬は次走の有馬記念で抜群の成績を残しているというわけではないです。ただ、同じ年の天皇賞(秋)→ジャパンCを連勝した馬に限ると、1986年以降に3頭いて2勝2着1回。勝ったのが、テイエムオペラオーとゼンノロブロイで、2着に負けたスペシャルウィークもグラスワンダーに数センチの差で競り負けただけです。繰り返しになりますが、ドウデュースが勝つ可能性は極めて高いとみています。

——雨が降ろうが槍が降ろうがドウデュースということですね。

鈴木:いや、唯一不安があるとすれば、雨が降って馬場が渋った時ですね。3歳秋の凱旋門賞は19着に惨敗しましたし、重馬場で行われた今年の宝塚記念も末脚不発の6着。道悪適性には疑問符が付きますが、今のところ雨は降りそうにありません。良馬場ならドウデュースに全幅の信頼を置いてもいいと思いますよ。ちなみに鞍上予定の武豊騎手ですが、有馬記念での騎乗で興味深い傾向があるんですよ。

——どんな傾向ですか?

鈴木:枠順ですね。武騎手はこれまで有馬記念に33回騎乗して4勝を挙げていますが、内目の1~4枠に入った時は『4-7-2-10』という好成績を残しています。一方で、5~8枠の時は『0-1-0-9』とまさに両極端。ドウデュースは後ろから行く馬なので枠順はあまり関係ないとは思いますが、外枠を引かないに越したことはありません。

◆ドウデュースが勝ったレースは逃げ・先行馬が好走

——良馬場でドウデュースが1~4枠なら1着固定で買わざるを得なさそうですね。逆に道悪で外枠なら……。それはその時に考えましょう。ではドウデュースに次ぐ2番手以下の馬について聞かせてください。

鈴木:今の芝の古馬王道路線はタイトルホルダーとパンサラッサが引退したことで逃げ馬が不在なんですよね。今年のメンバーを見ても、逃げたい馬が除外対象になっています。天皇賞(秋)とジャパンCが“ドスロー”になったように今回もその可能性が高いと思っています。

——そうなると、物理的に後ろからでは届かず、逃げ・先行馬が有利になると。確かに昨年の有馬記念以降、ドウデュースが勝ったレースはスローな流れで逃げ・先行馬がそのまま上位に残るケースが多いですね。

鈴木:ただどの馬が逃げるのかが難しいところで、これは枠順によって変わってくるでしょう。逃げ候補としては、ベラジオオペラ、スタニングローズ、そしてダノンデサイルあたりでしょうか。ベラジオオペラは極端なキレ味勝負にしたくない馬なので、これがハナを切れば超スローにはならないかもしれません。ただ、ドウデュースが後ろから行く以上、先行馬の騎手たちもわざわざペースを上げることはしないはず。ドウデュースに土をつけるとすれば、ベラジオオペラかダノンデサイルのどちらかが前目でインコースをうまく立ち回った時だと思います。

◆この秋やや不振のルメール騎手も侮れない

——つまり、ドウデュースが負けるとすれば、差し損ねた時ということですね。

鈴木:ドウデュースが差されるシーンは想像できません。繰り返しになりますが、ベラジオオペラとダノンデサイルは先行してロスなく立ち回ることが好走の絶対条件。特に不気味なのはダノンデサイルの方ですね。前走の菊花賞でいい負け方をしていたので。

——前の馬がズルズル下がってきて、身動きがとれなかったあの競馬ですね。確かに最後はいい脚で伸びていましたし、今回もダービーと同じような位置で競馬ができれば面白そうですね。ちなみに今年の菊花賞を制したアーバンシックはどうですか?

鈴木:瞬発力勝負になると分が悪いですが、ペースが流れれば上位には来そうですね。何といってもC.ルメール騎手が有馬記念にめっぽう強いですから。

——昨年も大外16番枠のスターズオンアースを2着に持ってきました。

鈴木:そのレースも含めてルメール騎手は有馬記念で通算『3-5-2-7』。単勝回収率129%、複勝回収率160%というハイアベレージを残しています。菊花賞馬に関しても過去10年で『1-0-2-1』と、高い確率で馬券になっています。ルメール騎手がアーバンシックに騎乗した直近の2戦に限っていうと、機動力も上がっていて春よりは前目につけられていますし、ある程度の位置で運べれば、ドウデュースをおびやかすシーンもあり得るでしょう。

——この秋はやや不振とはいえ、やはりルメール騎手を侮るわけにはいきませんね。

鈴木:あとはやはり枠順が重要です。最初のコーナーまでが近い中山の2500mは先行するにせよ差すにせよ、内枠の方が脚を使わずにポジションをとれますから。特に名前を挙げたダノンデサイルとベラジオオペラは内目の枠が欲しいでしょうね。

 *  *  *

 鈴木氏は他に穴候補としてジャスティンパレス、レガレイラ、ローシャムパークの名前も出していたが、現実的にはドウデュース、ダノンデサイル、ベラジオオペラ、アーバンシックの4頭による争いという見解だった。

 逆神と呼ばれて久しい筆者・中川大河は、東大の頭脳を拝借することで、今年の有馬記念を仕留めることができるのか。最終的な買い目は今週土曜日の記事でお届けする予定だ。

【鈴木ユウヤ氏 プロフィール】

東京大学卒。編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xやブログ『競馬ナイト』で発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

取材・文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。

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